ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

アホの使い魔-4

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さっさと食事を終えて食堂に戻ってみてもルイズの食事は未だに終わってなかった。
仕方がないので億泰はボケ~っと出口で待つ事にしたが、
食事を終えた生徒が通りがかりに億泰を見てクスクス笑っていくのが腹立たしい。
『見世物じゃねーぞコラァー!』とでも叫びたい気分だったが、
どうせろくな事にはならないのが目に見えていたので無視する事にした。

十分後に出てきたルイズまで無視してしまい、思いっきり蹴られるハメになった。



ルイズと合流し、連れてこられた所は大学の講義室のような石造りの大部屋だった。
見渡しても談笑している生徒が殆どで、この辺りはぶどうヶ丘高校と大して違いがない。
高校生の億泰にはどちらかというと視聴覚室だな~と思ったりしている。
二人が入っていくと、談笑していた生徒達が一斉に振り向き、
そして億泰を連れたルイズを見るとクスクスと笑い出す。
ルイズがそれを無視して席につこうとすると、
男子に囲まれていた一人の女子生徒がグループから離れて近づいてきた。

「あらルイズ、本当に平民が使い魔なの!
 すごいじゃない!あははあはは!」

燃えるような赤い髪に、ルイズよりも高い身長、ルイズよりも色気の漂う肉体、
とりわけルイズよりも突き出た胸元を、ブラウスのボタンを二つ程外して覗かせている。
ルイズと比べると、『負けた……スタイルのレベルで……』と若い頃のジョセフさんが言いそうな程だ。
勿論億泰はビミョーにヨダレを出しながらその胸元に視線を向けている。

「キュルケ……なに?なんの用なの?
 嫌味言いに来たならアッチ行きなさいよ」

そう言ってシッシッと手で払うような素振りを見せるが、
当然キュルケはそんなのを無視してもの珍しそうに億泰を眺めだす。

「別に良いじゃない、見て減る訳じゃないでしょ?
 ふ~ん…………
 なんだかポカンとした瞳の奥に『何かを隠してる』ような気がするわね。
 ねえ、お名前は?」

途中口をつぐんだのは、
直接『何だか締まりの無い顔ね』と言うのは流石に酷だと思ったからだろう。
だが、億泰はそんな事にも気づかない。
いや、二つの胸の谷間に生じる歯車的砂嵐の小宇宙に魅入って気づく余裕さえないのだ。

「あ、アッー!億泰ッス!虹村億泰!」
「オクヤス?変な名前。ま、覚えておいてあげるわ。
 ねぇ、それよりルイズぅ。やっぱり使い魔ってのはこういうのよねぇ?
 フレイムー?」

キュルケが勝ち誇った声で使い魔を呼ぶと、
教室の後ろからゆっくりと巨大なトカゲが現れる。

「!! これってサラマンダーじゃない……!」
「そうよー、火トカゲ。
 ほら見て!この鮮やかで大きい炎の尻尾!
 きっと火竜山脈のサラマンダーよ!」

と、そう言って自慢を始めるキュルケとそれを悔しげな瞳で睨むルイズの横で、
ポカンと億泰はフレイムを見つめていた。

(なっなんか規格外が出てきてるぜ~~~~
 燃えてるじゃねーかァ~~!?)

平気なのかよォ~という目で見ていると、
フレイムがきゅるきゅる、と他の皆もそんなモンだから気にするな。
という意味で鳴いたように聞こえた。

(ほぉ~、やっぱ使い魔ってスゲーんだな)

きゅるきゅるきゅる

微妙に意思疎通ができているらしい。
そうしてフレイムと対話?をしながら椅子に腰掛けようとして、
ルイズに思いっきり突き落とされた。

「ドピ!?」
「何座ろうとしてるのよ。
 ここはメイジの席なの、使い魔なんだからアンタは床。
 す、座りたいならお願いくらいしなさいよ」
「あんだと~~!?
 ……フンッ、分かったぜ、床に座ってりゃーいーんだろ?
 ケッ邪魔しねーよーにしといてやンよ!」

と、そう言って壁際に移動してドッカと腰掛けた所で
紫色のローブに身を包んだ中年女性が入ってきた。

「はいはい、お喋りはそこまで。
 授業を始めますよ」

どうやら教師のようだ。

「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。
 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ。
 ……あら?ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したと聞いていたのですが、本当のようですね」

シュヴルーズが億泰を見てとぼけた声で言ったのを引き金に、教室中がどっと笑いに包まれる。

「ゼロのルイズ!
 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
「それに、同じ平民でもせめてもう少し賢そうなのにしな!」

キュルケの自慢を聞かされて相当苛立っていたルイズは、
机をバンッ叩いて大きな声で怒鳴りつける。

「違うわ!きちんと召喚したの!
 でもこいつが来ちゃっただけよ!
 だいたいマリコルヌ、なによその格好!脂汗と包帯でまるで光ったメロンね!」
「なんだと!?
 何度も『サモン・サーヴァント』をミスっていた分際で!
 このクサr……モグッ!?」

二人が口汚く口論しだすと、
突然ルイズをバカにしていた包帯メロンの口に赤土の粘土が叩き込まれる。
口を塞ぐだけではなく、口の中一杯に頬張らされているようだ。

「ミスタ・マリコルヌ。
 貴方はその格好で授業を受けなさい。
 少々口調が乱暴すぎますよ?」

窒息しそうな程にウーウー呻くマリコルヌの不気味さに教室の笑いが収まった。
それを見てこほん、と咳払いをするとシュヴルーズは杖を振る。

「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。
 『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」

授業が始まると、億泰はボーっと眺めていた。
億泰にとってはいくら興味深いものでも教師の言葉は眠りの魔法なのだ!

