ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-29

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「おや、君達どこかにでかけるのかい?」
広場にやってきたギーシュが、シルフィードに乗ろうとする育郎達を見つけた。
「この娘の家に遊びに行くのよ」
竜の背にのるキュルケが、タバサを指差して答える。
「それなら明日にすればいいいいじゃないか?虚無の曜日なんだし」
その言葉にニヤリと笑うキュルケ。
「それがね…タバサの家に泊まって、次の日はヴァリエールの家に行くのよ!」
「…確か君たちの実家は、宿敵同士じゃなかったっけ?」
「だから……… い い ん じ ゃ な い の !」
「なにがいいのよ…あんたどんな神経してるの?」
シルフィードの傍らに立つルイズが、信じられないと言う目をキュルケに向ける。
「あら、いくらラ・ヴァリエール家でも、客をいきなりとって食べるような真似は
 しないでしょう?」
「当たり前じゃない。例え相手がツェルプストーでも…って誰が客なのよ!?」
「  わ  た  し  」
毎度のやりとりを始める二人に、肩をすくめるギーシュ。
「そういえば彼女は?姿が見えないけど、なにかあったのかい?」
育郎がいつもギーシュの隣にいるはずの、モンモランシーが居ない事に気付く。
「ああ、僕の使い魔が見当たらなくてね。手分けして探してるんだ」
「君の使い魔?」
「そう、僕の可愛いヴェルダンデ!そういえばイクローに紹介した事はなかったね?
 今すぐに君に見せたいのはやまやまなんだが…そうだ!君たちも一緒に」
「時間がない」
ギーシュの言葉をタバサがさえぎる。
「泊りなんだから別にいいじゃないか…そんなに急ぐものでも」
「私の家はラグドリアン湖の近く」
ラグドリアン湖はガリアと国境を跨って広がっている。対して、ヴァリエール領は
ゲルマニアとの国境にあり、ラグドリアン湖との距離は結構なものである。
おかげで、虚無の曜日に日帰りで用を済ます、というわけにはいかず、タバサの家に
泊る事になったのだ。

「…でもちょっとくらいなら」
「なにやってるのよギーシュ!最近使い魔が自分をかまってくれないって泣いてたから、
 こうやって一緒に探してあげたっていうのに、私だけに探させるつもり!?」
広場で話し込むギーシュを見つけ、モンモランシーは顔を真っ赤にさせて詰め寄る。
「す、すまないモンモランシー。たまたま彼らを見つけたから、つい………
 あ、そうだ愛しいモンモランシー!ヴェルダンデは見つかったかい?」
「いなかったわよ…
 これだけ探して見つからないんだから、どこかに潜ってるんじゃないの?
 だったら食事の時間まで待って、その時にでも」
「フッ、僕もそう考えたんだけど…食べたらすぐその場で潜っちゃうんだ…」
がっくりと肩を落とすギーシュ。
「なにか好物でも置いて、よって来るのを待てば?」
見かねて育郎がアイデアを出す。
ちなみこの時タバサは、『そんな奴ほっとけ』と目で訴えていたのだが、残念な事に
気付いてもらえなかった。
「うーん…好物か。ミミズは勝手に食べてるし…」
「そういやおめーの使い魔って何なんだ?ミミズとか、潜るとか…カエル?」
「それは私の使い魔よ」
デルフの言葉に、モンモランシーが腰に下げた袋からカエルを取り出し、手にのせる。
「カエルを持ち歩いてるのか!?」
「あたり前じゃない、私の使い魔なんだし」
「なにか変かいイクロー?」
「い、いや別に…ルイズはカエルが嫌いだから…」
実際のところは、女の子がカエルを持ち歩く事に驚いたのだが、それを説明するのは
いろいろと面倒なのでそう答える。
ちなみにこの時タバサは竜から降り、育郎をツンツンつついて、出発をせかして
いるのだが、軽いカルチャーショックを味わった育郎には気付いてもらえなかった。

「じゃ、二人のケンカが終る前に戻した方がいわね。ホラ、ロビン」
騒ぐルイズを横目に、袋の口を開いて使い魔に中に入るようにうながす。
「そもそも潜るのは水の中じゃなくて地面だよ。
 なんてったって、僕の使い魔はジャイアントモールだからね!」
「モール…モグラかい?」
「相棒ジャイアントモール見た事あるか?始めて見たら笑っちまう程のでかさだぜ」
「そう!僕のヴェルダンデは、見た人間が思わず微笑んでしまう愛らしさなんだ!」
「それは一度見てみたいな…」
「ああ、君が帰ってくるまでにヴェルダンデともう一度仲を深めておくよ!」
「…その必要はないみたいよ」
「へ?」
モンモランシーが指差した先の地面がモコモコと盛り上がり、茶色の大きな生き物が
地面を突き破ってあらわれた。
「おお、ヴェルダンデ…ってあれ?」
膝をついてヴェルダンデを抱きしめようとするギーシュだったが、ヴェルダンデは
その横をすり抜けて、モグモグと鼻をひくつかせながら育郎にすりよった。
「っと、よしよし…この大きさはすごいな。モグモグって鳴いてるし」
「だろ?でもこいつが愛らしいたぁ…この坊主もある意味てーしたもんだ」
「そうかな?結構可愛いじゃないか」
「マジか相棒!?だってでっかいモグラだぜ?」
「ヴェルダンデ!何故僕じゃなくイクローに!?」
三者三様のリアクションをとるなか、ヴェルダンデは変わらず、モグモグいいながら
育郎に自分の鼻をこすりつけている。
ちなみにこの時タバサは、育郎の服を引っ張って『とっとと行こう』とアピールして
いるのだが、ヴェルダンデが盛大にじゃれ付いているため、育郎は気づかなかった。
「ひょっとして…この子の好きなものでも持ってるんじゃないの?」
「…ミミズをかい?」
モンモランシーの言葉に、ギーシュが怪訝な顔をする。
「そうじゃなくて、宝石とか貴重な鉱石とか…貴方の使い魔は、そういう物が好きで
 自分の為に探してくれるって、この前自慢してたじゃない」
「そんなのイクローがもってるわけ…もってないよね?」
二人の視線が育郎に向けられる。

「あ、ああ…そんな、宝石なんて高価なもの」

              もってます

先日モット伯との一件で、育郎は宝石を手に入れている。
もしそんな物を持っていると知られたら、当然何処から手に入れたかを聞かれる
だろう。しかしモット伯との事を話すわけには行かない。自分だけならまだしも、
ルイズやシエスタにまで迷惑をかける事になりかねないからだ。
だからといって『拾った』等と言うには、あまりに高価な代物である。
「ああ、そりゃ多分俺だ」
どうしたものかと困っている育郎に、デルフが助け舟をだした。
「君が?とてもそうには見えないけど」
「あ、でも確かに背中の剣に手を伸ばしてるわよ」
幸運というべきか、育郎はミス・ロングビルからもらった宝石を、小さな袋に入れ、
デルフの鞘に目立たないようにくくり付けていたのだ。なにせ育郎は使い魔の身、
ルイズの部屋に住んではいるが、自分用の家具など持たない身である。
そんなものをしまう場所など存在しないのだ。
「おめーらみたいな若造にはわかんなくても、こいつにゃ俺の凄さが分かるんだよ。
 よかったな坊主、良い使い魔をもててよ!」
「うーん、ひょっとして微妙な錆び具合が珍しいのかな?」
「おめーな…」
ぐりぐり
「…どうしたんだい、タバサ?」
「早く出発を」
「ああ、ごめんごめん…怒ったかい?」
「全然」
「…本当に?」
「本当に」
「………」
頭に杖を押し付ける時に込めていた力を考えると、とてもそうは思えなかったが、
むし返すのもどうかと思い、黙っている育郎であった。

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