ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-24

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匿名ユーザー

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かつての名城と謳われていたニューカッスル城だが今現在は限りなく無残なものだった。
城壁は崩れ去り死体がそこら中に転がっている。
一方からしか攻撃できないという地形的要因もあり密集隊形のレコン・キスタ軍に魔法と大砲の一点集中砲火が加えられ莫大な被害を出した。
だが、先陣がそれを突破し兵が城の中に雪崩れ込んでしばらくすると異変が起きた。
城に突入した先陣の兵のほとんどが帰ってこなかったのである。
何名か帰還してきてから最突撃を慣行したものの、士気はガタ落ちで傭兵達は進もうとしなかった。
それでも、貴族の直属部隊が突入したのだが城の中の光景は常軌を逸していた。
敵味方を問わず全ての生き物が枯れ木のように朽ち果てている光景を見て誰が驚かずにいられようか。
本来、落城した城で見られる財宝漁りや死体からの戦利品の収拾は全く行われていない。
呪い、先住魔法、などと騒がれそんな気になれないでいた。
老化に巻き込まれ運よく生き残った兵士達は口を揃えて『全ての物が朽ち果てていく様子は悪夢を見ているようだった』と答え
その日からニューカッスル城は『名城』から『死城』と名を変え、その攻城戦は『ニューカッスルの悪夢』と永劫に語り継がれる事となった。


(しょ…~~~~がねぇ…ァ~…)
(最後の…を振り…ぼれぇぇぇぇ…)
(ひっかか…やがっ…なッ…ザマぁ…やがれ…ェーーッ…)
(おれ…ベイ…ィ・フェ…スの残…をひ…いい…いいッ…)
(なん…って…エ…エェェ…ェェ…)
(ひと…では…死…ねえっ…)
………
………………
………………………………
「…ってぇ…」


何時もとは比べ物にならないぐらい力ない声でそう呟き身を起こす。
思考が重い。手で額を押さえる。
また、あの夢を見たのだが…今回は違っていた。
仲間の最期の声が聞こえ、それがより夢のリアリティさを上げていた。
ここに着てからこれだけ時間が経過しているのだ。いい加減それがどういう事か認めざるをえなかった。
(あいつらのこった…ボスを倒してるか…全滅してるかのどっちかしかねぇな…)
残りの仲間はペッシ、メローネ、ギアッチョ、リゾットの四人。全員がそれ相応の戦闘能力を持っているがブチャラティ達の能力と覚悟も侮れない。
それは直接ブチャラティと戦った自分が一番よく知っている。
(あいつらがボスを倒してたとしても今更このオレがどの面下げて会えるってんだ?ええ?おい?)
深く息を吐き出した結論は一つだった。
「ったく………戻れるわけねーな」
あいつらなら受け入れてくれるだろうが…自分自身がそれを享受できないであろう事は誰よりもよく知っている。
珍しく思考が弱気になり、視線を宙に向けると扉が開きシエスタが入ってくるが身を起こしているプロシュートを見るなり一気に泣き顔になった。
「……よか…ったぁ…ほん…とに」
このギャング実にこの様な場面に遭遇した事が無い。寝込みを襲われた事は腐る程あるが起きてすぐ人に泣かれた事など全く無い。
いや、起きてすぐ説教かましてペッシを半泣きにさせた事はあるが、少なくとも何もしてないのに泣かれた事は無い。
どう対処していいか分からずに思わずグレイトフル・デッドを発現させるが、意味ねー事に気付き頭を掻いた。
「……オメーが居るって事は場所は学院か。……何日だ?」
この体のだるさからみて結構日数が経っているのだろうと首をコキャっと鳴らしながら予測を付ける。

「ふぇ…7日も…目が覚めなかったんですよぉ…」
「7日だと?頭がイテーわけだ…」
(傷もあるがそれに加えてグレイトフル・デッドを限界まで使ったのもあるな…)
「血まみれのプロシュートさんを見た時…死んでしまったのかと思ってましたよぉ…」
このギャング説教はAだがこの手の対処能力はブッチギリでEである。
(こういうのはメローネ担当なんだがな…)
半分顔を引きつらせながら相槌を打つがグレイトフル・デッドをフルパワーで使った時以上に精神力を使っている。
「いいからちったぁ落ち着け…死んでねーんだから泣くこたぁねーだろうがよ…」
「で、でも…」
まだ泣いているシエスタを見て一瞬、説教という選択肢が頭に浮かんだがさすがに自分の身を案じているカタギの女の子に説教かます程空気が読めないわけではない。
まぁそれでも相手に非があれば誰であろうと一切容赦しないのがプロシュートのプロシュートたる由縁なのだが。
「あーもう、泣くな。こっちまで気が滅入る」
ボフッっとシエスタの頭に手を置いてワシャワシャと弄くりたおす。
「え…!いや…あの…その…すいません…」
泣き顔から一気に顔を赤くさせしどろもどろに何とか答える。
(他人から心配されるか…今までんな事は無かったが…まぁ悪くはねーな)
「…そういやルイズはどうしてる?あいつも気絶してたはずだが」
「ミス・ヴァリエールの怪我は軽症でしたので治療を済ませた後、ずっとプロシュートさんの看病をしてらっしゃったんですよ」
その言葉に思わず眉を上げる。
「治癒の呪文の秘薬の代金もミス・ヴァリエールが出してくれたので心配しなくても大丈夫ですよ」
こちらの貨幣価値はまだよく分からないが秘薬というからにはそれ相応の値がするという事だ。
「…また借りができたな」
「?何か言いましたか?」
「いや、こっちの事だ」

