ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

杖をとりかえしにいこう! その③

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「ジョルノ、ジョルノォ……ごめ、ごめんなさい……私のせいで、ごめんなさい……ック、ヒック」
「ル、イズ……」

事態を理解していったルイズは、僕に手をまわしたままあやまりだし、ボロボロと泣き出してしまった。
よほどショックだったようらしい。ここまでなるとは本人も思っていなかったのだろう。
そういえば以前、あの好色マンモーニに不覚にもやられそうになったときも、彼女はこうして泣いてくれた。
憎まれ口しか叩かない彼女の顔は、いまや涙とか鼻水で、あるいは罪悪感と後悔の念でぐちゃぐちゃだった。

「大丈夫です……ルイズ……今、Gエクスペリエンスで部品を作り直しますから……複雑骨折なので……
すこし、治るのに……時間がかかるだけです」
「そ、そんなこと、い、い、言ったって……ヒック、痛いのは……痛いでしょう……」
「ルイズ……君は……」
「ジョルノ……ごめんなさい……ごめんなさいっ……呼ばれたくなかったから……ゼロの、ルイズって……
フーケを倒、せば、誰もっ…グスッ…言わなくなるって……だから……」

ルイズは止まらない涙を袖でぬぐいながら、しゃっくり交じりに独白する。
そんなルイズ越しに、僕はタバサたちの様子を確認する。
ゴーレムは龍が目障りなようで腕を振り回したり石を投げたりしているが龍はそれを交わし続ける。
しかしタバサ側もゴーレムを破壊する手段は持っていないようで、時間稼ぎが限度、と言ったところだった。
つまり今が危険なことに依然変わりはない。

視線をルイズに戻す。
ルイズはまだ懺悔を続けている。
折れた足はまだ治るのに時間がかかる。やつを倒すには……彼女の助けが必要だ。

「ルイズ……聞いてください」
「私、私……」
「ルイズッ!!」

強く彼女の名前を呼ぶ。ルイズはビクリと身を震わせて僕を見る。その目は怯えているように見えた。

「聞いてください……ルイズ……今あなたがやることは、女々しく泣くことでも懺悔でもないッ。
あなたがすべきは『覚悟』だ!……覚悟は、絶望の荒野を切り開く……唯一の光です」
「でも……」
「しっかりするんですルイズ。貴族は敵に背を向けないのでしょう?姫君の恩を返したいのでしょう?
大丈夫……策はあります。足もまだ動かせませんが……痛みは引いてきました。
あなたが『希望』です……あなたの覚悟が! ゴーレムを、フーケを打ち破るんだッ!!」

本当はこんなことしてる場合ではないのだけれど、僕の話をルイズはじっと聞いていてくれた。
不意に、ルイズが袖の濡れていない部分でぐいっと強く顔をこすった。
目の周りは真っ赤だったが、その目はもう女々しい彼女のそれじゃあない。
いつも僕に怒鳴りつけるときのような。いつもの彼女のような。
ゼロと呼ばれても挫けない、いつだってない胸を張って自分の誇りを見失なわない
彼女の姿が、そこにはあった。

「……わかった。どうすればいいのジョルノ」

ルイズが僕に尋ねる。僕は視界のはずれのあるものに目をやり、答える。

「あれです。あなたの持ってきたあの武器を、持ってきてください」
「あれって……『破壊の杖』? でもあれ、壊れてて使えなかったのに……」
「とにかく、持ってきてください。触れれば、なんとかなるはずです」
「わ、わかった」

ルイズが急いで持ってきた『破壊の杖』 それは間違いなく、ロケットランチャーであった。
この魔法の世界にあるはずがない、僕の世界の武器。
使い方は……以前、映画で見たことがあったせいか、意外とあっさりわかった。
それを手元に引きずり寄せ、ロックを解除する。弾はまだ残っていた。

「これを構えてください。そして、取っ手の引き金を引けば、
鉄砲の要領ですさまじい破壊力の砲弾が発射されるはずです」
「すごい、それならあいつも倒せるかも……ってええ!! 私が、やるの……?」
「ええ、僕はこんな体ですし、大丈夫です、僕がそばにいます。それとも……今更怖いんですか?」
「なっ……やるわよ、私を誰だと思ってるの!? ゴーレムを倒せるんだから、これぐらい楽勝よ!!」

その口調はもはやいつものルイズのそれだった。ちょっとからかえばすぐ逆上するあのルイズ。
やっぱり彼女はこうでなくっちゃあいけない、と再確認する。

「構えましたね……そろそろやつが来ます。準備はいいですか!?」
「うん」

ゴーレムはタバサたちの龍を追うのを一旦あきらめ、確実につぶせる僕たちに標的を変えた。
僕の前で背を向け、ランチャーを構えるルイズの肩が小刻みに震えるのがわかる。

「『ゴールド・エクスペルエンス』ッ」
「ひゃっ」

Gエクスペリエンスの能力で、周囲の石に生命を与えた。
生命は樹となって、彼女の周りを砲台のように囲んでガッチリと固定した。これで女の子の力でも
ロケットランチャーの衝撃に耐えられるだろう。

「言ったでしょう。僕がそばにいるって、来ましたッ!」

ゴーレムは僕たちを確認すると、僕の足を折ったときのように、僕らに向かって足を振り上げる。

「このっ……デカブツ~~ッ。よくも私の使い魔を傷つけてっ!許さないッ
吹っ飛べ―――――ッ!!!!」

カチッと言う音とともに、耳をつんざくような爆音が鳴る。
続いて砂塵が舞い、少し遅れて爆発音が鳴り響いた。


数分前……
上空にて

「ああもう、これじゃラチがあかないわ」

アクロバットに飛行する龍に乗るキュルケは、眼下のゴーレムを睨んで言った。
先ほどからゴーレムの攻撃が当たらないように、なおかつ逃がさず出来ればしとめるように、
火や風の魔法を当て続けているのだが、一向に効く気配がなかった。

「ルイズたちも大丈夫かしら……ジョルノ、怪我してるみたいだったけど」

これだけ離れた距離では、ルイズらの様子を細かく確認するのは無理があった。
タバサも何とか隙を見て二人の救出を試みたが、今の距離ではゴーレムが先に彼らに追いついてしうだろう。
彼女らが行動を起こさない限り膠着状態は終わらない。

「? ね、タバサ。なんかくるわ」

キュルケが指差した先を見ると、確かに何かがこちらへ向かって飛んでくるのが見えた。
小さいので姿はよくわからない。キュルケは念のため杖を構えたが、それは敵ではなかった。小型の鳥であった。
鳥はキュルケの前で急停止し、翼をばたつかせながらその場にとどまった。
不思議そうに見るキュルケたちの前で、おもむろに口を開くと

「ジョルノ デンゴン キケン ハナレロ」

と、甲高い声で何度もその言葉を繰り返した。

「これ、ジョルノが作った生物よ。離れろって……」
「危険……」

その意味を瞬時に察知したタバサは、龍をゴーレムから遠く離す。
龍が斜め上に上昇すると、あっというまに視界のゴーレムが小さくなる。
ゴーレムはしばらく龍を見ていたが、振り返るとルイズらに向かって歩き出した。

「ちょっとタバサ、あのままじゃ二人が……」
「待って」

あわてるキュルケをタバサが手で制した瞬間、
ドゴオオオオオオオオオッ!!
という爆音が二人を襲った。

「な、何、今の……」
「破壊の杖……」
「そっか、これが……すっごい。これならさすがのゴーレムでもバラバラでしょ」

キュルケは期待をこめて砂塵が消えるのを待った。


「うう~ん」
「ルイズ、大丈夫ですか」
「たいしょうふしゃ、ないかも~~~」

ルイズは樹に支えられているものの、先ほどの衝撃で目をナルトのごとくぐるんぐるんさせていた。
しばらくそのままだったが、数回頭を振って平衡感覚を取り戻したルイズは、
そろそろ立ち上がれそうなぐらいに回復した僕に振り返って言う。

「で、でも。これでゴーレムも倒せたわよね。ジョルノ、これで……」

その言葉をさえぎるように、ドンという重い音が響いた。
妙にたるんだ雰囲気が、一気に凍りついた。

「う、嘘……でしょう」

しかしその重低音はゆっくりと、しかし規則正しく刻まれる。
嘘だ、とルイズがもう一度言った。
砂塵が晴れていくほどに、それは真実であることを嫌がおうにも伝えた。

ゴーレムは、倒されていなかった。

周囲の岩を吸収して、元の姿を再生させつつあった。

「そんな……」

ルイズの声は震えていた。

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