ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は引き籠り-4

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匿名ユーザー

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時を同じくして場面は変わる。

「またミスヴァリエールのようですよ、オールドオスマン。ミス・シェヴルーズの『土』の授業中、錬金を失敗して爆発を起こしたようです。」

イルーゾォが即座に尻尾を巻いて逃げ出した爆発について、取り乱す事もなく冷静に報告する女性。
ミス・ロングビル、と名乗っている。
ルイズの級友(もっとも、お互いに意地を張って友人だと認めようとはしないが)の、褐色肌の少女キュルケ程ではないが
引き締まった身体は『出る所が出ていて』、知的な印象を与えるシンプルな眼鏡と相俟って随分に魅力的な女性だ。
彼女はこの学校で働く事になってから、まだ日が浅い。
それでも十分に慣れる程、『ゼロのルイズ』の『爆発』に関する噂は溢れていて、彼女の耳にも入ってきていた。
いや、それどころではない。
生徒同士噂をする場面にルイズが居合わせ、『サイレント』の魔法で黙らせようとして危うく爆殺しかけたのを目撃したことすらあった。

珍しい女生徒だ、と彼女は思う。
貴族であるのは当然、由緒正しい家柄の生まれでありながら、魔法の成功率は『ゼロ』、
どの魔法を唱えようと、起こる事象は全て『爆発』。
そんなケースは聞いた事が無い。本当にただの落ち零れなのだろうか――――
――――ん?スタンド?それは何です?

「それから、ミス・ヴァリエールについてもう一つ。」
「ほう?」
「彼女の使い魔が逃げ出した、と報告があります。」
「逃げ出す?ミス・ヴァリエールは、コントラクト・サーヴァントも満足に出来んかったんかの?」
「いいえ、確かに成功したと聞いたのですが・・・・」

もっとも、何の魔力も持たない平民を召喚したのを成功と呼べるならば、だが。
しかしコントラクト・サーヴァントの方は確かに成功した筈だった。
変わったルーンだが、左手にそれを確認した。と、なんとか言うハゲた教師が言っていたのだ。

「契約した使い魔が主人から逃げ出すなど、有り得るのでしょうか。」
「普通なら有り得ん。有り得んが・・・・そうじゃ、彼女の使い魔は平民じゃったかの?
人間相手のコントラクト・サーヴァントについては、前例を知らんな。」
「彼女でなくとも御しきれない可能性があるわけですね?ですが」

問題は、『逃げ出した』だけでは無いのだ。

「見つからないと?」
「はい。彼女は捜索に役立つような魔法も使えませんから、見兼ねた教員が何人か捜索したのですが、『何処にも居ない』のです。」
「ふぅむ・・・・」

それはおかしな話だった。
気配を、姿を消す等の魔法など使えない平民が、比較的上位のメイジである教職員から隠れきる?そんなことが本当に可能だろうか。
オールドオスマンは手元の鏡を手に取った。装飾を施されたそれは、剣と魔法の世界にありがちな
任意の場所を映し出す遠見の鏡だ。

「ミスヴァリエールの使い魔、ミスヴァリエールの使い魔・・・・と。なんじゃ、普通に居るではないか!」
「え?」

その鏡には、教室から教室へと移動する生徒とは逆方向へ。辺りを見回しながら歩くイルーゾォがしっかり映って居た。
(イルーゾォ本人が知ったら驚くだろう。普通なら絶対に感知されないというのに。『この道具が鏡であるがゆえに』!映ってしまったのだ!)
「そんな、彼は・・・・!」
イルーゾォは、彼を捜索して居る筈の教職員や、ルイズ本人とまでもスルリとすれ違う。
「まあ見るからに、地味な青年じゃからのう。」
「そんな筈がありますかッ!」

