ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ 第二章-05

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匿名ユーザー

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なんだかなぁ。

ニューカッスル城のバルコニーで黄昏ていたサイトは手すりにもたれかかりため息をついた。

ここにきた目的はもう半ばまで達成した。


ウェールズは城に着くとすぐに、サイト達を王族にしては質素な、学園のルイズの部屋の方が余程華美な部屋に通した。
首にかけていたネックレスの先についた鍵を差込、ウェールズは机の引き出しから取り出した箱を開けた。
蓋の内側には、アンリエッタの肖像が描かれている。
ウェールズはアンリエッタの肖像を感慨深げに見入る。
だがすぐに「宝箱でね」―ルイズ達がその箱を覗き込んでいることに気付き、彼ははにかんだ様子を見せた。
肖像から視線を下げると、中には一通の手紙が入っていた。
ウェールズはそれを取り出し、愛しそうに口づけたあと、開いてゆっくりと読み始めた。
固定化をかけられて風化することを忘れたその手紙はこれまで幾度もそうして読まれたものなのだろう。
そう想像したルイズ達は彼が読み終わるのをジッと待った。
読み返すと、ウェールズは再びその手紙を丁寧にたたみ、封筒に入れなおす。そしてルイズに手渡した。

「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」

ルイズは深々と頭を下げて恭しく手紙を受け取った。優しげに微笑みウェールズは言う。

「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号が、ここを出港する。それに乗って、トリステインに帰りなさい」

その手紙をじっと見つめていたルイズは、そのうちに決心したように口を開いた。

「あの、殿下……。さきほど、栄光ある敗北とおっしゃっていましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」

ルイズは躊躇うように問うた。
至極あっさりと、ウェールズは答える。

「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もありえない。我々にできることは、はてさて、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」

ルイズは俯いた。
この城に到着した時、ウェールズの侍従を務めるバリーがウェールズ達を出迎えた。
長年皇太子の侍従を勤めてきたのであろう老メイジは、ウェールズがジョルノの船に積まれていた硫黄…『火の秘薬』を手に入れ帰還したことを泣いて喜び、こう言っていた。
「栄光ある敗北ですな! この老骨、武者震いがいたしますぞ。して、ご報告なのですが、叛徒どもは明日の正午に、攻城を開始するとの旨、伝えて参りました。まったく、殿下が間に合って、よかったですわい」
「してみると間一髪とはまさにこのこと! 戦に間に合わぬは、これ武人の恥だからな!」
そう、ウェールズ達は、心底楽しそうに笑いあっていた。
敗北という言葉に、顔色を変えるルイズや何を喜んでいるのか全く理解できていない様子のサイト達の前で。
思い返しながらルイズは尋ねた。
「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ…」

傍でやりとりを見ていたサイトがため息をついた。
明日にも死ぬというときなのに、皇太子はいささかも取り乱したところがない。
現実感がないのか、サイトは船に乗せてもらったアズーロの元へと戻りたそうな表情で周囲へと目を向けていた。
彼らから少し離れた場所に立っていたジョルノは、鋭く輝く目でウェールズを見ていた。
ウェールズはその視線に気付き、苦しそうに顔を歪ませる…二人の間に、サイトは知らない何かがあるようだった。
それにルイズは気付かなかったようだ。
ルイズは深々と頭を垂れて、ウェールズに一礼していた。言いたいことがあるのだった。

「殿下……、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「なんなりと、申してみよ」
「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは……」
「ルイズ」

俯いたルイズの隣に立っていたワルドが咎めるように声を上げた。
ルイズが訪ねていい事柄ではないと帽子を持っていない手で肩に手を置く。
でも、とルイズは、きっと顔を上げてウェールズに尋ねた。

「この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫さまのご様子、尋常ではございませんでした。
そう、まるで、恋人を案じるような……。それに、先ほどの小箱の内蓋には、姫さまの肖像が描かれておりました。
手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい、もしや、姫さまと、ウェールズ皇太子殿下は……」

言いたいことを察してウェールズは微笑んだ。

「きみは、従妹のアンリエッタと、この私が恋仲であったと言いたいのかね?」

真摯な態度でルイズは頷いた。

「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。してみると、この手紙の内容とやらは……」

ウェールズは額に手を当て、言おうか言うまいか、ちょっと悩んだ仕草をした後言った。

「恋文だよ。きみが想像しているとおりのものさ。確かにアンリエッタが手紙で知らせたように、この恋文がゲルマニアの皇室に渡っては、まずいことになる。
なにせ、彼女は始祖ブリミルの名おいて、永久の愛を私に誓っているのだからね。
知ってのとおり、始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓いでなければならぬ。この手紙が白日の下にさらされたならば、彼女は重婚の罪を犯すことになってしまうであろう。
ゲルマニアの皇帝は、重婚を犯した姫との婚約は取り消すに違いない。そうなれば、なるほど同盟相成らず。トリステインは一国にて、あの恐るべき貴族派に立ち向かわねばなるまい」
「とにかく、姫さまは、殿下と恋仲であらせられたのですね?」

ルイズはウェールズとアンリエッタ、トリスティンとアルビオンの置かれた状況を無視して尋ねた。
その声に篭った熱を冷やすようにウェールズの返答は冷たい声音で返された。

「昔の話だ」

だがルイズは熱っぽい口調で、ウェールズに言う。

「殿下、亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」

ジョルノと同じように離れて成り行きを見守っていたワルドが静かに寄り添いすっとルイズの肩に手を置いた。
しかしルイズの剣幕は納まらなかった。
ワルドの手を跳ね除けて、ルイズはウェールズに詰め寄った。

「お願いでございます! 私たちと共に、トリステインにいらしてくださいませ!」
「それはできんよ」

笑いながらウェールズは言った。

「殿下、これは私の願いではございませぬ! 姫さまの願いでございます! 姫さまの手紙には、そう書かれておりませんでしたか? 
わたくしは幼き頃、恐れ多くも姫さまのお遊び相手を務めさせていただきました! 姫さまの気性は大変よく存じております! 
あの姫さまがご自分の愛した人を見捨てるわけがございません! おっしゃってくださいな、殿下!
 姫さまは、たぶん手紙の末尾であなたに亡命をお勧めになっているはずですわ!」

笑みを引っ込めて、ウェールズは首を振った。

「そのようなことは、一行も書かれていない」
「殿下!」

ルイズはウェールズに詰め寄った。

「私は王族だ。嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うが、ただの一行たりとも、私に亡命を勧めるような文句は書かれていない」

ウェールズの言葉は苦しげでその口ぶりから、ルイズの指摘が当たっていたことが窺える。
更に言い募ろうとするルイズを見て、ウェールズは自分の迂闊さに気付いたが彼は言葉を続けた。

「アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」

ルイズは、ウェールズの意思が果てしなくかたいのを見て取った。
ウェールズはアンリエッタを庇おうとしている。臣下の者に、アンリエッタが情に流された女と思われるのがイヤなのだろう、と。
ウェールズは、ルイズの肩を叩いた。

「きみは、正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている」

ルイズは、寂しそうに俯いた。

「忠告しよう。そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい」

ウェールズは微笑んだ。白い歯がこぼれる。魅力的な笑みだった。
しかしながら、とウェールズは言う。

「亡国への大使としては適任かもしれぬ。明日に滅ぶ政府は、誰より正直だからね。なぜなら、名誉以外に守るものが他にないのだから」

それから机の上に置かれた、水がはられた盆の上に載った、針を見つめた。形からいって、それが時計であるらしかった。

「そろそろ、パーティの時間だ。きみたちは、我らが王国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」

ルイズ達は部屋の外に出た。
亀を抱えたジョルノと脱いだ帽子を持つワルドの二人が居残り、二人は目配せの後先にワルドからウェールズに一礼した。

「まだ、なにか御用がおありかな? 子爵殿」
「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」
「なんなりとうかがおう」

ワルドはウェールズに、自分の願いを語って聞かせた。
自分とルイズが婚約者であること。そして、是非ともウェールズに媒酌をお願いしたいとワルドは言い、ウェールズはにっこりと笑った。

「なんともめでたい話ではないか。喜んでそのお役目を引き受けよう」
「ありがとうございます殿下」
「おいワルド…今の話、本気なのか?」

ジョルノに抱えられていた亀の中からポルナレフが尋ねた。
このロリコンがッと罵ったりはしない。
こういうのもありかもな。と志を同じくする者として応援するのも友情の一端であると、悲しい友情運を背負う男ポルナレフ36才は理解していた。
朗らかな笑みを浮かべたワルドは柄にもなく照れくさそうに答えた。

「勿論だ。兄弟、明日は是非君にも参列してもらいたい」
「勿論だぜ! いやぁ…ジョルノがお前がスパイかもしれないとか言い出した時はどうなるかと思ったが、無駄な心配だったみたいゲホッ…」

勢いあまったポルナレフの叫びは、一瞬で静まり返った部屋に良く響いた。
亀の中から、何かを殴る音が聞こえたが誰もそれについて言及しようとはしなかった。
一瞬笑顔のまま固まったワルドが声を絞り出す。

「何、だと…!?」
「ポルナレフ、アンタ…なんて事いうのよ!?」
「あ、ぁ…怒るなよ…こ、こいつもさ。任務でちょっと神経質になってたのさ」

油汗を流しながらジョルノを見るワルド、今にも亀を爆破しそうな剣幕で言うルイズにポルナレフの掠れた声がかけられる。
汗一つかかず、涼しい顔をしてジョルノはワルドを見返していた。

