ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-24

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
終章 後編『杜王町に舞う風』

「あ、やべ、酔った……」

「飛行機酔い……ですか」

パッショーネの手配したマンション。
手回しも既に済んでいる。

当分は生活できるであろう大金、生活道具を持って入室。
フーゴが靴をきちんと並べるのに対し、ナランチャは普通に靴を放り投げた。
しかし、フーゴは注意しない。なぜなら

「フーゴ……寝ようぜ」

「そ、そうですね」

ここに来るまで、緊張と不安で寝られなかったナランチャたち。もう一刻も早く、睡眠を取りたかったのだ。
風呂はイタリアで入ってきた、布団を敷いて即寝る。

「うおー、何か急に興奮してきた。学生さんって感じだよなァーッ」

「いいから寝てくださいよ……って、何ゲーム機持ってきてるんですか」

「10分やると赤ん坊のようにストレスを残さず目を覚ませるんだよ」

「あ、そうですか……じゃ、僕はもう寝ます」

一足早く眠りに着くフーゴ。一方、ナランチャは。

「うおおぁ!しまったッ、ゲッターがッ!」

………。

それはさておき、朝。
ナランチャの通う高校は"ぶどうヶ丘高校"。あるパッショーネの幹部は「手続きやなんやらを全て任された。給料も減った。どうでもいいが4は嫌いだから高校が3年間なのはいいことだ、だが大学は(略)」と語っていた。
初めて袖に腕を通す学生服。嫌でも緊張せざるを得ない。

「はーッ、はーッ」

「ナランチャ、息が荒いです。早く行きましょうよ、遅刻します」

フーゴは自由行動だが、だからといって喜ばしいと言うわけではない。
自分もある程度日本語を覚えた(教えていたので当然だが)が、行く当てもないのだ。
部屋で何百回ため息をついただろうか。そんなフーゴを他所に、ナランチャは学校へと向かっている。
道中、犬に噛まれたのでエアロスミスの機銃を足に掠らせてやった。
流石に直撃させる気はなかったが、それだけで犬は逃げていく。
去り際に石を投げつけると、蹴り返されて額に直撃した。自業自得である。

「それでは、転入生を紹介します」

メガネをかけた女性の教師が、高校3年B組の教室で話を始めた。お前らは腐ったみかんだ!(?)
まあ、教室は普通の雰囲気だ。なんとも普通。
特徴を探す方が難しい。ないわけではないのだが。
生徒同士がどんなヤツが来るのかとか喋っている中、生徒である広瀬康一は、なんとなく不思議な物を感じ取っていた。

(なんだろう……まさか、転入生の子……)

まさかね、と自己完結しかけて、ドアが開いた。

「ナランチャ・ギルガ君です」

「外国人?」

「イタリアから来たらしいですよ、くれぐれもいじめたりしないように」

「………」

ガッチガチ。
硬直して直立しているナランチャを、康一は微笑ましい様子で見る。
まあ、外国人だし、無理もないな、と考えていた。
そして、もう一つ感じ取った事。

それは、目の前の少年がスタンド使いかもしれない、ということ。

(ふー……軽くルイズに抱きついた時の緊張を超えたな。死にそうだ)

席に座って、一息つく。
これは早急に慣れないといけない。毎日心臓が発作しそうになったらたまらない。
だが、多分、しばらくはこの緊張感と共に学校生活をすごすことになるだろう。
馬鹿にされるのは別にいいが、まさかいざ学校に通うとなると、ここまで緊張するとは思わなかった。
パッショーネの、ある財団並の手回しにより、一応向こうの学校からこっちの学校へ『転入』したことになっている。

一人で唸っていると、急に肩を叩かれたのでビクッ、と反応して振り返った。

「ねえ……君、もしかして……」

「……え?な、何?」

「……スタンド使いだったりする?」

ええ、もちろんこんなに早くスタンド使いだとバレるとは思いませんでしたbyナランチャ
何故、このときばかり、康一はストレートに物を言ってしまったのだろうか。
一般人だったらどうするつもりだったのか、それは不明である。
唐突に飛び出した必殺ブロー。会心の一撃!ならんちゃは9999のダメージをうけた。ならんちゃは しんでしまった!
おおならんちゃよ しんでしまうとはなさけない!
バレるんなら偽名を使うべきだったなぁ、と後悔。
心臓が月までぶっ飛ぶ衝撃を受けたナランチャは、危うく卒倒しそうになりながら――

「あ、あれか。お前もスタンド使いだったり……」

「う、うん。まあね。今日、一緒に帰る?」

「おう、俺としても友達は早いとこ作りたいしな」

「というか、日本語偉く上手いね」

「まあ……ちょっとした地獄を見た」

「へえ……」

地獄=数千回の「ド低能がァーッ」
いきなりスタンド使いと会ってしまった。
一応『任務』として、スタンド使いの調査が入っていたからありがたい。
僅かに笑う康一。つられて笑うナランチャ。

