ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

slave sleep~使い魔が来る-18

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
アヌビス神④

「ブチャラティはどこだ?どこにいるんだ?」
ギーシュとマリコルヌは今必死に街中を走り回っている。
早く見つけ出さないとキュルケの命が危ないかもしれない状況で内心二人は大焦りだった。
ブチャラティを見つけなくてはならない。一秒でも早く。キュルケの命が危険に晒されてるのは今なのだ。
「僕達久々の休みを満喫してただけだったのに…。なんでこんな人の命がかかった大マラソンやらなくちゃ
いけないんだよチクショウ…。」
「無駄口聞いてる暇があったら早く探し当てよう。現実味に欠けててイマイチ実感がわかないかも知れないが
キュルケが負けたら本当に死んでしまうんだぞ?手遅れにならないうちに見つけなくてはならないし、
僕達にはそれをやりとげる義務があるッ!!」
キュルケのクラスはトライアングル。おまけに彼女は軍人としての訓練もある程度受けていると聞いている。
その高い実力はよく知っており、信頼における物だった。
だがダメなのだ。スタンド使いの恐ろしさはクラスでは測れない。それが実際にスタンド使いと戦い、
そして知ったギーシュの持論だった。
(なにか、彼の手がかりだけでも掴むことができればいいんだけどな。どうしたものかな…。)
あせるギーシュをマリコルヌが引き止める。
「なあ、ずいぶん向こうがやけに騒がしくないか?なにかあったんじゃないかな?」
「何か見つけたのか?」
「なんと言うか、ヒュウヒュウと空気の乱れる音がさっきからずっと耳に届いていたんだ。
『風』使いだからね。そういうのには敏感なんだ。打撃音も聞こえてまるで戦っているみたいだ。」
「戦っている?」
ギーシュはマリコルヌが指差す方向を見る。
「気になるな。よし。あっちの方向に行ってみよう。」

そこにいたのはウェールズだった。
追っ手に追いつかれて戦闘をしていたところだったのだ。
追っ手は4人の男。
「どうした兄ちゃんよ。ここまでずいぶんな数の仲間を一人一人やってくれたみたいだが、
多勢に無勢では流石に打つ手なしか?」
男の一人がそう冷やかすように言う。人数で押しているからだろう。
ある程度の余裕が感じられた。
「さあてね。もしかしたら一斉に全員倒す切り札をもっているかもしれないよ。」
「フン。なかなかいい度胸してるんだな。軍人か?てめーよォ。」
ウェールズは一呼吸おく。一旦落ち着いて敵を分析するためだ。
戦いの中ではまず相手の実力を見極めるのが重要とされている。
実戦に慣れているらしいウェールズはたやすく相手を見極めた。
(全員各系統のラインメイジか。だが特に何かに秀でているワケでもないようだな。
一応僕はトライアングルだが、敵が4人がかりとなると少し面倒かもな。)
杖を構えなおしてギロリと相手を睨む。そして呪文を唱えようとした。
だがウェールズはこの時まだ相手を完全に分析できていなかった。
そのため彼はこの後相手に意表をつかれ、呆然とすることとなった。
一番前にいた男が大声で仲間に言う。
「うっし!おまえら!いつものやつ行くぜッ!!」
「「「ウッス!」」」





雰囲気が盛り上がるような音楽が聞こえるような気がした。


「嵐のように現れて!突風のように去っていく!それはまさに疾風のごとくッ!
逃げ足なら誰にも負けねぇ!
お れ の 名 は ペ イ ジ !」

「動かざること山のごとく!口開かぬこと地蔵のごとく!
ノリと勢いで世界を救えるのか!?
プ ラ ン ト!」

「・・・・・(ヤベッ!台詞忘れたッ!!)えっと、その、流れる、じゃなくてKOOL
…は違う。うぐぐ…プリキュアじゃない、カミカゼでもなくて…」
「(ウェールズ)いつでもKOOLに決めてやる。水もしたたるいい男。
くらってくたばれおんみょう弾…か?」
「…なんで知ってんだよオオォォッ!!予知能力者かうう…うう… うおお おっ おっ オメーはよォォォォ
ジ ョ ー ン ズ !」

