ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロと使い魔の書-01

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ゼロと使い魔の書
第一話
地球にひっぱられて、上着から体がぬけた。仗助のいる屋根が遠ざかり、茨におおわれている赤煉瓦の壁にそって落下した。
八角形のドームと七つの尖塔をもった[茨の館]の上空につよい風がふいて、……
目を開くと、鋭い日光に目を刺され僅かに眉を顰めた。
自分の身に起きた一番最近の記憶は、自らの存在意義でもあった「やるべきこと」が終わり、幕引きを行おうとした最後の最後で東方仗助との死闘に敗北し、
全身の骨を砕かれ茨の館から落下した。それで間違いない。
ならここはどこなのか。上半身を起こし、そして怪我が治っていることに気がつき、自分の目の前に広がる光景に言葉を失った。
緑色の海だった。
微かに吹く風が草を揺らし、草原は一つの生き物のように自身を波打たせていた。
神はいない。自分はそう考えていたが、どうやら単に怠慢で残酷で、そして気まぐれだったためにいないと勘違いしていたらしい。
自分は肉体という魂の枷から放たれてようやく、行きたいところに行かせてもらっているのだ。
ここがどこで、なぜこんなところにいるか、疑問は瑣末なものであった。
ただ、草原を眺めていた。
どれほどの時間が流れたか。
突然、背中に衝撃を感じ、前のめりに地面に突っ伏した。細々とした草が顔をくすぐった。
「平民のくせに!無視するなんていい度胸じゃない!」
振り返るとピンク色の長髪を揺らした少女が仁王立ちしていた。腕や胴回りなどはかつて自分に好意を抱いていた異母妹と同じくらい、ドーナツの輪をくぐれそうなほど細い。
その少女と自分を、黒いマントを羽織った少年少女が憐憫の情を含んだ嘲笑を浮かべ囲んでいた。

「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出して、しかも無視されちゃ形無しだな!いや、『さすがゼロ』と言うべきか?」
誰かの一言で、嘲笑は哄笑に変わった。
「ミ、ミスタ・コルベール!もう一度、召還のやり直しを要求します!」
少女は最後の希望、という表情で、周囲の中で唯一笑っていなかった中年男に言った。
「ミス・ヴァリエール……こう言ってはなんですが、自分を知りなさい……もう一回やる時間が……あると思うのですか?今のあなたに」
温厚そうな中年男は、しかし苦りきった顔で少女に言った。
「それがあなたの使い魔です。契約しなさい」
中年男に負けず劣らず嫌悪の表情を浮かべた少女は、首を振りながら自分に近寄ってきた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
唇の動きからいって、そう言ったのだろう。耳では聞き取れなかったほど早く小さく呟かれていたが、唇の動きを読める自分にとっては口元が視界に入っていればよかった。
少女は体が触れるぎりぎりのところまで近づくと、首をそらし自分を睨み上げた。
「屈みなさい!」
膝を折ると、少女は唇を重ねてきた。
「・・・・・・終わりました」
少女が呟くと同時に、左手の甲に熱を伴う強烈な痛みが走った。
左手を切り離さなければ死んでしまう、と思ったところで熱は引いていった。
見ると、不思議な模様が左手に刻まれていた。
「あんた、名前は?」
「……蓮見琢馬」
ここはどこで、目の前の人間達はなんなのか。
考えなければならないことが山積みであったが、自分には関係なかった。
見渡す限りの草原に、自分は立っている。
その事実の方がはるかに重要だった。


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