そう言いながらベッドから起き上がり立とうとするがそれをシエスタが慌てて止めようとする。
「ま、まだ無理ですよ!あれだけ血を流してたんですから!」
手を握り力を入れる。少し力が入らないが問題ない範囲とし立とうとするが、重大な事に気付いた。
「……ヤバイな。着るもんがねー」
至るところが破れ血に塗れていたスーツを思い浮かべる。誰がどう見ても再起不能だろう。
「それでしたらミス・ヴァリエールからこれを預かってるのですが……本当に大丈夫なんですか…?」
そう言って渡された物は例によってここの教員用の服だった。さすがに生徒用のは無理があるのでルイズがコッパゲに頭下げて借り受けてきたらしい。
「無いよりかマシってとこだな…」
若干不満気に袖を通すが、贅沢は言ってられない。ちなみにメイジではないためマントは付いていない。まぁ付いていたとしても付けないであろうが。
着替えを終えたプロシュートを見たシエスタだが、妙に教師姿が似合っているプロシュートを見て目を丸くしていた。

プロシュート兄貴―ギャング界において最も教師が似合う男 担当教科『国語』 教える物『栄光のつかみ方』
多分、世界が一巡したら教師やってる。いや絶対。
「…似合って…ますね」
一瞬、黒板をバックに貴族のマンモーニ連中を説教しながら授業している己の姿を思い浮かべて胃が痛くなった。
「冗談じゃあねー…マンモーニは一人で十分だ」
「でも、ふふ…本当に良く似合ってますよ」
ようやく笑ったシエスタを見るが、笑われてるだけなのも何なので少しイジっておく事を心に決めた。
「…まぁいい。世話になったみてーだから何かあれば言ってくれて構わねーぜ」
そういいながらまたボフッっとシエスタの頭に手を置きイジる。
傍から見ればまぁ微笑ましい光景であろうが、やられている当人はオーバーヒート寸前というところである。
「ひゃ…!いえ…わ、わたしなんかなにも…してませんし…」
十二分にテンパっているのを確認すると『計画どうり』という幻聴が聞こえたが、まぁそれを無視して部屋を出た。

(ああ…それにしても……金が欲しい…!!)
のっけからどこぞのアゴが妙に尖った博徒のような思考を張り巡らせているのは我らがルイズだ。
(なんで、たかが服なのにあそこまでするのよぉ~~~!)
起きる前に再起不能になったスーツの代わりを新調しそれを渡して思いっきり恩を売り掃除、洗濯等の雑用も押し付けるつもりだったのだが…
高かった。異様なまでに高かった。
見たことも無い素材。そして技法。それに加えて他の注文を押しのけて最優先で同じ物を作る。
職人総出の徹夜作業が続き、なおかつ他の顧客への迷惑料も換算するとえらい額になり
試作10号にしてやっとこさほぼ同じ物が完成したのだが、今朝届いた請求書を見てブッ飛んだ。
普段なら払えない額ではないだろうが
プロシュートの秘薬の代金。キュルケとの意地の張り合いの結果自腹出したデルフリンガーの代金。あの時飲みつくした酒の補充代で金が無かった。
ルイズ財政破綻一歩手前というところである。
『ぐにゃ~~』という音と共になんか周りが歪んで泣きそうになった所に後ろから声がかかった。
「よ」
「わひゃあ!」
「…お前は、驚く事しかできねーのか?」
「うう、後ろから急に声かけられたら驚くに決まってるじゃない!」
「ちったぁマシになったと思ったが…まだまだマンモーニだな」
「そんな事言うためだけにわたしを驚かしたんじゃないでしょうね…?」
あの土壇場で自分を信頼していてくれていたが、もう評価を落されたんじゃあないかと少し不安になった。
「ああ、秘薬ってやつの代金だしてくれてたみてーだな…一応礼は言っておく」
「あ、あんたはわたしの使い魔なんだから当然じゃない!…って一応ってなによ一応って!」
「オメーの爆発の分も怪我に入ってんだからな」

