ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのスネイク 改訂版-02

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匿名ユーザー

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2話


「……ナルホド。ツマリ私ハモウオ前ノ使イ魔ニナッテシマッタノカ」
「そうよ」
「……ソシテコノ左手ノ甲ノ文字ハソノ印カ」
「そうよ」
「仮ニ私ガコノ左手首ヲ切リ落トシタナラ、ドウナル?」
「どうもならないわよ。あんたが痛いだけ」
「デハ、私ガオ前ノ使イ魔ヲ辞メル方法ハ無イノカ?」
「無いわ。主人と使い魔との契約は使い魔が死ぬまで解除されないもの」
「…………」

ホワイトスネイクは静かに絶望した。
何の因果か知らないが、主人と切り離された上にこんな小娘に使われてしまうことが確定したのだ。
こんなことになるなら主人の死と同時に消滅していたほうがいくらかマシだった。
しかも今いる場所は、地球とは全く別の場所らしい。
その証拠に、窓から見える月は赤と青の二つ。
まるでおとぎ話の世界だ。

「……モウ一度確認シタイ。ココハドコダ?」
「あんたもしつこいわね。別の世界から来たとか変なことも言うし……。まあいいわ。
 ここはハルゲキニアのトリステイン王国にある、トリステイン魔法学院よ」
「ソシテ使イ魔トハ何ダ?」
「主人を守るのは勿論、主人の目や耳になったり、主人のために秘薬の材料を探したりもするわ。

最後の一つを除けば、スタンドと同じである。

「でもあんたに見えてるものは私に見えないし、おまけに秘薬の材料なんか探せないみたいだし……」
「ソレハイイ。ソシテ私ガ使イ魔ヲ辞メルニハ……死ヌシカナイ。ソウダナ?」
「ええ、そうよ」

実にスガスガしいルイズの解答に、ホワイトスネイクは再び絶望した。

「何よ、その顔! わたしがご主人様だってことに文句でもあるの?」
「アル」

ぴきっ、とルイズのこめかみに筋が走る。
じょ、上等だわ、この使い魔。
この私が、このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがご主人様だってことに文句があるっていうの?
お、面白いじゃないの。

「じゃ、じゃあ聞いてあげるわ。わわ、わたしのどこが、不満なのよ?」

まさしく「マジでキレる5秒前」のルイズ。
だがそれを知ってか知らずか、ホワイトスネイクは常識を語るかのように言った。

「適材適所、トイウ言葉ガアル。
 優レタモノハ優レタ所ニ、劣ッタモノハ劣ッタ所ニ、トイウコトダ。
 ソシテ……私ガ充テラレテモイイ場所ハタダ一ツ。ツマリ私ヲ使ッテイイ人間ハコノ宇宙デタッタ一人。
 ダカラオ前ノヨーナ年端モ行イカナイ小娘ニ使ワレルコトガ一番ノ不満ダ」
「だ、誰よ、その『あんたを使っていい人間』ってのは?」

わなわなと震えながらルイズが言う。

「エンリコ・プッチ。
 カツテ……ト言ウカ、ホンノ少シ前マデ私ヲ使ッテイタ人間ダ」
「エンリコ・プッチ? 誰よ、それ?
 それに『使っていた』ってどういうこと?」
「エンリコ・プッチハ聖職者デ優レタスタンド使イ。
 『使ッテイタ』トイウノハ、単純ニ私ノ本体ダッタッテコトダ」
「『スタンド使い』? 『本体』? ……あんた、何言ってるの?」
「……ソウカ、マダマトモニ説明シテイナカッタナ」

そう言うと、ホワイトスネイクはふわりと空中に浮き上がった。

「私ガ『スタンド』ト呼バレル存在ダトイウコトハ話シタナ?
 『スタンド』トハ精神ガ具現化サレタモノ。
 ツマリ私ハエンリコ・プッチノ精神ガ具現化サレタモノダトイウコトダ。
 『種族』トイウ括リハ私ニハアマリ合ッテイナイ訳ダナ
 ソレトコノ具現化ノ元ニナッテイル人間ヲ『スタンド本体』ト呼ブ。
 サッキ言イッタ『スタンド使イ』トハスタンドヲ持ッテイル人間ノ総称ダ」