「最後は当然このオレさ!誰もが認める炎の男!恋についてはオクテだぜ!
ジョーンズ後で話あるから。
ボ ー ン ナ ム !」

登場シーンにアレンジ加えて登場しました俺たちがッ!
裏社会でのし上がれ!今時はやりのダークヒーロー!
血管針戦隊      ス テ ゴ マ 4!!!
みんな応援よろしくねッ!(ウインク♪)
バァ―――z______ン!!!

ウェールズは先ほどのツッコミの後無表情になっている。
ギーシュとマリコルヌは『硬化』の呪文を受けたように固まった。

「付き合ってられないよ。僕は急いでるんだ。」
ウェールズが杖を構えなおし呪文を唱える。
そしてそれをペイジが感じ取り注意をうながす。
「いい度胸だ!見せてやろうか。俺達の必殺技ってヤツをッ!!」
4人が全員で違うタイミングで!絶妙な角度修正で!それぞれ違うスペルを唱える!
「くらえっ!お互いを打ち消さずそれでいて威力を高めあう俺達の最強合体スペル!!
その名も『夢見る男達の多重血管針連弾』ッ!!」
「『トルネード』ッ!!」
竜巻とミックスジュース!術と術がぶつかり合うッ!!

      • まあこの場の誰もが予想していた展開で幕を閉めるわけだが。
気がついた時にはすでに竜巻は捨て駒の術を意図も簡単に粉砕し終わった後だった。
しかし敗れた4人の顔にはむしろ余裕すら感じられた。
「あっさり俺たちの最強の術やぶれちまったぁ!!(予想通りの展開だがな。)」
「いくらなんでもあっさりすぎだぜッ!!(言うな。このために呼ばれたんだ。)」
「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!(今日は久しぶりに一杯飲もうや。ハッハッハ。)」

ドッカーーーーーz______ン!!!

4人は手馴れた様子で遥かかなたに吹っ飛んでった。
「この威力!トライアングルクラスか!?」
「そこの人!大丈夫ですか!?」
ギーシュとマリコルヌがウェールズの元に駆け寄った。


「・・・なるほど。だいたい話はわかった。」
ウェールズとギーシュたちが情報を交換する。
「ブチャラティはブチャラティで面倒なあってるなぁ…。」
「僕にはむしろ自分から率先して首をつっこんでいったように聞こえるけどね。
正気の沙汰とは思えないよ。ならず者はみんなメイジだってのに!」
マリコルヌが頭を抱えながら言う。町ひとつ簡単に占拠するメイジならそれ相応の強さがあるだろうに。
無論、それがぞろぞろいるのだとすればブチャラティ一人でそれを潰そうとするなんてあまりに現実から
離れすぎてるとんでもない大暴挙と考えるのだろう。
しかし、ギーシュはそんな不安がまるでないと言わんばかりにウェールズに聞く。
「ウェールズさん。ブチャラティは今どこに向かっているか心当たりはありますか?」
「ないな。だがさっき別れた時に30分立ってから広場で待ち合わせると約束した。
残念ながら本当に他に彼の手がかりは無い。広場に向かうことがやみくもに探すよりは一番妥当な手だと思う。」
「わかりました。広場ならここから10分で行けます。…キュルケも心配だ。さっき別れた武器屋の前のルートを
通っていきましょう。」
マリコルヌがギーシュに疑問があると言わんばかりに問いかける。
「待ってくれよギーシュ。どうしてそんなに冷静でいられるんだよ?いくらブチャラティでもできることとできないことがある
んじゃあないかと考えないか?普通はさ。」
「わかってるよ。僕だってブチャラティがどうなったか不安なんだ。」
だけど、とギーシュが続けた。
「なぜだかブチャラティなら心配ない。そんな根拠のない自信が心の中にあふれてるんだ
そんな見えない力が本来うろたえるはずの僕を後押ししているのかもしれない。
ブチャラティという奴はそう言う人間なんだ。だから僕なんか簡単にのされてしまったのさ。」
ウェールズがギーシュたちに言う。
「さあ、もう行かなくてはいけない。他の君たちの仲間がどうなっているかはわからないが事は一刻を争うだろう。」
走り出すウェールズを見てギーシュは思った。
「しかし、あの人はどこかで見たようなおぼえがあるな…。」
そう考えたギーシュの目にウェールズの指に嵌った緑色のルビーの光が飛び込んできた。


