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涼宮ハルヒの経営Ⅱ収穫

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hiroki2008

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収穫


ハルヒは自分の農地を見に行かねばならないので鶴屋さんと交代した



 さて麦畑が黄金色に輝くイングランドの夏はそろそろ収穫の季節である。伯爵の直営畑では、朝比奈さんの主張により、今年からは執事さんをはじめ騎士さんに兵隊さんの城の住人が総出で麦刈りを手伝わされることになった。身重にも関わらず朝比奈さんは自らも刈り入れに出ると言い出し、伯爵がハラハラしつつ侍女を何人もお供させようとしたが本人が怖い顔をして断り、俺だけが畑についていった。

 夜明け前の朝早くからマナーハウスの前で机を並べ、日雇い労働者を受け付ける。俺がここに落ちてきた頃に修道院の領地でもやってたやつな。

 俺は鎌をにぎり農夫にまじって小麦の茎を刈り取りに参加した。ハルヒが何本もの鎌を同時に操りオリャーと奇声を発しながら刈り取っている後ろで、朝比奈さんがヨタヨタと地面のデコボコに足を取られながら刈穂を束ねていた。
「朝比奈さん、大丈夫ですか。あんまり無理しないほうが」
「だ、大丈夫だけど、ちょっと体のバランスが……」
といいつつガニ股で歩いている。胎児が成長するにつれて重心が移動するのでどうも勝手が悪いのらしい。

 遠くの教会で九時の鐘が鳴り、休憩と軽く揚げパンのおやつが配られたが、エールも牛乳も飲めない朝比奈さんは冷ましたお湯を飲むしかないようだった。
 休憩が終わって作業が再開したとき、朝比奈さんが急にお腹を抑えて座り込んだ。
「す、涼宮さんちょっと……」
「ど、どうしたのよみくるちゃん! ひょっとして産気づいたの?」
ハルヒが鎌を放り出して走り寄ってきた。
「キョン救急車! 救急車呼んで!」
アフォかお前はと突っ込むのを忘れていた俺も慌てて修道服のポケットをまさぐった。
「ち、違うの涼宮さん」
手招きする朝比奈さんは頭を寄せるハルヒの耳元でゴニョゴニョとナイショ話をし、ハルヒは大きくうなずいて麦の束をかき集めに走った。
「まさかここでお産なのか」
いくらなんでも早すぎじゃないだろうか。ハルヒは朝比奈さんの周りに三匹の子豚みたいな、吹けば飛びそうな麦わらの垣根を作った。ドクター長門を呼ぼうかと思ったが今日は大工ギルドにでかけていて一緒に来ていない。鶴屋さんを呼んだほうがいいんじゃないかと言おうとすると、
「しーしー。いいのよ、さっさと作業に戻りなさい。こっち見んな」
しーしーって、ああなるほど。おしっこか。胎児が膀胱を圧迫するので妊婦さんはおしっこが近いらしい。
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