ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ジョルノ+ポルナレフ-24

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匿名ユーザー

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あ、ありのまま今起こったことを話すわ。
私は夕食を取ろうと思って食堂に向かった。
いつも通り食堂に入ると食堂の奥、お客様用の席にお母様とちい姉さまが伯爵と一緒にいた。

な、何を言っているかわからないと思うけど私にも何が起こっているのかわからなかったわ。
妄想だとか幻覚とかそんなちゃちなもんじゃない…もっと恐ろしい未来が目の前に広がるようだったわ。

「ルイズ。やっと来たのね」
「ちいねえさま!」

でもちいねえさまと久しぶりに会えたからいいわ、とすぐ上の姉と再会して再会した喜びに任せてカトレアの胸に飛び込んだルイズは思った。

「お久しぶりですわ! ちいねえさま!」

席に着いていた生徒達が、ルイズとカトレアを見比べて噂話を始める。
二人の娘を見守るヴァリエール公爵夫人、カリーヌ・デジレも含め、髪の色といい、目の色といい見れば見るほどルイズにそっくりだった為関係者ではないかと噂していたのだが、
それが確定し、間を置かずに今度は彼女ら親子の品評へと生徒達の興味は移っていた。
当人がいるので滅多なことは口に出されないが、何故ルイズの家族がこの学院にいるのか皆興味深深なのだ。

「あえて嬉しいわ。わたしの小さなルイズ。さ、母様にもご挨拶してご飯にしましょう」
「え、はい…母様」

呼びかけられ、夫人がルイズを見る。それだけでルイズは緊張して体を硬くした。
使い魔を再召喚したことをこの場で問い詰められはしないかという不安に駆られながら、ルイズは母と再会の挨拶を交わす。
ルイズの緊張した様は、小さい頃から変わらない何か悪い事をして隠している時の態度だったが、夫人はあえて無視してルイズに挨拶を返す。

「ごきげんようルイズ。挨拶が済んだら早く自分の席に行きなさい。もう余り時間がありませんよ」

規則に従い普段通り同級生達と共に食事を取るように言いつける夫人。
規則を破る事は彼女にとってはタブーだった。
それはわかっていたが、再会を喜んでいたカトレアはルイズを庇うように前に出た。

「母さま。そんなことおっしゃらないで。せっかく久しぶりにルイズと会えたのよ。一緒にご飯くらい」
「おだまり」

カトレアの説得とちい姉さまに懐くルイズを一言で切って捨てて、夫人はもう一度言う。

「ルイズ、もうすぐ朝食の時間です。早く席に着きなさい」
「は、はい。母さま」

しゅん、として席に戻っていくルイズを見送ったカトレアは席に戻り、口を挟まずにやりとりを見守っていていたテファにごめんなさいねと声をかけた。
普段と様子の違うルイズに周りの生徒達は驚きを隠せないようだが、そのざわめきも次第に消えていく。
炯炯とした光を称えた瞳が騒がしくする生徒に向けられる度に教師達が駆け足で黙らせに向かっているせいだった。
次第に食堂は給仕達が料理を運ぶ音だけになっていく。ルイズの生徒振りを見ていた夫人は自分達のテーブルを見て眉を寄せた。

「ジョナサン、一つ尋ねておきたいのですが」
「なんでしょうか」

少し顰められた声で言う夫人にジョルノは視線を返す。名前を呼ばれたことは、カトレアを治療して以来息子同然だなんだという公爵の趣味と思い気にしなかった。
夫人の目はジョルノの前にある皿に向けられていた。

「朝からはしばみ草を?」
「ええ、夫人も如何ですか?」
「いりません」

即答する夫人に少し残念そうにするジョルノを見て、カトレアはテファに囁いた。

「ジョナサンったら、よく食べられるわね。あれとっても苦いのに」
「やっぱりそう思う?」

二人が短く笑いあうのを見て、ラルカスがニヤリとする。
ちいねえさまの方を羨ましそうに見るルイズの視線にカトレアが視線を返す。
マチルダの分も貰う為に厨房へ行ったポルナレフの帰りを待たずに朝食の開始を告げる生徒達の始祖ブリミルへのおいのりが始まった。


「ところでジョナサン。先日送ってくれたコート、とても素晴らしい出来だったわ」

授業までの少しの時間をちい姉さまと過ごすルイズを眺めていた夫人が突然ジョルノに声をかけた。
食事も終え、いつになく静に朝食を取った貴族の子女達の話し声の中でも、よく通る威厳のある声だった。