「アンタ誰よ?何が目的?」
目の前に突然現れた男に対したじろぐルイズ。
「うーんいいねぇお嬢さん。君実にかわいいよいやマジに。遠目に見ても一目で
かなりの美人って分かるくらいだったからなァ~~。こうやって間近に見たら、
ンもう息も詰まるくらいにかわいいよ。うん。ピンク色のブロンドの髪といい、
透き通った綺麗な肌といい、俺の心をわしづかみにする要素だらけだ。魅入られてしまいそうだ。」
そう巻くし立てる男に対し、正直ルイズはいい印象を抱かなかった。誉められて
いるはずなのにいい気分がしない。そう言って来たのが初対面の人間だと言うの
も恐らくは理由のひとつでもあるだろうが何よりルイズはその男を直感的に気味
が悪いと感じていた。
「突然現れたと思ったら何をしゃべり始めてるのよ!アンタ私に何が言いたいの!?」
男が恍惚の表情を浮かべてルイズに言った。
「単刀直入に言おうか。君の事を気に入ったんだ。ぜひ付き合っていただけないだろうか?」
「ハァッ!?」
ルイズは男のあまりの展開に物凄く度肝をぬかれ、そして呆れ果ててしまった。
自分を遠くから見てたらしいが、自分にとっては初対面。たった今出会った初対面の男がそんな
台詞を言ってYESと言うはずが無いのにと思ったのだ。
ましてや男はルックスが悪いわけではないが、どう見ても平民だ。
「バカじゃないのアンタ?平民の分際でよくもまあこの私にそんな台詞が言えたモンね?
由緒正しいヴァリエール家の私がOKすると思ってるの?」
ルイズの発言はもっともだった。
「当然…。お断りよっ!!」
ルイズが仁王立ちで男を突っぱねた。
「な、そんなッ!何故だッ!!」
「当たり前でしょ!?どこの世界にたった今出会った奴のプロポーズをうけるバカがいるって言うのよ!?」
男はどうやら本気でショックを受けているようだ。軽いつもりのナンパではなかったらしい。
(オー・マイ・ゴッド!!今日会ったばかりよね!?なんでフラれてそこまでショックうけるほどに…。)
「そうか。じゃあしょうがないな。」
「フン。当然じゃな…。」

「今日は『無理矢理襲う』って感じに殺しちまおうか。」

ゾクッ!!といった感じの旋律がルイズを襲った。
「こ、殺すって!?」
気がついたら男はすぐ目の前。ルイズは後ろに下がる。
男はナイフで胸の辺りを切ってきたのだ。ルイズは一瞬で顔を真っ青に染める。
「な、何よ…。なんなのよアンタ…!何が目的…?」
「お前、あのおかっぱ髪の主人なんだろ?わかってるんだぜ。なーに状況が読めないのは無理は無い。
だから一つだけ教えておくと俺は最初から君を殺すつもりだったんだ。アイツに対する仕返しのつもりでな。
そして人質を取ったと奴にガセを流し、君の死体を囮にノコノコ出てきた所をぶっ殺しちまう寸法よ。」
男はニタニタ笑っていた。さっきの愛の告白とかも完全に自分を油断させたところを襲うつもりで言った狂言だったのだ。
「しかしよォ。君が本当に可愛いのは確かだぜ。だから今回は愛の告白に乗せて襲う作戦にしたんだ。
君は俺を虜にしてしまった。お嬢さん。君はなんて、なんて…。

