ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-28

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匿名ユーザー

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「…ッ!…が…ッ!!」
「…ふにゃ……うるさぁ~~い…!」
明け方妙に音がするので寝起きが壊滅的に悪いルイズですら目を覚まし音源の方向を見る。…見たのだが、ヤバイものを見た。
「グレイトフル・デッ…」
「ちょ、ちょっと!なに寝ながら危ない事口走ってんのよ!!」
「……クソッ…!またか…」
広域老化発動ギリギリで起きたプロシュートが頭を押さえながら壁に背を預ける。
全身から嫌な汗が流れ気分も最悪というところだ。
「凄いうなされてたけど…大丈夫なの?」
「ああ…」
生返事はするものの、最近例の夢を見る頻度がかなり高くなってきていてヤバかった。
(あいつらは地獄から人を呼びつけるようなタマじゃあねぇんだがな…)
原因の検討は付いているがその手段がいまのところ存在しないのが問題だ。
「こいつはダメだな…」
結果がどうあれ、イタリアに戻りそれを己の目で確かめないことには、この夢は消えないであろうという事も。
「…邪魔したみてーだな。寝直す気にもなれねぇ…外に出てくる」
「ま、待ちな…!」
それを言い終わる前に先に外に出られた。
「もう…最近調子悪そうだし…もしかして、病気にでも罹ったんじゃないんでしょうね…」
「俺が見る限り、どっちかっつーと精神面みたいだな」
鞘から少しだけ刀身を出したデルフリンガーが答える。

「精神面?プロシュートが?…ダメ、とてもじゃないけど想像できないわ」
「んーそういう柔な理由じゃなくて、イタリアってとこにスゲー重要なやり残した事があるんだろうな」
イタリアと聞いて思い当たる事はあった。
「んで、それが夢か何かに出てきてあんな風になってるってわけだ」
「そういえば…ラ・ロシェールの宿屋で仲間が命を賭けて闘ってるって言ってた」
「そりゃあ戻りてぇだろうなぁ…」
イタリアに戻る…その言葉に戸惑う。
今のところ戻る手段は見付かっていないが、見付かればプロシュートはどうするのだろうか。
迷わずその手段を用いてイタリアに戻るのか…それともここに残り使い魔としていてくれるのか。
今のルイズの心情は非情に複雑だった。
フーケやワルドに殺されそうになった時も自分が見失っていた道を照らし出してくれたような気がしたし
シルフィードの上でプロシュートが気を失って自分に向けて倒れてきた時も何故か安心感があった。
確かに、かっこいいところはある。ボロボロになりながらもワルドから助けてくれた時や、自分の魔法を信頼してくれた所も。
「…もしかして兄貴に惚れたのかぶらばァッ!」

デルフリンガーの刀身目掛け爆発を起こしとりあえず黙らせる。
「そ、そんなんじゃないわよ!たた、確かに頼りになる所もあるし何回も助けてもらったけど!考え方が妙に物騒なのが問題よね…誰にでも遠慮しないし」
初対面のキュルケや、今は亡きギーシュ。そして姫様にすら容赦しなかった。
「メイドの娘っ子と馬で出かけた時に俺をハムに刺しといてよく言うわらば!」
「だ~から!好きとかそんなんじゃないつってんでしょ!」
「…じゃあなんなんだ?」
「分からないけど…こう…」
「こう?」
「結構頼りになるし…『成長しろ』…とか言ってくれるし……年上の…兄妹…みたいな…」
「あー、つまりアレか。『お兄様』って呼びたいわけダッバァァァァアア!」
三回目の爆破によりデルフリンガーの口を封じる。
「し、知らないわよ!わたしだってエレオノール姉様とちぃねえ様しか姉妹が居ないんだから!!」
そう叫びベッドに潜り込んだが心臓の鼓動音がやたら大きく聞こえて中々寝付けなかった。
(イテェ…本気で折れるかと思った…しかしまぁ…俺も『兄貴』って呼んでるから分からないでもねぇが)

「戻る方法が見付かってるわけでもなし…八方塞ってやつか」
日が出て明るくなってきた頃、プロシュートが一人庭を歩いている。
「ジジイが30年前に会ったヤツは…どうやってここに来たんだ…?
  使い魔としてなら本体ってわけじゃねぇが呼び出したヤツも……いや、オレが良い例だな。常に行動を共にしてるとは限らねぇ」
そうして思考の渦に漬かりきっていたので後ろから近付く気配に気付けなかった。
「わっ!」
「ハッ!?………向こうじゃ攻撃されてんぜ…オメー」
「この前、驚かされたお返しです」
後ろからシエスタが大声で驚かすという古典的な手段だったが、一瞬列車内でブチャラティに奇襲された事を思い出し攻撃しかけそうになった。
が、スタンド使いは居ないと認識していため何とか踏みとどまる。
「で、わざわざオレを驚かせるためだけに、こんな朝っぱらからきたってわけか?」
「あ!いえ…お洗濯物を洗いに行くところでお見かけしたので…その、この前のお礼もしてませんでしたし」
「礼される事をした覚えはねーな。アレはモット伯と護衛のメイジの問題なんだからよ…」
その言葉には『バレるからあまり話すな』という意味が含まれているのだが、そこは一般人であるシエスタ。謙遜してるようにしか受け取れない。
「そんな!助けていただいたのは事実ですし、もう少し遅ければ………」
モット伯に胸を揉まれていたことを思い出すと赤くなり口ごもると同時にゾッとした。後2~3分遅ければ洒落になっていなかっただろうから。
俯き加減にもじもじしながら何か小さく言っているが、このまま待っても時間がかかりそうだったし何よりまぁ言いたい事もあったのでとりあえず軽く一発叩く事にした。
「大体だ、連れてかれる三日前にそういう事があんならオレかルイズあたりに言ってりゃもっと楽に済んでんだよ。人質が居ると居ないとでは大分違ってくるんだからな…」

