ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-35

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「…というのが、カトレアお嬢様のご病状です」
「はぁ」
育郎が初老を迎えたカトレアの主治医の説明に、生返事で答える。
そもそも育郎は医者でもなければメイジでもないのだ。その二つを要素をまざった
説明などされても、理解できるはずもない。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ、凄い部屋だなと思って」
そう言ってごまかす。しかし、実際部屋の様子が気になっているのも確かだ。
治療はカトレアの部屋で行う事になったのだが、その部屋がまた凄いのだ。
ただ豪華だと言うのなら、育郎もそろそろなれてきたのだが、この部屋は
それだけではなかった。
「ほら、この子が貴方が学院に行く少し前に、道で倒れてたあの子よ」
「お、大きくなったのね…倒れてた?」
カトレアが頭をなでる蛇の大きさに、少し驚いた様子を見せるルイズ。
周りを見れば、他にもさまざまな動物の姿があった。
ハムスターらしきねずみ、リス、猫、犬、山羊、羊あたりはまあ良いとして、
子馬や子牛、さらにはサラマンダー程の大きさのあるトカゲや熊までいる。
「…カトレアお嬢様は動物がたいそうお好きで」
「そ、そうですか」
さすがに限度と言うものがあるんじゃないか?とは思ったが、思わず目を
そらした医者を前にして、さすがにそんなことは言えない育郎であった。
「まあ、それはそれとして…すいません。少し部屋からでてもらえませんか?」
「なんですと?」
育郎の言葉に、医者が軽い驚愕の声をあげる。
東方の医学がどのようなものかという興味は勿論、この医者と呼ぶにはあまりにも
変わったみなりをする平民の少年が、なにかおかしな事をしないかと、この医者は
見張るつもりでもあったのだ。
「その、いろいろ事情がありまして…人に見られてるとちょっと…」
「いや、だが何かあった時、主治医の私がいないと」
「ならドアの前で待ってれば良いじゃない」
育郎の事を察してくれたキュルケが、何とか食い下がろうとする医者に言い放つ。
「しかし…」
「私はかまいませんわ。ルイズが連れて来た方なんですもの」
「お嬢様…わかりました。カトレアお嬢様がそうおっしゃるなら」
カトレアの言葉に従い、渋々とだが医者は部屋をでる。


「私達もでたほうがいい」
「そうね、じゃないと話がこじれるし」
そういってタバサとキュルケも部屋をでる。
「私は…主人だから良いわよね?」
そうしてルイズとカトレア、育郎の3人と無数の動物達が部屋に残った。
「それじゃ育郎。お願い…」
「うん、カトレアさん、目をつぶってもらえますか?」
「ええ」
「良いと言うまで目を開けないでください」
「はい」
育郎の言葉に素直に従うのを確認し、己の身を異形へと変える。
その様子を見た動物達の何匹かが鳴き声を上げる。動物達が暴れださないかと
心配するルイズが、育郎にはやく治療するように促そうとするが、当の育郎は、
何故かその場でじっと固まっていた。
「ねえ、どうかした」
「あらあら」
「………」
動物が騒ぎ出した事に驚いて…ではなくて、騒ぐ動物達が心配だったのだろう。
カトレアは何が起こっているかを知る為に、もっとも単純な手段を使っていた。
簡単に言うと、目を開けたのである。
つまり今カトレアは、しっかりと変身した育郎を目撃してしまったのだ。
「ルイズ…貴方の使い魔って悪魔さんだったのね」
「あ…あの、ちいねえさま。育郎は悪魔なんかじゃなくて」
学園で流れる噂を思い出し、もしカトレアが誰かをよびでもしたらと、ルイズの
背筋に嫌な汗が流れる。
「そうだわ!」
「ちょ!ちょっと待ってくださいちい姉さま!」
ポン、と目の前で手をたたき、何かに気付いた様子を見せるカトレアに、
ますます焦るルイズ。
「えっと、ちいねえさま。イクローは東方の…ってちいねえさま聞いてます?」
まったく話を聞いてない様子のカトレアが、困った顔をして動物達を指差した。
「あの…私はかまいませんが、この子達は食べないでくださいね?」
「食べません」「バル」


「そういえば…どうやってあの人を治すのかしらね?」
カトレアの部屋の隣の部屋で待つことになったキュルケが、自分の隣で
いつものように本を読むタバサに話しかける。
「ギーシュを治すのは見てたけど、どうやってかはよくわからなかったのよ。
 何か飲ませてたみたいだけど…」
暇なので言ってみただけなので、特に返事は期待していなかったのが、タバサは
本を置いてキュルケを見た。
「彼の…」
血液と言いかけて、口を閉じる、
「か、彼の…なに?」
何故か興奮した様子のキュルケを見ながら、血を飲ませる等と言ったら、学院で
流れる噂を信じて、彼を悪魔などと思うのではないかと考え、言いなおす。
「彼の体液」

「   体     液   !!!」




「じゃあ、目をつぶって…」
「あ、はい」
カトレアが目を閉じると、何処からともなく触手たちが現れる。
「それを舐めてください」
その一本をカトレアの唇に押し付ける。
「わ、わかりました…変なにおいですね、んちゅ」
注・治療の一環です。
「ち、ちい姉さま、よく舐めてくださいね」
身体に数本の触手を巻きつけられたルイズが、上気した顔でそう言う。
注・治療の一環です。こう、ルイズからパワーをもらってる的な。
「え、ええ…きゃあ!」
胸をまさぐる触手の感触に悲鳴を上げるカトレア。
注・治療の一環です。胸を刺激して何かを活性化させる的な。
「大丈夫…心配ありません。そのまま舐めていてください…
 もうすぐ薬が出ますから…とっても良く効く薬ですよ」
さらなる数の触手たちがカトレアの身体に…

じゅるり
「す、素敵な治療ね…」
「?」


等とキュルケが妄想をしている時、カトレアの部屋では、既に治療が終っていた。
「これだけで…よろしいの?」
意外と抵抗なくバオーの血を飲んだカトレアが、育郎に尋ねる。
「ええ…というか、僕にできることはこれぐらいで…」
「ちいねえさま…どう?調子は?」
「そうね、今日はもともと調子がよかったから…ちょっと待って」
カトレアが懐から杖を取り出す。
「ちいねえさま、魔法を使うつもりなの!?」
驚くルイズに、カトレアが小さく頷く。
「ルイズ?」
「魔法はちいねえさまの身体には負担が大きいの…
 コモンぐらいなら大丈夫だけど、おおきな魔法を使うと」
「そんな…カトレアさん」
心配そうに自分を見る二人に、カトレアが心配ないと笑いかける。
「大丈夫よ、負担はちょっとだけになるように加減するから」
そう言って、窓にむかって歩き出し、呪文をとなえ、外に向かって杖を振る。
すると、かなりの大きさの土ゴーレムがその場にあらわれた。
「すごい…」
思わず感嘆の言葉を上げる育郎。
「15メイルはあるわ…え?」
突如ゴーレムが土に返る。
「ちいねえさま!?」
姉に何かあったのかとルイズが振り返るが、当のカトレアは無言で立ったままだ。
「カトレアさん?」
育郎の言葉を無視し、カトレアはもう一度呪文を唱え、杖をふった。

「これは…さっきの倍はあるぞ!」
先程ゴーレムが立っていた場所に、30メートルはあろうかという巨大な
土ゴーレムが佇んでいるではないか。
「ちいねえさま…大丈夫なの?」
恐る恐る問うルイズに、カトレアは顔に満面の笑みを浮かべて答える。
「ええ、全然負担を感じないのよ!すごいわ!」
その言葉を聞いたルイズは、見る見るうちに顔を輝かせた。
「本当に?イクロー、ちいねえさまの身体が治った!治ったのよ!」
「ああ、よかったね。ルイズ」
イクローの顔にも、安堵の笑みが浮かぶ。
「それにしても…本当に調子が良いのが自分でもよくわかってきたわ。
 ンッン~~~~♪
 実にッ!スガスガしい気分ねッ!
 歌でもひとつ歌いたい気分だわ、ふふふふふふふ!」
「ちいねえさま、あんまりはしゃいだら…」
「大丈夫よルイズ!3年前に、国一番の水のメイジに診てもらった事があるけど」
そういって、おもむろに自分のこめかみに指を押し付けるカトレア。
「こんなにもッ!絶好調のハレバレとした気分はなかったわ………
 ふふふ、貴方の血のおかげね、本当に調子が良いッ!」
「あ、あの…カトレアさん?」
「ち、ちいねえさま?」
「最高に『ハイ!』ってやつよおおおお!うふふふふふふふふふふふふ!!!」
なんだか尋常でないはしゃぎようのカトレアに、言いようのない不安を感じる
ルイズと育郎であった。

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