な ん て 『美味しそうな』 娘 な ん だ ろ う ね。」

体中を嫌悪感が襲う。気がつけばルイズは逃げ出していた。
「ヤダ…!なんなのよコイツ!気持ち悪い…!!!」
男はルイズに向かってナイフを振るいルーンを唱えた。
「『エア・カッター』。」
ルイズの右足を風の刃が切り裂くッ!!
「きゃあっ!!」
「『きゃあっ!!』だってよ。素晴らしいな。実に楽しめそうだ。さあ、もっと俺を楽しませろよ。
さあ、もっと…!!」
ルイズが傷を庇いながら男を睨む。
「この変態野郎…。メイジ!?」
その平民に扮するメイジ。この男こそがブチャラティが喧嘩を売ったチンピラメイジ集団のリーダーだった。
この男は殺人行為がとてつもなく好きな男だった。特に美しい容姿をした女性を殺すのが好きな傾向は、
とある爆弾のスタンド使いにも通ずる所のある『性癖』そのものだった。
その男の殺人は趣味だ。これからもやめることは無いだろう。
そして今、その標的がルイズに決まってしまった。それだけ。本当に単純だった。
「冗談じゃ…ないッ!!」
ルイズが一瞬後ろを振り返ると、男がルーンを唱え、

ドュゥ~~~ン!!

と言う音とともに一回の踏み込みでルイズのそばまで飛ぶッ!!
「魔法で一気に急接近してきた!?」
ルイズは泣きそうな顔になりながら不安定な自分を落ち着かせる。
(落ち着きなさい…。素数を数えて落ち着くの…。2、3、5、7、11、13…。
どうする?戦おうにも私はまともな魔法はまるで使えない!
さっきの攻撃、おそらくトライアングル!
圧倒的過ぎる!このままじゃ本当に…。本当に…!)
ルイズはいつしか涙を流していた。恐怖に飲まれていた。ルイズは心の底からマジに祈っていた。
(誰か・・・誰か助けて・・・!!)
しかしルイズは曲がり角を曲がったところでッ!
ズタンッ!!
「あうっ!!」
転倒してしまうッ!!


「い、いや…!」
ルイズに近づくリーダー。ニタニタした笑いでルイズが怯えているのを楽しんでいた。
ナイフを振るって心から楽しんでいる。それを振って魔法を使ったことから、おそらくコレが奴の杖なのだろう。
「ヒャァッーーーーハァッ!!」
(私には無理よ!どうすればいい?魔法が成功したためしがない、いつだ
って爆発させてばかりの私に何が…。)
ルイズは今自分が魔法が成功しない事を心からくやしがった。
(なんで私がこんなめにあうの?私が『ゼロ』だから?いつだって失敗ばかりの
爆発しか起こせない『ゼロのルイズ』だから?)
自己嫌悪して完全に諦めかけた。だがその時。

爆発しか起こせないのがそんなに恥じる事か?オレなら・・・。

「ハッ!」
「うらぁッ!イッチまいな~ッ!」
リーダーが切りかかろうとした次だった。ルイズが杖を構えて呪文を唱える。
「『ファイアー・ボール』ッ!」
「反撃かぁ!?弾き返してやるぜッ!『エア・カッ・・。」

ドカンッ!!