鏡を囲んで見合わせる二人の背中に、ひかえめなノック音が届いた。



授業終り、教室前、廊下。
鏡の中のイルーゾォは、ドアからゾロゾロと流れ出る鞄の群れ(衣服はともかく、本や鞄を『自分の一部』と定義する人間はそういない。)から、
今朝ルイズの部屋にあったそれを見つける。
大人しく授業をうけていると言う事は、少なくとも今は自分を探しては居ないようだ。
パンナコッタ・フーゴの、躾のなってない下品なスタンド。『感染すれば最期』だなんて無茶苦茶な能力だったが、
当面の『敵』であるルイズの能力は『視界に入れば最期』・・・・無茶苦茶度合いがグンと上がっている。
前に『溶けた』ように、爆発して『消し飛ぶ』・・・・想像するだに恐ろしく、胃がきゅうとなった。
きゅう、ぎゅ、ぐうぅぅぅぅぅ・・・・・

(そう言えば、腹減ったなァ)


ここへ来てから、何も食ってない。ついでに言えば水だって飲んでいない。
マン・イン・ザ・ミラーをちらりと見るが、そう言う事柄に対して何も出来ないスタンドである事は、自分が一番よく知っている。
心なしか、マン・イン・ザ・ミラーが申し訳無さそうな顔をしたように見えて
(実際には帽子っぽいものと、眼鏡っぽいものと、嘴っぽいものは全然動かず表情なんてわからないのだが。)
咄嗟、「大丈夫だ。」と口をついて出た。

ルイズの鞄はふわふわと大食堂の扉に吸い込まれて行く。昼食の時間なのだ。

「大丈夫、耐えりゃあいいだけだ。オレは暗殺者なんだ。」
自分に言ったのか、マン・イン・ザ・ミラーに言ったのかは自分でもわからなかった・・・・もっとも、同じ事なのかも知れないが。

そして一方、ルイズ。

ついさっきまで、私は怒り狂っていた。あの使い魔の奴!平民の癖に!地味顔!空気!変な髪形!
召喚してみれば平民だし、中々起きないし、起きればバカにしたような事ばっかり喋って、終いには操り人形の糸が切れたみたいに動かなくなって。
放っておくのもなんだから部屋に連れ帰ってみたら、一方的に会話を切り上げてどこかへ消えてしまった。
信じらんない!使い魔って言うのは一度契約したら、主人に絶対服従のはずなのに。
先生方に「使い魔を探すのを手伝ってください」って頼む時、どれだけ恥ずかしかったと思う?
きっと先生や、立ち聞きしていた生徒はみんな「『ゼロのルイズ』って奴は、使い魔すら扱えないのか?」って思ったわ。
中には隠しもせずに笑った奴だっていた。風邪っぴきの奴、いつか見てなさい・・・・!

でも、今は怒ってない。アイツの顔を見たら怒りは帰ってくるかもしれないけど、少なくとも今はね。

なんでかっていうと、アイツ、イルーゾォ。昨日のお昼過ぎに呼び出したでしょう?それで、すぐ居なくなって、夕御飯は食べてない。
そして朝の私は腹を立ててたから、いかにも「これは罰よ!」って感じの粗末な朝食を用意させた。
食堂の場所は教えてなかったけど、幾らなんでもお腹が減ったら出てくるだろうって思ったもの。

でも、それでもアイツは出てこなかった。そして今も。

アイツは食べ物なんか持って居なかった。あんまりぼけーっとしてるから勝手に持ち物チェックをさせてもらったの。主人だし当然の権利でしょ?
見慣れない変な服とズボンのポケットには、小ぶりのナイフと手鏡がいくつか入っているだけ。
地味顔の癖にナルシストなのかしら?(ちょっと気持ち悪い)因みにそれらは、私が預かってる。
ナイフは危ないから部屋に置いて、鏡はポケットの中にある・・・・か、返すタイミングなんて無かったのよ!
とにかく大事なのは、イルーゾォは今絶対にお腹を空かせてるって事。学校の何処でも「食べ物がなくなった!」なんて騒ぎは起こってないし。
それでも・・・・それでもアイツは姿を見せない。一度も。

――――帰ってきたら身の回りの世話をしてもらうから!
――――嫌だね

心配と自信喪失で、最高に美味しいはずの昼食は砂の味がした。
確かに一日御飯を食べないくらいじゃ死にゃあしないわ。でも、食べられるんなら食べたっていいじゃない。
そんなに、そんなに嫌なのかな。私が・・・・『ゼロのルイズだから?』


「ねえ、タバサ?ちょっと頼みがあるの。一緒に・・・・キュルケは別で。一緒に来てくれる?」

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