「そ、そうだな。伯爵閣下の年齢からすれば、それも仕方がない話か…」

そうしてワルドは嬉しそうに、だが慌しく部屋を去り、後には亀を持って佇んでいたジョルノとウェールズが残された。
ウェールズは穏やかな表情を浮かべたジョルノから、言葉にしがたい何かを感じて曖昧に微笑んだ。
ワルドを疑っているかどうかなど読み取れない静かな態度で、ジョルノはここへ来る途中話した亡命の件について切り出そうと口を開いた。


回想を止めサイトはもう一度深くため息をついた。
城に残っている人々の気持ちを、現代地球は日本で育ったサイトは理解できなかった。

最初、枢機卿に頼まれたのがきっかけでサイトはこの任務に参加した。

事情を知った今は、そんなのに付き合わされてポルナレフを死なせたくはないという気持ちがサイトの中で強くなっていた。
枢機卿から与えられた『ヴィンダールヴ』の能力を持っていたから…彼らが無事目的地にたどり着くのに一役買うこともできた。

右手を翳す。
雲に混じって空に浮かぶ、この城を包囲する貴族派の船の周り。
サイトの目には豆粒のようにしか見えない竜の一匹に向けて刻まれたルーンが光り輝く。
すると、原理は全く理解できないが、支配下に置き力を引き出すことまでサイトは出来るようになっていた。

だがそんなことをしても気分は晴れはしない。

正直なところ、学生のくせに戦場に手紙の回収に行けという姫もルイズも理解できなかったが…
死を前にして明るく振る舞う貴族達は、更に不可解な人々だった。
勇ましいというより、この上もなく悲しくサイトはただただ憂鬱になっていた。
時々この力をくれた枢機卿と変な牛が会談してるのとか見えるし。
同じ世界から来たはずのポルナレフ達が彼らに一定の理解を示してパーティに参加していることも、サイトの気分を落ち込ませていた。
以前から共に行動していても、サイトだけが薄皮一枚…別の空間にいるような気にさせられる。

以前から薄々そんな感じはしていた。
その理由は、彼らにも秘密があるからだと思っていた。
共に過ごす時間が増えれば自然と解消されるものだとも。
だが、それは違うのではないかと言う気がしていた。

背を向けている場所、城の中では今最後のパーティが開かれている。
城のホールに簡易の玉座が置かれ、アルビオンの王、年老いたジェームズ一世が、腰掛け、集まった貴族や臣下を目を細めて見守っていた。
明日で自分たちは滅びるというのに、随分と華やかなパーティであった。
王党派の貴族たちはまるで園遊会のように着飾り、テーブルの上にはこの日のためにとって置かれた、様々なごちそうが並んでいる。

会場に貴婦人達の歓声が飛んだ。
思わず振り向くとウェールズが現れ、若く、凛々しい王子はどこでも人気者のようだった。
彼は玉座に近づくと、父王になにか耳打ちした。
ジェームズ一世は、すっくと立ち上がろうとした。
が、かなりの年であるらしく、よろけて倒れそうになりホールのあちこちから、屈託の無い失笑が漏れる。
「陛下! お倒れになるのはまだ早いですぞ!」
「そうですとも! せめて明日までは、お立ちになってもらわねば我々が困る!」

ジェームズ一世は、そんな軽口に気分を害した風もなく、にかっと人懐こい笑みを浮かべた。

「あいやおのおのがた。座っていてちと、足が痺れただけじゃ」

ウェールズが、父王に寄り添うようにして立ち、その体を支えた。
陛下がこほんと軽く咳をするとホールの貴族、貴婦人たちが、一斉に直立する。
その様子を薄暗がりのバルコニーからサイトは困ったような顔をして見ていた。
直立する彼らの中に、サイトは貴婦人達と談笑していたらしいジョルノ達を見つけた。

「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。いよいよ明日、このニューカッスルの城に立てこもった我ら王軍に反乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が行われる。
この無能な王に、諸君らはよく従い、よく戦ってくれた。しかしながら、明日の戦いはこれはもう、戦いではない。おそらく一方的な虐殺となるであろう。
朕は忠勇な諸君らが、傷つき、斃れるのを見るに忍びない」

老いた王は、ごほごほと咳をすると、再び言葉を続けた。

「したがって、朕は諸君らに暇を与える。長年、よくぞこの王に付き従ってくれた。厚く礼を述べるぞ。
明日の朝、巡洋艦『イーグル』号が、女子供を乗せてここを離れる。
諸君らも、この艦に乗り、この忌まわしき大陸を離れるがよい」


しかし、誰も返事をしない。一人の貴族が、大声で王に告げた。

「陛下! 我らはただ一つの命令をお待ちしております! 『全軍前へ! 全軍前へ! 全軍前へ!』
今宵、うまい酒の所為で、いささか耳が遠くなっております! はて、それ以外の命令が、耳に届きませぬ!」

その勇ましい言菓に、集まった全員が頷く中、サイトはルイズに奇妙な安心を覚えた。
彼らの中にあって、ジョルノは無関心に、ワルドが彼らに羨望の眼差しを向ける中でルイズも悲しげな様子を見せていた。

「おやおや! 今の陛下のお言葉は、なにやら異国の呟きに聞こえたぞ?」
「耄碌するには早いですぞ! 陛下!」

老王は、目頭をぬぐい、「馬鹿者どもめ……」、と短く眩くと、杖を掲げた。

「よかろう! しからば、この王に続くがよい! さて、諸君! 今宵はよき日である!
重なりし月は、始祖からの祝福の調べである! よく、飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」

そうして辺りは喧騒に包まれた。
こんな時にやってきたトリステインからの客が珍しいらしく、王党派の貴族たちが、かわるがわるルイズたちの元へとやってきた。
貴族たちは、悲嘆にくれたようなことは一切言わず、三人に明るく料理を勧め、酒を勧め、冗談を言って来ようとする。

そうした空気から逃れるように、ルイズがバルコニーへと歩いてくるのがサイトには見えた。
そして、彼らのやり取りなど全く無駄な、何の影響も及ぼされた様子のない爽やか、と言うには聊か冷淡な雰囲気を纏ったジョルノが玉座に腰を下ろしたジェームズ一世の前に向かっていった。

「ジョナサン…」
サイトはポツリと名前を呟いた。
同じ黒髪で、ファミリーレストランの名前と同じくせに、聞けば自分より年下の学生であるにも関わらず、歩いているだけの姿が何かサイトとは違う生き物であるかのようだった。
「本当は吸血鬼なんです」とか言われても、信じるだろうな。サイトは苦笑していた。

「陛下、幾つか折り入ってお願いしたいことがございます」

喧騒の始まりと共に玉座にしがみつくように腰掛けていた老王の下に来たジョルノは、そう言った。
王は弱った体を愉しげに揺らして、この会場には場違いな空気を纏った客人、ジョルノに頷きを返した。

「明日には消え去ってしまうこの老骨にお願いか…よかろう、伯爵。遠慮なく言うが良い。わしに出来ることであればなんなりと叶えようではないか」
「ありがとうございます。陛下、ウェールズ皇太子以下王党派のメイジ全員を頂きたい「ご冗談を!我らの陛下に対する忠誠心を如何にお考えか」
「我らの覚悟は、この宴を開いた時に既にお見せしたはず」

間髪入れずに宴を楽しんでいた貴族達の中から剣呑な声が放たれた。

ワイングラスを誰かが棄てたのか、ガラスが砕ける音がした。宴の空気は消えて、その場にはさながら決闘の場に変わろうとしてている。
ワルドがルイズがバルコニーから戻り口を挟もうとするのを止めている。
ジョルノを計ろうとでも言うのか、髭を剃り落とされた顎を撫でながらジッと、ジョルノへ視線を注いでいた。

「覚悟とは犠牲の心ではない。殉ずるのも真の忠誠ではない…私の下に一時的に身を「お客人、言葉は選ばれるべきですな」

そう言葉を遮った貴族の手には杖が握られていた。このパーティの為に着飾ったメイジ達の輪の中から一歩進み出て、充血した目を向けてくる。

「我らは古い貴族です。誇りの為には流血を必要とするというのが我らなのですぞ」

やれやれといいたげにジョルノはウェールズへ顔を向けた。

「ウェールズ公、あなた方が死んだ後、アルビオンがどうなるかお考えになったことは?」

既に同じ事を問いかけられ、ワルドにルイズとの婚礼を頼まれていたウェールズは冷静な態度で握っていたグラスに注がれたワインを見つめている。

「わかっているとも。その為に、私は逃げ出せないのだよ」

声には責任感で固められた強い意志があった。
その言葉に感銘を受けたのか、ウェールズを称えるような言葉が場内から聞こえた。


それに水を指す形で、口裏を合わせ図っていたようなタイミングでジョルノは冷たく言う。

「ウェールズ殿下はこう仰っていますが。あなた方の領民やご家族はどうなるでしょう?」

決して大きな声ではなかったが問うたジョルノに、会場にいた貴族達は皆眉をしかめた。
取り分け、半数以上にも登る家族を国外へ逃がした者達は苦虫を噛み潰したような顔に変わる。