「カトレアのお気に入りになっているわ。あの子ったら少し前まであのコートを着こんで動物達と出かけてしまって大変だったんですから」

ヴァリエール公爵夫人の賛辞にジョルノは爽やかな笑みを返しながら、記憶を手繰っていた。
そういえば病を癒した後のやり取りで、幾つかプレゼントを贈っていた事をどうにか思い出した。
選ぶ時間はともかく、花以外は金と時間がかかるので少し手間取ったのを覚えている。

「ありがとうございます。職人もそれを聞けば喜びます」
「でもレディにズボンを贈るのはどうかしら。カトレアじゃなければ怒っていたわ」

苦笑する夫人に、ジョルノは頷く事で同意を返した。
このハルケギニアでは、まだまだズボンは男性だけのものなのだ。
そこに、脚線美が強調してしまう長ズボンを贈れば、咎められるのは当然のこと。
新たなファッションアイテムだと説明する者をつけたとはいえ、受け取ってくれたことは喜ばしい事だった。

「カトレア様だから贈りました。あれなら、スカートよりも自由に散策を楽しめるはずです」
「…それには賛成ね。でも、人前では履かせませんからね」
「はい」

返すジョルノにヴァリエール公爵夫人、カリンは顔を寄せて声を潜めた。
一つ確かめておきたい事があった。
快復祝いに幾人もの貴族から送られてきた品々の中で、生地と職人を遣わせてきたのは、服飾ブランドをもつネアポリス家ならではと感じたが、最初に贈られてきたコートの生地は桁が違った。

ビキュにゃー100%
アルビオンの原生動物で断熱性保湿性に優れた体毛を持つ家畜ビキュにゃー…美しい毛並みと基本的には完全に人に懐かぬ習性、
愛らしい姿に優雅さまで持つビキュにゃーの毛は細く、糸に紡いで利用される。
そしてその極めて決め細やかなその糸は『繊維の宝石』、時に宝石のように取り扱われる。
そんなビキュにゃーの毛を更に厳選し、それのみで織られたビキュにゃー100%はコート一着数千エキューで取引される着道楽がヨダレずびっな一品なのだ。
「でも、あれほど上質の生地。一体どうやって入手されたの?アルビオンの王族でも早々手には出来ないでしょうに」
「時価というものがあります。あれほどの生地がほんのちょっぴりの火の秘薬と同等の価値しかない土地、というの存在するというわけです」

ハルケギニア中でも高い評価を得ていたビキュにゃーも、その家畜や直接飼っている平民達と共に戦争によりその存在が危ぶまれていた。
特に質のいいものは王族の直轄地や大貴族が治めているし…大事にされ、可愛がられてきたその生き物は食料としても研究されていた。
追い詰められていく状況が、彼らから普段の分別を奪いさり大切な家畜を見る目を失わせているという。
夫人にとっても嘆かわしい事だったのか、ジョルノの説明を聞いて夫人は悲しげな顔を見せた。

「戦争に伴う食料不足で食べ尽くされたと聞いた時は嘆いたものですが、例外もあるというわけね」
「はい。公爵夫人。幸い我が家は服飾も営んでおり、腕の良い職人も怯む生地でしたが、むしろその生地なら扱うのを得意とする職人も多数いるという幸運にも恵まれました」

夫人は納得がいったらしく深く頷いた。

「なるほど、良い腕の職人を抱えてらっしゃいますのね。コートも以前拝見したウェールズ殿下のお召し物と同じ職人が仕立てたかのような、とてもよい出来でしたわ」

アルビオンから平民が逃げていると言う話はカリンの耳に届いていたがもしかすると、それも…

「はい、他の着道楽を自負する方々もとても満足していただいてます」
「道理で、ガリアやロマリアでの成功の裏に彼らの手助けがあるわけね」
「ええ、目の肥えた方々に対する我が家の切り札の一つ、と考えています」
「素晴らしいわね。今度主人が一着注文したいと零していたのですけど、在庫はあるかしら?」

ジョルノは夫人の申し出を快く承った。
だがその直後、夫人は鋭い視線をラルカスに、次いでジョルノに送った。

「でも、よかったわ」
「ラルカスがなにか?」
「あの者によく似た背格好の賊が我がヴァリエール家の領内に出没していたの。でも、あの風ではなかったわね」

ポルナレフに頼まれて涼しい風を作っているラルカスを冷めた目で見ながら、ジョルノは初めて知ったような顔をして夫人と会話を続けた。
運が良かったが、風によってメイジまで判別できるとなれば、より念入りに隠蔽しなければならないだろう。厄介な話だった。

