ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

咆哮! 貴族の誇りと黄金の精神 その③

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咆哮! 貴族の誇りと黄金の精神 その③

承太郎は……ルイズの胸よりぺちゃんこになって死んだ……。
揺ぎ無い事実がルイズの精神を追い詰める。
承太郎は『ルイズより強い』……しかし『ルイズの使い魔』なのだ……。
だから『承太郎がルイズを守る』事が当然であるように、『ルイズが承太郎を守る』事もまた当然なのであった。
だが結局ルイズは承太郎に一方的に守られるばかりで、破壊の杖を盗み出された時同様足手まといでしかなく、その挙句――その挙句――挙句の果て――…………。
「ジョー……タロ……」
膝が砕けその場にへたり込むルイズ。
絶望感が足元から這い上がってきて、心身を冷たくさせる。
何もかも終わってしまったようにルイズには思えた。
何も、かも。
だが。

――……やれやれ。どうやら貴族を名乗る『資格』だけは持っているようだな。

承太郎の言葉を思い出す。承太郎が認めてくれたものを思い出す。
承太郎は自分の何を認めてくれたのだろう?
それは――。

「私は……敵に後ろを見せない。なぜなら、私は貴族だから!」

立ち上がり破壊の杖を抱きしめ己の杖を抜く。
破壊の杖が使えないのなら、失敗魔法の爆発を撃ち込むのみ。
何度でも何度でも、ゴーレムを破壊できるまで。
ルーンを唱える。
目いっぱいの魔力を込める。
そしてルイズは解き放つ。


「ジョータロー!」

なぜ、彼の名を叫んだのかルイズにも解らなかった。
彼の名を呼ぶ事に意味があるのか無いのか。
それでも叫ばずにはいられなかった。
ルイズの中の何かが突き動かした。

爆発がゴーレムの鉄の足を襲う。
しかし、傷ひとつヒビひとつ入らない。
それでも、ルイズの心は折れなかった。

そしてこれから起こる出来事を!
ルイズは『起こるべくして起こった出来事』として受け止めたッ!!

最初の異変はどちらだったか。
爆発を受けたゴーレムの足に、少しの間を置いてから突然ヒビが入った事だろうか。
それとも、ゴーレムの足の下……いや、中から聞こえる声と音だろうか。

ゴゴ……オ……オオ……。
「何か聞こえる」
タバサが呟いた。

オオ……オオ……オラ。
「遠くから聞こえるような……」
キュルケは耳を澄ました。

オラ……オラオラ……オラオラ。
「だんだん近づいてくる……!」
ルイズはこれから起こる事を一瞬たりとも見逃すまいと目を見開いた。

「こ……この声は!?」
森の中、木の陰に隠れながらフーケは驚愕した。
馬鹿なッ、この声はたった今踏み潰したはずの……!

オラ……オラ。
オラ……オラオラ。
オラオラオラオラ。

「ルイズ! 伏せて!」
キュルケが叫び、そこでようやく冷静に物事を考える能力を取り戻したルイズは、慌てて巻き添えを食らわないよう地面に伏せた。
その直後、ゴーレムの鉄に錬金された足が内側から粉砕される。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

鉄を破って出てきたのは見た事もない屈強な男。
肌の色は青く、黒い髪をなびかせ、筋肉の鎧を身にまとった古の戦士を思わせる男。
その男が、後から出てきた見覚えのある男の周囲を回りながら拳を連打する。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラ――――ッ!!」

空条承太郎のかたわらに立つ男の腕は、まさに承太郎が自分の身体から出していた『腕』そのもの!
これが承太郎の真の能力。承太郎が出せるのは『腕』なんかじゃあないッ。
それはメイジにとっての使い魔の如き存在。
それはまさにクールでタフな承太郎の分身とも言える、屈強なる人型の精神力。スタンド!


「やれやれ。ま……確かに硬い鉄だがぶち壊してやったぜ……」
承太郎が勝ち誇ったように言った直後、鉄化した右の足首から先を完全粉砕されたゴーレムはバランスを崩して倒れた。
「ジョータロー! 無事だったのね!」
「ルイズ……手伝いな。『派手にキメる』ぜ……」
「任せなさいっ!」
ルイズは輝くような笑顔を見せ、再び杖を振るった。
承太郎もニヤリと笑ってぶっ倒れているゴーレムに肉薄する。
「うおおおッ! スタープラチナ!!」
即座に再生を開始していた足首を、承太郎のスタープラチナが再び殴り飛ばす。
「オラオラオラオラオラオラオラオラーッ!!」
足首からすね、すねから膝、膝から太もも、太ももから股間、股間から下腹部。
下から上へと削り取っていくかのような破壊の行進を続ける承太郎。
そして殴り飛ばされる土はすべて森の中へぶっ飛ぶ威力!
魔力の込められた土は次から次へと森の中へ消えていった!
承太郎の破壊活動を手伝うように、ルイズも呪文を詠唱する。
そして当然のように失敗魔法を放ち、ゴーレムの身体を次々と爆撃する。
スタープラチナの攻撃でヒビの入っていたため、ルイズの魔法でヒビが広がる。
そして崩壊。二人の連携プレイにより破壊速度が再生速度を圧倒的に上回る。

「チャンス」
上空から見ていたタバサが呟いて、承太郎の足跡にエア・ストームを放つ。
するとまだ残っていたゴーレムの土が、質量を大幅に失ったため竜巻に呑み込まれる。
そしてタバサもゴーレムの土を森の中へと吹き飛ばす。
「あらあら。ルイズまで活躍してるのに……私が活躍しない訳にはいかないじゃない」
キュルケもファイヤーボールで空中爆撃を開始する。
狙いはもちろん、承太郎の攻撃でヒビが入ってしまった部分。
ルイズの爆発とキュルケのファイヤーボールが同時に炸裂し、胴体を真っ二つに割った。


四人が一致団結して行った攻撃は、もはやあまりにも一方的すぎた。
土くれのフーケが作り出した自慢のゴーレムは、数分と持たず粉微塵にされる。
そこまでやられてはさすがにもう再生不能。
安全を確認したタバサはシルフィードを地面に着地させた。
「さすがダーリン! 無事でよかった!」
真っ先に行動を起こしたのはキュルケで、承太郎の腕にしがみつく。
続いてタバサが承太郎の前までやってきて、顔を見上げる。
「スタープラチナ……それがあの戦士の名前?」
「……まあな。見ての通り殴る蹴るしか能のねー能力だ」
「でも強力」
寡黙同士の会話最長記録樹立の瞬間であった。
といっても二人とも元々ろくすっぽに話す機会など無かったが。
キュルケとタバサに囲まれた承太郎を見て、ルイズはちょっとムッときた。
多分、独占欲のせい。自分の使い魔だから、他のメイジと親しくして欲しくないような。
でも相手がギーシュだったら、どうだろう、とも思ってしまう。
ちょっと前なら、あんな最低最悪な貴族の風上にも置けない男と一緒にいると、ヴァリエール家の使い魔としての品が下がる……とか思ってたかもしれない。
でも今だと、多分、特に、嫌な感情を持てない気がする。
ギーシュだと大丈夫で、キュルケ達だと何かダメなのは、何でだろう?
その理由を考えていると、ルイズ等の近くの茂みがガサガサと揺れた。
ルイズはハッとして破壊の杖を強く抱きしめて振り返った。
「誰ッ?」
土くれのフーケではないかという警戒心がルイズとキュルケに杖を抜かせる。
承太郎は特に気にした様子を見せず、のん気にタバコを取り出して火を点けた。
タバサはタバコの煙に少し眉をしかめたが、承太郎同様あまり動こうとしなかった。
「わ、わたくしです。ロングビルです」
出てきたのはミス・ロングビルだった。右手に杖を持って、笑顔を浮かべている。
あちこち擦り傷が見られるが結構大丈夫だったらしく、足取りもしっかりしてる。


「ミス・ロングビル! 無事だったんですね」
「心配かけてごめんなさい。それより、フーケのゴーレムはどうなりました?」
安堵の笑みを浮かべて杖を下ろしたルイズに、ミス・ロングビルが歩み寄る。
だが突如としてスタープラチナの腕が伸び、ロングビルの杖を奪いへし折った。
「キャッ!?」
混乱したミス・ロングビルはその場に尻餅をついてしまう。
そして地面についたミス・ロングビルの手の指と指の間に、へし折られて先端の尖った杖が物凄い勢いで投げつけられる。
「ちょ、ちょっと!? ジョータロー!?」
突然の暴挙にルイズが慌てて詰め寄ろうとするが、承太郎との間にタバサが杖を割り込ませて動きを制した。
「ちょっと、あんたまで何の真似よ? こいつはミス・ロングビルに失礼を働いたのよ?」
「フン! 承知の上の失礼だぜ。こいつはミス・ロングビルじゃあねえ。
 今解った! 土くれのフーケは『こいつ』だ」
一拍の間。
「えぇーッ!?」
ルイズとキュルケが叫んだ。
「それは考えられないわジョータロー!
 彼女はオールド・オスマンの秘書なのよ、身元ははっきりしているわ!」
「その通りよ! でも、タバサ、あなた驚いてないのね? 『まさか』なの?」
コクリとタバサがうなずく。
それを見て、キュルケはミス・ロングビル=フーケという図式の過程は解らずとも、その図式がほぼ間違いないだろう事を確信した。
ミス・ロングビルは――目を丸くし驚いた表情を見せつつ、冷や汗を浮かべている。
「……証拠はあるの? ジョータロー」
ルイズがいぶかしげに問うと、承太郎は静かに、しかし力強く答えた。
「ああ……あるぜ」

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