ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-20

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匿名ユーザー

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「くそ…左腕の『部分』はもう使い物にならねぇな…」
言いつつ左腕を見るが、左手首から肩にかけて完全に焼き焦げ明らかに再起不能である。
…もっとも再起不能なのはスーツであり左腕は当然再起可能だがやはり傷は重い。

左腕の焼き焦げた部分を引き千切る。どのみちもう使えないのだから破った方が早い。
破った下は燦々たるものだ。特に電流が奔った近くは焼き焦げた布に爛れた皮膚がヘバリ付き持っていかれている。Lv3の火傷は伊達じゃなあい!
「兄貴ィ…大丈夫か?」
「…痛そう」
さすがの一人+一振りも心配そうに怪我を見るが、『たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようともなッ!』が信条のプロシュートだ。当然この程度で参ったりはしない。
手早く荷物から布を取り出し腕に巻きつけ、さらにその上にタバサが作った氷を当てさらに布を巻く。応急的なものだがやらないよりはマシだ。
だが、やはり直触りを発動したというのに白仮面の男が老化しないというのは納得がいかない。
試しにグレイトフル・デッドでデルフリンガーの刀身を掴み直触りを仕掛けてみる。
「GIYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!NO!兄貴!NO!それで掴まれると老化すんだろォーーーーーー!?」
ズキュン!
「終わった…さよなら…俺の活躍シーン………ってあれ…なんともねぇ」
「生物じゃあないんだから当然か…だとするとあの仮面はどういう事だ…?ゴーレムってわけでもないだろうしな」
「自我を持つゴーレムならいるかもしれねぇが、魔法を使ってきたからにはありゃ確実に人だぜ兄貴」
こればかりは幾ら考えても答えが見付からない。無機物でないなら生物。生物なら老化する。だがあの仮面は老化しなかった。

「…浮いてる」
考えが纏まらずデルフリンガーを掴んだままだがスタンドが見えないタバサが不思議そうにそれを見る。
「これ他のヤツには見えてないのか?」
「少なくともオレの世界じゃあ同じ能力を持つ『スタンド使い』以外は見る事ができないな。物質と一体化してるやつは別だが」
「…兄貴がいた場所はこんな、上半身の下から触手が出て体中に目があって紫色のヤツばっかか?」
「スタンド使いによって違う。人型、群体、まぁ色々ある。」
だが『上半身の下から触手が出て体中に目があって紫色』、これを聞いた瞬間タバサの顔色が青くなる。
『雪風』のタバサ:嫌いなもの ― 幽霊
多分見えていたら気絶してる。タバ茶が生産されるかどうかは各人の想像に任せるッ!

「オメーと同じで意思を持つ刀のスタンドってのもあったらしいな。今はどなってるか知らねーが」
もちろん我らがアヌビスの事であり、一説によると折られた刀身を再加工されあるスーパーコックの包丁になっているらしいとか。
顔が青いタバサ尻目にスタンド談義をデルフリンガーにしている間にシルフィードが桟橋の上空に着く。
だが眼前に写るのは一本の大樹。そしてその枝の先にぶら下がるようにして船が係留されていた。
「………ギアッチョがここ来たらキレっぱなしだぜ?おい」
もはや何も言うまい。ここまで来たら何でもアリだとそう思う。
シルフィードが高度を下げるとプロシュートが飛び降り、アルビオン行きの船の場所を適当な船員を探し出し問いただす。
「アルビオンってとこに行く船ってのはどれだ?」
「さっき出港したばか…グェェ!」
そう言われると同時に船員の首を思いっきり掴んでいたッ!
「どういうこった…?朝にならないと出港できねーって聞いたぜ…?」
ギリギリと不幸な船員の首を締め付ける。その手から脱しようともがくが離れない。尋常ならざる力だった。
「…がッ!…貴族…が…風石の分を…補う……と言って…出港が早まった……」
そう聞くと首から手を離す。
「チッ…仕方ねーな」
それだけ確認するとシルフィードの元へ戻る。後ろで船員が悪態を付いてるのは気にしない。

