ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-37

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匿名ユーザー

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「……ってわけだ」
一通り話したが、もちろん手紙と元使い魔、虚無の事は伏せてある。
「小さい小さいと思っていたけど…ルイズも大きくなったのね」
感慨深げに言うのは黙って聞いていたカトレアだ。
もちろん、当人からしたら、まだ十分小さい域に入っているのだが、知らない間に紆余曲折を経て成長している事は嬉しいようだ。

しかしまぁ、それを見ているプロシュートはこの目の前の人物がその口から聞くまでルイズの姉などとは思ってはいなかった。
ハッキリ言えばマジに貴族か?と思ったぐらいだ。偏見っちゃあ偏見なのだが、今まで出会った貴族があんなのばかりだから仕方ない。
穏やかそうな顔立ち、雰囲気、これでもかと言わんばかりに振りまく優しさオーラ。後、結構ある胸。
似てるのは髪の色と目の色ぐらいであろう。メローネが居たらベイビィ・フェイスで遺伝子情報を解析させてるとこだ。

「これから、どうなさるおつもりですか?」
そんな事考えていると、どこぞの聖人かと思いたくなるぐらいの微笑を向けられそう聞かれた。
元ギャング的にこんなナマモノ見た事無いから仕方ない。

普通の状況なら一発説教かましに行くついでに学院にINしてもよかったが、この場合少し違った。
アルビオンへの侵攻計画があるかもしれないと聞いた。つまり戦争だ。
あのルイズの事。まず自身も参戦すると言い張る事は確実だ。
グレイトフル・デッドの能力を知っている以上、自分も付き合わされる事も確実だろう。
使い魔ではなくなったからには、付き合う義理も無くなったのだが、下手に能力が上の方にでも知れたら洒落にもならない。
半径200メートルの無差別老化能力。間違いなく単独最前線行きだ。
いくら射程が長いといっても、軍を相手にできると思っている程能力を過信していない。
魔法の射程よりは遥かに長いが、罠や砲などがあってはどうしようもないし、スデにガンダールヴではない。支えれたとしても局所的なものだろう。
仮にグレイトフル・デッドがトリステインの勝因に繋がったとしても、その後に待っているものが問題だ。

あの姫様はそう思っていなくても、周りの貴族どもはナニをするか分かったもんではない。
魔法という自らの特権を上回る力を持つ平民の存在。普通に考えれば暗殺対象になる事間違いなしだ。
ここに来た直後なら、まだそれでも国一つ相手にする気にはなれただろうが、現在においてはその認識を改めさせられている。
その原因に直結しているのが、ワルドだ。

対生物なら、例外なく発動する老化能力。それが全く…直触りすら通用しなかった遍在。
ムカつく相手だが、ある意味感謝すらしている部分もある。
死にかけはしたものの、そういうモノがある事を早いうちに知れたからだ。
相性が悪い。それも最悪にだ。スタンド能力ならワルドにだけ注意すればいいが、魔法ならそうはいかない。
同じ魔法を使えるヤツは必ず居る。不特定多数のそういうヤツに狙われたのでは確実にこちらが不利だ。
ギアッチョを相手にするよなものである。
使われるだけ使われて、必要が無くなれば冷遇され始末されるというのは、パッショーネに属していた時の二の舞だ。それだけは避けねばならない。
何より死んでいった仲間にどの面下げて会えたもんか分かったもんではない。
暗殺チーム全体の誇りに関わる事なのだ。
そういう事から、即返答するという事には至っていない。逃げるという選択肢は浮かんでいないあたりはさすがというべきか。

「まあ、まあ、まあ、まあまあ」
そう言ってカトレアが近付いてくる。何だと思いつつ何時もの顔でそれを見ていると、じっと見つめられた。
元ギャングの仏頂面と、見る人が見たら女神かと言いたくなるような微笑。極めて対照的だが、変わらない表情でブッ飛ぶような事を言われた。

「あなた、ルイズの恋人ね?」
オーケーちょっと待て。スタンド攻撃か。トーキング・ヘッドか。と何故か遭遇した事の無いスタンドとその能力が頭に浮かんだ程だ。
「ケンカでもしたのね。だからルイズのとこに行きたくないんでしょ」
楽しそうにそう言っているが、言われた方はたまったもんではない。
「…どこでそう思ったのか知らねーが、違う」
今なら、アンリエッタがルイズの部屋を訪れた時、同じような事を言われて人を『生物』呼ばわりしてくれた気持ちが分かる。
「腐れ縁みてーなもんで、面倒見てただけだ」
プロシュートにとってルイズの扱いは、多少なりとも成長を見せたとは言え未だペッシと同程度なのである。
まぁそのペッシと同程度という事が結構スゴイ事なのだが。
「あらあら、ごめんなさいね。わたし、すぐ間違えるのよ。気にしないで」
そう言いながら笑っているが、マジにそう思ったかは不明である。
なんせ常に同じような微笑を振りまいているのだ。リゾットの無表情とは対照的だが、その心中を正確に読むのがディ・モールト難しい。
ハッキリ言えば苦手なタイプに属するのだが、嫌な感じはしない。ごく僅かな例外を除いて人間こういうタイプを嫌うヤツは少ない。それは元ギャングとて同じ事だ。

まぁだからと言ってアテがあるわけではないのだが。
最悪、『魅惑の妖精亭』という選択肢もあったが、それはマジに最後の手だ。
あれもあれなりに結構目立つ。現在チップレース、歴代最高記録保持者に君臨しているのだ。
何よりあの一件があってからスカロンの側にはあまり居たいものではない。悪いタイプではないとは思うが、生理的にダメだ。ちょっとしたトラウマも受けているし。
思案を巡らせ、オスマンあたりに言えば何とかなるかもしれんという結論に達しかけたが、次のカトレアの言葉にそれを捨てる事になった。
「そうだわ…行く場所が無いなら、いい事があるの。あなたさえよければだけど」

さて、こちら魔法学院だ。
あれから数日経った今、ザ・ニュー使い魔こと才人は、絶好調ッ!誰もぼくを止めることはできないッ!!という具合に結構巧くやっていた。
トライアングルクラスを倒したからには、先代ほどではないにしろ、それなりに一目置かれるようになっている。
もっとも、当の本人にとっては、その先代の事が気になっていたりするのだが。
「なあ、デルフ。お前が言ってた兄貴ってどんなやつだったんだ?」
「んー、そうだな。一言で言うなら…かっこいいな」
二重ショック!剣にまでそう言われるという事は、本気でそうなんだろうと思ったが、もう一つのショックの理由はルイズにある。

あの後、ルイズにもどういうやつなのか聞いたのだが
「かか、関係無いじゃない!今の使い魔は、あ、あんたなんだから!」
という具合に、少しばかり顔を赤くさせて返答させられたのだ。
つまるところ、二重ショックの原因は『剣であるデルフが言うんだから間違いなくかっこいい』『かっこいいからルイズがそいつの事が好きだった』
と、まぁそう判断した。前者は間違ってはいないが、後者は少しばかり違う。
プロシュートの溢れんばかりの兄貴オーラのおかげでルイズ自身、好きというよりマジに『怒ると怖いが少し年が上の頼れるお兄さン』的存在に落ち着いていた。
要はすぐ上の姉、カトレアに対してのものと同じような感情である。まぁそれで他人にもって行かれたくないというとこがあった。
だからと言って、本人の前ではそうならなかったり、人から聞かれても、性格的に認めたくないのでその辺り勘違いされる要因だ。

当然、そんな事知ったこっちゃあない二代目からすれば凹ませる原因になっていたりする。
特に何があったっつーわけでもないが、あの決闘の時に自分をかばうようにして見せた姿を見た時ゲージが振り切れたっぽい。
このルイズ、比率で言うなれば4:6の割合でデレが優勢だ。言うなれば惚れ才人か。惚れ薬要らずである。

もっとも、当人の性格からして結構流されやすかったりするから、例によってキュルケに誘惑された時なぞかなりグラついてた。
さっそく手ぇ出す辺りさすがというべきか、過去は振り返らないタイプというかアレなのだが。
なんせ、『おっぱい星人』に属する彼からして、あのボリュームは凄まじいものがあったからだッ!
容姿のタイプ的にはルイズ、属性的にはキュルケ。
もち、ルイズがキュルケの部屋に飛び込むという形でケリがついたのだが、当然、説教タイムである。
鞭片手にプロシュート仕込の説教が開始されたが、本職には遠く及ばないのでいかんせん迫力が足りない。
「いい!?わたしが怒ってるのはね!あ、あんたがツェルプストーの女に尻尾なんて振ったからよ!サイト!
  そりゃあ、たたた、確かに、キュルケは…あ、あるわよ、むむ、胸とか!わたしだってスゴイと思う!」
こんな具合に、キュルケのアレと自分のアレを比較し怒ってんだか、絶望してるんだか分からないような声なので、どっちかというと可愛いというべきか。
そんな感じなので、当人全く応えていない。むしろ生暖かい目でそれを見ていた。
「平和だねー。兄貴が居た時じゃ考えられないね」
と、暇そうにしているデルフが言ったとおり、先代が居た頃に比べてかなり緩い雰囲気だが、両名とも何だかんだでそれなりに上手くやっているようである。

ちなみに、ゼロ戦だが現在コルベールが管理しているが、外装は修復されているため、機銃弾は装填されていないもののほぼ新品同然である。
それを見た才人が、この前イタリアで見付かったゼロ戦が何故にここにあるのかと聞いたのだが、こっちにあったものだと説明され驚いた。
そして、その持ち主の子孫がここに居ると聞いてさらにブッ飛んだ。
ご存知シエスタだが、曽祖父と同じ国から来たという事で、結構話をしたりするようになった。
才人としても同じタイプのスタンド…もとい血統という事で、良好な感じで互いに接している。

「やっぱり、ひいおじいちゃんは『日本』ってとこから来たんですね…」
ある時そう言ったのだが、心なしか声の調子が重い。さすがにそれに気付いたのか、どうしたのかと聞いたが、やっぱりちょっと暗い。
首から下げていた飾りを手に持つと、静かに話し始めた。
「これ、プロシュートさんっていう人に頂いたんです」
見せて貰うと裏面に、文字が刻まれていた。読めないが文体そのものは見覚えがある。
「ゼロ戦がサイトさんの世界に戻ったって事は、プロシュートさんは戻れたんですね」
まぁ戻れたどころか、目の前の少年とスデに遭遇しているのだが、そんな事はシエスタは知らないし、才人もあの『マシーン』がそれだとは知らない。
「…あのさ、どういうヤツだったのか聞かせてくれないか?」
度々出てくる前任者のが出てきたのでめちゃ興味はある。ルイズに聞いてもアレだったし、小太りに聞いたらビビって話したがらないし何も聞けていないからだ。
「…自分の向かう道を貫ける人…ってところですかね。凄い人でしたよ、なんていうか周りの人が引っ張られるぐらいに」
どこか遠くを見て言うシエスタに、さすがにどこかヌケていると評判の才人も気付いた。
「何回も助けて貰ってたのに、わたしったら何も恩返しできなくて…」
「でも、もう帰ったんだろ?それじゃあ…」
その続きを言う前に、シエスタが言う。
「わたしが、戻ってきてくれると思って待ってるだけですから」
それだけ言うと、元の明るい顔になり、その場を離れ残ったのは才人一人になった。
心中かなり複雑である。シエスタの話を聞く限り、ただかっこいいヤツというわけではない。
ただ、ぶっちゃけ贔屓目に見ても可愛い範疇に入る少女二人に好意を向けられても(一人はまぁちょっと違うが)平然と戻れるというとこが癪に障った。
「……ムカつくな」
非常に正直な感想で、万が一会ったら一発ブン殴ってやろうかと思ったぐらいにだ。
まぁ、自分も帰る時が来るかもしれない、というのは完全スルーしているあたりは、らしいといえばらしい。

再び場所が移り、こちら実家だ。
デカイ屋敷という事だけあって、多数の使用人が働いているのだが、黒スーツに眼鏡をかけた元暗殺者がそこに混じっていた。
スーツ姿がこれ以上なく似合うだけあって非常に馴染んでいる。ちなみに眼鏡は伊達だ。
主な仕事はカトレアが飼う動物、特に熊、蛇、虎などの一般的に言う猛獣系の世話だ。
長年勤めてきた使用人ですら、ちと危ない範囲に入るのだが、平然とそれをやるので一発採用相成った。
何故にそれができるかというと、誰も見てない所でグレイトフル・デッドを叩き込んだからだ。
負けた方が舎弟になるギャング世界の掟。動物の世界でもまぁ似たようなモンである。
ペッシは進んでああなった方だが、年が近いギアッチョとやりあって負けているため、そっちにも頭が上がらない。
能力的に言えばビーチ・ボーイならホワイト・アルバムの装甲を突破できるのだが、性格的な差が出た結果といえよう。

カトレアの誘いを受けた理由としては、ここが公爵家というのが最大の理由だろう。
王室に近い立場だけあって、情報がかなり流れてくる。
アルビオンに侵攻が本当に行われるかどうかにしても、情報はどうしても欲しい。
もちろん、使用人に流れてくる話など大したものがあるとは思えないが、そこはカトレアから聞き出せるので問題ない。
というか、動物の世話なぞほとんどついでである。
初っ端からギャング的行動をモロに叩き込んだので、世話なぞすぐ終わり時間を持て余している。

字が読めないという事で、空いた時間カトレア直々に他に内密に勉強会が始まるのだが
動物に囲まれた中、かなりファンシーな雰囲気でやっているので、結構居心地は悪い。
教えている方は、結構楽しそうなので問題無いだろうが、教えられている方は
猫とか子犬とかが脚の上にのったりするので、ちとアレだが受けている立場なのであまり何も言えない。
「…オレも結構ヤキが回ったな」
メローネあたりが見たら何を言われるか分かったもんではない。
そう呟くと、膝の上の猫を少し触って本に目を向けた。

プロシュート兄貴―ザ・ニュー職場!


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