ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

『鉄塔』の使い魔-2

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ルイズが目を覚ましたのはそれから半刻ほどしてからのことだった。
辺りには誰もいない。どうせなら鉄塔から救出されベットの上で目を覚ましたかったのだが。

「あら、やっとお目覚めのようね、ゼロのルイズ。いえ、今はさしずめ鳥籠のルイズと言ったところかしら」

目覚め一番に嫌なやつが現れる。
宿敵ツェルプストー家の女、通称『微熱のキュルケ』。
この家の人間と関わるとろくな事にならないのは歴史が証明している。

「・・・何の用かしら? 生憎今はあなたの相手する元気ないんだけど」
「あらあら、いっちょ前に落ち込んでらっしゃるのかしら。失敗なんていつものことでしょうに」
「喧嘩売りに来たの? あなた」
「まさか。あなたと違って私は忙しいのよ、マニカンにエイジャックスにギムリ・・・」
「だったらあたしに構わずさっさと行けば?」
「そのつもり。でもその前にミスタ・コルベールからの伝言よ。『ゼロのルイズよ。申し訳ない。君をそこから出すのには
 時間がかかりそうだ』だって」
「・・・なんですって!」

ルイズは激昂した。

「どう言うことよ説明なさい! というかあんた「ゼロのルイズ」って勝手に改変してんじゃないわよ!」
「ミスタ・コルベールの話じゃね、どうも誰かさんの失敗のおかげで学内の建物にかなりのダメージが
 発生してるそうよ。ほっとくと倒壊の危険性があるから先にそっちの補修にまわってるんですって」

そういってキュルケは塔を指差す。
鉄塔は私が倒れる前と同じくそこに佇んでいた。
さながらそれが当然と言わんばかりに。なんと憎憎しい奴であろうか。
「まぁそういうわけであなたはしばらくその鳥籠の小鳥ってわけ」
「・・・そう」

そう言ってルイズはかくんと肩を落とした。
その様にキュルケは少し驚いた。

「あらら・・・コレはほんとに重症ね。今までのあなたならもう少しヒステリックにがなりたててたと思うけど」
「あなたには分からないわよ。あなた悩みなさそうだもんね」

そう言って鉄塔に寄りかかるルイズ。
そこにいつもの気丈な彼女の姿はなかった。
ただ単に地面で寝てたせいで体の節々が痛いせいだったりするのだが。

「・・・ああもう! 頭にくるわねあなた。しゃきっとしなさいよしゃきっと! それでも私のライバル?」
「いや別にあなたをライバルと思ったことなんてないけど」

いつか始末すべき宿敵とは思ってるけどね、と心の中で続ける。
と言うか男待たせてんじゃなかったっけ?とも思う。
暇よねえこいつ、と鼻で笑う。
その態度がキュルケに火をつける。

「そう、言ってくれるじゃない。いいわだったら思い知らせてあげる。ツェルプストー家を
 軽く見るとどういうことになるか!」

そう言って彼女は詠唱を始める。
炎と炎。『フレイムボール』の詠唱を。

「ちょっとキュルケ! やめなさいよ!」
「大丈夫よルイズ、あなたとは違うんだから。離れてなさい。巻き込まれるわよ」
「そうじゃなくって!」

キュルケはどうやら鉄塔を破壊しようとしているらしい。
それは分かる、私もそれは考えた。だがどうしても実行する気になれなかった。それは別に自分の使い魔
だからとかセンチメンタルなことでなく、得体の知れない何かが私に警鐘を鳴らすからだ。
この塔を攻撃してはいけない、と。

「はぁっ!」

詠唱を終えたキュルケがフレイムボールを鉄塔の足にたたき付ける。
爆発ともに炎上する鉄塔。ルイズはあわてて対角線の鉄塔の足まで逃げたがとばっちりを受け、すすだらけになる。

「ゲホッ! だからやめろって言ったじゃないのよ!」
「・・・丈夫ねえこいつ」

鉄塔は熱で若干曲がりはしたものの未だ健在だった。

「あーあ、なんか冷めちゃった。あとは任せるわ」
「あんたねえ・・・・」

手をひらひらさせながら去っていくキュルケ。
熱しやすく冷めやすい、これもまたツェルスプトーの宿命だった。

・・・・・・・・・・・ォン・・・・・・・・・・オン

その時だった、聞き覚えのない妙な耳鳴りが聞こえてきたのは。

「何の音?これ」
「なんのこと?」

・・・ウォン・・・・・・ウォン

音は塔の頂上から聞こえてきた。少しずつ音の発信源は下へと降りてくる。

「コレって・・・塔の叫び?」
「だからさっきから何言って・・・」

ウォン・・・ウォン・・・ウォン!
ドォン!

音はキュルケの攻撃した所まで来ると『何か』を放出しキュルケを吹き飛ばした。
そのまま壁にたたきつけられるキュルケ。ぐったりとして動かない。
「ちょ・・・キュルケ、しっかりしなさいよキュルケ! だれか、だれかーーーーー!!!!」

その後偶然通りかかったタバサによってキュルケは医務室に運ばれた。
彼女の外傷に一切の魔術的ダメージがなかったため先生たちの見立てでは『魔法の失敗』ということだった。
あのキュルケが魔法に失敗し病院送り、その話は瞬く間に学内中に広まり物笑いの種となった。
その中で笑ってない(笑えない)者が一人。

「・・・あれはあんたの仕業なの?」

ルイズは一人つぶやいた。本当に話しかけたつもりだがそこに話を聞いていそうな存在はいない。
ただ鉄塔が召還された時と同じように錆付いた体を晒すのみだ。
キュルケの与えたダメージもいつの間にか戻っている。

「与えたダメージをはね返す。これがあなたの力なのね?」

やっぱり塔は答えない。
はぁ、とルイズはため息をつく
とりあえず今分かってることは二つ
一つはこの塔の中に入った者は出られないと言うこと。
もう一つはこの塔を壊すことは出来ないと言うこと。

「いったい・・・どうしろって言うのよ」

彼女は思ってた以上に現状が深刻であることに気づき、がっくりとうなだれた。

キュルケが医務室に運ばれたころ、上機嫌な女性が一人。

「ふふ・・・嬉しい誤算だわ。今日の晩には事を成せそうね」
彼女の名はミス・ロングビル。またの名を土くれのフーケ。
今巷を賑わせてる大盗賊だった。


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