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涼宮ハルヒの経営Ⅱウェールズ侵攻

最終更新:

hiroki2008

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ウェールズ侵攻


ジャン死亡の直前なのであまりコミカルなシーンにしないほうがいいと判断しカットした
全面戦争になるかもしれない場面でウィリアムマーシャルはたぶん国境警備などにはならないので使わなかった



 街の門も城の門も閉じたまま、守りはハルヒ小隊の約三十名のみだった。これで寝込みを襲われたら即アウトだろうなあなどと思っていると、深夜、俺の腕時計では午後九時ごろだったが、神頼み的に就寝前の祈祷なんかをめずらしく催しているところへガシャガシャと鎧の音がした。礼拝堂の仕切り幕をシャッと開け、
「こら修道士、起きろ!」
「寝てねえよ。何の騒ぎだ」
「昼間ね暇だったから市内を警邏してまわってたのよ。そしたらいつもはたくさん買い物に来てるウェールズからの客が少なかったから、これは変だと思って国境の城まで様子を聞きに行ってみたのよ」
「で?」
「そしたら誰に会ったと思う?」
「さあな、魔法使いガンダルフにでも会ったのか」
「あのギヨーム・ル・マレシャルがそこにいたのよ」
「えっと、誰だっけそれ」
「当代切ってのイケメン騎士マーシャルを知らんのかこの田舎モン」
田舎モンってお前ね、
「もしかしてウィリアム・マーシャルのことか」
「当たりき車力の人力車! まあ見なさいよこの神々しい直筆サインを。これは未来に持って帰ったらウン千万円のプレミアもんよグヘヘ」
「へー、それはよかったな。まあ帰れればの話だが」
「ウンウン。我がスズミヤ公爵家の家宝にするわ」
いつからお前んちの家系に王位継承権がついたんだよ。

 ハルヒはマーシャルさんのアートグラフとやらを祭壇の前に一度だけ奉り、揚々と出ていった。なにしに来たんだあいつは、などと呟いて祭壇のロウソクをフッと吹いて消そうとするも、
「ちがうちがうチッガーウ、サインなんてどうでもいいのよ」また戻ってきやがった。
「何なんだ、俺そろそろ寝るぞ」
「人の話は最後まで聞きなさい。そのマーシャルが言うことにゃ、自分も気になって来てみたら、城門からウェールズの商人が続々と逃げ帰ってるってのよ、キョンこれは一大事だわぁぁ」
なに喜んでんだよ。
「もしかしてウェールズがイングランドの背後から襲うつもりだってのか」
「その通りよ! 城門を閉じて絶賛警戒中よ」
「そんなら最初からそう言えっての。つーか、それはちょっとヤバすぎるな」
マーシャルさんが今いる場所はイングランドの西の国境付近で、その先はウェールズの領土だ。イングランドとウェールズとの外交関係も微妙で、ノルマンコンクエスト以降は押したり引いたり勝ったり負けたり、イングランドの配下になったり離脱したりを繰り返している。
 その国境にある要衝チェプストー城は、グロースターからはセバーン川を渡って六十キロメートルくらいらしい。ゆっくり歩いても半日で届いてしまう目と鼻の先だ。チェプストーの守りがどれくらい固いかは分からんが、あれを突破されると川を渡ってすぐグロースターの領地で、まずいことにうちはほぼ全軍が出払っている。
「ええと、今すぐ伯爵に連絡したほうがよくはないか」
いちおうここの守りは即席でもハルヒ隊長が担《にな》っているので遠慮しつつ具申すると、
「すでに伝書鳩を出したわ、抜かりはないわよ」
伝書鳩ってねえ。キツネとか猛禽類がイングランドの命運を脅かすなんてヤバさ二倍じゃないのか。
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