「ウグエッ!!!」
弾道が全く見えない。確かに唱えたのは『ファイヤー・ボール』のルーンだったはず。
だから『ファイヤー・ボール』の対処のため直線的な弾道を『エア・カッター』で切り裂こうとしたのだ。
だがそれがこなかった。その攻撃は突然腹部で起きたのだ。
「違うッ…。ガボッ!今のはよォーー。『ファイヤー・ボール』じゃねえ…。テメェ…何しやがったッ!何を…!」
ルイズの杖を持つ手は今も震えている。だがその目は真っ直ぐリーダーを射抜いている。



それは数日前。トリステイン魔法学院の広場。
昼休みだった。
「ルイズ?何を読んでいるんだ?」
背後からそう言ったのはつい最近に呼び出した使い魔のブチャラティだ。
「見てわからない?参考書よ。今勉強中なの。」
「そうか。すまないがオレはまだ字は読めない。」
ブチャラティはそう言って外を見た。
「しかし、外はこんなに晴れている。部屋にこもってないでたまには
外に出てみてはどうだ?体に毒だぜ。」
「私は魔法が使えないから。だから他のみんなよりがんばらないといけないの。
いつまでも『ゼロ』ってバカにされてやるもんですか。」
「…そうか。」
ブチャラティはここに来てから何日もルイズを見てきた。遊ぶ時間も寝る時間も削って
勉強する。呪文の反復練習なんて何回見ただろう。
なんとしてでも周りのみんなのように一人前のメイジになりたい。誰にも『ゼロ』とは呼ばせない。
そのために周りより苦しい生き方をしていた。
不公平だな。と思ったりもした。なぜルイズが他のメイジより苦しまなくてはならないのかと。
何より気に入らないのは、きっとルイズはブチャラティに会うずっと前から努力していただろうに、
それでも何一つ成功しないと言う点だった。

夜中だった。ルイズは外で呪文の反復練習をする。
外に出たのは部屋の中で呪文を使って爆発を起こされていたら安眠できないと
周りから苦情が来ていつも外でやるそうだ。
『ファイヤー・ボール』を放つ。爆発が起きる。
『錬金』を試みる。それでも爆発が起きる。
『エア・ハンマー』を使っても爆発。
爆発。爆発。爆発。何をやっても爆発しか起きない。
ブチャラティはその様子をただじっと見ている。
ギリ とルイズが歯を食いしばる。
「何でよ…。何で全く成功しないのよ…!」
ルイズの息が少し荒い。ブチャラティはルイズの疲労を感じ取り言った。
「今日はもう休もう。あんまりとばすと体に障る。」
そう言って差し伸べた手をルイズは跳ね除ける。
「まだよ…。できるまでやらなくちゃ…。絶対に成功させてやるんだから!」
ブチャラティもそれを見かねて言う。
「成功させるために体を壊したら本末転倒だぞ!」
「それでも!!やらなくっちゃいけないの。アンタにわかる?私の悔しさが。
ヴァリエールの三女として生まれて、誰からも期待されてるのに優秀なお姉さまたちと
比べてただの一度も成功しない!誰からも見放され!貶されて!名誉もなにもあったもんじゃあないわ!
私は何も出来ないから…。」
ブチャラティは首を振った。
「少なくとも…。オレはお前を見放すつもりも貶すつもりも無い。精一杯生きている人間を侮辱することなど
自分自身が一番許さないからな。少し劣っているからといって野次を飛ばすような奴など気にするな。
…今日はもう寝ろ。明日からまた頑張ろう。またオレも付き合うぜ。」

