ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第四話『地獄の世界』

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第四話『地獄の世界』

ルイズとリンゴォが教室に入る。
リンゴォは生まれてこの方学校など行った事がなかったが、どういうものかは知っている。
(それにしても……)
先ほどの疑問の答えを目の当たりにして、リンゴォは驚いていた。
(アレが使い魔なのだろうが……まさかこれほどとは…想像以上だ)
人間だとか動物だとかそんなチャチな範疇に収まらない、リンゴォの想像を
遥かに超えた(一部には知っているのもあるが)モンスターがそこら中にいた。
「ドラゴンくらいは本で読んだ事があるが…」
「アンタ字ィ読めたの?」
「いや…『こっち』のは知らん」
月が二つ有るような世界の文字が読めるとはリンゴォも思わなかった。
話せることについては、「そういうものらしい」と考えるのを放棄した。

やはり自分は、珍しいというよりも、『召喚の失敗』らしい。
周りの奴らがみんなそのことでルイズをからかうのを見てそう思う。
ルイズがいちいち反論している。
「ちょっと失敗しただけよ!」
確定だ。
本当は彼らは、ルイズだけでなく、リンゴォの事も馬鹿にしていたのだが、
彼はそのことに気付かなかった。彼の興味はすでに『探し物』に移っていた。

「サラマンダー」
「え?」
「火トカゲ…人影……」
「何言ってんのタバサ? あ、あれルイズじゃないの。例の平民も一緒にいるわ」
「…………!!」
キュルケがリンゴォの所へ近づいていく。
「ねぇ貴方、ルイズの奴の使い魔でしょ? 有名よ、『平民の使い魔』って」
「ああ……確かにそうだが………」
「わたしはキュルケ。ねぇ使い魔さん、当然お名前はあるんでしょ?」
幾分小ばかにしたような口調だが、リンゴォは気に留めなかった。
「…リンゴォ・ロードアゲイン」
「そう、ところでリンゴォ、この子がわたしの『使い魔』、サラマンダーのフレイムよ」
若干『使い魔』を強調。しかしリンゴォは気に留めない。
「ほう…でかいな」
「火竜山脈のサラマンダー、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
少しだけフレイムに関心を示したが、さっさとこの女との会話を切り上げたい、
そう思ったリンゴォの目にあるものが留まった。
キュルケの少し後ろにいる、眼鏡の少女。心なしかうなだれている。
「そこの彼女は?」
「え? ああ、この子はわたしの友達で、タバサって言うの。
 どうしたのタバサ? 気分でも悪いの?」
「…なんでもない」
「ちょっとキュルケ! ひとの使い魔と何やってんのよ!」
突然ルイズが割り込んでくる。
「あら、ルイズ貴女…ちょっとド鈍いんじゃあないの? 自分の真後ろにいたのに…」
「そうじゃあないでしょ! アンタは何をやってるの! 答えなさい!」
「カッカしちゃって……。『お話』してただけじゃない、怖いわねぇ」
その時、教室に入ってきた女性、名をシュヴルーズ。
教員の登場により、白熱しつつある二人の口論は、否応無く沈静化した。

「アンタはその辺に座ってなさい」
それだけ言ってルイズは席に着く。
リンゴォは傍の階段に腰掛けると、静かに目を閉じた。
教員が何か話しているが、途中生徒たちの笑いが巻き起こる。
教員以外の誰かの声。また笑い。先ほどより大きい。
それに起こったように反応するルイズの声。どうやら自分たちの話題だったらしい。
しばし後の静寂。
ようやく本格的に授業が始まる。
属性だかなんだかの話だったが、リンゴォは聞き流した。
話が実践の段階に入り、シュヴルーズが石を真鍮に変えたところだけ、リンゴォは目を開けた。
そして再び目をつぶり、しばらくすると――
『ミス・ヴァリエール!』
シュヴルーズの声。

瞬間的に、場の空気が変わる。
それを敏感に察知し、リンゴォは目を開いた。
ざわめき、どよめき。何人かがシュヴルーズに意見する。
『無茶です! 無理です! 先生!』『彼女はルイズですよ!?』
『おかーさんに命は粗末にするなって言われました!』『始祖よ…あなたは連れて行く子を間違えた』
どうやら、ルイズが先ほどの練成を実践するらしい事はリンゴォにも呑み込めた。
が、リンゴォもシュヴルーズも、彼らが何を反対しているのかわからなかった。
だから、他の生徒たちが机の下に避難しても、彼らは何もしなかった。
そして教壇の前に立つルイズ。よりによって、こちら側を向いて。
彼女には他意はなかったのだろう。純粋だった。練成を成功させて、みんなに見てもらいたい。
歴史上に、純粋さ故に起こった悲劇は数知れない。

ここから記される事は、そんな歴史のたった1ページに過ぎない。

ここから先は、読者であるあなたたちに判断してもらいたい。

悪かったのは一体誰なのか?
リンゴォか? ルイズか? 気を抜いた生徒たちか? 何も知らないシュヴルーズか?

事実だけを言おう。
純粋さは、最悪の結果を引き起こした。
いつもの爆発は、ルイズが気負っていた分余計に広範囲に広がった。
「ぐおおぉッ!? こ…これは!?」
教室の中ほどに居たリンゴォにも、すさまじい爆炎が押し寄せ、彼を飲み込んだ。

爆発の後2、3秒して、生徒たちが机から顔を出す。
いつもよりひどい爆発だったな、と安堵の表情を浮かべ、友の無事を確認する者や、
始祖に感謝の祈りを捧げる者もいた。
いち早く異変に気付いたのはタバサ。いや、異変ではない。
『何も変わっていない』のだ。
爆発の痕はどこにもないし、シュヴルーズもルイズもぴんぴんしている。
シュヴルーズはなんだか呆然としていたが、ルイズは先ほどと同じように、呪文を詠唱していた。
(……………………詠…唱?)
「ハッ!」


ギドン!!

……………

彼らが机の下に隠れていれば、ここまでの被害は防げただろう。
いったい、なぜ出てしまったのか?
それに答えられるものはその教室には一人もいなかった。
意識ある者はみな、ただただ嘆いていた。意識なき者はみな、ただただ呻いていた。
ある者はその光景をこう称した。
『地獄』と……。

 火傷による重軽傷者  ――多数
 『赤土』のシュヴルーズ――左手首脱臼、右足首骨折、靭帯損傷、再起不能
 『風上』のマリコルヌ ――死亡
to be continued...

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