ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀の使い魔-13

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「物理的な衝撃に弱いとかあのハゲ…全然駄目じゃない…!」
深夜、宝物庫のある本塔の前でロングビル、もとい『土くれ』のフーケは怒り狂っていた。
昼間にコルベールから物理的な力が宝物庫の唯一の弱点であることを色目を使って聞き出し、自らのゴーレムで試したものの、壊れるどころかひびすら入らなかったのだ。
「…でも、私のゴーレムでも駄目だとしたら、どうしたらいいものかねぇ…」
そうつぶやいた時、本塔の脇の方から怒鳴り声が聞こえた。
「ツェルプストー!いい加減私の使い魔に近寄らないでよ!」
いきなりの怒鳴り声に驚き、さっと本塔の壁に張り付くと音をたてないように首だけを出してそっと声のした方を見た。
そこにはルイズ、キュルケ、タバサ、そしてポルナレフがいた。いや、よく見ると亀もいる。
とすれば怒鳴ったのはルイズらしい。よく状況は分からないが、彼等がそれぞれの部屋に帰らないと自分も部屋に帰れない。
まったく、彼女からしたらはた迷惑な話である。
ともあれ仕方が無いので、彼等が去るまでしばらく待機することにした。


「あら、いいじゃない。別にダーリンは別にあなたの恋人じゃなくってよ?最も、恋人でも私は奪うけどね~。」
キュルケはそう言うと、ポルナレフと腕を組もうとするが、ポルナレフはそれを横にずれる事で回避した。
「好意はうれしいのだが…言い付けでな…」
ポルナレフはそういうとすまなさそうに頭を下げた。その態度にキュルケの恋心はますます掻き立てられる。
「ダーリンの主人に対するその忠実さ…素晴らし過ぎるわ…!ルイズには勿体ないぐらいに!」
「忠実」
タバサも感心しているらしくボソリと言った。
「メルシー・ボークー」
二人にポルナレフは一応礼を言ったが、心中は複雑だった。
ポルナレフは使い魔ということにはなっているが、他の使い魔同様に忠誠を誓ったつもりはない。
だから忠誠を賞賛されても嬉しくともなんともないのだ。
しかも今はチャリオッツを取り戻している。
更に左手についたルーン…剣やナイフを持つと光りだし、体が軽くなると最近気付いた。
思い返せばギーシュとの決闘の時、ほぼ無意味ではあったが、ナイフを強く握ったとき体が軽くなった気がした。あれもこのルーンが原因だったらしい。
ルーンが輝くと、チャリオッツも昔程とまではいかないが、ローマのコロッセオで死ぬ前よりも動きが遥かによくなる。
この二つの力を駆使すればただのメイジどころか下手したらスクウェアクラスが相手でも負けはしないだろう。
だが、地球に戻るためには情報が不可欠であり、そのために使い魔であり続けなければならないことが非常に歯痒かった。

「まったく、忠実なのを誉めてくれるのはいいけどね、何度も言うけど近寄らないでよ!」
またルイズが怒鳴る。ポルナレフはやれやれ、と呟くと亀を拾い上げ、寮に向かって歩きだした。
「こら!何処へ行くの!待ちなさい!」
「今日の鍛練は中止だ。邪魔が多過ぎる。」
振り返ることもせずそれだけ言うと欠伸をしつつ寮に戻って行った。
「ご、ご主人様が邪魔ですってぇ~!」
「あぁん、待って~」
ルイズとキュルケがポルナレフの後を追い、タバサもそれに続いて寮に帰っていった。


「やっと行ったわね…」
フーケは四人と一匹が立ち去ったのを確認し、これからどうしようかと考えたが、ゴーレムでも宝物庫の壁が破壊できない以上、どうしようも無いので今夜はもう自室に帰ることにした。
その道すがら、ふと一抹の疑問が頭をよぎった。
「それにしても何でこんな時間に中庭にいたのかしら…?」
確かポルナレフは去る時『鍛練は中止だ』とか言っていた…『鍛練』…チャリオッツ…
その時、フーケは『ある事』を思いつき、ニヤリと笑った。
これならいける。上手く事が運べば…!