ルイズの胸の中に何か暖かい安堵の感覚が広がっていくのがわかった。
「ブチャラティ…。」
「それにお前は魔法は確実に失敗すると、どんな魔法を使おうが必ず爆発が起きると嘆いていたが、
爆発しか起こせないのがそんなに恥じる事か?オレならそれを『長所』と考えるな。」
ブチャラティの言葉にルイズが首をかしげる。
「『長所』?こんな爆発のどこが長所だって言うわけ?」
「他の奴らは失敗したとして爆発なんか起こせるか?他の奴らと話していたが誰も失敗で『爆発』は起きなかったそうだ。
つまり、お前は唯一、魔法で爆発が起こせるメイジと言うことになる。」
ルイズが目を丸くする。
「こんな爆発が…私の唯一できる事?」
「ああそうだ。それはオレも誇っていいことなんじゃないかと考える。他に簡単に爆発を起こせる奴なんかいないし
世の中には爆発を起こすことすら羨む人間もいる。オレを見てみろルイズ。オレに何が出来る?
ただ『ジッパー』を貼ってそれを開け閉めしたりするくらいしかできないぞ。」
ブチャラティがルイズの肩を優しくおさえて言った。
「だがオレはギーシュに勝てた。こんなくだらないことしかできないくせに見事に勝って見せたじゃないか。
どんな技能でも使い方を工夫すればそれはきっとだれもくだらないなんて言わない誇れる長所になるだろう。」
ルイズはブチャラティの優しさに触れてわかった。ああ、これだから誰もがブチャラティを信じる人がたくさんいるんだなと。
「あ、あり…フン!それって慰めてるつもり?えらそうに。別にいらないわよそんなの!!」
しかしルイズは素直になれない。
「偉そうに言うつもりはさらさらないが、一人前になるためにはまずはそういう長所を伸ばすことから始めてみてはどうだ?
そういう事から始めていけばもしかしたらいずれは…。いや、他愛も無いアドバイスだ。忘れたければ忘れていい。」
それが魔法でほめられた事の無いルイズが始めて認められた時だった。




「私はいつか一人前のメイジになりたい。だからここで死ぬわけにはいかないわ…!」
ルイズが決意した。ブチャラティは自分を探しているはずだ。だから奴に勝てないまでもそれまで生き延びて見せれば
きっとブチャラティが助けてくれると!
「くそ…!なんなんだその魔法はッ!!」
リーダーがルイズに飛びかかる。だがルイズは冷静に呪文を唱える。
「『石礫』!」
「また単純なマネを!今度こそ『エア・カッター』で!」
ドカンッ!!
今度はリーダーの第二ボタンが爆発する。
「ま、また爆発ッ!!こいつの呪文…!全部爆発が起きんのか!?」
(これだわ…!これが一つ目の『長所』!これがいいのよ!私の爆発は何かをぶつける術ではなく直接対象を爆発させるから
身に着けている物を爆発させれば絶対避けられない!!)
ルイズが敵を怯ませた隙をついて逃走する。
「待ちや…がれッ!!」
リーダーは攻撃に耐え、ルイズを追った。
「生き延びてやる!絶対ブチャラティは来てくれるはずだからッ!!」


「クソッ!ちょこまかと逃げやがって!いいかげんにしやがれ野郎ーーーーーッ!!」
すでに紳士面が剥がれ落ちたリーダーがルーンを唱える。その瞬間、男が再び勢いをつけて飛び込んできた。
「『ウインド・ブレイク』で自分を押して一方に高速移動したッ!
苦労したんだぜ。自分がその衝撃でやられないよう精密な動きができるようにするときとかなぁーーー!!」
あくまでその手で斬り殺すために磨いたのであろう近接攻撃向けの使い方!
「そしてこの体勢からエア・カッターで足を狙い、体をズタズタにしてやるッ!!
爆発だけで切り抜けることが」
この体勢からは避けられない!しかしルイズはッ!

どんな魔法も失敗して爆発する。全ての魔法がだ。

「『レビテーション』ッ!!」
ドカンッ!!
「があああうッ!!!こ、コモン・マジックすら…爆発を発生させんのか!?」
(そう。コモン・マジックも。だから他の系統魔法よりも早く詠唱して攻撃ができるッ!!)

