ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

サーヴァント・スミス-5

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
あの日から、ナランチャには気苦労が多くなった
ゆっくり寝かせてもらったおかげで頭痛は消えたが、その代わりに決闘を申し込む連中が出てきた
自分が受けた治癒魔法の効果を知ったので、ある程度蜂の巣にして、二度と決闘を申し込んでこないようにしている

どうせ治るだろうと踏んでのことだ。その証拠に死者は居ない
消し飛んだはずのマリコルヌまで出てきたので、「成仏成仏ゥ!」と叫んで容赦なく蜂の巣にした。
その際見物に来ていたギーシュ(全治3日。治癒魔法を受けた)も流れ弾で負傷。全治4日に延長。

マリコルヌは0.2秒で風になった――ナランチャが無意識に取っていたのは「ご臨終です」のポーズだった――
涙を流す理由もなく、ギャラリーはギーシュにさえも気づかずさっさと学院へ戻っていったので――マリコルヌとギーシュは考えるのをやめた――


正直に言うのならば、今まで挑んできた者達は、ろくに戦法も考えてなかった
正面から突っ込めば開始直後に蜂の巣にされるのにも関わらずだ
だから、少々戦略を練れば、ある程度は戦えるはずなのだ。しかし、それをしない者も多く、した者も奮戦しつつ破れた
とはいえ、やっぱり魔法は強力だ。予想だにしない攻撃は何度もあった。
ナランチャの体には幾度となく生傷が刻まれていく。
医務室では自分も治癒魔法をかけてもらっている。ベッドの空きがなくなるので勘弁してくれと言われた。

授業も終え、二人は寮に戻るなり、ぐったりとした
ナランチャは特に疲労の蓄積が激しいので、思わずルイズのベッドに横たわる

「あー、疲れた。ぐえッ」

「なーにベッドに横たわってんのよ、許可もなしに」

首根っこを掴まれて放り投げられるナランチャ。
痛がることはなく、ひょいっと起き上がった

「さっさと寝るわよ、疲れてんでしょ」

「え?」

ルイズの口からナランチャの身を案じるような言葉が出てきたのは、意外だった。
素っ頓狂な声をあげたナランチャを尻目に、ルイズは毛布を被ってすーすーと寝息を立てている。のび○かお前は。
床に敷かれた藁のベッドと毛布に包まり、ナランチャもやがて、眠りについた

「うん?」

少女は『夢の中で目を覚ます』。
自分の体は浮いていた。実感した、これは、夢だ。
今のところ悪い気はしないので、とりあえず傍観者となる事を決めた

そして、流れ込んでくる記憶、これは、ナランチャの――?
何故か夢の中でだけ、『感覚を共有』できるようだ。記憶まで流れ込んでくるのは予想外としても……

読み取るに、どうやら、何か不思議な力が働いて魂が入れ替わったらしい。漆黒の影のような物体が動いていた。
それぞれの人物が複雑な反応を見せる中、ナランチャの魂が入った、ジョルノと言う人物が、夢を語った

「オ……オレ……故郷に帰ったら、学校、いくよ……頭悪いって他のヤツにバカにされるのも、結構いいかもな……」

ナランチャの記憶を再度読み取る。
ギャングのボスを倒しに来た、ということだ。つまり、ここで彼らの冒険は終わる。
ゆっくりと見ていくと、ブチャラティがミスタに射撃を命令し、その標的の魂が入ったと思われるブチャラティのボディを撃つ
両脚にも撃ち込むよう命令する。そこで、ルイズは異変に気づいた

『あ……あれ?』

今、トリッシュから予備の弾丸を受け取ろうとしたミスタの足元には、4つの弾。
しかし、落ちたところを見た記憶はない。

「飛んだぞッ!今、時間が数秒消し飛んだぞ!確かにッ!」

どこからか声が聞こえるが、その主をルイズは見つけられない
縁起が悪いということで、もう一個弾を落とすように頼んでいる。
ブチャラティは、ナランチャの『力』で、周りをサーチするよう頼もうと『した』。
そう、しようとしたが、それはすでにナランチャへは届かなかった
血が滴り落ち、血溜まりの出来た床から、そっと、上に視線を向けた

切断された鉄格子の鉄柱に、ナランチャは串刺しになっていた
何本もの鉄柱がナランチャを貫通し、右手首からは特に出血がひどくなっている
血を流すナランチャを、全員が焦って地面に下ろした

ルイズには、少女には刺激が強すぎた。
あまりにもリアルすぎる夢だ。生々しい。
早く覚めてくれ、そう願うも、無情にその後のストーリーも展開されていった

そこでようやく勘付いた。ナランチャは、死んでいる。
傷を『力』で治し、元の体に戻ったジョルノは、ナランチャの体に、植物達を群がらせた
花々で埋め尽くされたナランチャの体に、ジョルノは話しかけた