ホワイトスネイクはペラペラと説明する中、ルイズはぽかんとしてホワイトスネイクを見上げていた。

「スタンドニハ『ルール』ガアル。
 能力、性能、性質、スタンド本体カラ離レラレル距離……スタンドハ様々ナ『ルール』ニ縛ラレテイル。
 故ニ……オイ、聞イテルノカ?」
「……あんた、空飛べたの?」
「正確ニハ『浮ク』ダ。
 コノ程度ノコトナラ大概ノスタンドハデキル。
 ソレハイイトシテ、私ノ話ハ聞イテイタンダローナ?」
「き、聞いてたわよ! 要するに……っていうか、あんたの話を信じろっていう方が無理よ。
 あんたの言ってることが本当なら、あんたは生き物ですらないことになるじゃない」
「ソノ解釈デ合ッテイル」
「それが信じられないってことよ。第一あんた、私と話せてるじゃない。
 それにちゃんと痛がったりもするみたいだし……やっぱり『生き物じゃない』ってのは信じられないわ」
「今ハ分カラナクテモイイ。ソノウチ信ジルヨウニナル」

そう言ってホワイトスネイクはふわりと椅子に降りた。

「まあ……今はそういうことにしておいてあげるわ。
 他のみんなには『エルフの眷属』だって言っておくから」
「『エルフ』?」
「亜人の一種よ。すごく強力な先住の魔法が使えるの。
 それも優秀なメイジ何十人分にも匹敵するぐらいのね」

そこでルイズはいったん言葉を切る。

「それで、結局あんたが言いたいのは『私が優秀な主人じゃないから認めない』ってことでしょ!?
 何で私の実力を見もしないうちからそんなこと言うのよ!」
「私ハコレデモ20年人間ヲ見テキテイル。
 誰ガ優秀デ、誰ガ無能カハ、見レバ大体分カル。
 ダカラオ前ガエンリコ・プッチニ及ブヨウナ器デハナイコトモ分カル」

ぶちん。
本日二度目、ルイズの中の決定的な何かが音を立てて切れた。

「なっ、何よさっきからプッチ、プッチ、って!
 そんなにそいつがよければそいつのところに行っちゃえばいいじゃない!
 何で私のところに召喚されてきたのよ!」
「ソレハ無理ダ」
「何でよ!」
「エンリコ・プッチハ既ニ死ンダ」
「……えっ?」
「私ガコノ目デ確認シテイル」

予想もしなかった答えに、言葉を失うルイズ。
だがそんなルイズに構うこともなくホワイトスネイクは続ける。

「正直、何故自分ガ生キテイルノカ……ソレスラ私ニハ見当モ付カナイ。
 ソシテ此処ハ分カラナイコトバカリダ。
 何故スタンド本体ト切リ離サレテイル私ガ存在デキルノカ?
 何故生キル目的モナイノニ私ハ生キテイルノカ?」

そこでホワイトスネイクはいったん言葉を切る。

「オ前、サッキ私ノ足ヲ踏ンヅケタヨナ?」
「え、ええ……」
「本来ナラ私ハスタンド攻撃デシカダメージヲ受ケルコトナド無インダ。
 コレハ私ダケデハナイ。スタンド全テニ共通スルコトダ。
 ツマリ……ヒョットシタラ私ハ、モハヤスタンドデスラナイノカモ知レン」

そう言ったきり、ホワイトスネイクは何か考え込むかのように押し黙ってしまった。
ルイズも言葉が見つからず、何も言えない。
ただはっきり分かったのは……ホワイトスネイクが「生き甲斐」をなくしているということ。
その生き甲斐だった人はもうすでに、しかも目の前で死んでしまっていて……。
ルイズにはもちろんそんな経験はない。
それどころか、自分の生きがいとなるようなことさえ見つけていない。
やっぱりこいつの言う通りで、自分はまだ小娘なのかもしれない。
でも――

「それで……あんたはこれからどうするのよ?」
「自決デモシヨウカト考エテイル」
「ふーん……って、ええええええええええええ!?!?」
「無論本気ダ」
「ちょ、ちょっと! い、いくら生き甲斐がないからって、そんな、何も死ぬなんて!」
「オ前ハ知ラナイカラソンナコトガ言エルノダ。
 生キ甲斐ヲ失ウコト、生キル目的ヲ失ウコトガ意味スル本当ノトコロヲナ」
「何よそれ! 全然納得できないわよ!」
「納得スル必要ハナイ。
 オ前ノヨーナ小娘ニハ説明シタトコロデ分カラン事ダカラナ」

そう言って、ホワイトスネイクは退屈そうに天井に目を向けた。

……ななな、なんなのよ、こいつは。
さっきからわたしのことを小娘、小娘って。
しかもなんなのこの態度?
まるで私のことをご主人様だなんて思っちゃいないわ。
スタンドだか何だか知らないけど、たかが亜人の分際でいい気になってくれるじゃないの。
今に見てなさい。このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがあんた如きを使い魔にするぐらい当然のメイジだってことを……。

そこまで考えて、ルイズの思考が止まる。
じゃあ、それをどうやって証明するの?
こいつに自分を、どうやって認めさせるの?
その手段が今の自分には……あるの?