次の晩、ポルナレフは昨日と同じ場所にいた。右手には以前街で購入したレイピアを携えている。
目の前には昼間に切り出しておいた丸太が数本。
目を閉じ、精神を集中させる…チャリオッツと自身を同化させる…
「チャリオッツ!」
喝!と目を開き、チャリオッツを呼び出す!現れたチャリオッツが目の前の丸太を瞬く間に切り刻んでていく!
そして数秒後、丸太は見事な木像になっていた。こころなしか怯えているディアボロに見える。
「タイトルは『俺の側に近寄るな』…かな。」
ポルナレフが満足げにそう独りごちると、後ろからパチパチと手を叩く音がした。
「見事な出来栄えですわ。ミスタ・ポルナレフ。」
手を叩いたのはロングビルだった。
「見ていたのか?」
後ろを振り返らずにそう言うと隣の丸太を見る。その丸太も数秒で木像になった。新たに出来た木像を見てロングビルが驚いた。
「それは…私ですか?」
「私としてはそのつもりだが…似てなかったか?」
ポルナレフは二つ目の丸太でロングビルの木像を彫っていた。
「いえ、よく似ていますわ。たった数秒でやったとは思えないほどに…人間以上の精密動作にスピード…話の通りですわね。」
ロングビルは内心ほくそ笑んだ。これ程の『力』ならきっとイケるに違いない。
「ところでオールド・オスマンから伝言がありまして…」
「何だ?」
「少し、来て下さいますか?」
そう言うとロングビルは本塔の中に入っていき、ポルナレフはロングビルについていった。

「ここです。」
ロングビルは五階の廊下でいきなり立ち止まった。
「ここ?私には壁しか無いように見えるが…」
「オールド・オスマンはあなたの『力』がどれほどか知りたがっています。
なのであなたの力がどれほどなのかを至急調べる必要があるとの事です。」
ロングビルがあくまで事務的な口調を装って喋る。
「具体的には?」
「ここの、宝物庫の壁を斬ってみて下さい。それだけです。」
ポルナレフは少し考えてから、
「オールド・オスマンの命令とあれば従おう。しかし、今は『土くれ』のフーケとやらが蔓延っていると聞く。余りにも無用心じゃないか?」
と返した。
ポルナレフの返事に、ロングビルはあらかじめ計画していた通りに答える。
「いえ、私はこう見えましても土のラインです。多少の補修なら出来ますのでご心配無く。
それに朝になればスクウェアメイジが数人がかりで元に戻します。」
勿論出鱈目である。見かけ上の補修はするが、スクウェアメイジによる強化などしない。
「…再度確認するが本当にオールド・オスマンの密命なんだな?」
「はい。本気でやるように、とのことです。」
「…分かった。」
(かかったな阿呆が!)
ロングビルは心の中でガッツポーズした。余りにも計画通りで、喜びの余り踊り狂いたかったが必死の思いで我慢する。


「それでは誰も来ない内に…」
ポルナレフは目を閉じ精神を研ぎ澄ます。
今まで精密かつ素早い動作の鍛練ばかりしてきた。こうやって剣の斬撃を試す機会は滅多に無かったからだ。
ちょうどいい。この機会に今出せる限りのチャリオッツの全力を試してやる。
「シルバー・チャリオッツ!」
シュパパンッ!
シルバーチャリオッツの斬撃が宝物庫の壁を切り裂く。壁には十字型の切り裂いた跡が深々と残っていた。
「流石に宝物庫の壁はやはり破れませんか…」
「今は、な。若い頃なら貫通していただろうが。」
ポルナレフが悔しそうに言った。
「オールド・オスマンには伝えておきます。その前に修復を…。」
ロングビルが杖を振ると跡が土で埋められ、元に戻った。
ポルナレフはそれを見て安心し、寮のルイズの部屋に帰って行った。ロングビルも怪しく笑いながら自室へと帰って行った。


そしてその数日後、ポルナレフは再び自身の女運の悪さを思い知ることになる…


To B...



「つーか買ったのに俺だけ亀の中に放置で出番無しってひでぇ。でも許す。あいつは俺の相棒だかんね。」
デルフリンガーは誰もいない亀の中で寂しく呟いた。


To Be Continued...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー