ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

S.H.I.Tな使い魔-03

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 召還の儀式の最後の一人、ルイズが数十回の失敗の後になんと平民を呼び出してしまったとき、トリステイン魔法学園の教師、コルベールは驚いた。なにせ人間を召還するなどというのは今まで前例がない。
しかし、同時に彼は、落ちこぼれで見栄っ張りだが、その実影で涙ぐましい努力をしているルイズのことを、とても心配していたので、形はどうあれ、初めての成功を心の底から喜んだ。
ルイズは不満だ、やりなおしたいと食って掛かってきたが、コルベールはそれを許さなかった。
「(使い魔が何であるか、なんて長い目で見たら大した問題ではないんですよ・・・)」
 使い魔によってメイジの才能を見る向きもあるが、それを言えば我が学院の長にして大賢者オスマンの使い魔はハツカネズミではないか。
それよりも、使い魔を従えたという事実こそが大事なのだ。ルイズへの風当たりもきっと弱まるに違いないし、そのほうが彼女に必要なことのはずだ。 
だから、コルベールの心配を知ってか知らずか、ルイズがしぶしぶとコントラクト・サーヴァントを成功させたときは肩の荷が下りたような気すらした。
使い魔が人間だということは、後で学長と相談して何らかのフォローを入れよう。使い魔になる平民は少し可哀想な気もするが、なに、気にすることはない。
トリステイン最大の大貴族、ヴァリエール公爵家三女にとって唯一無二の存在になれるのだ。決して粗略にはされまい。
 後は使い魔の少年の手に浮かび上がってきた奇妙なルーンを写し取って学院へ帰ろう。
 コルベールはルーンを近くで見るために少年の手を取ろうとした。
油断しきっていたコルベールは、さっきまで顔を赤くして混乱していた少年の目に、いつの間にか『覚悟』の光が見えていることに気がつかなかった。

「エコーズACT3!その男を攻撃しろォー!!!」
『ACT3 FREEZE!』
 その瞬間コルベールの体は草原にめり込むほどの勢いで前のめりに墜落してしまう。
「な・・・なんだ・・・?」コルベールは何かに躓いたのかと思い立ち上がろうとした。だが、意に反して腕をあげることすらできない。
「コルベール先生、何もないところで転ばないでくださいよ!」遠巻きに見ていた生徒達が笑う。だがコルベールは自らの身に起きたことの異常性に気づき始めていた。
「(う、動けない・・・!これは・・・私の体が『重くなっている』!?この少年の仕業か?そんなはずが・・・!重力制御など、例え土のスクウェアでも出来るものではない・・・!)」
 ビキビキと体中の骨が軋む音がする。呼吸すらままならない。
 いつまでも起き上がらないコルベールを生徒達が不思議に思い、騒ぎ出す。
「コルベール先生いつまで寝転がっているんだ?」
「ていうか、おい!あれを見ろよ!ゴーレムか?」
「見たことがない形・・・っていうか、微妙に浮いてる気がするんだが・・・」
「まさかメイジ・・・?でも杖は持ってないぞ!?」「マントも着てないしな。」
 コルベールは目だけを辛うじて動かして、少年を見上げた。

 すでに契約の刻印も済んだのだろう。立ち上がった少年はコルベールを見下ろした。
「それ以上・・・ぼくに近づかないでもらう・・・」
 そしてその少年の前に、白い小さな人影が見える。体中に翠色の装飾を施した見たこともない形状のゴーレムだ。
ゴーレムはコルベールを指差して言った。
『射程距離5mニ到達シマシタ。S.H.I.T!』
 このゴーレムがやったことなのだろうか。
もしかしてミス・ヴァリエールはとんでもないものを召還してしまったのでは・・・?
 だが当の本人は事態の深刻さをまるで分かってないようだ
「そのゴーレム、あんたの?コルベール先生に何をしたの?」
「今度はこっちが質問する番だっ!!いったいぼくに何をしたんだ!!」
康一はルイズを睨みつけた。
「なによ。そんな目したって怖くないわよ!あんたはもう私の使い魔になったんだから、私の言うことを聞きなさい!私の質問に答えるのよ!」ルイズは命令した。
ファーストインプレッション(第一印象)が大事なのだ。使い魔に我が侭を許せば後が大変である。イニシアチブを取らなければならない!・・・と本に書いてあったのだ。
「使い魔だって?それはすごく・・・すごく嫌な響きがするぞっ・・・!人間というよりは、まるでペットを呼ぶような・・・」
「ペットじゃないわ。まったく・・・使い魔も知らないなんて、どこの田舎者よ・・・。とにかく、あんたは私が召還したんだから!私の言うことを黙って聞けばいいのよ!平民!」
「じゃあ、ぼくに攻撃してきたのは君・・・?」
 そこで康一は気がついた。この女の子はスタンドが見えている。
 つまりこの子はスタンド使いだ・・・!
「もう一度聞くよ・・・。ぼくに何をしたんだ・・・?この左手の印は何?」
「それは使い魔のルーンよ!あんたが私のものになった証よ!あんたは一生私に仕えるのよ!」
 康一は震えあがった。
「じょ、冗談じゃないぞっ!ぼくはそんなのまっぴらごめんだっ!今すぐ元のところに戻してくれ!」
「知らないわよそんなの!あんたが勝手に来たんでしょ!私だって、あんたみたいなチビの平民が使い魔だなんて嫌よ!」

康一は目の前のルイズと呼ばれる女の子を攻撃するべきか考えていた。
しかし、自分よりも小さな女の子(きっと中学生くらいだろう)を攻撃するにはためらいがある。
それに、なぜかこの口の悪い女の子からは、不思議と『悪意』が感じられないのだ。
自分を拉致し、無理やり使い魔とやらにしようとしているにも関わらず!



ルイズはこの生意気な平民をどうしてくれようかと考えていた。
意味の分からないことを喋るし、変なゴーレムは出すし、何よりこっちの質問にまるで答えようとしない!使い魔の癖にご主人様をなんだと思っているんだろう!
そしてなにより、やっと手に入れた使い魔に、舐められるのだけは絶対に嫌だった。
二人の間に険悪な空気がただよう。
そこに車に潰されたカエルのように、未だ地面にへばりついたままのコルベールが割って入った。呼吸がほとんどできないので今にも死にそうなか細い声である。
「ちょ、ちょっと待ってください・・・。こんなところで争ってもしょうがありません。ミスタ、何か誤解があるようですから、どうか落ち着いた席で話し合いを・・・。」
「疑問はおありでしょうが、私からちゃんとお答えします。これは我々にとっても前例のないことなのです・・・」
康一は懇願するコルベールを見ながらしばらく考えていた。
自分は被害者のはずだ。でも攻撃したという当人達からはなぜか悪意を感じないのだ。
それどころかまるでこっちが理不尽なことをしているような空気すらある。
それにこの小さな桃色髪の少女はともかくとして、こっちの男性はまだ話が通じそうだ。
「・・・わかりました。ちゃんと説明してくださいよ!ACT3!3 FREEZEを解除しろ!」
康一がそういうとコルベールの目の前からゴーレムが消えた。それと同時に体の自由が戻ってくる。
コルベールは軋む体をなんとか立ち上がらせ、服についた草を掃った。
「えーと、大丈夫ですか?」康一が気遣う。
「ええ、なんとか・・・」コルベールは苦笑いした。
実はあまり大丈夫ではなかった。ものすごい圧力で地面に押さえつけられていたので息をするたびに肋骨が痛む。
骨は折れていないと思うのだが・・・。
コルベールは一つ大きく息をすると、ざわめく生徒達に向き直った。
「さぁ、みなさんはもう学院に戻りなさい!」
「ミスタ・コルベール!ルイズとその平民はどうするので?」人垣の中から手があがる。
「学院長と話しあった上で今後のことを決めます。みなさんは自分の使い魔をしっかり慣らして、しっかり明日の授業の準備をするように!では解散!」
コルベールは手を叩いて帰るように促した。

奇妙な平民や突然現れて突然消えたゴーレムに興味津々な生徒達だったが、彼らも自分の使い魔を召還したばかりである。
二言三言なにやら唱えて杖を振ると、大人しく言いつけにしたがって飛び去っていく。
「さぁそれではとりあえず学院長室までお越しください。そこで話を伺いましょう。ミス・ヴァリエール。当然ですがあなたにも来てもらいますよ。」コルベールも数語の呪文と共に浮かび上がり、生徒達の後を追っていく。
「と、飛んだ・・・」康一は愕然としている。空を飛ぶスタンド使い?しかも全員が?
そしてそれを横で見送る桃色の髪の女の子に聞いた。
「君も飛ぶの?」
ルイズはそれを聞くと、きっと康一を睨みつけ、ぷいっとそっぽを向いた。
そして早足で歩き去っていく。
 未だに自分の置かれた立場がいまいち分かっていない康一だったが、いつまでもここにいるわけにもいかないので、彼女の後をついていくことにした。




みなが立ち去った後、二人の少女がまだ帰らずに残っていた。
「ねえタバサ。いったい何があるって言うの?」
一人の少女は先ほどルイズにキュルケと呼ばれた少女である。大きく開いた胸元からは褐色の肌が覗き、はっとするような色気がある。その足元には大きなトカゲを従えている。
「ルイズの使い魔が気になるの?きっとマジックアイテムか何かをもっていたのよ。」
と腕を組む。
「たしかに不思議なゴーレムだったけれど、小さいしすごく弱そうだったじゃない?ミスタ・コルベールは不意打ちで転ばされてしまったんだわ。」
いかにも「これだからトリステインの男は」と言わんばかりに鼻を鳴らす。
しかしタバサと呼ばれたもう一人の少女――青いショートヘアーで、グンパツな女性と比べてこちらは背が小さく、なんというか・・・平坦だった――は真剣な表情で先ほどコルベールが倒れていた場所にしゃがみこんだ。
「見て。」
タバサはぼそりと言った。
「何?落し物でもあったわけ?    え・・・これって・・・」
キュルケがタバサのそばまで行くと、今まで草で隠れていた『跡地』が見えた。その場所だけ地面が人型にめり込んでいる。
「深さは10サント近くあるわね・・・。でもどうして転んだだけでこんなことになってるのかしら。」キュルケはアゴに指をあて、
「実はミスタ・コルベールの体重が100リーブル(約470kg)くらいあった・・・とか?」冗談めかして笑った。
タバサは笑わずに振り返り、言った。
「只者じゃない。」

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