……「今の」?
その単語に、ぐるぐると回り続けるだけだった思考が一気に一つにまとまった。そして定まった。
今後の自分の目標、そして目指すところ。

「ねえ、あんた。……賭けをしない?」
「賭ケ、ダト?」
「そう、賭けよ」
「内容ハ?」

ホワイトスネイクが乗ってきた。
その様子にルイズは内心でほくそ笑み、そして少し間をおいてからこう言った。

「1年でわたしが、あんたがご主人様と認められるだけのメイジになれるかどうか、よ」

ふふん、と胸を張るルイズ。
だが。

「真面目ニ聞コウトシタ私ガ馬鹿ダッタ」

そう言ってまたホワイトスネイクは天井に目をやった。

「ちょ、ちょっと! わたしは真面目に言ったのよ? 
 わたしが立派なメイジになれればあんただって私の使い魔になるっていう立派な生き甲斐が出来るじゃないの!
 そ、それを、『真面目に聞こうとしたのが馬鹿だった』ですって!?」
「仮ニ1年間デ何モ進歩ガナカッタトシテモ……1年間ハ私ヲ使イ魔トシテソバニ置イテオケル。
 ソレガオ前ノコノ賭ケニオケルメリットデアリ……強イテ言エバ勝ッテモ負ケテモオ前ハ得ヲスルヨーニナッテイル」
「なっ……」

あっさりと自分の考えを看破され、唖然とするルイズ。

「ソレニ何カ勘違イシテルナラ言ッテヤル。私ハオ前ノヨーナ小娘ニハ何モ期待シテイナイ。
 ダカラオ前モ私ニ何カ期待ナンカシナイデサッサト新シイ使イ魔トヤラデモ呼ベバイイ」
「な、ななな、なんですってええええええ!!!」

度重なるホワイトスネイクの高慢な物言いに、ルイズの堪忍袋の緒が三度切れた。

「あ、あんたは! さっきから小娘小娘ってわたしをバカにして!
 せいぜいあの世でみてなさいよ! 
 あんたがわたしの使い魔にならなかったことを後悔するぐらいのすごいメイジになってやるんだから!!」
「後悔ナドスルモノカ」
「ふん、そんなこと言ってられるのもせいぜい今のうちよ!
 偉大なメイジになったわたしを見たあんたはあの世から飛んで戻ってきて、
 泣きながら『わたしを使い魔にしてください』ってお願いするんだわ!」
「勝手ニ言ッテロ。私ハ好キニスル」
「逃げる気!?」
「……何ダト?」
「そうよ! あんたは怖いんだわ!
 わたしが立派なメイジになって、その私に見返されるのが怖いんだわ!
 この臆病者! 卑怯者! でも逃げるんだったら今のうちに尻尾巻いて逃げるがいいわ!
 わたしは一人前になった後、その後ろ姿を大声で笑ってやるんだから!」

プッツ~~~ン!
決定的な何かが、また切れた。
だがルイズのではない。

「……言ッテクレルナ、小娘」

ホワイトスネイクのだ。

ホワイトスネイクはそう呟くと、椅子から跳ね上がるようにして空中に上がり、
ルイズの目の前に見せつけるように急降下した。

ドヒュゥンッ!

「きゃあっ!」
「コノ私ガ、コノホワイトスネイクガ、オ前如キ小娘ニ泣キナガラ懇願スルダト? 逃ゲルダト?
 面白イナ……コノ20年、私ニ向カッテココマデ言ウ奴ハソウハイナカッタゾ……」
「な、なななな何よ! 何する気よ!」
「オ前ノ賭ケニ乗ッテヤルンダ」
「……え?」
「期限ハ半年。
 ソノ間私ハ、オ前ノ言ウ『使い魔』トシテオ前ヲ見極メテヤル。
 ソシテオ前ガソノ半年ノ間ニ私ニ認メサセルダケノ者ニナッタナラ、オ前ノ勝チダ。
 ダガナレナカッタナラ……」

「オ前ノ『記憶』ヲ貰ッテイクゾ」

地獄の底のような声でそう言うと、ホワイトスネイクは煙のように消えてしまった。
後に残されたのは、ぽかんとした顔のルイズだけ。

「……ひょっとして……うまくいったの?」

「記憶を貰っていく」ということの意味どころか、期限が半年に縮んだことも、まだ分かっていないルイズだった。




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