かなり綱渡り的任務だったはずだ。
最初の時点で、衛兵が金に釣られなければその時点で失敗。
モット伯が部下の顔を全て把握していれば、魔法を使われか叫ばれるなりして他の連中にこちらの存在がバレた可能性もある。
そして、殺害ではなく捕獲命令を出していれば老化させていたとはいえ、アレがモット伯だとバレるかもしれなかった。
正直、よくこうも上手くいったものだと思う。
本来、攻めでこそ本領が発揮される能力であり、こういう守り・奪還に適した能力ではないのだ。
「……す、すいません…」
言いながら恐る恐る顔を上げたが、予想に反してプロシュートの顔は苦笑いだった。
「……怒ってないんですか?」
「これがペッシならブン殴ってるとこだが…まぁオメーはギャングでもメイジでもねーしな。今ので勘弁しといてやるよ」
「す、すいません」
「……もう一発か」
「へ?あの…?うひゃぁぁぁぁ」

「いたた…それで、その…お礼なんですが」
「…オメーも結構しぶといな」
シカトして戻っちまおーかとも思ったが目を見て止めた。
何かに似てると思ったが…借金だ。それも金利がバカ高いやつ。
借金なら色々な手で揉み消せない事も無いが礼を揉み消すというのもなんなので早い段階で清算しておく方が良策だと判断した。
(後にすればするほど膨れ上がって収拾が付かなくなるタイプだな…)

「そうだな…この前オレんとこの故郷の話したからオメーのとこの話聞かせてくれりゃあそれでいい」
「わたしの故郷ですか?タルブの村っていって、ここから、そうですね、馬で三日ぐらいかな…ラ・ロシェールの向こうです」
「三日?えらく遠いな」
「それでも、もっと遠くから来ている方もいますし。何も無い、辺鄙な村ですけど…
  とっても広い綺麗な草原があって、地平線のずっと向こうまで季節ごとのお花の海が続いて、今頃とっても綺麗だろうな…」
(ダメだな…いいとこ麦畑しか浮かばねぇ)
花畑に立つ暗殺者というものほど矛盾した存在はあるまいと失笑気味だが、自分自身が常に死の中に居る。
生き方的な問題だけではなく、能力的な問題だ。生物なら全て無差別に朽ち果てさせる能力。
花畑なぞに入っても自分の周辺だけその花が枯れ果てている姿を想像し思わず自嘲的な笑みが零れた。

それを見たシエスタだが、その笑みが普通に微笑んでいるようにしか捕らえられずさらに話を続ける。
「この前、お話してくれた…そう!ひこうきとやらで、あのお花の上を飛んでみたいんです」
「勘違いしてるようだが言うが、鳥程自由には飛べねーからな」
目を輝かせるようにして思い出話に浸っているシエスタだが
村に来て欲しい事、草原を見せたい事、ヨシェナヴェなる料理がある事。まぁこれはよかった。
「………プロシュートさんはわたし達に『可能性』をみせてくれたから」
「可能性を見せた…?くだらねぇな…」
「く、くだらなくなんかないです!わたし達なんのかんの言って、貴族の人達に怯えて暮らしてて
  そうじゃない人がいるってことが、なんだか自分の事みたいに嬉しくて…わたしだけじゃなく厨房の皆もそう言ってます!」
「可能性ってのは、自分自身ががそこに向かい成長しようと意志さえあればいくらでもあんだよ。他人の成長を見ても自分の可能性ってのは掴めるもんじゃあねぇ」
同じスタンド使いがいねぇようにな。
さすがに、スタンド使い云々に関しては口に出さなかったが。

「…難しいですね」
「簡単に分かりゃあ誰も苦労しねーよ。ここのマンモーニどもも、魔法が使えるってだけで分かってねぇのが殆どだしな」
「また、今度…それを教えてくえませんか?」
これがペッシとかならギャング的覚悟を叩き込むのだが、この場合はどうしたものかと悩んだ。なので一応の答えで場を濁す事にしたのだが…それが不味かった
「オレの分かる範囲でなら…な」
肯定と受け取ったのかシエスタさんのスイッチが入ったご様子。
「是非お願いします!あ…でも、いきなり男の人なんか連れていったら、家族の皆が驚いてしまうわ。どうしよう…
   そ、そうだ。旦那様よって言えば…け、結婚するからって言えば皆、喜ぶわ。母様も父様も妹や弟たちも……」
………
……………
(シエスタは…『壊れた』のか…?いや違う…ッ!こいつは『素』だッ!明らかに『素』の目をしている……ッ!)
今にもシエスタの後ろに効果音とかが現れそうだったが、引き気味にそれを見ていたプロシュートに気付いて我に返って首を振る。
「あ、あはははは!ご、ごめんなさい…!そ、そんなの迷惑ですよね…あ!いけない!お洗濯物を洗いにいかないと…それじゃあ失礼します!」

「…手遅れか…トイチってとこだな」
収拾が付かなくなる前に清算を済ませるつもりだったがスデに金利が膨れ上がり手の付けられないとこまで突入している事にようやく気付いた。
まぁかなり前から手遅れなのだが、それは兄貴。
誰でも対等に扱おうとするが故に平民と貴族が区別されているここにおいては、それが類を見ない事である事に気付けてすらいない。

少し引いていたが、今はイタリアに戻るという事が最優先事項だ。
リゾット達がボスを倒しているのなら、その姿だけ見届けどこかに消える。途中脱落した自分にそれに加わる資格は無い。
だが、もしリゾット達がボスに敗れ全滅しているのなら…成すべき事は一つ。
「…考えたくはねぇが…ボスにその報いを受けさせる…ッ!」
死んだ事になっているのならば少しはボスの事も探りやすくなるはずだ。
暗殺チームの誇りと矜持に賭けて、それこそ『腕を飛ばされようが脚をもがれようが』何があろうとボスを殺す。
だが、現状は戻れる気配すら掴めていない。
「チッ…戻れる当てがねぇのにボスを殺す事なんざ考えても意味がねぇな」
そう呟き、頭を掻きながら空を見上げると、その事は一時頭の片隅に追いやり今は使い魔としての任務を果たすべきだと切り替えルイズの部屋に戻った。

そろそろルイズを叩き起こそうとドアを開けながら声をかけたのだが、反応は実に意外だったッ!
「起きろ」
「え、ちょ、ちょっと待ちn」
「珍しく起きてんのか」
特に気にした様子もなく後ろ手でドアを閉め視線を部屋に向けると…着替え途中で産まれたばかりの状態一歩手前のルイズが固まっていた。

「……ぅぁ…っぁ…ぁぁ……」
「ようやく自分でやる気になったか…まぁ今までやらなかった方がおかしい事だったんだが」
特に気にした様子も無く、デルフリンガーと新しいスーツの上着を掴むと外に出るべく固まってるルイズに背を向ける。
普通なら、まぁ見た方が焦って慌てながら後ろ向いてしどろもどろになって逆にいい感じに発展するというのが王道パターンなのだが
この場合、一片の動揺すら見せず何時もと同じような扱いをしたのが『逆に』不味かったッ!
もっとも、この前まで着替えさせていたというのに急に変えろというのが無理がある事なのだが。
「……み…み…みみみみ見た…見たわね…?」
「あ?この前まで着替えやらせといたマンモーニが何を今更」
気だるそうにかつどうでもいい風にそう答えたプロシュートにルイズの何かがキレかかった。
「…って…出てって!」
「今やってんだろーが…ま、自分でやる気になったんだから少しは『成長』したんだろうな。褒めといてやるよ」
この場合当然、精神的成長なのだが、キレかかっているルイズは、まぁその何だ、肉体的な意味の成長と受け取ったらしい。主に胸とか。
「……だだだ、誰の胸がすす、少ししか成長してないですってぇーーーーーーーーー!!」
「…なッ!誰もんなこたぁ言って「兄貴…そりゃ俺もそう思うが本人の前で言うのはヒデーと思うぞ」」
否定する前に空気の読めないデルフリンガーの一言。これで完全にルイズがキレた。
「で、出てってーーーーーーーーーー!!」
ドッギャァーーーーーz____ン

「なによ…見ておいて…いつもと変わりないなんて…わたしを対等に見てないってことじゃない…!」
さすがに泣きはしないが、信頼していると言われていたのに、対等に扱って貰えないという事が今のルイズにはそれが無性に悲しかった。

一方、間一髪爆破に巻き込まれる前に部屋の外に逃げたが再び部屋を追い出される事になりプロシュートがデルフリンガーを冷めた目で見ていた。
「あ、兄貴…俺なんかマズイ事言ったか…?」
「…じゃあこれからオメーがされる事を説明すんのは簡単ってわけだ…さっきオレが言ってないと言っている途中で余計な事言ったよなオメー」
「あ、兄貴ィ!ま、まさかッ!!」
………
……………
ズッタン!ズッズッタン!
「うんごおおおおおおおおおお!!!」
ズッタン!ズッズッタン!
グイン!グイン!バッ!バッ!
「うんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
ズッタン!ズッズッタン……

ゼロのルイズ―しばらく引き篭もる事になる。
デルフリンガーパッショーネ伝統拷問ダンスを食らいしばらく鞘から出てこなくなる
プロシュート兄貴ー再びフリーエージェント宣言&ザ・ニュースーツ!


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