「ジョナサン、ルイズが授業を受けている間に学院内を案内してくださらないかしら? カトレアも私と周るより楽しめるでしょうからね」
「構いませんが、そろそろ今日こちらを訪れた理由を教えてくださいませんか」
「カトレアをこの学院に編入させる手続きを済ませるためよ」

せっかく治ったのだし、一度ルイズと学院に行ってみたいと言い出したのだと語る夫人は困ったような表情をしていたが、娘二人に向ける眼差しはとても穏やかだった。
授業がある為姉と別れ教室に向かうルイズを見送り、夫人の下に戻ってきたカトレアを迎える為ジョルノは席を立つ。

「カトレア、私はオールド・オスマンと少し話があります。学院の案内はジョナサンにお願いしましたから」
「あらあら」
「それと例の件。貴方から説明しておくのよ」
「…ジョナサン、ごめんなさい。貴方にはお仕事があるでしょうに。母が無理にお願いしたんじゃないかしら」

一方的に言い捨てて去っていく母を追いかけず、ジョルノに謝るカトレアに頷き返す。

「今日全て案内しろ、という話ならお断りです」

断ってから、ジョルノは手を差し出す。
授業に向かう学生たちが、それを見ていたが涼しげな顔でカトレアを見つめる。
「ですが今日から数日、この時間なら付き合えます。それで如何でしょう?」
「うふふ、よろしくお願いいたしますわ。騎士様」

少し躊躇して、カトレアはジョルノの手を取った。
テファに声をかけてジョルノは歩き出す。
生徒達の噂する声が聞こえたが、それらを代表するようにポルナレフがラルカスに尋ねた。

「一体いつ知り合ったんだ?」
「ここに来る途中だ。ヴァリエール家の長女の婚約者と知り合った関係さ、まぁ治療をしたから医者と患者かもしれないけどな」
「…お医者さ…ゴホッゴホッ」

カリンに警戒心を持つラルカスは悪ふざけ無しに返事をしたが、ポルナレフはわざとらしい咳払いをする

「ん~?」
「なんでもねぇッ、それだけか?」
「それだけも何も顔合わせるの二回目だぜ?」

安堵したようにポルナレフが息を吐くのを聞きながら、ジョルノはテファも伴って食堂を痕にする。
と言っても、ジョルノもそこまで詳しいわけではない。
マチルダの奪還の為にある程度調べてはあったが、案内できる場所といえば図書館、コルベールの研究室、自室、体を動かしている中庭。
それにポルナレフ達が溜まり場にしている厨房に程近い中庭の隅…授業をしている教室の周りをうろうろしても邪魔になる。
当たり障りの無い図書館などへ向かいながら、3人は歩を進めた。
するとすぐに、ジョルノのところへ隼がやってきて、ジョルノが差し出した腕に止まった。
鋭い爪が腕に食い込むが、傷は付かない力加減をされているようだった。

「あは、凛々しい鳥さんね。ジョナサン、よかったら紹介してくださらない」

カトレアがその頭や羽に触れようと伸ばした手をペットショップは不愉快気に見下ろす。
それに気付いて、カトレアは手を戻したがそれに気付かないテファは遠慮なくその頭や嘴にさわり、胸などの羽毛の感触に顔を綻ばせる。

「ペットショップと言います。ある方から預かった僕の仲間です」

紹介されたペットショップは、主人の顔に泥を塗るまいと胸を貼り、目の前の女へと一応の礼を取って見せる。
だがジョルノに危害を加える存在ではないことは明白だったので、すぐに目を逸らし空へと目を向けた。
カトレアは気位の高さや余り相手にされていないのを感じたが挨拶を返す。

「前から聞きたかったことがあるんだけど…貴方達みたいな方って他にもいるの?」
「意味がわかりません」

とぼけたように答えるジョナサンに引き換え、ペットショップはカトレアを観察する。
怪しい動きを一つたりと見逃さぬと伝えてくる鋭い視線を受けながら、カトレアはあくまで柔らかい態度を崩さなかった。

「貴方だけかと思ったんだけど、ペットショップもね。貴方達は、ハルケギニアというか、なんだか根っこから違う生まれのような気がするの。違って?」

妙に確信を持って尋ねてくるカトレアの目は好奇心に輝いているように観察していたペットショップには見えた。
どうしてばれたのかと、あたふたするテファのせいかもしれないと思いペットショップはテファを睨む。
小さく悲鳴を上げて、テファが身を硬くした。それを見たカトレアが庇うようにテファとの間に入る。

