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涼宮ハルヒの経営Ⅱエピローグ

最終更新:

hiroki2008

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エピローグ


プロット開始当初に書かれたがみくるが戻ってこないことになったので使わなかった



 あれは確か二十四回目の実験だったか、その頃には俺はもうカウントしてなくて、それが何度目のループかすら覚えていなかった。
 三回か四回目だかに、朝比奈さんがお姫様のかっこうをしていたらしい記憶があるのだが、はっきりとは覚えていない。長門によれば、あのときと同じ要素でパラメタを変更した、とか言っていた。なんのことだかは分からん。

 俺はカウンターの端を指した。なんだかやけに背中が淋しそうだった。うっすらと目が潤んでいるようにも見える。
「誘ってこようか」
「そうですね」
俺は立ち上がってところどころで部屋を照らすライトの下をくぐった。近寄ると朝比奈さんは文庫らしきものを読んでいるようだった。
「朝比奈さん、向こうで一緒に飲みませんか」
「あ、来てたのね。今行くわ」
朝比奈さんは本に栞を挟んでからグラスを抱えてきた。
「なにを読んでらっしゃるんですか」
「あ、これ……」
酔っているようには見えなかったが、顔が真っ赤になった。
「ハーレクインですか」
「うん」
「朝比奈さんの趣味なんですか」
「そういうわけじゃないんだけど……」
朝比奈さんは説明しがたい心の中の葛藤があるようだった。表紙には白馬に乗った甲冑の騎士が描かれていた。中世ものですか。
「どう言えばいいか分からないんだけど、なんだか惹かれるの。なんというか、前世に自分がそこにいたような」
俺と古泉はふーんと曖昧にうなずいた。あまり突っ込まないほうがよさそうだ。俺はウェイターにおかわりを頼んだ。
「二人とも、自分の前世ってなんだったと思う?」
「僕はカメでしょうね」
俺が頭をひねって気の利いたものを考えてたのに即答しやがった。朝比奈さんはくすくすと笑った。
「キョンくんはなんだと思う?」
「そうですねえ。あんまり考えたことないんですが、俺はたぶんミノ虫みたいに袋に入って誰とも関わらずに引きこもってた気がしますよ」
古泉と朝比奈さんがくっくっくと笑った。思いのほか当たってそうだというんだろう。
「朝比奈さんの前世はなんだったんですか?」
「わたしはね……笑わないでね。よくお姫様だった自分の夢を見るの」
「お姫様って雛人形みたいな」
「日本のじゃなくてどこか遠くの、西洋のね」
なるほど。俺と古泉は宝石が散りばめられた冠を乗せゴーシャスなドレスに身を包んだ朝比奈さんを妄想した。似合ってますよ。そのお姫様の隣になぜか古泉の姿がチラつくんだが、気のせいか。

「朝比奈さん、いつか中世のヨーロッパに行きませんか」
「え……」
「いいですね、そのときはぜひ僕も連れて行っていただけませんか」
古泉は俄然乗り気だ。
「でも、時間移動を観光に使っちゃいけないの」
「たまにはいいじゃないですか。休暇ですよ」
「そうね……。上司に申請してみるわ。そのうちにね」
朝比奈さんは笑ってうなずいた。

 そう、歴史は何度でも繰り返す。
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