「貴方方は我が領地に連日多数の亡命者が流れ込んでいるのはご承知ですか?」

見回すジョルノは答えようとする者を視線で圧して、反論がないことを見てから言う。

「勿論平民ばかりでもなければ私の領地に自らの足で来られた方ばかりでもない。先日(お名前は伏せて置きますが、)腰まで届くプラチナブロンドをした小さなお嬢様をお連れのE男爵夫人を夜盗に襲われていた所をお助けしました。
他にも目元にホクロのあるB伯爵のご令嬢、やんちゃが過ぎるお坊ちゃんに手を焼いておられる…」

肺腑を突かれたように顔を青ざめさせる貴族に、ジョルノは一度言葉を切った。
会場のあちらこちらから、動揺した様子がざわめきとなって耳に届いていた。
そのざわめきの音が小さくなるのを待って、再びジョルノは言う。

「これ以上は申しませんが、あなた方が皆戦死され彼らの身分が元、となったとしましょう。もし皇帝らがレコンキスタと交渉で話を済ませるつもりであれば、ご婦人方と言えど利用されるのは防げますまい」
「は、恥を知れ! 今そのようなことを…」

息を詰まらせたように、発せられた苦い声がジョルノの背中を叩いた。
ゆっくりと振り向く他国の、貴族の誇りを理解せぬ若造へと老いた貴族が唾を飛ばしながら叫んでいた。

「あ、あの子等は、妻は、今私が死ねば王家への忠誠ゆえに死んだ男の妻となる!
だが私が生きていれば、この段になり命惜しさに王家を捨てた男の息子として恥にまみれることになるのだ!」

立て続けに叫ぶ彼らの頭を再び視線だけで打ちのめし、ジョルノは客人に脅される臣下を見つめる王と視線を交わした。
膝を突き、アルビオンの礼に乗っ取って頭を下げる。

「お願いいたします。陛下。彼らが残した者達、彼等が義務を果たすべき相手の為に彼らを私に預けていただきたい」

老いた王は瞼を閉じた。
老王へと注がれる臣下の、先ほどとは違った迷いの含まれた視線を受け、深い皺の刻まれた顔が険しさを増していた。
王はゆっくり、重々しく頷いた。

「よかろう。我が名において、責務を残す者達については貴公にお任せする。
前言を撤回することとなるが、皆もわかってくれるであろうな? これはわしの最後の命じゃ」

王は弱った体の中、爛々と厳しい光を宿らせた目で臣下を、息子までを見渡しジョルノへと視線を戻した。

「伯爵、それに辺り。彼らにはこの城に残る宝を持たせよう。して、次はなんじゃ? 貴公は幾つかともうしておったな」
「ありがとうございます。陛下。今ひとつは、内密にお尋ねしたいことがございます」

感謝を込め、深く礼をするジョルノに王は頷いた。
ウェールズのレビテーションに支えられ、王はついてくるように目配せしながら奥へと姿を消す。
王は去り際に臣下へと告げた。

「諸君! 何を呆けておるか! 今宵は真によき日である! 良く飲み、食べ、踊り、楽しもうではないか!」


ルイズに付き添いながらその様子を観察していたワルドは険しい表情で老王の消えた方へと向かうジョルノの背中を見送った。
先ほどまでの最後の晩餐を大いに楽しむ雰囲気ではない。
王命を果たす為別れることとなった者達の複雑な心情が、会場の空気を変えているのが会場の外側からは良く見えていた。
「惜しいな」とワルドは呟いた。
ワルドの呟きに、同じバルコニーの暗がりにいる誰かが、ワルドの方を向いた。

だがワルドはそれが誰か気にも留めなかった。
それどころか、先ほどまで「……早く帰りたい。トリステインに帰りたいわ。この国嫌い。イヤな人たちと、お馬鹿さんでいっぱい。
誰も彼も、自分のことしか考えてない。あの王子さまもそうよ。残される人たちのことなんて、どうでもいいんだわ」そう泣きじゃって自分の傍らにいたルイズのことさえ頭から締め出そうとしていた。

気のない言葉で慰めながら、ワルドの中にあったのはポルナレフの言葉だった。

あの伯爵は、自分がスパイだと気付いているという。

ならば何か手を打っているかもしれない。
ここは結婚し、偉大なメイジとなるであろうと彼が予感している相手を我が物とするだけにするべきか、ワルドは迷っていた。

それだけにすれば、ワルドは祖国も、王族も、婚約者や、趣味を同じくする友も裏切らずに済む…

だが…ワルドは慰める間ルイズの肩に置いていた手に力を込めた。

「痛…っ、どうしたのワルド?」
「すまない。彼らを見て、同じ貴族として何か他人事とは思えないところがあってね」

ルイズが顔をしかめ、慌てて指から力を抜く。
逆の手を、きつく握り締めた。

「……ねぇワルド」
「なんだい?」
「貴方、姫様の…ううん、なんでもないわ。ごめんなさい」
「うん?」
「いいの! 馬鹿なことを聞いて、危うく貴方にがっかりされる所だったわ。本当、ポルナレフにも困ったものよね」

慌ててなんでもないと繰り返すルイズを安心させようと、穏やかな、彼女の思い出の中で美化されているであろう過去の自分と同じ笑顔をワルドは浮かべた。
照れくさそうに俯くルイズから目を放し光に包まれた会場、そして星を隠すほど眩しく輝く二つの月が浮かぶ空を見上げた。
見上げた空は、月が明るすぎるせいで真っ暗闇のようにワルドの目には映った。

心を決めなければならない。

ワルドから見れば少年と言っていい年齢のゲルマニア貴族には理解しようもないだろうが。

たとえ犠牲が大きかろうと、誇りに傷がつこうと…祖国と俺の未来は、覚悟が道を切り開く。

握り締めていた指を開き、ワルドはマントに描かれたグリフォンに触れた。
そんなワルドを見ているサイトの片目が冷たく光っていた。


レビテーションで運ばれる王の後に従い、ジョルノは会場の喧騒から遠ざかっていった。
ポルナレフやテファが入っている亀を抱えて月明かりに照らされた廊下を歩き、階段を上っていく。
気遣わしげな様子で王の後に続いていたウェールズと一瞬目があった。
パーティの前に通されたウェールズの部屋に程近い部屋の前で彼らの足は止まった。
中はウェールズの部屋ににて質素だったが、王がレビテーションを解かれ下ろされたベッドだけは精緻な金細工の施された高価な物だった。
王が寝室として使っている部屋らしい。

内密の話と言ったジョルノに配慮して、ウェールズ以外の者は足早に部屋を出て行く。
そして、最後の者が退室してから、ウェールズはサイレントの魔法を唱えた。
魔法の効果により、部屋の外から微かに聞こえていた風の音さえしなくなり…老いた王はジョルノに内密の話とやらをするようにと、目で言ってきた。

「モード大公の事件について知る限り教えていただきたい」

その目配せに頷くなり、ジョルノは何の前置きもなく尋ねた。
床に伏せった王の喉からクック、と笑い声が漏れた。

「…何かと思えば、伯爵は冗談がお好きなようじゃな。
ほれ、本当の頼みを言ってみよ。今なら我が王家に伝わる始祖の秘宝を見せてやってもよい」

そうジョルノへ返された言葉は先ほどまでのやりとりなどなかったかのように冷めていた。
幾つものクッションを背もたれにした、半分死んだような、枯れ木のような体の奥から淀んだ何かが溢れようとしているかのようだった。
始祖、虚無に関する秘宝に惹かれないわけではなかったがジョルノは首を振った。

「ある方からどうしてもと頼まれました」
「伯爵! 誰にそのようなことを言われた!それはどこの愚か者、ゴホッゴホッ…!」

二度目を口にしたジョルノを今回は怒りに震えながら、老王は怒鳴りつけ噎せ返った。
慌ててウェールズが駆け寄り、背中を摩る。
王の口内のどこか切れてしまったのか、咳をする王の口から赤いものが飛び散っていた。

「ふぅ…もうよいウェールズ。伯爵、早う答えんか!」

ジョルノが言葉を返す前に、「私です」そう亀の中からテファが顔を出した。
ぎょっと、王が痩せて窪んだ目を見開きクッションから身を乗り出す。
非難するような目で、ジョルノは言う。

「テファ、何故出てきました」
「本当なら私が聞かなきゃいけないことだから…これくらいは自分でやらせて」

そう言ってジョルノに申し訳なさそうに亀から出てくる少女を王は驚愕を持って迎えた。
出てきた亀の中から、ポルナレフの声がした。
普段の脳天気にも見える明るさはなりを潜めた、年相応の落ち着いた声だった。
「ジョルノ」名を呼ばれたジョルノは亀の甲羅に差し込まれた鍵の宝石の部分から中を覗き込む。
宝石の中に小さなポルナレフと、複雑な表情で杖を持ったままソファに座るマチルダが見える。
よく見れば、我関せずといった素っ気無いたいどで見繕いをするペットショップの姿も、部屋の端っこの方に確認できる。

ポルナレフは、何も言わずに硬い意思を感じさせる眼差しをジョルノに向けていた。
靴に化けたままのミキタカからも視線を感じたジョルノは軽く息を吐き、テファの隣にたった。
既にテファのことを認めているウェールズは気遣わしげに、王は悪夢でも見ているような目をしていた。
王が節くれだった指でテファを指した。
テファは初めて会う叔父に対する親愛の情が篭った眼差しを向け、微笑すると亀の中にいる間にマチルダに教わったアルビオンの儀礼に乗っ取ったお辞儀をする。

「貴様、その耳…まさか」

テファの耳を指す指の震えが、王の激しい感情の揺れを表すように激しさを増す。
顔を未だ伏せたまま、いつもの聞く者を穏やかな気持ちにさせる、囁くような声ではなく、緊張から響きの良い声でテファは返事を返す。

「はい、陛下。ティファニアと言います。私はモード大公と愛人だった母「杖じゃ! つ、…っごほっごほっ」
「!父上!」
「叔父様!?」

血の混じった咳をしながら、王は布団を叩いた。
簡単にへし折れそうな細く血管の浮いた指が痙攣を起こしながら布団を掴む。

「汚らわしいぞッ! 叔父などッ…う」

その言葉を最後に、王は胸を押えて布団へと倒れた。

「父上ッ父上…!」

体を支えながら、ウェールズが何度も呼びかける。
だが既に、発作を起こした一人の老人は息を引き取っていた。
テファが悲鳴を上げる…サイレントで遮断された室内に、甲高い叫びが良く響いた。
冷静にジョルノがベッドに駆け寄り、スタンドで心臓マッサージなどを試みる。
だが、その甲斐もなく王は、決戦の日を待つことなくテファの父との間にあった出来事を話すことも、再びその瞼さえ動かすことはなかった。

その死は、震える手で瞼を閉じるウェールズの判断で隠されることになり、「二人のせいではない。先の件も、変わりはしない…父の最後の命だ。命にも従う。だが…」と肩を落としたウェールズは二人に言った。
だがやり切れない顔でそう言ったウェールズがその頭で考えたのは父ではなくまだ生きているアンリエッタだったことに、ジョルノは気付きながら素知らぬ顔で礼を言った。

そして、ジョルノは王の死に責任を感じているらしいテファの元へ戻って抱き寄せる。背後で手を空ける為に上下逆に置いた亀からマチルダの声が聞こえたが聞こえないふりをした。
耳が痛くなるほど叫び、今まだ取り乱していたテファは、

「ジョ、ジョルノ。私、私大変なことしちゃった」
「落ち着いてください。テファのせいではないとウェールズ殿下も言ったでしょう?」

テファの髪を撫でながら、ジョルノは刺激しないよう優しげな声で言う。
囁かれた言葉に、狼狽えたままのテファは自分が悪いと決めて聞く耳を持っていなかった。

「嘘よ、私が、お体が悪かったのに私なんかが現れたから…」
「それは違う。ティファニア、父の死は寿命だったのだ。君が気にすることはない」
「そんなことないわッ! 叔父様は…私を憎んでらっしゃったわ…! だから、あんなお体だったのに興奮して…!」

亡くなった父の瞼を閉じ、ベッドに寝かせながら言葉をかけたウェールズに、テファは激しく首を振った。
少し眉を寄せて、ジョルノは先ほどよりも幾分強い口調で言う。

「テファ、僕が違うと言っているんです」
「ううん、私が悪いの。クリスの言うとおりなんだわ。私が、私が生ま」

呆れたジョルノは一転して、テファの頬を叩いた。
亀の中からポルナレフが手をあげたことについて激しい非難を始める。
ジョルノは無視して言う。

「何度も同じことを言わせないでください。僕が違うと言っているんです」

少し加減を間違えられてほっぺたを真っ赤にしたテファは、呆然とした様子でジョルノを見つめた。
亀の中から、喧騒が聞こえたが…亀を気にする余裕はなかった。
静かな声。だが静かに、怒っているのだと考えたテファは俯いてしまう。だがか細い小さな声で言い返しもした。

「で、でも…現に、こ、ここうなって、叔父様が」
「違う! いいか、貴方が彼らにしたことなんて何もありません」

俯いたまま目を動かし、死体をみようとするテファの顔を片手で押さえ、ジョルノは低い、厳しい声で切り捨てた。
テファは真剣な眼差しから逃れようとして下を向いた。
目から零れ落ちたものか、雫か敷かれた毛の長い絨毯に少し沈んだ靴の上に落ちて光った。
テファの頭の中には、叔父の死を引き金に母が殺されたことや、これまでのこと、父母や、イザベラに言われた言葉が繰り返されているようだった。

「でも皆、そう言うわ。出来損ないの私だもの、そうに違いないわ。私も、そう思うもの「違う」

否定的な考えに取り憑かれ口からでた言葉に、今までになく強い口調でも断言するのを聞いたテファはジョルノを見上げた。
声音がほんの少し前とは全く変わっているように感じられたからだった。それは正しく強い口調だったがジョルノは怒りなどは見せていなかった。
涼やかな、意気消沈するウェールズの目にも、このアルビオンに吹く春風のように、鬱屈した気持ちを吹き飛ばすような爽やかさが感じられた。

「そんなことを思っているのは貴方だけだ。(貴方も他の者も)僕が黙らせる」

微笑を浮かべたジョルノの声は、心地よく響いた。聞く者によっては話しかけてくる言葉に危険な甘ささえ感じられた。
が、酷く落ち込み鬱屈した気持ちを抱えようとするアルビオン王家の二人は全く気にもせず、奇妙なほど惹きつけられていた。

「いずれ、帽子も魔法も使わなくても自由にどこへでも行けるように暮らせるようにしてみせる」

驚いたようにテファがジョルノを息をするのも忘れて見つめた。
そうして一瞬、安堵したように息をつきジョルノの笑みに釣られるように、テファが薄く笑うのを見てジョルノは…少し乱暴にテファを亀に押し込んだ。
らしくないと微かに頭を振り、父の亡骸の傍らで無理をして穏やかな顔を見せるウェールズに礼を言って、部屋を後にする。

「よく言ったな、ジョルノ」

部屋を出て、扉を閉めるなりテファを押し込んだ亀からポルナレフが言葉をかけてきた。
靴に姿を変えていたミキタカも、人間の姿になって言う。

「ちょっとは見直しましたよ」

そう言って肩を叩いてミキタカは亀の中へと戻っていく。
ジョルノは眉間に眉を寄せて困ったような顔をして歩き出した。
ミキタカと交代するかのように、ペットショップが亀の中から飛び出す。
狭い階段の中を飛ぶペットショップの姿に、ジョルノは亀を持っていない方の腕を差し出した。ペットショップがそこに泊まる。
珍しく言い返してこないジョルノにポルナレフは亀から頭だけ出して、愛嬌のある笑みを浮かべた。

「照れるなよ、俺はこれに関しちゃ応援するぜ」
「ありがとうございます…」
「なんだなんだ! 歯切れが悪いな。何が気に入らないんだ?」

ため息混じりに尋ねたポルナレフにジョルノは苦笑した。

「そういうことじゃあないんですが…テファは?」
「嬉しそうにはしちゃいるが……ッ、まさか…二人っきりにして欲しいとかそういう話か!?」

何かを想像し意味ありげな笑みを浮かべて顔を寄せてくるポルナレフにジョルノは首を振った。

「いいえ。まだ用事がありますからね」
「用事…? まぁいい。それより吐けよ。何が気に入らないんだ?」

尋ねられたジョルノは、腕を組んで少し考えるような素振りを見せた。
片方違う色の目をさせてジョルノを覗き込むペットショップの羽を眺める。

「おい、黙るなよ…なんならテファなら奥の亀の中に入れておいてやるからさ。ミキタカ!、テファを奥に連れて行け」
「…」

亀の中から聞こえてくるやり取りに、歩き出しながらジョルノはため息をついた。
持ち歩いていた亀を階段に置いて、ジョルノは言う。

「この話は以前から考えていたものです。それを」
「それを?」

ポルナレフは首を傾げる。
薄暗い階段で足を止めたジョルノの苦笑はなりを潜め、険しい表情に変わっていた。

「いえ、また今度にしましょう。僕はこれからこの城を一回りしてきます。後のことはお任せしましたよ」
「はぁ?」

勝手なことを言って階段を上がっていこうとするジョルノの肩を、マジシャンズレッドを使って掴む。
肩越しに振り返ったジョルノは、普段どおりの冷静な顔をしていた。

「なんです?」
「なんで一回りする必要があるんだ?」
「もしもってこともありますからね。念の為に明日までに退路を確保しておきます」
「そ、そうか…」

返事に納得したポルナレフは肩を掴んでいた手を離させる。
ジョルノは一人壁に手を付き、薄暗い階段を一人上がっていった。



古い石段を上りながらジョルノは腕に止まったペットショップに言う。

「イザベラ、何か変わったことは? シャルロットとは予定通りうまくやっていますね?」

『使い魔は、主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ』
使い魔とメイジの繋がりを利用した感覚の共有。
イザベラの使い魔であるペットショップは、それにより現在ガリアにいるはずのイザベラを感じ取り、簡単なことであればジョルノに伝えることが出来る。
イザベラが戻ってから何度か行ってきたことだが、ペットショップはその日に限り何もしなかった。
月明かりに、ペットショップにしては珍しく、困っているようにジョルノの目には映った。
何か行動し、イザベラの言葉を伝えようとするはずのペットショップはジョルノを見ると首を横にふった。

「……何か怒らせたかな?」

怪訝そうに言うと、ジョルノはペットショップに辺りを見回ってくるように言って窓から夜空へとペットショップを放す。
夜空を悠々と飛び始めたペットショップの姿を暫し眺め、先ほどの会場で組織の人間でもある王党派の貴族から受け取った手紙を懐から取り出した。
今頃は会場で、家の為であり王の命でもあると説得し、あるいはこちらに引き込もうとしている者達は最悪生み出した亀の中にすし詰めにでもしよう。
今度こそ、城の中を一通り見て回る為に歩き出した。


To Be Continued...

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