「テファのせいじゃないの。私、妙に勘が鋭いみたいで」
「ええ、その通りです。知っているのはそれだけでも無いようですね?」

歩くのを止めずにジョルノは返事を返す。
カトレアはそれにはすぐに答えなかった。
間をおくように、ひとしきりペットショップの優美な姿を愛でるカトレアを急かすように、ジョルノはペットショップを腕から飛び立たせる。
ペットショップは周囲を警戒するためにその周りを飛び始める。
その動きに怯えて、先程睨まれたテファがジョルノの影に隠れるように移動する。

「安心してください。オールド・オスマンも今は私を見ていませんから」
「…ジョナサンは」

初めてカトレアは笑顔に陰りを見せて声を潜めた。
テファが息を呑む。

「盗賊達、ううん。ギャング達を率いているの?」
「はい。夫人に言われましたか?」
「母さまはもう余り疑って無いと思うわ。ラルカスさんの魔法が違ったから」

トライアングルクラス位になれば、大抵魔法を見ればそのメイジの腕を大まかに察することができる。
夫人程になれば、それはもう少し精度が高くなっているのであろう。

「貴方は違うと思ったんですね」
「違うけど、ラルカスさんって二人いるような気がするの。変な話だけど、そんな気がするわ」

自分の勘に疑いを持たないカトレアへジョルノは目を向ける。
カトレアの身を案じて、テファはジョルノの腕を掴んだ。
ギャングである事を秘密にしているジョルノだ。
もしかしたら、カトレアを消す事を考えているのではないかと、テファは不安になっていた。

「ジョナサン、どうして貴方はギャングなの?」
「ここは僕の故郷ではないし、仲間もいない。ギャングもなかった。確かに他の夢を見ることもできたかもしれませんが」

悲しげな表情を見せるカトレアにジョルノは変わらぬ態度で答えた。
輝くような爽やかさがあったが、それはカトレアの表情を曇らせていた。

「既に、僕の夢は決まっていた。僕の夢はギャング・スター。これまでもこれからもそれは変わりません」

ジョルノは足を止める。
自然とカトレア達も足を止める事になった。
この場には他には誰もいない事は、ペットショップが確認しているしオスマンの視線も感じなかった。

「気分が優れないのでしたら案内は明日にしましょう」

その申し出にカトレアは緊張からか汗を浮かべながら言う。

「ずるいわ。これでもとても緊張してるのに…ど、どうしてそう平然としているの?」

テファもその思いは同じだったらしく、目を大きく開いてジョルノを見ていた。
ほんの一秒か二秒考えて、言葉を選んでジョルノは言う。

「貴方が僕の味方だからな。烈風カリンの娘だけど…」
「どうしてそう思うの? 貴方は、私みたいに勘が鋭いとかっていうことで行動したりしないでしょう」
「アンタは母親にも打ち明けずに僕にこの事を伝えた。テファが僕の味方だってことは確かめてから」

え?と声を上げてテファがカトレアを見る。
否定も肯定もしないカトレアにジョルノは続けて言う。

「アンタがこのことに気付いたのは何時だろう? 疑いを持ったのは恐らく治療されてから数日後。
確信を持ったのはラルカスと烈風カリンが戦った時だ。ですよね?」

ポケットから幾つかの手紙を取りだし、その中からカトレアが贈った手紙を選んでジョルノはカトレアへと差し出した。
どうしていいかわからず、カトレアは手を伸ばしかけて空中で腕を止めた。

「贈られてきた手紙を読めばわかる。アンタは少しずつ、さりげなく情報を僕にくれていた。
今読み返せば、アンタが迷っていることもわかるだろうな。だから味方だと思ったんです」

差し出した手紙を引っ込めて、食堂から出る時と何ら変わらぬ様子でジョルノは手を差し出した。
カトレアは、困ったように眉をよせ泣き笑いのような表情を見せてその手を掴む。

「どうして貴方を母さまに突き出さなかったか…私にもよくわからないわ。でも(理由はないけど、)今はその方がいいような気がするの」

それを見てホッと安堵した様子を見せるテファにカトレアは笑いかける。

「…ねえテファ、貴方にも話しておきたいことがあるの。前に助けてもらった時、ジョナサンが父に出した条件のことよ」

カトレアを助ける時、ジョルノはヴァリエール公爵にテファの味方となることを求めていた。
その事をいうなり、では…カトレアの手を離し一旦少し離れようとしたジョルノの腕をテファが捕まえた。

「えっと…大事な話なら、ジョナサンにも聞いてもらっていいかしら」
「勿論、ジョナサンにも聞いてもらわないと」
「その話なら、私抜きで決めてもらいたいんですが」

肩を竦めるジョルノにカトレアは首を振った。

「テファ、貴方。私か母さまの娘になる気は無い? つまり、ラ・フォンティーヌ家かヴァリエール家の養女にならないかということなんだけど…」
「ええっ…!?」

ラ・フォンティーヌ家とは、カトレアが言ったとおりカトレアの家のことだ。
カトレアは父親であるラ・ヴァリエール公爵から領地を分け与えられている。
公爵が病弱で家を出られない自分の娘を不憫に思った結果で、そのため厳密に言うならカトレアはラ・ヴァリエール公爵家の人間ではなくラ・フォンティーヌ家の当主なのだ。
そのラ・フォンティーヌ家かヴァリエール家の人間とすることでテファを守る…テファがエルフだと言うことがばれた時ヴァリエール家にも累が及ぶことになるが、それだけの覚悟が公爵達にはあった。
だがそれを受けるなら…暗殺されたテファの父のこと。モード大公の、アルビオン王家の血を引くことを隠したままには出来なくなるかもしれない。

優しげに微笑んだままカトレアが言う提案に、テファが助けを求めるようにジョルノを視線を向ける。
ジョルノは爽やかな笑みを浮かべ、何も言わなかった。
だがテファには、ジョルノの表情を見てその提案を悪くないものと思っているのだと理解した。

テファにはジョルノの考えはわからなかった。
あっさりとギャングだという事を指摘したカトレアを味方だとジョルノは言ったが、まだ顔を合わせた日数はほんの数日でしかない。
イザベラと過ごした日数よりも更に短いのだ。そんな相手を、手紙でのやり取りとこうして少し話しただけで味方だなんて…本当に納得しているのかテファにはわからなかった。

それにもしヴァリエール家がテファをだしにしてジョルノに何か要求してきたら?
自分のせいでジョルノに迷惑がかかることを考えるとテファの胸は苦しくなった。

「私達は、少なくとも私は貴方を取引の材料に使う気は無いわ。その時は、私が貴方をジョナサンの所に届けるって約束する」
「…少し、考えさせて」

大きな胸の前に手を持っていき、硬い声で返事を返すテファにカトレアは寂しそうな顔を見せた。

「勿論よ…ごめんなさいね」

謝るカトレアを観察していたペットショップは、ジョルノに見咎められてより高く飛び去っていった。
そうして三人は図書館へと向かう。
門外不出の秘伝書とか、魔法薬のレシピが書かれた書物が置いてあるため入り口では眼鏡をかけた司書が座り人の出入りをチェックしていた。
若い女性の司書は、ジョルノをチラッと見て再び視線を読んでいた本に戻す。
それについて、ジョルノはカトレアにここ何日かここに通わせてもらっていると答えた。
三十メートル程の高さがある本棚に並ぶ本が、ジョルノ達の前に広がっていた。
本塔の大部分を占める程の膨大な本がここには所蔵されている。

カトレアが小さく歓声をあげながら、並ぶ本の背表紙を見ながら本棚の奥へと歩いていく。
テファはその本棚を見上げて、その本棚の大きさに歎息した。
ジョルノの亀の中にも本棚だけで埋め尽くされた亀というのはあったが、これとは比べることが無駄だった。
はじめて見る大量の本に圧倒されて、声も出ないようだった。

ジョルノは足を止めて、その本棚の手前の方で脚立に登っている男を見上げた。

初めて見る横顔だった。
だが、何か奇妙な感覚を覚えた…男が本から顔を上げて、ジョルノを見下ろす。
目が合った男は、満面の笑みを浮かべた。洗練された動きで彼は脚立から降りる。

「君はジョナサン。ゲルマニアのジョナサン・ブランドー・フォン・ネアポリス伯爵だね?」
「そういう貴方は?」

失礼した、と黒い肌と白い髪の男は足を止めたカトレアやテファにも礼をする、
そして再びジョルノを見つめ、ゆっくりとジョルノへ向かって歩いてくる。
熱狂的な…ペットショップの視線を更に熱くしたような目は、歓喜で潤んでいるように見えた。

「エンリコ・プッチ枢機卿。君と出会える日を、心から待ち望んでいた」


To Be Continued...


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