ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

宣言! 追撃の仮面メイジへ

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宣言! 追撃の仮面メイジへ

「僕のクイーン・ワルキューレが敗北するとは……。
 もう駄目だァー! 絶体絶命だァー! 僕達はここで討ち死にだァー!」
頭を抱えて悲鳴を上げたギーシュは、その場にへたり込むと夜空を見上げた。
「姫殿下! モンモランシー! ケティ! 終わったよ(僕の人生が)……」
キラーン。お星様の中で三人の美少女が微笑んでいた。
現実の彼女達は微笑んでないけれど、少なくともギーシュの心の中では微笑んでいた。
心の中といっても願望とか妄想とかそういう部分で微笑んでいた。
そんな彼の頭が後ろからゴンッと杖で叩かれる。
「痛い。何だね?」
振り返るとタバサが指差してきた。
「薔薇」
そして物を振る仕草を見せる。
「花びら。たくさん」
「花びらがどーしたね!」
意味が解らず問い返すと、キュルケに耳をグイイッと引っ張られた。
「いいからやる! タバサの言う通りにすれば大概うまくいくのよ!」
仕方なく、理由も解らないままギーシュは薔薇を振って大量の花びらを舞わせた。
タバサが魔法を唱えると、風に乗りフーケのゴーレムに絡みつく。
「花びらでゴーレムを飾りつけでどうするのかね! ああ! 勝利の祝福かい!?」
「錬金」
「錬金?」
オウム返しにすると、タバサはコクンとうなずいた。
「なぁるほど、さすが私のタバサ。グッドアイディアね」
「キュルケ、いったい……」
「何に錬金すればいいか当ててみせるわよ? ズバリ、油ね」
タバサが再びうなずく。
「よし! 解ったわねギーシュ、作戦は傭兵相手と同じよ!」
「同じ? ……なるほど、やってみよう」



勝利を確信していたフーケは、ゴーレムに絡みついた花びらが油に錬金されるのを見て、ようやく正気に返り……『ゾッ』とした。まさか、こいつ等、何て事を思いつくんだ!
当然というか微熱のキュルケの出番がやってくる。
杖をかざして炎球を飛ばしてくる。
それはもう色鮮やかに、フーケのゴーレムは赤に包まれて轟々と燃えた。
咄嗟に地面に飛び降りて逃げたフーケだが、ゴーレムは炎に耐え切れず自壊した。
それを見てまだ残って戦いの行く末を見ていた傭兵達は全員逃げ出した。
「勝った……? たかが錬金で、まさか、あのフーケを?」
ギーシュは自分達の勝利が信じられないといった様子だ。
作戦は理解した。何とかなるかもと思った。でもこんな大勝利をしてしまうとは。
「解った? 力が上回る相手に力で対抗しようと駄目よ。
 しかも力も大きさも下回るゴーレムで戦うなんて愚の骨頂。
 タバサみたいに知的にクールに対策を考えて実行するのよ」
キュルケの講義を聞き、ギーシュはうんうんと首を縦に振った。
フーケのゴーレムに負けないようにと新しく作ったクイーン・ワルキューレは、呆気なく潰されてやられてしまったというのに、基礎でしかない錬金の魔法を活用する事でこんな結果を生み出せるとは。
ギーシュはキュルケとタバサが強い理由を理解した気がした。
それはドットとトライアングルの差ではない。
もっと別の種の強さの違いだった。
「くっ……よくも二度までも! この土くれのフーケに! 土をつけるとは!」
崩れゆくゴーレムの横で、フーケはギリリと歯を食い縛り後ずさりした。
ここは『退く』しかない。
あのゴーレムには自分の魔力がほとんどすべて込められていた。
それをあんなチャチな方法で倒されたのは屈辱の極みだが、
これ以上戦っても恥の上塗りになるだけだ。
フーケはローブをひるがえし、夜の街へと消えていった。
こうしてギーシュ達の勝負は呆気なく決着がついた。そして承太郎達は――?

月明かりのおかげで夜道は明るかった。
ワルドはとある建物の間の階段に駆け込み、登り始めた。
空飛ぶ船らしき存在を確認している承太郎は、
桟橋の位置をだいたい予測していたため特に驚いたりはしなかった。
長い階段の上、丘に出ると、巨大な樹が四方八方に枝を伸ばしているのが見える。
その枝に船が木の実のようにぶら下がっているのだ。
「なるほど、あれが『桟橋』か」
ワルドは足取りを止めず樹の根元まで行き、中の空洞に入った。
そこはホールのようになっており、アルビオン行きの船の階段を見つけてさらに登る。
途中の踊り場まで進むと、承太郎は背後から追いすがる足音に気づき振り返った。
そいつは承太郎の頭上を跳び越しルイズの背後に立つ。
フーケと一緒にいた仮面メイジだ。
「ルイズ!」
振り向いたルイズを一瞬で仮面メイジは抱え上げジャンプした。
『射程外』だ。
承太郎が対策を一瞬で講じようとしている最中、ワルドはすでに詠唱を終えエア・ハンマーを放っていた。
仮面メイジはルイズを手放し吹っ飛ばされる。
「ッ!」
その光景を承太郎は見た。まるでルイズを傷つけまいとするような動き……?
そしてワルドは婚約者のルイズが傷ついてもいいような動きをしていた。
仮面メイジがルイズを盾にしていたら、もしくは手放さなかったら……。
ワルドは空中でルイズをキャッチし、仮面メイジは身体を捻って階段に飛び乗る。
そして承太郎と対峙した。
背格好はワルドと同じくらいで、黒塗りの杖を構えている。
「……スタープラチナ」
承太郎の隣に現れる半透明の戦士。それを見ても仮面メイジは動揺しない。
フーケの相棒だ、当然スタープラチナの事は聞いているだろう。
承太郎が詰め寄ろうとした瞬間、仮面メイジは杖を振った。


仮面メイジの頭上の空気が冷え、風に流れて承太郎にも冷たさを実感させる。
水の魔法? いや、風の可能性もある。水と風を足した魔法か?
仮面メイジはルーンを唱える。
そこで承太郎の選択肢はふたつ!

①――突っ込んで、詠唱を終える前にスタープラチナを叩き込む。
②――警戒してどんな魔法を使うのか確認し、防御および回避行動を取る。

先手必勝! 承太郎はスタープラチナを叩き込もうと突進した。
「オラァッ!」
凄まじい速度で放たれる一撃を、仮面メイジはバックステップで回避。
仮面メイジが回避行動を起こしたタイミングは、承太郎が足を踏み出した瞬間。
あまりにも早く的確な判断だ。フーケから聞いただけでここまで的確に対応を?
「ライトニング……」
最後の詠唱を終えようとする仮面メイジ。
承太郎は咄嗟に自分の前にスタープラチナを展開し拳を構えた。
「クラウド!」
空気が震え、バチンと弾けるような音がした刹那、男の周辺から稲妻が伸びる。
(――速いッ!)
タワー・オブ・グレイをも凌駕する雷光の速度を回避するなど不可能だった。
己が身の盾としてスタープラチナは電撃を受ける。
「ぐおおッ!」
身体中に焼けるような痛みが走る。電気が身体を駆け巡る。
スタンドへのダメージは本体へのダメージ。
もし耐久力に優れるスタープラチナで稲妻を受けていなければ承太郎は死んでいた。
崩れ落ちる承太郎を見てルイズが悲鳴を上げる。
それを聞いてワルドは舌打ちをすると、再びエア・ハンマーを放つ。
仮面メイジは再び吹っ飛ばされ階段の下へと落ちていった。


「使い魔君! 大丈夫かね!?」
ワルドが駆け寄り、承太郎が息をしている事を確認して眼差しを厳しくする。
「ぬっ、うう……今のは?」
「今の呪文は『ライトニング・クラウド』という強力な『風』系統の呪文だ。
 しかし……本来なら命を奪うほどの呪文だぞ?
 どうやら君の能力が盾になったおかげで命拾いしたようだな……」
承太郎はギリリと歯を食いしばった。
メイジとの戦闘経験が浅いとはいえ、自分は間違いなくあの仮面メイジに敗北した。
数々のスタンド使いを退け、DIOを倒したプライドに傷をつけられた気分だ。
戦い終えて解ったが、奴はDIOに比べれば遠く及ばない相手。
そんな奴に敗戦を喫したのだ。悔しくない訳がない。

「野郎は……この空条承太郎が直々にぶちのめす」

そう宣言して承太郎は立ち上がった。
稲妻による火傷が痛む。だが彼の足はしっかりとしていた。誇りが彼を支えていた。
「ほう……『奴』を『君』が倒すというのか」
含みを持った言い方をしてワルドが笑う。
「それは……楽しみだ。あいつは相当の使い手のようだしね」
「…………」
「応援しているよ……。まあ、次現れた時も、僕が奴を退かせるかもしれないが」
自信たっぷりに言ったワルドは、ルイズの手を引いて階段を再び登り始めた。
「あっ、ジョータロ……」
ルイズは承太郎に声をかけようとしたけれど、何と言えばいいか解らず、口を閉じた。
そして承太郎はワルドの背中を睨みつけると、負傷した身体で後を追いかけた。

桟橋に到着したワルドは、船の船長と交渉してアルビオン行きの船を出港させた。
船の中で傷の手当てをしながら、承太郎はラ・ローシェルの街を見下ろす。
スタープラチナの目で探したが、ギーシュ達の姿は見つからなかった。
無事だといい。そう思いながら、承太郎は身体を休める。次の戦いに備えて。

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