きゅるきゅる、きゅーきゅー、キョォォーン、ぎゅーぎゅー、ゲロゲロ
アギ……

と、暫くすると何匹かの使い魔が億泰の所へと集まりだした。
億泰はそれらの相手を適当にしながら、意識を半分眠りに委ねる。
まあ、それでも化け物状態から治る前兆すらなかった頃の父親の世話をしていたため、
猫草をすぐに手なづけるような事ができたりするのだ。

一方でルイズはその光景をチラチラと見て、ムカッ腹を立てていた。

(何よ!他の使い魔とかなんかと仲良くしてるんだか!
 そいつらの主人はみんなアンタに陰口叩いてんのよ!?)

「聞いていますか?ミス・ヴァリエール」
「ふえ!?」
「全く、授業中には集中してください。
 そうですね……あなたにやってもらいましょうか、ミス・ヴァリエール。」
「え、わ、わたしが?」
「そうです、この石ころを望む金属に変えて貰いましょう」

それを聞いて意気揚々とルイズは立ち上がった。
ここで成功させてマイナスイメージを払拭してやる!
億泰にも!ここの皆にも!
大丈夫、私ならやれる筈よと誰にも聞こえない位の小声で呟いた。

そのやる気の満ちた様子にクラス中が恐怖に覆われる。
蛇に睨まれたカエルのようにガタガタ震える者も居れば、
カタカタと涙を流しながら意識を手放す者もいた。

「先生、やめさせてください」
「それだけはやめといたほうが……」
「危険です」
「お慈悲を」
「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメ……」

しかし、その声が耳に入らないかのようにルイズは教壇へと歩いていく。
その様子にシュヴルーズはにっこりと笑顔を浮かべ、
周囲は余計に引きつっていく。

「周りの声など気にしてはいけません。
 さあ、錬金したい金属を心に強く思い浮かべるのです」

促されてルイズは可愛らしく頷き、手にした杖を振り上げる。
ざわっという声が教室に広がり、慌しく生徒達が思い思いの対策を取り出した。

「Hail 2 me……願いを三つ。
 ルイズが錬金を成功させる。
 それが無理なら錬金が失敗しても何も起きない。
 それも無理なら爆発が避けていく。
 Hail 2 me……」
「こ、此処は僕達が隠れるんだ!
 君が入ったらスペースが埋まる!他に回ってくれマリコルヌ!」
「いやよ!こっちこないで!」
「こんな教室にいられるか!俺は部屋に帰るぞ!」

そんな様子すらも無視し、絶好調誰にも止められない状態のルイズは
唇をギュッと結び、真剣な顔で短くルーンを唱えて杖を振り下ろした。

瞬間!石ころは大爆発!

爆発の煙と臭いが充満し、平和な教室が一瞬で戦争最前線へと姿を変える!
至近距離の直撃を受け、シュヴルーズは吹っ飛ばされて叩きつけられた。
ルイズは真っ黒な煙の中に居て様子が分からない。
机に隠れた集団は無事だった。
願いを言っていた奴は地獄を!自分に!になった。
ギーシュに蹴りだされたマリコルヌはどこにも隠れられず、
吹っ飛ばされて使い魔の集団に叩きつけられた。
そのあまりの光景に驚いた使い魔は恐怖の対象のマリコルヌをボコボコにしだす。
フレイムが火炎を吐き、犬猫が噛み付き、鳥が引っかき、
マンティコアが飛び上がって鳩尾に体当たりだ。

「ゲェッ!
 なっ何だッ!
 イヒィイイイイイイ~~~~っ
 なんだこいつわぁあああ!」

      アギ……

そして、衝撃で目覚めた億泰が不気味な形相のマリコルヌに驚いて蹴飛ばすと、
最後に衝撃で倒れてきた人面岩がマリコルヌを押し潰したのだ。

ほんの数秒で前線から阿鼻叫喚の地獄へとシフトして混乱が起きる。
状況を把握した先から被害者の姿を見てしまい、彼方此方で悲鳴と怒号が上がった。

「メイジは許可なく死ぬことを許されない!
 死ぬな!死ぬなマリコルヌ~~~!」
「だから嫌だったのよ!もう二度とやらせないで!」
「ええい!学園は何をやってるんだ!
 早くヴァリエールを退学にしろぉおお!」
「ピッツァー!マリコールヌ!気を確かに持てぇぇ!」

億泰はただ呆然としていた。
一言で表すのなら、

『あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
 『おれ居眠りの階段を登っていたと
 思ったらいつのまにか爆発が起きていた』
 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
 おれも何をされたのかわからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 二股だとか死亡フラグだとか
 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…』

という感じだ。
暫くして頭の再起動が終わり、教室を見渡す。
前の方でシュヴルーズ先生が倒れて痙攣していた。
歯が全部折れているような気がした。
マリコルヌが岩の下から引っ張り出されてた。
誰の使い魔だかわからないが何処かで見覚えのある人面岩だ。

ルイズはそんな阿鼻叫喚を意に介さずにハンカチを取り出すと、
煤で真っ黒になってはいたが涼しい顔でこう言った。

「あら、おかしいわね?」

当然、その一言に他の生徒達がプッツンする。

「おかしいのはお前の魔法だ!」
「おかしくないって言うなら、
 このマルコメルくっつけて治してよ!」
「マ・ルコ・メル!マ・ルコ・メル!」

状況が殆ど分からないが、億泰にもこれだけは分かった。
ルイズがなぜ『ゼロ』なんて呼ばれているのかが。


マリコルヌ&ミセス・シュヴル-ズ
→治療を受けて全治数日。

他の生徒
→軽傷or無傷

ルイズ&億泰
→掃除を命令される

授業
→中止


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