ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ドロの使い魔-21

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「なあ、ルイズよぉ」
セッコは自分の首についた鎖を弄り回しながら呟いた。
その首輪についたプレートに、彼には読めない文字が刻んである。
“狂暴につき注意”

「オレ、アルビオンであれだけ頑張ったのにさ、何で前より待遇落ちてるんだよ。おかしくね?」
ルイズが大きな溜め息をひとつ吐く。
「あんたねえ、自分の胸に聞いてみなさいよ!」

事は2日前に遡る。

ワルドの裏切りにあい、ほうほうの体でアルビオンから脱出したルイズたちは、
アルビオン動乱の影響で厳戒態勢のトリステイン王宮へと事の報告に向かったのであった。
その過程で王宮の門の“内側”に着地したため、王宮の警備をしている魔法衛士隊に不審者として捕縛されてしまったのだ。
不審者と思われる事自体はある程度予想できていたのだが、その後がいけなかった。
いきなり見知らぬ男に襲われたと勘違いした寝起きのセッコが、ルイズたちが止めるまもなく暴れだしたのである。
偶然近くに居たアンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿がルイズに気づいた為、
大事には至らなかったが、もう少しでルイズたちは反逆者にされかけたのである。
その上密命の成功報酬は、セッコが破壊した壁の修理費と、
取り押さえようとして怪我をした魔法衛士隊員の治療費に充てられ全て消えた。
ルイズの怒り推して知るべし。

「うーん、なんか悪い事したかなあ。思いつかねえ。」
「しまくりよ馬鹿犬!さあ、次の授業が始まるから行くわよ!」

ルイズは鎖の端を掴み、思い切り引っ張った。
「おい、待て、首が…プげッ」

その頃、元ニューカッスル城であるところの瓦礫を踏み締め、片腕のない長身の貴族が戦跡を検分していた。
ワルドである。

「ううむ、この辺りだったと思うのだが……」
その時、何者かがワルドの肩を叩いた。
同時に快活な、澄んだ声がする。
「子爵!ワルド君!ウェールズの遺体は見つかったかね?」
ワルドは首を振って、現れた男に応えた。

その男は、年のころ三十台の半ば。
丸帽子を被り、緑色のローブとマントを身に着けている。
外見は聖職者のようだが、発する雰囲気は軍人や権力者のそれだ。
帽子の裾からはカールした金髪が覗いている。

「この近辺だとは思うのですが、少々お待ちを。
それと、手紙の件本当に申し訳ない、私のミスです。何なりと罰をお与えください」
そう言って頭を垂れたワルドを、男はにかっと笑みを浮かべ制する。

「何を言うか子爵!君は敵軍の勇将を一人で討ち取る、目覚しい働きをしたのだぞ!」
「ですがクロムウェル閣下……」
「正直なところ、手紙の何倍もウェールズの“遺体”のほうが重要なのだよ。だから気にするな」
ワルドは自分の上官がやけに遺体を強調することに少し疑問を感じたが、
とりあえずそれは追いやり感謝の意を示した。
「ありがとうございます、閣下」

「うむ。ところでワルド君、きみが仲間に引き込んだという“土くれ”のフーケ。
いや、ミス・サウスゴータか。彼女はどうしたのかね?
聞けばアルビオン王党派は仇だというではないか。死体検分には来ていないのか?」

ワルドは返答に窮してしまった。
フーケはラ・ロシェールでの戦闘以来、いくつか設定しておいた合流地点にも現れず行方をくらましている。
戦死の可能性がゼロとまではいわないが、かの“土くれ”があの程度で死ぬようなタマとは思えない。
完全に従わせることができなかったと考える方が自然だろう。

「はっはっは、振られたかね。
どうせ用心深いワルド君のことだ、内情までは話してないのだろう?
盗賊の一人や二人どこに行こうと余は気にせぬよ。」
クロムウェルは快活な笑い声をあげた。ワルドの胸がちくりと痛む。

「重ね重ね申し訳ありませぬ閣下……もとい、アルビオン皇帝クロムウェル様」

「今必要なのは“結束”と“権威”だ。まだ両方が足りぬ。
しかし、いずれはハルケギニアを纏め、“聖地”を忌まわしきエルフどもから取り戻してみせる!
始祖ブリミルに余が授かったこの“虚無”をもってしてな!
……さて、ワルド君。ウェールズを捜そうではないか」
そう言うと、クロムウェルは自ら周囲の瓦礫を調べ始めた。
ワルドが慌ててそれに続く。

照りつける太陽の下、辺りには腐臭が漂っている。
それは戦死者の物言わぬ抵抗とも取れた。


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