「船はもう出たようだな…。こいつで後を追えるか?」
コクリとタバサが頷き手早くシルフィードに乗り込み上昇する。
ただシルフィードだけなら船を上回る速度は出せるが人が乗っている以上振り落とされない程度の速度で追跡する事になる。船の速度と同程度というとこだ。
そのまま気流に乗りアルビオンへと飛行を開始する。
数時間経過したが何もする事は無い。正直言えば暇だった。
タバサの方はさすがに深夜というだけあり眠そうにしていたが、巡航速度とはいえかなりの速度だ。シルフィードの上で下手に寝れば落ちかねない。
「……落ちねーようにしといてやるから寝てろ。肝心な時に戦力外になられても厄介なだけだ」
暗殺という仕事柄1日や2日の徹夜など別にどうという事は無い。問題なのは暇な事だけだ。グレイトフル・デッドでタバサを支えるが
支えられている方は『上半身の下から触手が出て体中に目があって紫色』という幽霊にも近いものという認識が頭から離れないらしく若干顔を青くしているが
やはり限界点がきているのかそのまま眠り込んだ。

陽光でタバサが目を覚ますが『上半身の下から触手が出て体中に目があって紫色』の
『グレイトフル・デッドのような幽霊』に追い回されていた夢を見たためまだ顔が青かった。
プロシュートの方は昼食のパン片手に興味深そーに前方に巨大な大陸を見ている。
昨日『何でもアリ』と思ったばかりだが即日撤回だ。さすがにこの巨大な質量が中空に浮いている事には驚嘆せざるをえない。
視界が良好になり前方がよく見渡せるようになっているが、桟橋で見た形の船が一回り大きい黒い船に曳航される形で進んでいるのを見付けた。
「追いついたみたいだが…あの黒い船はなんだ?」
「旗が揚ってない……十中八九『空賊』」
「拿捕されたってわけか。…メンドクセーな。黒い方の上にいけるか?」
タバサが2~3シルフィードに呟くと黒い船の甲板上に相対速度を合わせるように飛行する。
「何かあったらすぐ退いて知らせに行け」
それだけ言うとデルフリンガーを掴み甲板へと飛び降りた。
(広域老化は使えねーな。列車と違って操舵手を老化させれば墜落は確実か。左腕がこの状態だと右手塞いだまま直に拘るのは逆に危険だな)

5分程時間をバイツァ・ダストしてこちら捕虜三人組
空賊船の頭に引き合わされたのだが問答を繰り返しているうちに話が意外な方向に発展していた。
「トリステインの貴族は気ばかりが強くてどうしようもないな……だがそれがいい」
頭がそう言い放ち笑いながら立ち上がる。ルイズ達はこの豹変っぷりに戸惑うだけだ。
「失礼した。名乗らせて頂く。アルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官…もっとも本艦『イーグル』号しか存在しない無力な艦隊だが…」
言いながらカツラと眼帯を取り付け髭を剥ぎ堂々と名乗った。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・デューダーだ」
それを見たルイズは半ば放心している。キュルケに至っては何時もの悪い虫が出たのか口説こうという気持ちが鎌首を擡げているが
さすがにこの状況下では空気を読まざるをえない。唯一ワルドのみ興味深そうに皇太子を見据えている。
「その顔だと空賊風情に身をやつしているのか?というところか。敵の補給線を断つのは戦いの基本
     それに奪った物資がこちらの補給物資にもなる。空賊を装ったゲリラ活動というところかな」
依然として呆けているルイズに説明するようにウェールズが言うが当のルイズはまだ呆けたように突っ立っている。
「トリステイン王国魔法衛士隊、グフィフォン隊隊長ワルド子爵。アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました」
こんな所で目的の人物に会えると思っておらずテンパっていたルイズに変わりワルドがそう言った。
「そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢とその友人アンハルツ・ツェルプストー嬢にございます」
だが、ルイズが確認の為に預かった水のルビーとウェールズが付けている風のルビーを近付けた虹色の光が振りまかれた時部屋の中に兵士が飛び込んできた。
「し、失礼します!」
「今、大使殿達と大事な話をしているんだが何かあったのか?」
「申し訳ありません!ですが…て、敵襲です!」
それを聞いた瞬間ウェールズの目が鋭くなる。
「敵戦力は?」
「敵兵力は…唯一名であります!」

「一人だと…?余程の手練という事か…!」
敵船に乗り込み一人で白兵戦を仕掛けてくるという事は空賊を相手にした戦い方ではない。撃沈さえすればいいのだ。
一人という事はスクウェアクラスのメイジ。しかも目的は皇太子である我が身の捕縛。瞬時にウェールズはそう判断した。
「大使殿、済まない、敵の目的が私であるかもしれない以上ここが戦場になるかもしれない」
「わたしも薄汚い反乱軍に屈したりいたしません。手伝わせて頂きますわ」
「いいぞルイズ。さすがは僕の花嫁だ」
「一人で襲撃してくるだなんて随分とナメられたもんじゃない」
それだけ言うとルイズ、ワルド、キュルケが返してもらった杖を握った。


一方こちら甲板に飛び降りたプロシュートだが当然の如く船員から手厚い歓迎を受けていた。
もっとも相手は一般兵であり印の効果が発動しているプロシュートの相手にはならずほぼ一方的に攻撃を与えているのだが。
「兄貴ィ!こいつら止め刺さなくてもいいのか!?」
「再起不能にすれば問題ねぇからなッ!」
右の敵を右手に持ったデルフリンガーで斬りつけ左の敵はグレイトフル・デッドで殴り抜ける。負傷しているとはいえ殴るだけなら問題はない。
船員を老化させ船長室の場所を聞き出す。大抵の集団は頭を押さえればそれでカタが付く。
稀にナンバー2が頭の座を狙い反逆しようとするがそれはそれで問題無い。その場合はナンバー1を解放すれば後は勝手に自壊してくれる。
狭い通路と細い階段を駆け上がり後甲板にある船長室へ向かう。
途中メイジにも遭遇したが通路の細さを利用し船員を盾にしつつ殴り抜け排除する。
船長室とおぼしき扉の近くまで行くがさっき吹っ飛ばしたメイジの一人が部屋の中に駆け込もうとしている。当然それを見逃す程甘くはない。
「逃がしはしないッ!」
その言葉と同時にグレイトフル・デッドで頭を思いっきり掴み、そのままの勢いでドアを蹴破った。


「早い…もう来たみたいだな…!」
時間が経つにつれ騒音と悲鳴が大きくなり当然部屋の中の四人もそれに比例し緊張感が高まる。
敵船に一人で乗り込みそれを打ち破れる程の敵。一般的な価値観からすればそれ相応の手練が相手という事になる。
「…がし……ないッ!」
だがルイズの耳に微かだが声が聞こえた。
そしてその声を聞いた瞬間この間見た夢の内容がフラッシュバックされる。
『そ、それじゃあ精霊様!一つだけ聞きたい事があります!
    わたくし…使い魔が問題を起こし続け酷い有様です…この先ずっと問題を起こす使い魔なのでしょうか?』
『もぐ、もぐもぐ…まーねぇ。ブフゥ~~』
ディ・モールト嫌な予感がし自分の顔が青ざめていくのが理解できたッ!

ドグシャァアアア
その音と共にドアが蹴破られルイズ以外の全員が身構えるが次にその場の全員が見た物は―――
右手にデルフリンガーを持ち左腕に布を巻きつけその手にもがいているメイジの頭を無造作に掴んだ御存知プロシュート兄貴だッ!
「オレとしては…手早く見つかったから楽でいいんだが、この場合はどうすりゃあいいんだ?」
若干拍子抜けしたような声でそう言い放つが、ルイズとキュルケは半分放心しているが
もちろんそんな事しらないウェールズの方は殺る気満々で杖を構えている。
「貴様…貴族派か!」
状況がどうあれ自分に杖を向けているヤツなら排除対象だ。
そう判断し魔法の詠唱が終えられるまでに距離を詰めグレイトフル・デッドで杖を奪う。
そのまま足を払い、背を取り平伏させ頭を踏みつけつつ頭の先にデルフリンガーの刃を当てながら
「攻撃してくるって事は…敵だなテメー」
『敵か!敵かッ!敵かッ!敵かッ!くらえ!くらえッ!おらっ!おらっ!おらっ!!』と言わんばかりに蹴りを入れようとするが
一瞬早く正気に返ったルイズに止められた。

「で、でで殿下に何やってんのよ!このバカ使い魔ーーーーーーッ!!」
「殿下…?説明しろ。空賊の船に何でそいつが乗ってんだ」
その後プロシュートにこの船が空賊を装った王軍の船であるという事を説明するのに10分
ウェールズにプロシュートが自分の使い魔で主人の乗っている船が空賊に拿捕されたと思いこの船を襲撃したと説明するのに15分
甲板上空で浮いてるタバサを呼ぶのに7分。計32分を要する事になる。

「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔はかなりの使い手のようだな…単身で軍船に乗り込んでくるとは」
苦笑いしつつさっきまで踏まれていた後頭部をさすりながらプロシュートを見る。
「…申し上げありません殿下…ってあんたも謝りなさいよ!」
「知ったことか」
ルイズは土下座せんばかりに頭を下げているがプロシュートの方は意にも介していない。
「君のような猛者が我が親衛隊に10人ばかりいれば、今日のような惨めな戦局になってはいなかっただろうに。してその密書とやらは?」
ルイズが一礼し手紙を手渡すとウェールズが慎重に封を開けそれを読みはじめる。
真剣な顔で手紙を読んでいたウェールズが、そのうちに顔を上げルイズ達に問うようにして聞いてきた。
「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い……、従妹は…」
ワルドは無言で頭を下げ、肯定の意を表しすと再び視線を手紙に戻すと一文字一文字噛み締めるかのように読み、それを最後の一行まで終えると、微笑んだ。
「了解した。姫の望みは私の望みだ。…だが今すぐ手紙を返したいとこなのだが、今手元にはない。
   万が一この船が拿捕されでもして手紙が貴族派に渡っては面倒な事になるからね。多少面倒だがニューカッスルまで御足労願いたい」

雲に紛れるようにして海岸線を進むがその道中、プロシュートがスーツの左腕を失い布を巻いている事に気付いた。
現れると同時にウェールズの頭を踏ん付けていた事にテンパって今まで気付かなかったのだ。

「…どうしたのよ?それ」
「大したこたぁねー」
「あんな大事そうにしてた服を破ったなんて事が大した事ないわけないじゃない。見せなさい!」
プロシュートが舌打ちしながら布を外す。
初期の段階に氷で冷やしていたため水ぶくれこそ起こしていないが手首から肩にかけてミミズ腫れが続いている。
「…どうしたのよこの傷!」
「オレの不始末だ。オメーが気にする事じゃあねぇ」
「『ライトニング・クラウド』か…本来なら命を奪う魔法だが、よく命があったものだな」
傷の正体をワルドが明かすが一つプロシュートに疑念が生まれる。
(こいつ…どうしてオレが食らった魔法の名前が分かった…?雷を生む魔法がそれしかないっつーのなら分かなくもないが)
「…ラ・ロシェールの船に乗るまでワルドはオメーの近くに居たのか?」
小声でワルドに聞こえないようにしてルイズに問う。
「どうだっていいじゃないそんな事。今は傷の手当が先よ…!」
「いいから答えろ」
「…ずっと側に居たわよ。これで満足?満足したなら治療を受けてちょうだい…」
(…考えすぎか。そもそもオレが一階に降りるまでの僅かな時間にゴーレムの肩から酒場まで行けるわけねーしな)

ルイズが水のメイジを探す。…が水のメイジは居るには居たがプロシュートが思いっきり吹っ飛ばし行動不能に追い込んだため治療不可である。
したがって本格的治療はニューカッスルに着くまで待たねばならなかった。

プロシュート兄貴 ― スーツ左腕部廃棄


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