「君は……ここに……おいて行く……。もう誰も君を……これ以上傷つけたりはしないように……決して……。だが、君を必ず故郷に連れて帰る」

やっと、目が覚める。まだ深夜であった
汗だくになった自分の額を拭い、呟いた

「こいつ……」

『こいつ』はのうのうと寝ていた。いびきをかきながら。軽くげしっと蹴る。

とはいえ、普段の元気な様子からは想像できない。
夢から覚めて消えかかった記憶には、ナランチャがかつて家族も居ない、家もない子供だったこと。
そして、ギャングに救われた事も記されていた
「なんつー精神力よ」と思わず突っ込んでしまった

「……」

ごろんと毛布を投げ出して、寝転がるナランチャに、毛布を被せ直す
闇夜に浮かんだ星達の光はやけにまぶしかった。


翌日にも、使い魔としての仕事がナランチャを動かす
昨日は変な夢を見た。彼は知らないが、ルイズと同じ夢。それでも、彼は気に留めない。
今更あんな夢を見せられたところで、何か外があるわけでもない。大体、『2度目』だから。
自分が今生きているという事実に、その夢の中での自分の死は掻き消える

ルイズの目を覚まさせて、顔をばっしゃばっしゃと乱暴に水をかけて洗う。
ルイズが着替えを自分でしだした事には驚いたが、多い気苦労の内の一つが減って一安心だ
今日もキュルケがからかいに来ていたが、それを華麗なフットワークでスルーして、脇腹に軽くエルボーを決めるルイズ
軽い憂さ晴らしか?と思いつつ、ナランチャは共に食堂へと向かった
隠れて厨房に行き、余った物をご馳走してもらうのはすでに日課と化している

「おう!我らの剣!たくさん食べてってくれよ!」

ナランチャの快活さと、平民ながら貴族と対等に戦え、多くを打ち負かしたこともあって、料理長マルトー曰く「我らの剣」らしい
食べ盛りだからいっぱい食えといわんばかりの食事の量。何でこんなに余ってるんだ?
だが、いくらナランチャでも、それを口に出すほどのバカではない。
ありがたく頂いて、「あとでルイズにも分けようかな?」と思考をめぐらせるのであった

今日も退屈だった。
授業を一通り終え、二人は廊下を歩いている。
ルイズはやぶから棒に、こんな質問を繰り出す

「どう?ナランチャ?今日もさっぱり?」

「その通り。さっぱりわかんなかった」

ポケーッとした、いかにもマヌケな顔で答える。

「……」

分かりきっていたとは言え、コレはひどい。
ルイズは使い魔に決定的に欠けている部分、知識を補充させる為、図書館へ行くよう命じた
本人は「なんか学校って感じでわくわくしてきた」らしい。

「………」

「………」

静かだ。
図書館に行って一番に目に付いたのは、すごく小柄な少女。ナランチャよりも小さい
何度見ても小さいその体格。同年代の子と比べても小さい部類ではないか?
ナランチャも、年下のフーゴに身長で負けたこともあって、「オレって背が小さい方なの?」とか思っていたこともあってか。
妙な親近感を感じる。人は分かり合えるんだ。

何でルイズとは分かり合えないかといったら、事あるたびに衝突するからだろう
それならまだ、静かなこの少女の方がいい。

近づく。その人物と向き合った
奇妙な空間が作り出された後、二人は口を開いた

「………」

「………」

「パン」

「ツー」

「まる」

「見え」

しばらくの静寂の後。

「YEAAAHッ!」

その少女とピシガシグッグッした後、彼らは親友となった。
そこには確かに、奇妙な友情があった――
マリコルヌが「扱いが違う」と空で騒いでいる気がするが気にしない。
ギーシュが「出番は!?」と叫んでいたが、ここまで聞こえなかった

文字を教えてもらいながら、読み進める。
じっくりじっくり覚える。魔法の授業よりよっぽど頭に入る
ただ単純に覚えればいいのだ、簡単な文字なら。
算数のように計算する過程もないので、負担も少ない。
それどころか興味を引くものもあり、絵だけでも十分楽しめるものさえあった
彼女の使い魔の話などもしてもらい、気分がいい。

「それじゃ」

「おう」

「「アリーヴェデルチ(さよならだ)」」

思いっきり打ち解けた二人。彼女の名前はタバサと言うらしい。
さて、部屋に帰ろう。そう思ったナランチャは、不思議なものを見る。
あれに見えるはサラマンダー。キュルケの使い魔、フレイムだったか。
いつか見たときと同じように、熱気を灯した体で近寄ってくる
これは、試練だ。

「きゅるきゅる」

「ついてこい、ってか?」

足を口で引っ張るフレイムにつれていかれるナランチャ。その先に悪夢が待っているとも知らずに

「いらっしゃい」

キュルケの、声。瞬間的に危機を察知したナランチャは帰ろうとする
踵を返し、一声だけ搾り出して

「あ、いや、その、帰るわ」

確かにその行為は正しかった。
年齢と精神年齢が伴っていない(失礼な)ナランチャには、ルイズの見た夢とは別の意味で刺激が強い。
しかし、肩を掴まれた。そして引き込まれた。
ベビードールというのだろうか。かなり色っぽい。
ナランチャが精神的に熟していたら普通にふらふらと近づいていったかもしれないが、17だ。
キュルケは18才だが。精神年齢ならナランチャはキュルケと比べると幼いほうだろう
いや、それ以前にそんな趣味はナランチャにない。
ミスタはどうだろうか。アイツならホイホイついて行ってしまいそうだ
いや、確かアイツはホモだったから行かないかな、と思いなおす。

「あなた、決闘の時、かっこよかったわよ?私も新しい趣味に目覚めそうで……あっと」

キュルケはそこまで言いかけて咳払いをする。
ナランチャは今まで感じたことのない危機感を覚えていた
今日は覚えるばっかりだった気がする。

(なんだ……これがッ!これがッ!これがッ!所謂――変態ってヤツなのかッ!)

ナランチャの幼い思考回路は変な結論に達した。

そこまでで、ついにナランチャの緊張はピークに達する。
ルイズのような発育の望みは絶望的な者の体には、いい加減慣れた。慣れると言うか――興味を示さない。

だが、だが、だが。目の前に居るのはナイスなボディで色っぽい声を発する女。
わざと胸元を強調させてくる。いっそこのまま、そこの窓から飛び降りたい気分だ。
多分死なないから、あ、でもやっぱ分からない。
言葉は耳に入ってこない、入ってきたそばから、記憶に残る前に吹っ飛ぶ。記憶をキング・クリムゾン。
何も、何も聞こえない。
取り返しのつかないことをやって、物凄い勢いで怒られている時にこうなることが多いと思う。頭は真っ白くるくるパー。

ナランチャは紅潮させた顔でただ虚ろに「ダレカタスケテ」と呟いていた。
キュルケの体を見つめる事は出来ない。理性ってヤツが吹っ飛びそうだ。
当のキュルケは窓に張り付く無粋な客人を次々と吹っ飛ばしている所である
そして相変わらず一人、熱っぽい演説を続けていた

キュルケも、悪気があるわけではない。
彼女が『微熱』であるから、仕方ないのだ。
コーラを飲んだらゲップが出るのと同じように。

助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて。
ナランチャの頭の中から『落ち着き』と言う感情はチリとなって消えた

バタン。
そこへ、最悪の来訪者が現れた。来訪者といっても変身したりはしないが。
そう、これは『試練』なのだ。
間違ってもいいイベントなどではない。

「何をやってんだああああああ!」

女なのに兄貴な、どこぞの女性に似た表情と叫び声。
来訪者、ルイズの放った爆発はナランチャを包み込み

「はっ、なんだ!次はどこからってぼあああああ!?」

そこを通りかかったマリコルヌごと――消し飛ばした。ついでにギーシュは破片を鼻に喰らって突っ伏せる。

正確にはナランチャは消し飛んでない。
エネルギーが解放された瞬間。黒焦げになりながらも生命を取り留めていた

「違う!違うんだ!俺何もしてない!連れて来られただけってェェェ……」

ズリズリズリズリ。廊下を体が擦れる音が占領する。
キュルケは未だに演説中であった

その後、爆発を4度喰らい(ミスタなら精神が死にそう)、ぶっ倒れそうになったナランチャだが、ようやく説得に成功する

「まあ、あんたにそっちの度胸があるとは思えないし」

これは褒められているのだろうか。

「とにかく、キュルケには近づいちゃダメよ、分かった?」

「あ、ああ……」

悩んだような、煮え切らない声に苛立ちを隠せないのか、ルイズは杖で頭をこつんと叩いた

「分、か、っ、た?」

妙に間隔をあけて言っているのは意図してのものだろうか
無言のまま頷き、「よろしい」とルイズが言うなり、部屋の電気は消えた


(あの時は死ぬかと思ったよ。もう二度とキュルケの誘惑にのったりしないよ)

この後、普段は普通(?)なキュルケではなく、使い魔のフレイムに会う度にビクビクしているのは言うまでもなかった
そしてついでに

(い……いつ進化するんだ!?次は!お、俺のそばに近寄るなァーッ!!)

フレイム:レベル9 HP 38/38


火炎放射
誘拐
体当たり 
鳴き声

進化まで――後7レベル

To Be continued ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー