ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-19

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匿名ユーザー

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「……ズ………さい……ゥ~…」
寝ているルイズの頭に何か声が聞こえるが寝起きが壊滅的に悪いルイズだ。当然この程度では起きはしない。
「…イズ……なさい……フゥ~…」
今度はさっきよりも大きく、そしてはっきりと聞こえた。妙に重圧感のある声だったのでさすがのルイズも目を開ける。
「ルイズや…起きなさい…ブフゥ~~」

辺りを見回すが何も居ない。だが景色には見覚えはあった。生まれ故郷のラ・ヴァリエールの屋敷の中庭だ
そして何故かベッドがそこにあった。
何故ベッド?とルイズが頭に「?」マークを浮かべていると突如
グォォォオオォォ
という音と共にベッドに四肢と頭が生える。
ベッドが突然縦も横も巨大な男になったのである。正直言ってビビる。そりゃあジョルノだってビビる。
「……あんた…誰?」
恐る恐るサモン・サーヴァントをし平民を召喚した時のように目の前の男に問うがその返答は実に意外だったッ!
「ブフゥ~~…私はあなたの杖の精です…ブフ~~~」
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」
そう叫び一目散に逃げる!自分の杖の正体がこんなのだったのだから半泣き、いやもうマジ泣きだ。
「ブふぅ~逃げないで、逃げないでっていうか引かないで。ブフ~~~
   今日は私…ブフゥ~~~爆発を起こしてもめげずに頑張るあなたを応援しにまいりました。ブフゥゥゥ~~」
さすがに応援という言葉にルイズも立ち止まる。
「さぁこの精霊様に何でも言ってみさないブフゥゥ~~っとね」
「そ、それじゃあ精霊様!一つだけ聞きたい事があります!
    わたくし…使い魔が問題を起こし続け酷い有様です…この先ずっと問題を起こす使い魔なのでしょうか?」
さっきまで思いっきりドン引きし逃げようとしていたのに現金なものだが、当の精霊様の返事は

「もぐ、もぐもぐ…まーねぇ。ブフゥ~~」
クラッカーを食べながらそう即答した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
もうさっきよりもマジ泣きしながら逃げ回る。顔から色んな汁とか出しながら。
「ま、待ちなさいルイズ!…ブフゥ~今の無し、ノーカン!ノーカン!ブフゥゥゥ」
焦りつつも自分の指ごとクラッカーを食べる精霊様がマジ泣きして逃げるルイズが思わず足を止める言葉を吐き出す。
「ルイズ…ブフゥ~~よくお聞き。寝ている場合じゃあないのよ。ブフーーー
    今、君たちにディ・モールトデンジャーが迫っているのだよ。ブふーー」
「……え?……ディ・モールトって何ですか?」
「ブフゥ~~…『非常に』ってこと」
「………デンジャーって?」
「『危険』なこと。ブフ~~~」
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」


「寝ながら何喚いてんだ…ウルセーから起きろ」
目を開けると悪夢の元凶がそこに居た。
覗き込むようにして起こされたため思わず顔が赤くなる。
「……あんたが原因よ」
「そいつは悪かったな」
もちろん、クラッカーの歯クソほどにも悪いと思ってはいないのだが。
「…ってなんであんたがここにいるのよ?」
ドアには鍵が掛かっており鍵を持っているワルド以外入ってこれないはずだ。
「人がベランダで月見ながら酒飲んでるとこにアホみてーな叫びがしたから来てみればっつーわけだ」
よく見れば窓が開いている。つまりそこから入ったという事だ。

「不法侵入じゃない…ワルドに見つかったらどうするのよ!?」
「使い魔扱いしといて今更でもねーだろうが」
「…実際、使い魔なんだから仕方ないじゃない」
それに返事せずに部屋から見える普段とは違う一つになった月を見る。
「大きさは違うが…一つだけだとイタリアで見るヤツとあまり変わんねーもんだな」
もっともその心中は(ギアッチョがこれ見てりゃあ間違いなく『引力を無視してんじゃあねぇ!コケにしやがってッ!ボケがッ!』とブチキレてるだろうな)であるが
ルイズの方はそれを別に受け取っていた。
「…イタリアって所に帰りたいと思ってるの?」
「…戻る手段がありゃあな。あっちではオレの残りの仲間が命を賭けて戦っている
   オレが生きてるのに戻らないってわけにもいかねーからな。だが、今のとこ戻る手段が無い以上オレの任務はオメーの護衛だ」
「……悪かったわよ」
「何がだ?」
「…わたしが『ゼロ』のせいで、そんな大事な事してる時にこっちに呼び出しちゃって」
一瞬訪れる気まずい沈黙。だがそれを打ち破ったのはプロシュートだ。
「言ったろーがよォーーーオメーに召喚されてなけりゃあオレも死んでたってな
    それにだ。オメーはまず『自信を持て』…『自信』を持っていいんだぜ!オメーの爆発をよォーー」
「…それって褒めてるのか貶してるのかどっちなのよ?」
「あの爆発をマトモに食らえば人一人軽く消し飛ばせるからな」
「ok貶してるって事ね?ちょっとそこに座りなさい。ご主人様を貶すって事は躾が必要なようだから」
どこからともなく鞭を取り出すが依然としてプロシュートは冷静だ。
「今のでキレるってギアッチョかオメーは、一体何歳だよ」
「16だけどそれが何か関係あるのかしら?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴという音とドス黒いオーラを噴出させているルイズだがプロシュートは別の事で飲みかけのワインを思いっきり咽ていた
「ガハッ!ガッ!ゴフッ!……マジかよ?精々12~14ぐれーだと思ってたが」
ボスの娘―トリッシュ(プロシュート達は名前を知らないが)ですら15である。あのルイズをそれより年下と思っているのは当然だッ!

「な、なななななんですってェーーーーーッ!そ、そそそそう言うあんたは何歳なのよォーーーーーッ!!」
「…22だ」
そう聞いて今度はルイズがぶっ飛ぶ番だった。
「OH MY GOD!28ぐらいだと思ってたのに人の事言えないじゃない!」
プロシュートの爆弾発現に思わずさっきまでの怒りがどこかに消し飛んだ。
「ウルセーな…そういやあのワルドってのはどうなんだ?」
「ワルドは…確か26のはずよ」
「お前……あの髭よりオレを上と思ってたってのはどういう事だよクソッ」
思わずギアッチョの口癖がうつったが気にしない。
「確か婚約者とか言ってたな」
「昔、わたしとワルドの父が交わしたのよ。確かに憧れてたけど十年前別れて以来会ってなかったから正直どうしていいのか分からない…」
(6と16って地球じゃあ犯罪だぜ?おい)
さすがにこれは文化と価値観の違いなので口には出さないが若干引いている。
「……ワルドから結婚を申し込まれたんだけどどうしたらいいと思う?」
「…憧れてたんならすりゃあいいじゃあねーか。まぁオレに聞かねーと結論が出ねーようじゃあ止めといた方がいいな」
「自分でもよく分からないのよ…ずっと憧れてたのに…何かか心に引っかかる…」
「オレが言えるこたぁテメーで選んだ選択を後悔するような生半可な『覚悟』はすんなって事だ」
「…その覚悟っていうのがよく分からないから聞いてるんじゃない」
「言葉じゃなく心で理解するもんだから説明できるもんじゃあねぇ」
それを最後に言葉が途切れるがその沈黙も長くは続かない。
「チッ…!ナイフを土くれに変えたっていうから予想はしてたがな」
プロシュートの視線の先には月を遮るようにして巨大な物体がそこに存在していた。
月明かりをバックに写るは巨大な人型。さらによく見ればそれが岩で構成されている事が分かる。
そしてその巨大な質量の上に鎮座している長い髪の人物は――

「オメーか『フーケ』。どうやって脱獄したか知らねーが…今回はババァになるだけじゃあ済まねーぜ?」
「感激だわ。覚えててくれたのね」
「心配するな、すぐに忘れるからよ。…ただしお前が『老化して』オレをだ」
「お、お礼をしにきてあげたのに、あ、あああいかわらずおっかないわね……」
その言葉に手を掴まれ己の体が急激に朽ち果てていくような感覚を思い出したのかフーケが怯む。
「白仮面とマントの男ってのがそいつか…随分と手の込んだ真似をしてくれるな」
フーケの横にその男が立っているが何も言わない。いや言わないが身振りで『やれ』と言っているようだった。
「それじゃあ、わたしからのお礼を受け取って頂戴!」
「土産なら必要ねぇッ!」
その言葉と同時にゴーレムの拳でベランダが粉砕されるがそれよりも早くプロシュートがルイズの腕を掴み部屋を離脱していく。

だが階段を降り一階に向かうがそこも戦場と化していた。
ワルド達が下で飲んでいたのだがそこに傭兵の一部隊に襲われたのだ。
ワルド、タバサ、キュルケが応戦しているが数があまりにも違いすぎ手に負えないでいる。
床と一体化している机の脚をヘシ折りそれを盾にしているが
傭兵たちは手練でメイジとの戦い方を心得ているらしく、緒戦の応酬で魔法の射程を見極め、その射程外から矢を射かけてくる。
傭兵側が暗闇を背にしているというのも不利な点だった。
「これじゃあジリ貧ね…!」
魔法を唱えようにも少しでも姿を見せればそこに矢が射掛けられる
このまま行けば間違いなく精神力が途切れたところに突入され突撃されるのは自明の理だ。
「この前吐かせた連中もこいつらの仲間ってわけか」
そこに二階からプロシュートとルイズが降りてくる。身を隠そうともしないプロシュートに矢が飛んでくるが全てその手前で止まっている。
グレイトフル・デッドでガートしているのだ。そしてそのまま机の影に滑り込む。
「この様子だとラ・ロシェール中の傭兵が集結してるみたいだね」
入り口の先にはフーケのゴーレムの足も見え下手すればこのまま建物ごと潰される恐れがあり、それがプロシュートとタバサを除いて焦らせていた。
「いいか諸君。このような任務では、半数が目的地にたどり着けば成功とされる」

タバサが本を閉じ自分とキュルケを杖で指し「囮」と呟く
そしてプロシュート、ルイズ、ワルドを指し「桟橋へ」と呟いた。
それに応えるかのようにしてワルドが裏口にまわるように促すが、プロシュートは動こうとはせず口を開いた。
「囮ってのは悪くねーが人選ミスだ。タバサとキュルケだけで支えきれるもんでもねぇ。…だがオレとタバサが居りゃあ5分でカタが付く」
「言ってくれるな…だが、君がそれでいいというのなら任せよう。裏口に回るぞ」
ルイズはあの時以来のアレを使うつもりだと思っていたが、そこにプロシュートが自分のために囮を買って出たという吊橋効果もいいとこな思考でキュルケが口を挟む。
「ダーリン…あたしのために…無事会えたらキスしてあげるから死なないでね」
「オメーのためでもねーし、その呼び方は止めろ」
三人が姿勢を低くし移動する。当然矢が飛んでくるがそれはタバサが風を使い防いでいた。

「どうして貴方が囮に?」
「確か二つ名が『雪風』だったな。氷を作れる事と、何より口が硬そうってのがある
     対応策を知ってるヤツは少なければ少ないほど良いし合流するのに竜が使えるからな…」
「氷?」
「老化を抑える」
それだけ言い放ち広域老化を仕掛けようとするがそれをタバサに止められた
「あそこにも人がいる」
そう言って杖で指した方向には貴族とここの主人がカウンターの下で震えていた。主人に至っては腕に矢を食らっている。
氷が作られるのを確認すると無言で貴族の客と主人に氷を投げつけ、1~2発頭に当たったのか貴族が文句を言おうとするが
「死にたくなけりゃあ黙って持ってろ」
その、スゴ味の効いた声に全員が押し黙る。
そしてタバサが自分の氷を作ったのを確認すると己の分身の名を宣言するかのように叫んだ。
「ザ・グレイトフル・デッド!」

突入を仕掛けようとしていた傭兵達の動きが急激に鈍くなる。
クソ重い鎧を着込みこちらに矢を射掛けているのだ。当然――フルスピードでカッ飛ばした車のように『温まって』いる
「頭痛がする…吐き気もだ…この俺が気分が悪いだと…?疲労感で…立つことができないだと……!?」
それに呼応するかのように次々と自らの鎧の自重に耐え切れず崩れ落ちる傭兵達。

それを巨大ゴーレムの上で見ていたフーケだが正直気が気ではない。
「傭兵達が倒れていくって事はあの使い魔が残ったって事ね…
  それにしても、あんな魔法反則じゃあない…無駄に範囲が広いし射程に入ったら即あんな風になるわね…」
「分散させる事ができれば問題無い」
「あんたはそうでも、わたしはそうはいかないさね…あいつに掴まれた時の事は今でも夢で見るんだから…」
「……よし、俺はあいつを相手にする」
「…わ、わたしはどうすんのよ」
フーケが眼下の惨状に恐怖しつつ引きつりながら男に問う
「好きにしろ。逃げようとも前の勝手だ。合流は礼の酒場で」
男がゴーレムから飛び降りると倒れている傭兵を避けるかのようにして宿屋に入っていく。
「何考えてんだか…勝手な男だよ」
そう苦々しげに呟くフーケだが攻撃を仕掛けるか逃げるかまだ迷っているようだった。
だが、さすがに傭兵達の悲鳴が地の底から聞こえるようね呻き声に変わった時決断は決まった。
「………逃げるんだよォーーーーーッ!スモーーーーキィーーーーーーーッ!」
ゴーレムをジョセフ・ジョースターのように走らせその場を離脱した。

「…片付いたようだな」
酒場の中はスデに阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
なにせ鎧姿の傭兵達が全て倒れ伏せ呻き声をあげている。
大半は生きているようだが体が温まっているのだ。寿命が尽きるのは目前だった。

だがそこに一人、仮面の男が乱入してきた。
(新手か…!?…老化してねーようだが氷でも持ったか?)
広域老化で老化してないのなら直しかない。即座にそう判断し接近戦を仕掛けるべくデルフリンガーを抜き距離を詰める。
「やっと…俺の時代が…長かった…冬が…」
白仮面の男が黒塗りの杖を握ろうとする。剣を振ったのでは間に合わない。そう判断し突進しつつ蹴りをブチ込み酒場の外に吹っ飛ばした。
「チッ…!さすがに杖は離さねーか」
吹っ飛ばされながらも杖はしっかり握っておりプロシュートに向き直り杖を構えている。
「兄貴ィ!魔法が来る!」
白仮面が呪文を唱えているがデルフリンガーに言われるまでもなく男との距離を詰めようと駆け出している。
右手に持ったデルフリンガーで斬りかかる。甲高い音が鳴り響き白仮面が杖でこれを止めている。
だがこれは陽動だ。人間見えているものに注意がいけばそれ以外の場所が疎かになる。
「…掴んだッ!」
プロシュートの左手が男の腕をガッシリと掴んでいる。直触りを仕掛けようとしているのだ。
手加減の必要など微塵も無い。スタンドパワー全開の直触り。白仮面の男は確実にミイラになるはずだった―――
「…何の真似だ?」
だが白仮面の男は老化した気配など微塵も見せずにそう答える。さすがのプロシュートもこれには動揺したッ!
「バカなッ!直触りを受けて『老化しない』だとッ!?」
「兄貴ィ!ヤベーぜッ!そいつから離れて構えてくれッ!」
だが、遅かった。離れた瞬間、白仮面の男周辺の空気が冷え空気が弾け閃光がプロシュートの体を貫いた。
「~~~っがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「兄貴ィィィィィィィイイイ!『ライトニング・クラウド』かよぉ!」
一瞬意識が飛びそうになるがそうなれば傭兵達の老化が解除される。それだけは避けようとし意識をギリギリのところで意地するが正直ヤバイ。
「たまげたな…今のを受けてまだ生きているか」

(左腕の感覚がねーな…おまけに直を受けて老化しないだと?話てるって事はゴーレムの類じゃあねーしどういうこった!?)
生物である以上グレイトフル・デッドの老化からは逃げられないはずだ。ましてこの男は魔法まで使っている。
いかに体を氷で冷やしていようとも直触りを受ければ確実に老化するはずなのだが、こいつは老化してない。それが珍しくプロシュートを焦らせていた。
白仮面の男が第二撃を仕掛けようと呪文を唱えようとする。だがそこに上空から風の塊が白仮面の男を襲い吹き飛ばした。
「早く乗って!」
タバサがシルフィードの上から『エア・ハンマー』を唱え白仮面の男を吹き飛ばしたのだ。
一瞬白仮面の男を見据えるが、すぐに考え直す。
(どういうわけか知らねーが直が効かない以上老化は役に立たない…か。腕もヤバイし時間稼ぎは達したな)
そう判断しシルフィードに飛び乗る
「直が効かない理由は分からねーが…この借りは兆倍にして返すぞッ!」
その言葉と同時にシルフィードが上空に飛び立ったが事実上の敗北と言ってもよかった。

プロシュート兄貴 ― 左腕―第三度の火傷 スーツ損傷率17%


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