「な、なななによそれぇーーーー!あんたがやれって言ったんじゃない!」
表情に出さず心で薄く笑いながらそれに返答する。
「…冗談だ。まぁあの場面でよくやった方だな」
「ふ、ふん!わたしは貴族なんだから当然よ!」
シエスタと同じように頭に手乗せてイジってやろうと思ったがコイツの場合面倒になりそうだと思い止め、寝ている間に何かあったかを聞き出す事にした。
(そーいや抜き取った宝石の事も忘れてたが…まぁそっちは今は言わなくてもいいな。)
「ウェールズから姫さんに伝言頼まれてたんだが…言いそびれたな。どうだった?」
「……姫様は殿下に亡命を勧めてられてたわ
  ……気丈に振舞ってたけど姫様の悲しみは深かったわ。…やっぱり殿下を気絶させてでも連れ帰った方がよかっわぎゃ!」
ショボーンと俯いているルイズの頭を叩くと寝起きの説教が開始された。ただしプロシュートも寝起きはかなりの低血圧のためその温度は低いが。
「てめーでやった事を後悔するんじゃあねぇ…この際ハッキリと言っておくが
  『ブッ殺すと心の中で思ったならその時スデに行動は終わっている』ってのは生半可な覚悟で『ブッ殺す』と思うなって事なんだからな…」
暗殺チームは別に趣味で殺しをやっているわけではない。
生きるために仕事でやっているからこそ相手を殺すと思うという事は、己の身にそれ相応の覚悟と責任が圧し掛かるという事だ。
「分かってるわよ…というかその考え方どうにかならない?心臓に物凄い悪いんだけど」
「ならねー」
「……はぁ…まぁ…いいわ。期待してなかったし…朝ごはん行くわよ」
その相変わらずの即答ぶりに肩を落すルイズを先頭に食堂に向かった。

意外かもしれないがプロシュートが朝食事時に食堂に入るのはこれが初めてである。
前述のとおりかなりの低血圧に加え元々朝食は摂らない方なので外で待機しているかそこらへんをうろついているかのどっちかだったが
今回は7日間ぶっ続けで寝ていたのでさすがに何かを食う気になっていた。だが…
「…なんだこいつは?」
「なにって…朝食だけど?」
例によって無駄に豪華である。ヘヴィと言っても過言では無い。

「今日から皆と同じ物食べていいわ。べ、別にこの前助けてくれたからってわけじゃな「重い」だから…って、ええ?」
「重い。朝からずっとこれだったのか?…ポルポみてーになんぞ?オメー…」
仲間内ではポルポとプロシュートの食事量を足して2で割れば丁度良いんじゃあないかと言われているぐらいだ。
ルイズのポルポって誰よ?の疑問にポルポの特徴を挙げていく
「まぁ部屋から出れねーぐらいの豚だ。オレも初めて見た時はベッドかと思ったぜ」
ものすごーく夢に出てきた精霊様と姿が似ていて思わず視線が杖に移り…一気に食欲が減退した。
祈りが唱和され食事が始まるが、ルイズのペースはめっさ遅い。
プロシュートの方はだるそーにパンと肉に少し手ぇ付けただけでサラダに突入している。
見ているだけで胃が重くなるのだが、まぁサラダなら別だ。
それを見たルイズも半分放心したように無意識にサラダを口に入れたが…
「ふぎゃ!…にっがぃ…これ、はしばみ草じゃない!」
水で後味を流し込みながら視線を横に移すが、プロシュートのサラダの皿は空だったッ!
「……なに?なんで皿に何も乗ってないのよ」
「そりゃあ食ったからな」
「…ウソぉ」
「まぁ不味くはねぇ」
サラダを口に入れる瞬間『ロオォォォォドオォォォォォォ』という聞き慣れた幻聴が聞こえたのだがまぁ特に気にしないで無視した。
ただ単に味に対して無頓着であるというのもあるが、それを知らないルイズはドン引きだ。
「外で待ってっから食ったら来い」
それだけ言うと席を立つプロシュートを放心したように見送るルイズだったがやっとの思いで口を開いた。
「あ、ありのままに(ry」
そして、そのポルポル君と化しているルイズを無視し出口に歩いているプロシュートを某首斬り判事神父の如く眼鏡を光らせ見ていたタバサが低く呟いた。
「……同志」


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