ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-36

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匿名ユーザー

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「…何も問題はありません。健康そのものです」
「本当か?本当なのか!?」
カトレアを診断した主治医に、ヴァリエール公が詰め寄る。
「はい…薬を使った形跡すら感じられません」
力なく首を振る主治医の姿に、がっくりと肩を落とす公爵。
「あらあら、心配しなくても私はほら、こんな事も出来るようになりましたわ!」

          グオン

   「「座ったままの姿勢でジャンプを!?」」

育郎の治療を受けてすぐに、カトレアはルイズが止めるのも聞かずに、
その健康体がどれ程のものかを試しだした。
「ブラボー!おお、ブラボー!」と叫びながら突如浮き上がったり、
「かけよトロンベ!」と叫びながら自分の愛馬で屋敷中を走り回ったり、
その他諸々、その様はミス・アンチェインとでも呼びたくなるほどだった。
「何故…こうなってしまったのだ?」
「病が裏返ったとしか…」
「…なんだそれは?」
「今まで掛かっていた負荷がなくなり、急激に身体が活性化したのと合わさって」
「まあ…何はともあれ、カトレアの身体は治ったのです。
 この際些細な事は気にしないでおきましょう」
溜息をつきつつ、二人の背後にいたヴァリエール公爵夫人がつげる。
「些細な事…か?」
ヴァリエール公の呟きを無視して、夫人はカトレアに向き直る。
「カトレア、貴方も元気になって嬉しいのはわかりますが、貴族たる者が
 そのようにはしゃぐなど…みっともないとは思わないのですか?」
カトレアは手を口に当て、あらあらと言いながら頭を下げる。
「ごめんなさいお母様。身体があんまりにも軽くなったものですから、
 心まで軽くなったみたいで。不思議ですわね」
そう言ってケラケラと笑うカトレアに、つい再び溜息がでてしまう。
「あ…あの、お父様、ちいねえさまは?」
声のほうを見ると、部屋の外で待っているよう言われたルイズが、カトレアが
心配だったのだろう、堪えきれずに部屋に入ってきていた。
「こら、ルイズ!待ってなさいと言われたでしょう」
同じように廊下で待っていたエレオノールが、ルイズを連れ出そうとするが、
それをヴァリエール公が制する。
「かまわん、エレオノール。ルイズ、心配しなくとも異常は見当たらんそうだ」
「あれで…ですか?」
エレオノールが見ている方に視線を向けると、カトレアが部屋に追いてあった
ワインをグラスに注いでいた。ただコルクぬきが見つからなかったのか、ビンの
底に指を刺して穴を開け、そこから注いでいる。
「カトレア!」
その時公爵夫人の凛とした声が部屋に響き、部屋にいる全員の身が硬くなった。
「…なんでしょう?」
部屋の中にいる人間全員が、緊張した面持ちでカトレアと公爵夫人を見る。
「…行儀が悪いですよ」
「それもそうですね」


「あー…なんだ、よくぞ我が娘カトレアを…その…治療してくれた。感謝する」
口ごもりながらも、ヴァリエール公が育郎に感謝の言葉をかける。
「は、はぁ…」
対する育郎は、どこかすまなさそうな顔をしている。
「ほら、もっと堂々としてなさいよ。治ったんだからいいんじゃない。
 ルイズも、ほら。だいたいこういう事言うのは、貴女の役割でしょ?」
キュルケが育郎と、いろいろと疲れた表情をするルイズに声をかける。
「どう見ても病気には見えない」
「うん…まあ、そうなんだけどね」
タバサの言葉に頷くが、やはりどこか釈然としない表情をするルイズ。
「ああ、俺様も長い事生きてるけど、あれほどの「アンタは黙ってなさい!」
 …わーったよ」
「その…ごめん」
「い、いいのよイクロー。あんたが謝らなくても」
「何をコソコソと話しているのかな!?」
「い、いえ。なんでもありませんわお父さま!」
焦る娘の様子に今日16度目になる溜息をつき、とにかく今回の事はこれで
良しとしよう。そう自分を無理やり納得させる。
「ルイズ、とにかく今日は友人といっしょにゆっくりとしていきなさい。
 久しぶりに家族がそろったのだ。カトレア達も積もる話もある事だろう」
「えっとお父様…今日は日帰りのつもりだったので、休みの届けをだしては」
ルイズの言葉に笑いながら答える公爵。
「なに、一日授業を休むぐらいどうという事は…」
背後からの凄まじいプレッシャーに、言葉が止まるヴァリエール公。

「あなた…」
そのプレッシャーの発生源。己の妻の声に、ヴァリエール公の背筋が凍る。
「あるな!うむ!やはり無断で授業を休むなど言語道断!」
「あら…久しぶりにルイズと一緒に寝ようかと思ってましたのに」
娘の不満げな声に、溜息をつきながら公爵夫人が口を開く。
「…夕食ぐらいはとって行きなさい。エレオノール、カトレア、食事の準備が
 整うまでルイズと一緒にいていやりなさい」
「わかりましたわ、お母様」
「は、はぁ…母様がそう言うなら。ほら、貴方達こっちにきなさい」
ルイズ達とともに、部屋を出ようとしたカトレアが、ふと何かに気付いた様子で
ヴァリエール公の方に振り向く。
「そうですわ!」
「な、なんだカトレア?」
少し驚いた様子の公爵に、いつものような無邪気な笑顔でカトレアは告げた。
「お友達も学校があるからしかたないとして、あの使い魔さんだけでも
 泊めていってはどうかしら?」
「は?」
「ルイズの話も聞きたいし、それに私を治してくれたお礼もしたいですし」
「お、お礼…ど、どういう意味だカトレア!?」
「そんなに凄かったの!?」
「ちょっと、なにやってんのよキュルケ!?」

突如現れたキュルケに続いて、ルイズと呆れた顔をしたエレオノールが
再び部屋に入ってくる。
「貴方達なにやってるのよ…お父様、どうかしたのですか?」
「あ、うむ。カトレアがそこの使い魔だけでも泊めてはどうかと言ってな。
 まったくどういうつもりなのか…」
「へ?イクローを?なんで?」
「だって貴女が魔法学院でなにをしているか、使い魔さんに話を聞きたいし」
「凄かったのね…」
じゅるり
「キュルケ?」
再び溜息をついて、何か言ってやりなさいとエレオノールを見るヴァリエール公。
「……別に、かまわないでしょう」
「エレオノール、お前まで!?カリーヌ!」
最後の頼みと、妻に視線を向ける。
「カトレアを治したのは事実です。
 平民とはいえ、それなりの待遇でもてなすべきでは?」
「わかった…ルイズ、お前もそれでいいかい?」
「あ、はい」
どうにも釈然としないといった表情のルイズだが、納得できないのは公爵自身
も同じである。カトレアはともかくとして、何故エレオノールまで?
その時、公爵の頭にある考えが浮かんだ。
「まさか…いや、しかし…」
「どうかなされたのですか、あなた?」
「い、いや…なんでもない」


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