「ガハッ!クソッ!一撃でも当てたら一気にKOできそうなやせっぽちのくせにッ!
じゃあ呪文すら唱えさせなかったらどうだよ!?いくら早く詠唱できるからって、
一瞬でも隙を突けばもうお前に防ぐ手立てはねえはずだぜ!『サンド・ブレイク』ッ!!」
風の二乗、土の一乗。砂の混じった風がルイズの目と口を反射的にふさがせたッ!!
「レビテ…ゲホッ!!」
一瞬。その一瞬の隙を付きリーダーが『エア・カッター』を唱え終わる。
「ハハハハハ!この近距離ならハズさねえ!爆発喰らったってテメエはこの一撃で再起不能だ!
くらいなッ!!『エア・カッター』ッ!!」
ルイズがつらそうに目を開ける。だがその目にあきらめはない。
「ええ、そうね。そんな攻撃喰らったら間違いなく私は負けるわ。でも喰らわない。
すでに打開策は打っておいたッ!!

あなたの服にカフスボタンがついていたからうまくいくんだけどね。」
「え!?」
ルイズが間髪いれずに呪文を詠唱!!狙いはリーダーの服についた杖腕のカフスボタンッ!!
ドカンッ!!
「なっ!しまった!!」
爆発の衝撃でリーダーの攻撃が左に反れるッ!!当然、放とうとした攻撃は左に反れるッ!!
「爆発の有効な使い道…。これだわ。これでいけるッ!!」



ルイズが疲れきった体に鞭打ち表通りに出ようとする。
「なんとかして、ブチャラティに、会わなくちゃ…!」
だが。
タンッ!!
例の高速移動でルイズに追いつくッ!!
「しぶとすぎよこの変態!!とっとと倒れればどうなの!?」
「お、おれの…!俺の獲物!!ぜってぇに手に入れるッ!!」
ルイズが辺りを見回す。
「こうなったら…!!」
あたりにいろいろなガラクタがある。木箱、ガラス、セトモノ。それをルイズは。
「『レビテーション』!!『フライ』!!『着火』!!『アンロック』!!」
あちこちにやたらめったら爆発を起こしガラクタを破壊!!
そしてルイズとリーダーの間に踏めば確実に足を痛めるであろう通行止めトラップができあがる!
「爆発の応用…!だいたいわかって来ている。ブチャラティが来るまで生き延びられる!!」
「どうかな?そんな物で俺が足止めできるとでも?『フライ』ッ!!」
あっけない対処。それはまさにこのことを言うのだろう。
リーダー自身も単純に対処できる事に拍子抜けした。
「このッ!降りてきなさいよッ!卑怯者!ド変態ッ!!」
ルイズがリーダーに向かって石を投げまくる。
「降りてなんかやるかよ。子供じみてるかもしれないが結構いい手だよなぁ?
かわいそうになぁ?せっかく足止めなんて言ういい手を思いついちまったのによ?ギャハハハハハ!!!」

リーダーは空中で飛び回って石を避ける。
「ほらほら、くやしいか?悔しいだろうなぁこんな幼稚な手に引っかかってくれなくってよ?
そもそもメイジ相手に足止めってのがちゃんちゃらおかしいぜ!」
ルイズは悔しそうな顔をして、
「おかしいかしら?そんなに私の行動が。その石ころただ投げてるとでも思ったの?」
と言った台詞とともにリーダーを嘲笑した。
「ハハハ…ハ?」
「『レビテーション』ッ!!」

ドッカーーz______ン!!!

そう。ルイズが石を投げたのはこのため。空中のリーダーを爆発で打ち落とすためだったのだ。
「そしてそのトラップもアンタを足止めするために作ったんじゃないわ。」
そう言ってルイズは親指を立てる。

「アンタをそこに突き落とすために作ったのよ。」
そう言って親指を下に向けた。

ズサァッ!!!
ブシュ!ブシュウ!!

「うごォォおああああああああああああああ!!!!!」
「絶対に…絶対に来てくれる。それまで戦うッ!!」


To Be Contined →

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー