ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

外伝-2 コロネは崩さない?

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
い、今起こったことをありのまま話すのよ!
シルフィーはお姉さまに言われて翼人と村の人間達を仲良くさせるために暴れようとしていたのね!
でもそれより先に大きな風竜が現れて代わりに退治されたの!
な、何を言ってるかわらからにと思うけど、シルフィーにもお姉さまにも何が起こったのかわからなかったの!

そこまで言った所で、シルフィードは頭を杖で叩かれた。

「うるさい」

普段ならここでもっと、更にうるさくなるシルフィードだったが、今日は素直に黙りこくる。
何故なら二人の前には喋るシルフィードに興味津々な視線を深く被った帽子の影から注いでくる二人がいたから。

「ジョルノ!今の聞いた?竜がしゃべったわ!」

翼人と争っていた村に材木の買い付けにきたという商人二人の内の一人。
タバサとは比べ物にならない程胸の大きい少女が傍らに立つコロネ男に嬉しそうに言った。
樹木が重なり作られる大きな影に日の光は遮られ、帽子を被る二人の表情は口元以外見えなかったが、その口元が笑みを作っていた。
男は帽子を取り、タバサ達に軽く一礼した。
何人もの人間が歩き続け、踏みしめられてできた道から少し退いて、突き出た根っこなどの上を通り、重なる枝葉の隙間から降り注ぐ陽光の元へと出て行く。
隙間から差す日の光を受けて三つ並んだコロネが黄金色に輝いていた。

「はい。何かの本で読んだことがあります。韻竜という生き物「違う。ガーゴイル」

コロネが披露した知識をタバサは間髪入れず否定した。
ガーゴイルとは彼らが現在いるガリア王国ではポピュラーなマジックアイテムである。
姿形は用途により様々だが、魔力が続く限り自立行動可能な魔法人形として重宝されている。
宮廷の衛兵をしたり、人間そっくりに作られ御者をするものまでいる。
そんな代物であるから作ろうと思えばシルフィードのような物も作成可能だ。

シルフィードはそんなもの(ガーゴイル)扱いは大いに不満だが、これには理由があるので納得していた。
韻竜は絶滅したといわれており、見つかると研究対象にされてしまう可能性がある。
研究対象といっても観察などによってではない。
薬物や魔法の使用、最後は解体されてしまうことも十分に考えられる。
自分の使い魔をそんな風にさせたくはない…そう考えていても全く表情にはでないタバサをコロネはジッと見つめていた。

ジョルノと呼ばれているコロネは一瞬片眉を顰めたが、側に立つ少女に言う。

「テファ、帽子を取っていいですか?」
コロネの不躾なお願いにテファと呼ばれた少女は帽子を押さえて後退る。
何か見せられない事情があるらしく、視線はタバサ達とコロネの間を行き来する。

「え? だ、ダメ! だけど…」

タバサ達を見ながら拒否する少女は、黙っているコロネを見て口を噤んだ。

「いいわ」

いっそうそ臭いほど真摯なコロネの眼差し。それを見て、テファ帽子を取った。

よほど信頼しているらしい…二人のやり取りを見ていたタバサは、彼女にしては珍しく動揺を隠せずに目を見開いた。

帽子に隠されたのは結い上げられた金髪と儚げな美貌、それにエルフの特徴である長い耳。

エルフは人類の恐怖の対象、卓越した専従魔法の使い手で、タバサと同じクラスのメイジが10人以上いてやっと一人と戦えるなどとさえ言われているのだ。
だからこそ、見つけたら殺し合いになって当然!

だが、タバサは杖を構えなかった。
確かにタバサの体は驚きとエルフ相手に予想される最悪の事態から一瞬強張った。
しかしその一瞬さえ過ぎ去ればその年齢にしては少なくない修羅場を潜り抜け、注意深く観察する姿勢『見るんじゃあなくて観る』ことを理解していたタバサの目には、テファは敵として映らなかった。
おどおどしていて戦う意志がないのは明らかだったし、何かするような相手なら既に行っているはず。
それに…コロネが何故テファにエルフである事を明かさせたのかが、(ある程度予想はついたが)タバサには重要だった。

「テファは、人間とエルフのハーフなんです。この事を秘密にしてくれれば…」

ジョルノはタバサの予想通りの言葉を切って一つ付け加える。

「秘密にしてくだされば僕も秘密は守ります。絶対に…それと、これはお願いなんですが、もし次にどこかで会うことがあれば一緒に食事にでもいきませんか?」

こちらは予想外で、ジョルノ以外の時間は停止した。
悲しげだったり、困惑していたり、三者三様だったが、女連れで何言ってやがる、という雰囲気ではなかった。
タバサは、誰かに似ていると感じていたがやっと合点が行ってすっきりしていた。
憎き仇、ガリア王ジョゼフにちょっと似ているかもしれないのだ。
かも、というのは遠い昔に見た何かが、微かにコロネに重なる時があったからだった。

「テファには、こういった生まれが原因で年の近い同姓と食事にいったりしたことがありませんから、これはお願いですから、迷惑なら構いません」

そうとは知らぬジョルノは微かに笑みを浮かべて説明をし、周りに肩透かしを食らわせてからもう一度少し真面目な顔をタバサ達に見せる。

「それと、貴方の用事は何故僕が協力したか?でしたっけ?」

タバサは頷いた。
どうやって風竜を用意したかも気になっていたが、それ以上に理由が気になっていた。
だからこそ、村から出て行く彼らをシルフィードと一緒に追いかけてきたのだ。
コロネは少し考えるような素振りを見せてから、タバサに微かに温もりを感じさせる眼差しをむけた。

「あんたがいい人だからだ」
「そうなの!お姉さま好い人!きゅいきゅい!!」
「うるさい」

コロネに手を叩いて同意したシルフィードはまた杖で叩かれ、「痛いのね!」と喚く。
そんなやり取りをジョルノは眺めてから余り納得していなさそうなタバサにもう少し説明する。

「あんたが翼人達を退治するよう命令されていたのは知っている。なのにアンタは恋人達を見てそれを辞めた…手間がかかるしあんたにいい事はないのにな。だから僕は勝手に協力させてもらう事にした」

それだけを言って、ジョルノはチャオ、とかタバサには意味が分からない別れの言葉を最後に、テファを連れてタバサ達から離れていく。
テファがジョルノに駆け寄り何か話しながら道の幅が広がる地点で待っていた馬車に乗り、どこかへ行った。

…お父様にも、ちょっと似てるかもしれない。

タバサは離れていくジョルノを見送り、ふいにそんな風に思った。
髪の色などは全く似ていなかったのでどうしてそう思ったのかは良く分からなかったが、悪い気分ではなかった。
少し開けた場所まで出てから、タバサはシルフィードに乗ってあんまり気は進まないがガリア王国の王都の郊外にある王族の居城『ヴェルサルテイル宮殿』…の中にある薄桃色の小宮殿『プチ・トロワ』経由でトリスティン魔法学院に戻っていった。



「ねぇジョルノ。あなたの亀はいったいどこにいったのかしら?」

馬車に入り、少し走り出してからテファは尋ねた。
アルビオンを後にしてもう幾日かが過ぎていた。
子供達はジョルノの(どういう伝手かは皆考えないようにしていたが)伝手で暫定的にロマリアの名と実のある孤児院に向かっている。
最初はそこへ連れて行く間同行するはずだったのだが、ジョルノ曰く「手が足りない」せいでマチルダの関係者に子供達を頼み、ジョルノはテファを伴ったままガリア内を回っていた。

ロマリアの孤児院が今見つかっている中では一番良い。

そう判断したから子供達とそこへ向かっていたのだが、マチルダの関係者達がロマリアの孤児院に向かうと聞いてジョルノに言ったのだ。
宗教の中心地であるからエルフの血を引くテファは不味いという事を。

ロマリアは宗教の中心地でもある為ハーフエルフであるテファが住んでいくには適当ではない…
こんな初歩的な事を見落とすなんて、ジョルノからするとまさかって感じだった。(完全に中の人のうっかりだった…OTL)

一方、そんなわけから急遽子供らと離れジョルノと共に行動する事になったテファは、かなりの強行軍にとても大きい疲れと、それを忘れる見慣れない世界を観る楽しさで一杯だった。

ジョルノはそんな、アルビオンとは違う些細な出来事に歓声を上げ、何十分も話し続けるテファに、隠れて仕事をしながら付き合っていた。
例えば動き続けるアルビオンとは違う雲の流れについて馬車の窓から空を見上げ話し続けた。
あるいは、アルビオンの森とは自生する植物から全く違う、この黒の森と呼ばれる森の木々や花に触れて一時を過ごしたりしていた…その合間を見て亀を探しているのだが、今回もカメは見つからずテファは残念がっているのだった。

反対に、ジョルノはあっけらかんと「亀ですか? 亀はトリスティンにいます」と言った。

ジョルノの言葉にテファは、一瞬耳を疑った。

「ど、どういうこと?」
「あっさり見つけてしまうと貴女と色々見て回る旅が終ってしまいますから。後は、村で説明したように商売ですね」

言いながらジョルノは、似袋代わりに生み出したココジャンボの細胞を持つ亀からココジャンボの中にある盆栽の枝を取り出し、生命を与えて虫にした。
この旅を始めるにあたり、ジョルノはもうテファに自分の能力について少し教えてあった。
スタンド能力は隠すのが当然だが、旅の途中もしもってこともあるから少しは教えておいた方がいいと判断した。

生み出された虫、蝶は軽く羽ばたき、トリスティンの方角へ飛んでいく…それは元の盆栽がそこにある事を示していた。
テファはその能力を自分の虚無と同じように絶対に言ってはならない、ときつく言われている。
何度見ても、不思議な力だった。飛んでいく蝶を眺めて不意にテファは気付いた。

思い付きかもしれない。
だが、召喚されてから初めてジョルノの力について教えてもらったという事実が嬉しかったように、その思い付きが正しければ、嬉しいと思った。

「えっと、それって、もしかして…ジョルノが私と「ええ、実は既に通り過ぎているんです。今度は別ルートから戻りましょうか」

何かいいかけたテファを遮って言いたい事をいったジョルノは、トリスティン魔法学院に足を向けた。
そうした態度を取ると、ジョルノは絶対に口を割らないと経験で知ってしまったテファは少し膨れていた。

また少し寄り道をするか、ジョルノはそのテファの表情と頻繁に届く情報を眺めながら考えていた。
もうすぐ予定されているどこぞの貴族のパーティなど、目新しくてよいかもしれないな、と…ジョルノは村に滞在中に届いた幾つかの書類の中から一つ取り出す。

「テファ。次は貴族のパーティに参加してみませんか?」
「トリスティンでパーティがあるの? あ、でも、私耳が…」

帽子に隠れている耳を押さえるテファにジョルノは大丈夫だと言いながら書類を渡す。

「よほどのことが無い限り帽子を取らなくてもいいパーティですから」
「それに貴族の…これ身分証…?ジョナサン?」

書類は貴族であることを証明するもの。サインや印などは、テファは初めてみるものだったが偽者ではないようにテファには見えた。
テファはもう一度読み直す。少し揺れる馬車内だが、やっぱり書いてある名前はジョナサンだった。

「はい、奇妙な事なんですが、何故かその響きが気に入りましてね」

ジョルノじゃ?と首を傾げるテファにジョルノはジョナサンですともう一度言った。
強い口調だった。二度目だが、面倒そうではない。
ジョナサンという名前に、何かジョルノもわからない奇妙な感覚を感じているのか…視線は何処か遠くを見ていた。

「表では成り上がりのゲルマニア貴族ジョナサンで…ジョルノ・ジョバァーナは、ほんのちょっぴりの人達、テファ達だけが知っていればいい。そういうことです」
「…そうなの?」
「はい」

つまりちょっとした秘密を知っているということにテファはちょっと気分がよくなった気がした。
窓から見えるガリアの空も少し、青さを増したような気がする…

「じゃあ…髪型も変えないと駄目ね」

朗らかに笑いながら言うテファに、パーティ会場はトリスティンじゃありませんけどねと、まるっきり亀を探す気が無いようにも見える爽やかな笑顔を浮かべていたジョルノは眉間に皺を寄せた。

「お断りします」
「駄目よジョルノ。その髪型じゃジョルノだって皆わかっちゃうと思うの」
「何度もいわせないでくださ「私に任せて!」

どんな髪型にしようか早くも考え始めたらしいテファから目を逸らし、ジョルノは馬車の外へと視線をやった。
こんな時ポルナレフさんがいると楽なんだが、とため息が出た。

「…ちょっと困っちゃうな」


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