いい性格で、誰からも好かれそうなヤツだというのが、ナランチャの第一印象。
これはチャンスだ。
芋づる式に、ここからさらに友達の人数を増やしていけるかもしれない。(スタンド使いの人間をもっと見つけられるとは考えないのだろうか)


しかし、授業では散々であった。
いや、「これがいいんですよ、これが!」とかナランチャは言っていたが、彼のノートに書かれた『おかっぱのヒーロー』を見て、康一は苦笑した。
ちなみに内容を理解する事は全く出来なかったという。
大体、一日目から授業とは。
始業式の時期にあわせてくれよ、とナランチャは思った。

(ふふ……時差を考えれば、今頃初っ端から授業で困ってる頃でしょうね……康一君には会えましたかね?)

ジョルノは、笑った。
極めて邪悪な笑みで、側にいたトリッシュは沈黙するしかない。
ミスタはまだ卒倒していた。


「えぇ?ナランチャ君って……親いないの?」

「ああ……今は、2人暮らしかな、フーゴってやつと」

「大変なんだねぇ……僕じゃあ想像も出来ないな」

「あ、そうだ。スタンド、見せてくれねーか?」

結構過去の事とかは普通に話しちゃうナランチャ。警戒心ナッシング。
そしてスタンド使いに「スタンド見せろ」って話しかけちゃう。おい。
少しだけ顔を下げて歩いていた康一は、顔を上げた。
これで一応スタンド使いの調査は済んだ(夏休みの宿題を一つやりきった気分)。
一人しか調べられてない。いいのかナランチャ。

「うん、別にいいけど……」

「俺も出すからさ」

少し精神を集中する。
精神力が具現化し、エアロスミスの戦闘機のようなフォルムが、スタンド使いの康一にははっきりと見えた。
空中で静止したエアロスミスを、下から上から右から左から、全方位から眺める康一。

「うわあ……これ、戦闘機?」

「まあ、な。一応戦闘向き。二酸化探査も探知できる」

これ一般人が聞いたらわけが分かりません。
包み隠さず特徴を言うナランチャに、康一は敵意を全く感じない。
やんちゃな青年、といったところだ。
自分も、スタンドを出す。
せっかくなので、『エコーズACT3』を出した。

「オ呼ビデスカ……?」

「うお、喋った!」

「うん、僕は三つ使い分けられるんだけど、どういうわけかコイツだけね……」

「み、三つって……」

人型スタンドには慣れている。
しかし、複数の能力を持っているスタンドなど、相当珍しいだろうとすぐ分かった。
エコーズの能力自体が『成長』と考えれば、能力は何とか一つに収める事が出来るかもしれないが。
                                                              「そういえば、イタリアかァ……僕も行った事あるよ」

じろじろACT3を見つめていたナランチャの首が再び康一の声のするほうへ向いた。
内心「それはもしかしてパッショーネのこととか知ってたりして?」とか思っている。
ドキドキしつつ、二の句を告げる康一に視線を向けていた。
しかし、右手は自動販売機に金を突っ込み、サイダーを取り出していた。
ゴクゴク喉を鳴らす。落ち着けるためだったかどうかは知らないが。
ジョルノはこうやって心臓に悪いことを俺に味わわせる為にここに送り込んだのか?という疑問が浮かぶ。

「ジョルノ君っていう人……ちょっと用があって、会いにいったんだ」

サイダーを吹いた。
幸い康一はかわしたが、すかさず誤魔化しを入れる。
何か知らないが、急に「この台詞を言わなくてはならない」みたいな感覚が来た。

「エ……」 

「え?」

「エメラルドスプラッシュ!」

「?」

自分でも何を言っているのか分からず、もっと収拾がつかなくなっている気がする。

「心臓の音、凄いよ?もしかしてナランチャ君ってさ……」

駄目押しとばかりに、視聴覚を持つACT1で心臓の音を察知されてしまうド低能君。
足が震えてくる。
一応任務だ。ということを思い出す。バレたら即消されるんじゃね?とか、万が一の時。
正直ジョルノに勝てる自身はない。
もしもだ。もしもだが。可能性は低めだが。
レクイエム出されると大冒険の世界へ行かなきゃならなくなる。

的外れな心配ではあるが、日本語をまあまあ覚えたとは言え如何せん『ナランチャなので』。
ただ、強制帰国とかはありえるかも、とやっと現実的な思考に帰ってきたナランチャは、たった一日でオサラバですかーッ!?とか、今にも白目剥いて路上に倒れそうであった。

「ジョルノ君と知り合い……てことは」

「そ、それ以上言うなッ!」

「……うん、もうなんとなく分かったから。これ以上は言わないよ」

ナランチャ自爆。
康一君がある人物からも『好かれやすい性格』と言われたり、頼りにされやすいのは、やはりこういう人の良さもあるのだろう。
数年前の『ある事件』でも勝利への切欠を作り上げたのは、康一だった。
成長のスタンド――エコーズが現すように、彼もその事件を境に成長していった。

『それ以上言うな』が鍵となり、ナランチャがパッショーネの一員だと言うことをうっかり知ってしまった康一。
結果として、ナランチャが勝手に墓穴を掘っただけであった。

学校に通っていると言う実感は、ナランチャの注意力を一時的にとは言え、凄まじく散漫にしているのである。

「……お、康一ィ」

ふと。
微妙に間延びした声が後ろから聞こえた。
康一に秘密を知られまくって敏感になっていたナランチャはバッと後ろを向いた。滑稽だ。

俗に言う、リーゼントの男。背は康一やナランチャと比べると相当高い。
その横にはハンバーグ頭の男。こちらも大きい。
なんとなく、それほど年は離れていないはずなのに、妙な貫禄と威圧感を感じる。

「あ、仗助君と億泰君」

「………」

仕方なかったのだ。
初対面だったら殆どの人はそう思うだろうし、何の前情報もなく、ナランチャのような性格を持った人間や、そこらの不良なんかでも言ってしまうかもしれない。
ただ、『彼』の場合はそれが『禁句』であって、力も相当なものだったから、こそ。
『彼』は、初対面の者には『試練』として立ちはだかる確率が非常に高く、下手すれば大怪我を負うかもしれない。

それでも、言わずにはいられなかった。

「あのさ、ナランチャ君、髪の事は言及しないほうが」

「変な髪形だな、オイ」

ザ・ワールド。
5秒間時が止まった。
そう。
ナランチャ・ギルガは、その『試練』に片足どころか全身突っ込んでしまったのであった。

「おい、じょ、仗助ェー……いや……わ、悪気なさそうだしよォ?ゆ、許してやっても」

「………」

億泰は必死で仗助を説得する。
しかし、既に彼はバーサーカーと化していた。康一は冷や汗を掻き、叫ぶ。

「な、ナランチャ君ッ!逃げてッ!」

「あ?」

「オイ……今、俺の髪型の事、なんつった?」

億泰も必死で叫ぶ。体を掴み、止めようとするも弾き飛ばされた。

「に、逃げろオメェェーッ!」

地に膝をついた格好のまま、億泰がいよいよ鬼気迫る表情で叫んだ。

「え?え?」

「うわああ!ACT2!」

ACT2で「ドヒュウゥ」の文字をナランチャに貼り付け、吹き飛ばす。
仗助がプッツンするのと、それはほぼ同時だった。

「この俺の髪型が……サザエさんみてぇだとォーッ?」

止めるべく、ACT3を出す暇がなかったために、ACT2が仗助に「ピタッ」の文字を貼り付けようとするが、全て避けられた。
億泰も止める為に「ザ・ハンド」を待機させる。

「確かに聞いたぞ、コラァァァーッ!!」

もうこうなれば止められない。
仗助のスタンド「クレイジー・ダイヤモンド」が地面を打ち、加速する。
盛大にジャンプして、空からナランチャに向かった。
風を切って進む屈強な男に、エアロスミスの銃口を向けて威嚇射撃。
当たらないように撃った弾とはいえ、全て弾かれた。

「どこに行きやがるッ、このスッタコがァーッ!!」

ドヒュウゥの効果が続き、どこまでも吹っ飛んでいるナランチャのつま先に、クレイジー・ダイヤモンドの拳がかする。
バチュンッ、と銃弾でも掠ったかのような音の後。
地面が盛り上がり、コンクリートの路上が吹っ飛んだ。

「うええぇぇーッ!?」

「この頭を貶すヤツは、何モンだろうと許さねェーッ!ドララァーッ!」

「うおおぉぉーッ!エアロスミスーッ!」

今度は手加減なしの機銃掃射を行なうが、何事もなかったかのように、クレイジー・ダイヤモンドが薙ぎ払った。
何度撃っても、何度撃っても、弾かれ、掴まれ、消えていく。

「は、反則だァーッ」

「ドラララァーッ!」

クレイジー・ダイヤモンドが路上から盛り上がった岩をナランチャの向こうへ投げると、着弾点がまた盛り上がる。
その着弾点の岩が宙に吹っ飛び、ナランチャに激突した。
追撃と言わんばかりに、岩を取った場所にクレイジー・ダイヤモンドの拳を触れさせる。
修復され、投げた岩が欠けた部分に嵌るため、戻ってくる
その戻ってくる途中、ナランチャを巻き込み、つれてきた。

「あぁ、ヤバイッ!」

ドヒュウゥが解除され、ナランチャの目の前には仗助がいた。
ACT3を出し、超重力で止めようとするも、距離があって届かないのでACT2でまた「ピタッ」を撃つが、また避けられた。
仕方なく「ドッグォン」をナランチャに撃った。

