ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

マジシャンズ・ゼロ-21

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ご機嫌で朝食を終えたルイズは部屋に戻り一息ついた後、腕を組み仁王立ちしてアヴドゥルにのたまう。
「私がコーディネートしてあげるわ!」

もうルイズとアヴドゥルの共同生活も長い。ルイズの性格を半ば強制的に理解させられたアヴドゥルは普段細やかな気配りをしている。
毎日の起こし方に始まり着替え、イスの引き方、会話中での相槌のタイミング、よいしょ…etc。
ジョセフ達が見たら思わず涙ぐみそうに成る…また職業メイドのシエスタに、
「アヴドゥルさん…マスター・オブ・メイドと呼ばせてください!」
と言わせた程の尽くしようである。………まさに至れり尽くせりでルイズも熟睡するはずだ。
もちろん、アヴドゥル自信が大して苦に思っていないからこそできることである。嫌いならさっさと逃げ出している。
同じ子供なのに承太郎や花京院とは全く違うルイズ。いや…違うというより完全に別の生き物のようなだが。
気性が荒く意地っ張り…でも優しさと思いやりを持つルイズをアヴドゥルは段々好ましく思っていき、今ではちょっとして擬似子育てのような感じで接している。

だから、これは彼らしくない失言だった。
「(君は)何を言っているんだ?」
昨日の騒動のせいで精神的に疲労していたアヴドゥルは思わずルイズに冷たく返してしまった。ちょっと痛い子を見る目になってしまったのがさらにまずい。
言った後……、
(しまったッ!……今日は飯抜きか)
ルイズの反応や自分の今後がたやすく想像できちょっと鬱が入るアヴドゥル。……心の傷は体のように次話には治らなかった。

ルイズは決して口にはしないが、(たぶん)学院一の力(マジシャンズ・レッドのこと)と知性(人間なので当然)を持つ優秀な使い魔―アヴドゥルに感謝していた。
ギーシュとの決闘でアヴドゥルの力が知れ渡ったことを機に、ルイズをあの忌まわしい『ゼロ』と呼ぶもの(アレってイジメだよね?)がいなくなったためだ。

もちろんすぐにイジメが無くなった訳じゃない。決闘後も…
「凄いのは使い魔だけだろ!やっぱりルイズは魔法の使えないゼロじゃないか!」
と何人かは言っていた。…が、イジメの様な行為が嫌いなアヴドゥルに睨まれ二の句を言えなくなる。
結果、アヴドゥルが怖くて表立っては『ゼロ』と呼べないためコソコソと陰口を叩き始めた。
コソコソ陰口を叩かれる日々。始めは不快に思っていたルイズだがある時、天啓を聞く。

―なにルイズ?周りが陰口してイジメてくる?ルイズ。それは周りを過大評価するからだよ。逆に考えるんだ「陰口しか叩けないなんてド低脳だ」と考えるんだ

しかし、卿の名言も意味が無かった。アヴドゥルのルイズへのあまりにも忠実な仕え様に誰も『ゼロ』と陰口できなくなったからだ。
―メイジの実力を見るにはまず使い魔を見ろ
とはよく言うが、それはあくまで使い魔をメイジが制御できている場合の話。強力な使い魔を呼び出してしまいも制御できなくては話にならない。
特にドラゴン等の高い知能を持つモノは極めて制御が難しく、幾らルーンの補助があるといってもメイジがヘボでは制御できない。
それを人……いやメイジ匹敵する知能を持つ亜人(ルイズ、シエスタ、ロングビル以外にはそう認識されている)を完全に制御しているルイズの姿はまさに女王-ツンデレクイーンのようだった。
例え今魔法が使えないとはいえ、ルイズから溢れ出るメイジとしての器の凄み(勘違いです)に生徒はもちろん教師ですら一目置くようになる。

ルイズは朝からアヴドゥルに元気がないなーと思っていた…が、今の項垂れている姿を見て確信する。
(昨日の事件など全く知らないため)アヴドゥルの元気の無い原因は、前の世界が恋しくなりホームシックになったことだと。
そして、デザートをパクつきながらホームシック(思い込み)のアヴドゥルを元気付けるため一生懸命考えた案を言った。
………冒頭のアレである。唐突すぎて何が言いたいのかいまいち分からなかったが。

慣れないことをしているため、ちょっと興奮気味のルイズはアヴドゥルの痛い子を見る目をスルーする。
「ふふんッ今から街に行くわよ」
「街?」
「そうよ」
えっへんとでも言いたげに胸を張り答えるルイズ。
「あんたの服を買ってあげるから感謝しなさいよ!」
「……服?」
旅の間も着ていた慣れ親しんだ服はよく見る少々草臥れてきている。
「一着しかないんでしょ?だから、私が買ってあげるって言ってるの」
「それは有難いが…いいのか?」
「気にしなくていいわ。使い魔の面倒を見るのも主人の勤めだし、それに………ゴニョゴニョ」
「ん?何だ良く聞こえないぞ?」
調子よく話していたのに途中から俯き小声になったルイズにアヴドゥルが問う。
本当は―味方なんかいなかった学園生活で、初めて味方になってくれたアヴドゥルにちょっとしたお礼がしたい―みたいなことを言っていたのだが、
ツンデレのルイズは素直になれずツン全開で喚く。
「べべべ、別にあんたにプレゼントしたい訳じゃないのよ!たたた、たまたま虚無の曜日でたまたま街に用事があったから行くんだから!」

真っ赤な顔で手を上下にブンブン振ってるルイズを見てアヴドゥルは思う。
(ツンデレか……いいかもしれんな)
久々のツンデレは弱っているアヴドゥルに中々効果があったようだ。『漢』の世界の扉は開くのか?


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