「へ?うおぉッ!?」

爆発の勢いで吹っ飛ぶナランチャ。そこへすかさずドヒュウゥを撃ち、距離を大幅にとるが、仗助はクレイジー・ダイヤモンドで跳躍、普通に追いついてしまった。

「ドララァーッ!」

「早かったな、俺の死も」

完全に回避不可能な一撃。
しかし、救世主降臨。

「ザ・ハンドォッ!」

億泰である。ここぞとばかりに空間を削る。
ガオン、という独特の音が響く。何回もその場で素振りする。
その瞬間、空間が削り取られ、仗助の体とナランチャの体、同時に至近距離までも引き寄せられた。
そこに康一がACT3の超重力を、仗助に叩き込んだ

「ぐあああ……」

「ふ、ふゥ~ッ、よかったぁーッ、止まったよォーッ」

「……オイ、そこの。これからは気をつけろ……」

ナランチャは絶句していた。どうでもいいけど歯が立たなかったね。

(……ジョルノ、俺、他の学校に通いたい)

その後、家でフーゴに散々愚痴った。



「あー……昨日はすまねェ。ちょーっと、加減が、な」

(ちょっと?)

次の日の帰り道、仗助、億泰、康一と共に歩く。
謝罪を受けたものの、暫く仗助への恐怖は消えないだろう。
ちなみに勉強はゆっくりと教えてもらっている。

「はぁー……クソッ、暇じゃねぇかァー、康一ィーッ」

「まあ、そうだね、刺激がないって言うのは、確かかもしれないけど」

「刺激なら昨日たっぷり味わったぜェーッ……」

(ホントだよ……)

「そだね……じゃあ、行く?」

そういった康一に、仗助と億泰が露骨に「嫌だ」と訴えかける顔をする。
ナランチャは何のことやら分からないが。
あそこは刺激がありまくりだ。だが、仗助ほどではないかもしれないが、危険である。

「露伴さんのところへ、しゅっぱーつ」

康一がわざと気の抜けた声を挙げる。
嫌々ながらついて行く2人。
何のことか分からないがとりあえずついて行く1人。
康一君、何だかんだで1年に何十回も行く。そりゃあもう、行ったら刺激ありまくりですから。
羨ましいと思う人は少ない、何故か。

岸部露伴――
ある意味人間やめてる。彼は人ではない、『漫画家』だ。
と言うのは言い過ぎかもしれないが、本当にそれぐらいの入れ込みようである。
蜘蛛を舐める?それぐらい普通ですが……。

というか、何をしに行くのかさえ決まっていない。
ナランチャを案内する、という名目だが、そのために何をするのかも特に決まっていなかった。

「ああ?なんだ、君達か……見ない顔も居るようだね」

「ろ、露伴先生、アレを使うのだけは」

「ヘブンズ・ドアーッ!」

「………」

スタンド使いの人に嫌われますよ、露伴先生。
とは言うけれど、内容を読み終わった後は『今起こったことを全て忘れる』を書き込むのでノープロブレム!じゃねぇよ。
体の一部を本にされるナランチャ。
康一は固まった。恐らくパッショーネの一員であることも書いてあるだろうからだ。

(露伴先生、いきなりですけどごめんなさいッ!)

「ACT3 FREEZE!」

「うおぉッ!?こ、康一君ッ!?」

露伴がヘブンズ・ドアーを解除する一時間後まで超重力は続いた(一時間解除しなかったのは漫画のネタにするためにも絶対に見たいという『意地』からである)。
仗助と億泰は康一が慌てて明後日の方向を向かせたので大丈夫。
一応サインを貰ったナランチャ。全然嬉しくなかった。

(どうせならアラキピロピコのサインが欲しかったなァ)

今日の露伴:ムカデ、ゲジゲジを舐めた。

上記の通り、ムカデやゲジゲジが侵入したので舐めた。それはもいベロンベロン。
ついでにペン先で裂く露伴先生。
殺虫剤もかけてみる露伴先生。
クラフト・ワーク。全員がその場で硬直。

でも、それがまた面白いのである。
露伴が何をするのか、何を言い出すのかが(すっかり動物扱いなのは触れてはいけないところだ)。
ヘブンズ・ドアーを恐れ、康一とナランチャは一足先に帰る。
後ろで聞こえる悲鳴。君たちのことは忘れないよ。

今度こそ本当に帰路へつくナランチャ。
ドアを開け、そこには寝ているフーゴの姿があった。

「ん……分かりました」

このマンション、風呂はない。
その代わり、近くに銭湯があるので、そこを使うことになっている。
小銭と道具を持っていき、ダッシュ、ダッシュ。
休みたい、休みたい、休みたい。
疲れを取りたい、風呂に入りたい、寝たい、寝たい。

こんなことがこの後10日も続くと、フーゴはちょっと鬱になってきていた。


「うぅー」

湯船に浸かりつつ、2人はうめき声を上げる。
フーゴは散歩の途中、誰かを探し回っていた女性にぶつかり、手をすりむいたのでそのことを言っていると、その内逆切れされ、その女性の髪の毛が襲い掛かってきた。

後、また人にぶつかって、今度は自分が悪かったので罪悪感を持った瞬間『錠前』が以下略。
そして、もう1人の自分を作り出すスタンドになぜかインネンをつけられ以下略。
ジャンケン申し込まれてスタンド吸い込まれそうになり以下略。
鬱になって以下略。

一応ナランチャもナランチャで結構苦労しているのだが、この件を境にフーゴが外に出ることは少なくなったと言う。

「フーゴ……すげぇ傷だらけじゃん」

「少しハプニングがですね……フフフ……夜にウイルスを全部ばら撒いてやれば、自分もろともこの町は……フフフフフ」

「フ……フーゴ……?」

それ以上は何も喋らない事にした。

家に帰るなり、またフーゴは布団に包まった。
自分も少しテレビを見てから寝よう、と思う。
あたりは全くと言って良いほど静かで、不気味ささえ感じられる。
とりあえずもう電気を消して、布団に潜り込む。
静寂。今日は眠れない。
ごしごしと、目を擦ると、液体が手についたのを感じた。

「……?」

何故か、涙を流していた。何の前触れもなく。

学校生活は楽しいし、危険な目に会ったこともあるが、それなりにスリリングな毎日だ。
文句などない。無いのだが。
胸にポッカリと穴が開いたようだった。
失ったものがまたあることを、悟る。
ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ。コルベールや、オスマン、マリコルヌ、シルフィード。
『あの世界』で得た物、それを、自分は確かに捨て去ったんだな、と実感する。
まだ数日だが、この生活も悪くない、しかし、あちらの生活も、悪くない。
両方を取る事は出来ない、なら、元々この世界の住人である自分は、ここに居るべき人間なのだ、と思いなおした。

不意に、窓が揺れた。

「なんだ?」

カーテンを開けるが、一瞬影のようなものが見えただけで、何も居なかった。
だが、どこか懐かしい雰囲気だけが、その場に漂っている。

「………」

それが誰か、今は気にしない。
居るかどうかも分からないのだから。

それから一ヶ月。
事件らしい事件もなく、普通の生活を送っていた。
スタンド使いの調査、とは言うものの……日常生活で垣間見える程度の能力しか把握できず、任務放棄と言っても差し支えない。
今日は土曜日と言う事で、仗助とナランチャは2人きりで歩いている。

「仗助ェー、ラーメン食いに行こうぜ……」

「おう……つーかよぉー、退屈だな」

「そうか?俺はまあまあ楽しいけど」

「平和はいいことだぜ?今も楽しいっちゃぁ楽しい。だけどよ、それとは別になんか変化が欲しいよなァー」

「俺は十分新鮮だよ、こういう生活がさぁ」

「……なんか買おうかな。やっぱ自分で変化を作るのがいいと思うのよ、俺ェ」

結局、何を話すかと思えば行き着くのはそれだった。
しかし、仗助の所持金は12円。
ナランチャの所持金――パッショーネからの援助で2万円。ミスタが……。
そしてなんと言う差……。

ナランチャはラーメン屋に行く途中でゲームを仗助に買ってやった。中古で安いヤツだ。
それでいいのか仗助。
そもそもやるのか仗助。
大体買うなよナランチャ。
買ったのはポケモ(以下自主規制)

その後もラーメンをナランチャがおごる。あまり金を使いすぎるなと言われただろうに。
立場が逆転しつつあるのを、仗助は気づいていなかった。

「ふぅッ、どっか寄ろうぜ」

「何回目だその言葉」

「しかたねーんだよ……そうだな、明日トニオさんのところ行くとして……」

「ああ、俺主催のアレか」

「公園でも行くか、公園」

言ってる間に、目の前からは子供達が挙げる甲高い声が響き渡っている。
木陰のベンチに座り込む2人。
まだ5月辺りだが、ぽかぽかした陽気で非常に気持ちがいい。
おまけに木陰が妙に涼しいと来たもんだ。
眠くならないわけがなく、仗助は早々に眠りこけていた。

ナランチャも半眼のまま、ベンチに身を任せている。

だが、1人の少女を見て目を見開く。

「ルイズ……じゃなかった」

その少女は向こう側のベンチに座っていた。
ルイズに非常に良く似ているのだが、髪が黒い。
やがてその少女もベンチを立ち、公園から出て行ったが、ナランチャの感傷をさらにひどくするには十分である。

「ううん……別にこっちへ来て欲しいとは思わないんだけどなァ。どうも、最近の俺はおかしい気がするぜ」

そのうち、まぶたがストーンと落ちてきた。
2時間後、先に起きた仗助に起こされることになる。

刻々と変化していく自分の心情に悩まされつつ。明日の出費に頭を悩ませるフーゴを宥めるナランチャ。
そして、また翌日。

「ようこそ、オ待ちしておりマシタ」

「うぃーす、トニオさん。言っとくけど……」

「ワカッテマス」

そして、外食と言う事でナランチャ、フーゴ、仗助、康一、億泰がトニオの店、トラサルディーに集まっていた。
親には了解を得ているようだが(億泰以外)、もちろん何事かと殆ど全員親に疑われたのは無理もなく。
そこまでするか?と言った感じではある。実はナランチャ主催。

何故断らなかったか?全員刺激に飢えていたからだ(ナランチャ以外)

「よし、トニオさん。『アレ』を……大変な事にならなけりゃ良いんで」

「確かに承りマシタ」

仗助は一応、トニオのスタンドを知り尽くしていると言うわけではない。
だが、効力は『思い知らされている』ので、さぞ面白い事になるだろうと画策していた。

その後、抑え目とは言ったにもかかわらず、涙が止まらない、内臓が飛び出る、肩から垢が大量に出る、などなど。
阿鼻叫喚でなかなか楽しい(?)パーティーにはなっていた。
ナランチャは大笑いしていたが、康一、フーゴは引いている。

「うんまァーいッ!」

億泰はもちろんガブガブ喰ってあのリアクションを連発することに。
彼は下手なグルメリポーターを越えている。

「いや、やっぱりグレートっすねェー」

1人だけ『パール・ジャム』抜きの料理を食っていた仗助は康一とフーゴから視線が集中していた。

(……チェッ、盛り上がってんだから余計な事考えるなよ、俺)

ナランチャは、「もしこの場にルイズが居たら」と、幻想していた。
何か一つが自分の生活から欠けるだけでも、物足りなさを感じる。
「ここにルイズが居たら」「キュルケがあんな時に居たらどうなるだろう」

とか、考え始めたらキリがない。
どう考えても、友達は多い方が楽しい。

アバッキオを失ったときも、しばらく何も考えられなかった。
立ち直るまで少しだけ時間を要したが、それを乗り越えて成長出来たと実感している。
だが、ルイズたちは死んでいない。生きているのだ。
それ故、思いを振り切れない。

しかし、今の自分には新しい仲間が居た。学校に通える。
ルイズのおかげと言っていい。
彼女が自分を元の世界に返すことを望んだのなら、自分はそれに答えなければならない。

(まあ微妙だけど、楽しもうかな)

任務と言う事を何時しか忘れて。
億泰が子羊のソテーを食べてまた内臓が飛び出る。
笑うしか出来ない。ついに康一は吐いた。
フーゴは目を伏せてちまちまと仗助の料理を奪っている。
金はまたナランチャが払うことになっていた。
近いうちにバイトでもはじめようかとは思うが、ナランチャに出来るのかどうか。
フーゴも切れやすい。向いてなさ過ぎる。

というか、殆どナランチャ主催の食事会が終わりに向かう頃には、全員肌がつやつやであった。
パール・ジャムによって健康そのものになった彼らは、翌日何故か5時に起きてしまう事になった。
自分の分を払ったのは康一だけで、億泰、仗助はナランチャにおごってもらった。
借金1万円追加なりー。

仗助:借金6万円
億泰:借金12万円

ナランチャテメェ!こ、高校生の癖になんてパーティーを開きやがる!とお思いだろうが、パッショーネが開いたのと同じなのだ。金はパッショーネ……もとい、ミスタの給料なので。
こいつらどうするのだろうか。多すぎである。

返そうと思ったら返せるのかもしれないが、それはいつになるだろう。

気づけば、まだ3時。昼飯であんなに騒いでしまった。
また公園にれっつごーである。
初っ端から寝るつもりだった億泰はベンチに横たわって寝ていた。

「うえ、満腹だぜェ」

「僕は吐いたけどね……」

「……気にするなよ、康一。お前は唯一の良心なんだ」

他愛もない会話。
しかし、平穏な生活がここまで面白いとは思って居なかった。
思わず笑いが込み上げる。が、ルイズの顔が浮かぶとそれも打ち消された。

(むう……こうまでして心に纏わりつくか、ルイズの亡霊!)

何故か殺されているルイズ。生きてるよ!

「あっれ……露伴先生」

「あ、また会ったね………ヘブンズ・ド」

「ACT2!『ピタッ』!」

とりあえず動きを止める。

「む、何故邪魔するんだい、康一君?」

「いや、むやみやたらに人の心を覗き見るのはどうかと」

「ふーん、そうかい!いいじゃないか、ページを破ったりはしない」

「そういう問題じゃないんで……す……?」

ぶおっ、と黒く長い影がベンチに座っていたものたちを覆った。
露伴が振り向く。
場が静まり返った。その威圧感に圧倒されて。

「じょ……承太郎……さん……ッスかァーッ!?」

「久し振りだな……」

「………」

珍しく黙っている露伴。
決してACT2が「シーン」の文字を張っているわけではない。

「……来な」

くいくい、と指をこっちに動かし、後ろからぴょこっ、と少女が顔を出した。
恐る恐るだったようで、目元が少ししか見えないが――
その髪型も顔も身長も全て、ルイズそっくりである。この前見た少女だった。もう一度言うが髪は黒い。
こちらを見て何か驚いた様子だったが、平静を保っている。

承太郎と『約束』していたが、耐え切れずにヘブンズ・ドアーをかけてみた。

「おお!凄い、いいぞ、コレはネタになる!」

「……露伴。あの時『見るな』と言ったはずだが、もう忘れたのか?」

妙に気合の入った露伴の声。ノートの一箇所を見て興奮しているようだが。
それはともかく。

ナランチャは、頭の中に何か駆け巡るものがあるのを感じた。
そのナランチャ以外の人間は、胸元にいつの間にか入っていた紙切れを見ている。

「……ナランチャ。久し振りね」


ナランチャは 逃げ出した!

「逃げたぞ!追えーッ!」

その紙切れは――承太郎がわざわざ時を止めて忍ばせておいたもの。
『逃げる可能性がある 逃げた場合は全力で捕獲し、さもなくば……』
コレが内容である。まぁ!承太郎ったらいけない人ッ!

「やはり逃げたか」

「待ちなさいよッ!」

そこから出したか杖を振る少女。
ぼーん。もはやナランチャにとって慣れ親しんだ爆発が炸裂した。

しかし、走る、走る、走る。
足の疲労などもはやどうでもいい。何故か皆追いかけてくる。
ナランチャは承太郎の罠にまんまと引っかかっていた。

「うおぉ、空間を削り取るッ!」

「ゴミ箱が飛んできたぞォーッ!」

「間田、手伝え、サーフィスを使えぇ!」

「な、なんでこんな事になってるんですかーッ!?」

康一が悲鳴を上げる。

「ぐおおお!ザ・ハンド、ザ・ハンドッ!」

「わああぁッ!猫草が飛んできたーッ!」

「ギャース」

「あ、玉美……ってお前は役に立たんな」

「?」

「はえーぞアイツ!なんつー脚力だ!」

そこへ通りすがり。
散歩中のジョセフが仗助の目に留まった。

「おい、じじいッ!アイツ捕まえてくれェ!アンタのスタンドなら!」

「アイス腐らせてくれ?何を言っとるんじゃ、仗助」

「うおおお!役にたたねーッ!」

承太郎の目の脅しが後ろから迫る。
丸くなったと思ったら、宛ら若い頃の迫力。
頼りになると同時に、どうも逆らえない。

もうここまで来たら分かっていると思うが、少女は髪を染めたルイズだ。
あの時、ルイズが送り込まれたのは、日本。
日本は日本でも、承太郎の家の中に送り込まれてしまったのであった。
偶然、家に帰ってきていた承太郎に見つかり、身振り手振りで説明しようとするも、ハルケギニアの言葉が通じるはずもなく。

困った承太郎はヘブンズ・ドアーが使える露伴に協力を仰ごうと思ったが、海洋冒険家になっていた承太郎は、暫く海に出る予定だったので断念。
家に居た外国人の女性は、また家に帰ってこないのかと怒っていたが、それにルイズは困惑するしかなかった。

言葉が通じないと言うだけでも過酷だったが、かなりの歳月をかけた。
やっと承太郎が帰ってきたと思ったら、杜王町へ。

露伴に頼み込んで、ヘブンズ・ドアーにより、めでたくルイズと言葉が通じるようになったのはいいが。
ある少年に会いたい、と駄々をこねるので話に出てきたイタリアへ直行。パスポートなどはスピードワゴン財団が作成した。
しかし、広大なイタリアでただ1人の少年を見つけるなど殆ど無謀な事であり、ここでも財団の力を借りるわけにも行かず、日本に帰ってしばらく普通に過ごす。

そして、スピードワゴン財団がナランチャを見つけ、再び杜王町に来た、というなんとも長くややこしい道のりであった。

「くおのおおおッ!何で逃げるのよッ!こっちは何ヶ月掛けて見つけたと思ってんのーッ!」

「あ、邪魔ッ!」

「ぐはぁぁッ!?素潜りで変なダンジョンに出たと思ったら杜王町ハウスだとッ!?」

ディアボロ:ナランチャに吹っ飛ばされてロードローラー→ザ・ハンドで吸い寄せられたジョセフを喰らって死亡(ナランチャ気づかず)
スコア:0

「ACT2ッ!」

「い、家に逃げ込むッ!」

流石にマンションのドアを壊したりはしないだろうと、自分の部屋に逃げ込み鍵を掛ける。
しかし、今日中は彼に平穏が訪れる事はない。
さっきまでレストランで食事をしていた頃が最早懐かしい。

「ジョ、ジョ、ジョルノォォォッ!?」

ジョルノにミスタ。
トリッシュは今日来てません。あの人元々はパッショーネじゃないし。差し入れに来るぐらいだし。

「あ、真面目に仕事してないようですから見に来ました。ホントだったみたいですね。援助減らします」

「え!じゃあ俺の給料も少しは戻る?」

「いえ、他の人の給料を少し増額しようと」

「うわああああッ!」

「ミスタ、近づかないでください」

顔を合わせに来たと言うのもあるが、フーゴがこっそり連絡していたのであった。真面目に仕事をしていない、と。
それを加えても、何故直々に来たか?

『スタンド使いは惹かれあう』。

(クソッ!俺の逃げ場はどこだッ!俺の側に近寄るんじゃねぇーッ!)

窓から飛び降りて下に居たディアボロをクッションにし逃走。
ディアボロ:死亡。
スコア・1400


「こんのぉーッ!まともに話せても居ないのにッ!逃げないでって言ってんでしょうがぁーッ!」

「くそぉッ!せっかく使い魔じゃなくなったかと思ってたのにッ!ルーンがまだあるなんてさッ!」


左手にある、ほのかに光を灯したルーンを見る。今まで気づかなかった。

「俺はまだ『ゼロの使い魔』なのかァーッ!」


「ど、どどどどういう意味よーッ!」


今日も杜王町は平和である。一人を除いて。

「……で」

「うん」

「お前も来ちゃった、と」

追いかけっこは終幕し、フーゴとナランチャ、そしてルイズだけがマンションの一室に座り込んでいる。
わけも分からないままフルボッコにされたナランチャは、絆創膏を腕に張りつつルイズの話を聞いていた。
髪が黒いので違和感がありまくりなのだが、あれだけ爆発を起こされては信じるしかない。

ナランチャは苦悩していた。
果たして喜ぶべきか、何をやってるのかと叱り飛ばすべきか。
ルイズは友達を捨てた。
それはナランチャにとっても許せる事ではなく、ルイズもあの日食が終わる一瞬の葛藤とは言え、苦渋の決断だった。
だが、逆に言えば「そこまでして自分を追いかけてきてくれた」のだ。
そんな少女を叱り飛ばすような勇気はナランチャにない。

「でもお前……勉強とかは」

「大丈夫。なんとか財団ってところから、コレ」

どさっ、とカバンの中から出たのは、大量の参考書と『進研ゼミ』であった。

「いや、ちょっとまて、進研ゼミて……(俺もやってるとは言え、お前がやるとは)」

「何よ。元々頭は良いのよ、私!」

いや、それは十分承知だが。
大学やら高校やらに通っていなければ、就職の際不利だ。フーゴに教え込まれた。
ルイズの話に出てきた『スピードワゴン財団』が「魔法が使える貴重な人物」ってことだけで手回しするとは言っているらしいが、いくらなんでも強引過ぎやしないか。
実は承太郎が『何故か放っておけない』という理由で財団にルイズへの協力を要請したのであるが。


「それに私がここに住めば、少なめだけどあの財団から援助が来るのよ」

「オーケー。交渉成立」

「「YEAAAHッ!!」」

「……何をやってるんですか」

よく考えれば、こいつら援助なかったら生きていけないんじゃないか?
頭の中に浮かんだそれはさておき、すかさず突っ込むフーゴ。
あ、とナランチャが素っ頓狂な声を出した。

「お前、窓んところ居た?」

「……?」

「……あー、そうか。俺の思い込みだ。気にすんな」

「……ふぅん、そんな思い込みするほど私のこと気にしてたんだ。ナランチャ」

「なぁッ!?馬鹿言ってんな!んな訳ないだろーが!」

「ま、大目に見といてあげるわ。逃げた事もね」

ナランチャは、目をそらして窓越しに空を見る。
夕焼けに染まっていた。

諦めたようなため息と共に、また視線を戻し、ただ黙って口元に笑みを浮かべた。



「なぁー、康一……」

「なんですか?」

「何でナランチャ、いきなりアイツとデートしてんの?」

仗助の問いに、康一は笑う。
億泰は後ろで泣いている。

「ふふ、違うよ。あれはただ『一緒に居るだけ』だって」

「それをデートって言うんじゃねぇのかよ……マジでスタンドも月まで吹っ飛ぶ衝撃だぜ……」

ルイズと一緒に自動販売機に手をかける。
両者共にサイダーを選んだ。ルイズがサイダーを選んだのは意外だ。
この世界に来てから飲んで、少し気に入ったらしい。

「……」

その光景を見つつ、珍しい笑顔を浮かべて、露伴は思い出したように虚空へとヘブンズ・ドアーをかける。
そして、何故か出てきた本に書き連ねていく。

「『サーヴァント・スミス 完』……そして、『望む限り今までのことは忘れない』。これでよし……と」


2人の笑顔を見届け、小さく笑い声を上げた後、露伴はナランチャとルイズをスケッチした紙を、空へ舞わせる。
その紙は、誘導されるように2人の間に落ちた。



『サーヴァント・スミス 完』

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー