「別れよう」
 あまり劇的でもなくかといって一般的なのか、と聞かれても俺が付き合った経験があるのは目の前のベッドに転がっているSOS団副団長殿だけなので、わからない。
 ハルヒに内緒で付き合おう、と言い出したのは俺だが好きだとせっぱ詰まった顔で告白してきたのは古泉だった。返事はいらない、ただ知っていてほしいという言葉と一緒に。
 内緒にすると言ってもなんだかんだで聡いハルヒは薄々俺たちの関係に気づいていたのかもしれない。
 ときおり急に不機嫌になり、そしてその回数は俺と古泉の関係が先に進んでいくほどひどくなっていった。
 ハルヒに言おうかどうしようか、実は何度か考えたのだ。古泉は言っても別にかまいませんよ、と笑っていた。
 それで僕が消えたとしても本望ですからと微笑む古泉ににハルヒはこのくらいのことで世界を消したり、古泉を消したりなんかしないと呆れながらも言ったことがあったがそれでもハルヒに古泉とのことは言えなかった。
 初めて古泉の部屋に泊まった日からちょうど一ヶ月。昨晩も閉鎖空間ができたのか夜中にこっそり出て行く古泉を見て、もうやめようと思った。
 泣くでもなくわめくでもなく、ただ淡々と着替え終えてから言った別れの言葉に古泉は小さくため息を吐き、
「わかりました」
 とだけ言った。それで終わった。




 夕暮れの日差しが入り込む部室で自分は何をやっているんだろうねと思うのは少しでもこの現実から目をそらしたいからだ。
「んっ、ん……あ、やぁ、ハルヒっ」
 ハルヒのものをくわえ込むように上に座り、長机に両足を乗せて水色のスカートを握りしめている姿はさぞこっけいだろうな。
 ドアが開いたら入ってきた人間に一目で結合部分が見られるような体位だが団長殿はさすがに他人に見せるような嗜好はないだろう。
 いつも通り部室に鍵をかけているはずだ。
「っ……キョン」
 ぎゅう、と後ろから抱きかかえられ、ハルヒの動きに合わせて中が蠢く。
 ハルヒとこんな関係になったのは、もうそれこそ勢いとしか言えない。
 決してハルヒのことは嫌いではなく、むしろあの閉鎖空間でキスをかましてしまったくらいには好意を持っている。
 珍しく二人きりで部室に残ったときに中々帰ろうとしないハルヒを置いて帰ろうとは思ったが、妙に寂しげな……恐らく夕方という時間帯がその効果を見せたんだろうが、そんな顔をしているハルヒを放っておけなくてなんとなく、一緒にいた。
 ハルヒはパイプ椅子に座って携帯をいじっていた俺の横にいきなりしゃがみこみ、キョンはどこまでしたことがある?と聞かれた。
 どこまでとは一体何のことだろうか質問に脈絡が無さ過ぎると思っていたが、柔らかく唇を塞がれてああそっちのことかとぼんやり思った。
 普段は自分より上にある目線が、下にあったことが自分の中の拒否感を薄くしていたのかもしれない。
 そのまま流されるままハルヒと最後まで致し、その関係が今も続いている。
 簡単に流されて良いのかと思わないでもなかったがハルヒは最後まで紳士的だったし、どこぞの誰かのように生でしたがるようなこともなかった。
 いや誰とは言わないが。絶対責任取りますから、と端から孕ませる気満々なんじゃないのかと冷めた目で睨みそんなことをしたら別れるからなというとしょんぼりと肩を落として避妊具を付けていたどこぞの誰かは思い出として頭の片隅におしやっておこう。
 ずいぶん経っているんだ、思い出として処理して問題ないはずだ。
「ふ、あ、あぁ……ひっ」
「あ……ごめんキョン、痛かった?」
 いきなり陰核に触れられあがった高い声にハルヒは動きを止め、覗き込むように視線を合わせてきた。
 痛かったのではなく思い切り感じたのだというのは中にいるハルヒにだってわかっていることだろうに。
 涙で潤んだ目でにらみつけるとおもしろそうに笑い、ぐ、と腰を押しつけて俺を揺さぶった。
「ねえキョン」
「んっ、な、なんだっ、あっ」
 質問があるんだったら動きを止めろ、ていうかそれを抜け。
「前も聞いたけど、キョンはどこまでしたことある?」
「ふ……あ、え?」
 本当にいきなり動かなくなり、ハルヒは制服越しに人の胸をわし掴みにしてきた。お前って実はけっこうおっぱい星人だよなとは言わないでおいてやる。
 朝比奈さんほどとは言わないまでもそこそこ質量のある俺の胸を揉みしだきながらブラジャーをむりやり押し上げ乳首をつまんできた。
「んっ、あ、やぁっ」
「ねえ、どこまで?誰と?」
 耳たぶを舐めながら胸を弄り、無意識に閉じようとする脚を押さえつけられ勝手に閉じたら縛るからねと笑いを含んだ声で言われた。
 縛るからねって。お前はそんな性癖があるのか、知らなかった。今後を考えさせてもらいたい発言だぞそれ。
「今後とか考えてんの?」
「そりゃ……そうだろ、」
 友達なんだから、と言いそうになり口を閉ざした。こんなことまでやっておいて友達はないだろう。かと言って恋人同士、というのもなんだか落ち着かない。
 ただ俺は、自分がハルヒ以外の誰かを優先させることでこいつが不安定になるのは嫌だと思った。
 俺ができることなら、少しでもハルヒの中の不安要素を取り除いてやりたいと思うくらいにはハルヒのことを思ってはいるのだ。
 胸を触っていた手を離しハルヒはぎゅ、と俺を拘束するように抱きしめた。正直苦しいくらいだ。
「何で古泉君と別れたの?」
 ハルヒのいきなりの発言に俺の意識は一瞬ついていかなかった。
 別れた?何でハルヒが、そのことを知っているんだ。俺はハルヒに付き合っていたことすら言ってないのに。なんで。
「そんなのわかるに決まってるじゃない」
 ハルヒは俺の肩口に顔を埋めたまま喉の奥で笑う。
「ずっとキョンのこと見てたんだから、って言いたいとこだけど、そうじゃないのよね。
 ていうか付き合ってることすら知らなかった。仲が良いなとは思ってたけど」
 そう言ったハルヒの顔が見たいと思った。思ったけれどこの体制でハルヒの顔を見る事はできない。
 ただ声の調子はいつもと変わらず、むしろ慌てている俺の様子を楽しんでいるようだ。
「ハル、ヒ」
「古泉君と話す機会があってたまたまかな。古泉君が言おうとして言ったのかはちょっとわかんない」
 でも、と呟いたハルヒの声と廊下の足音が耳に入ったのはほぼ同時だった。
 その足音はもちろんハルヒにも聞こえているはずなのに楽しそうに笑う。鍵をかけているからそんな余裕なんだろう、そう思っていた。
「キョン、もっと脚開いて?」
「……あっ」
 すぅっと内腿を撫でられる。膝を掴んだ手に促されるまま脚を開いた。
 少し動くだけで中のハルヒを締め付けてしまい、勝手に声がこぼれる。
「古泉君がなんでキョンと別れてから、そんなこと言うのかなって思ったけどちょっとわかる気がする」
 誰かに自慢したかったんだよきっと。キョンが誰のモノだったかって。
「ハ……ハルヒ」
 首筋に生ぬるい感触。ハルヒが舌を這わせる。
「キョンも言ってくれたら良かったのに」
 足音が部室の前で止まる。
 カタカタと身体が震える。ドアにはめ込まれたガラスには夕焼けの光が反射して影がわからない。
 ドアは締まっているはずだ。いつもそうだったしそうじゃないとハルヒがこんなに余裕なわけがないじゃないか。
 そう思いたいだけだ、とどこか冷静な部分が自分を嗤う。
 閉じようとする脚をしっかり掴まれ、結合部分を見せつけるように更に脚を拡げられた。
 ノックの音が響く。ハルヒが後ろで笑う。この部室に入るときに、あいつはどんな風にいつもノックをしていた?
「どうぞ」
「ひっ、や、ハルヒっ、」
 閉じられているはずのドアがゆっくり開き、中に入ってきたのは想像通りの人物だった。
「………これはこれは」
「い、いやだ、ハルヒ、離せっ」
「だぁめ。ちゃんと古泉君にも見てもらおうよ。……キョンが今、誰のモノなのか」
 机から脚を降ろし少しでも古泉の視線から隠れようと、ハルヒの膝の上から立ち上がろうとした。
 くわえこんでるそこも自分の顔も見られたくない。
「ひあぁぁぁっ」
 僅かに浮かせた腰を掴まれ奥まで押し込められる。
 思わず出た甲高い声にハルヒは満足げに笑った。
「やめ、ハルヒっ、い、やだぁっ」
 膝裏を掴まれてぐちゅぐちゅと音がする場所を古泉に見せつけるように脚を持ち上げられる。
 古泉は後ろ手にドアを閉め鍵をかける。
 鞄を常らしくなくそのへんに放り投げ、俺とハルヒの真ん前で机に腰を下ろした。
「み、見るなっ、古泉」
「ちょっとキョン、団長に逆らう気?ほら古泉君どうぞ」
 そういう問題じゃないだろ。どうぞって何でお前が言うんだ!
 顔を覆うように手を挙げようとしたら、古泉に片手で両手を掴まれた。
「そうですね。あなたのそんな顔を見るのは久しぶりですから是非、堪能させていただきましょうか」
「や、だっ……やだ、ハルヒぃっ、いやだいやだぁっ」
 顔を下向かせむずがるように何度も左右に首を振る。こんなところを他人に見られて平気でなんかいられるわけがない。
「他人だなんてひどいですよ」
「古泉君は他人じゃないでしょ。我がSOS団の大事な副団長なんだから」
「ふ、あぁっ」
 ハルヒは後ろで楽しそうに笑い、古泉は俺の顎を掴んで無理矢理に上をむかせた。
 古泉の表情を見るのが怖くてぎゅっと目をつぶると涙がこぼれる。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいと頭の中はその単語だけしか思い浮かばない。
 何度も何度もハルヒに突き上げられ口からは甘い媚びたような声しか出ない。それでも何度もやめてほしいとハルヒに懇願した。
 名前を呼べば呼ぶほどハルヒの、キョン、と耳元で囁く声が優しくなる。
 代わりに古泉に掴まれていた両腕はみしりと音をたてそうなほど痛みがひどくなった。
「も、やめて、ハルヒ……っ、たすけて」
 口から涎を垂れ流す無様な状態を古泉に見られているのかと思うと羞恥心で死にそうになる。
 古泉としたときは、こんな明るい部屋でしたことはなかった。明かりを消してほしいという俺の言葉に古泉は笑っていつも消してくれていたからだ。
「たすけてって何が?いつでもキョンがイきたいときにイっていいのに」
 耳たぶを擽るように喋るハルヒの吐息にぞくりと背筋に何かが走り、無意識に身体の中のものをしめつけるとハルヒが息をつめたのがわかる。
 目の前で古泉が嘲笑うように笑う声が聞こえた。
「……どうかした?古泉君」
「いえ、涼宮さんはご存じじゃないんですね」
 古泉の手から顎を解放され即座に古泉の視線から逃れるように下を向いた。
「ひっ、あ、あっ」
 ガタ、と音がして、古泉が俺の顔を覗き込むように下にしゃがんだのが視界に入り、急いで目を閉じる。
 自分が目を閉じたところで古泉が俺を見なくなるわけじゃないが、気休めでもなんでも目を閉じれば楽になれる気がした。
 中で動くハルヒの存在がそれでより一層感じることになることはわかっていてもだ。
「彼女、ここを弄った方が可愛らしくイくんですよ」
 古泉の言葉にギクリと身体が震えた。敏感な粘膜に吐息があたり、まさかと思ってを目を開くと古泉がそこに顔を近づけていた。
「い、やっ、古泉、やめ……!ひ、あぁぁぁぁっ」
 愛液で濡れそぼった突起を舐められた瞬間、全身に電気でも走ったかのような衝撃を受けた。もちろん感電などしたことがないが、そうとしか表現のしようがない衝撃だった。
「いやだっ古泉!やめ、それやめてぇっ」
 逃げるように腰をよじり、そのせいで中に埋め込まれたものが内壁を擦り上げる。
 当たり前だが中に誰かを受け入れたままそこを舐められたことなど一度もない。これがこんなに快楽をもたらすものだとは知らなかった。
「あ、あっ、やぁっ、おねがっ、古泉っ……やだぁっ」
 くちゅくちゅと舌で転がすように舐められ、過ぎた快楽に目眩がする。
「ふぅん……」
 ボタボタと涙をこぼす俺の頬を舐めながらハルヒは不機嫌そうな声をあげた。
「そっち弄られるのそんなに好きなんだ?」
「す、すきじゃな、あ、いや、あっ、こいずみっ」
 泣きながら必死になって古泉にはなしてほしいと訴える。すると古泉は俺の両手を解放した。そっちじゃないとはわかっているくせに。
 両手を放されたのをいいことに俺は古泉の頭を思い切り押しやった。思ったより簡単に古泉は顔を離したがそこと古泉の唇の間に液体の糸を引いているのを見た瞬間顔に一気に血が集まる。
 古泉はペロリと唇を舐め、俺の頬を撫でた。
「好きじゃないかどうかは、彼女の締め付け具合でわかるでしょう?」
 笑いながら古泉はハルヒに目をやり、俺の両手にキスをした。
「確かにね」
「ひっ」
 ハルヒは俺の脚を放して、両手を古泉から奪い取り抱きしめてきた。
 古泉は楽しそうに笑いながら俺の両足を肩にかつぐ。もちろん抵抗しようとはしたがハルヒが後ろでぽつりと縛った方がいいかもね、と言い出したせいで大人しくするしかない。
 そのせいで古泉がまたそこに顔を近づけるのをただ見ていることしかできなかった。
「口いっぱいにくわえ込んで…いつも思ってましたけど、よく壊れませんよね」
「ほんとにね。こんなほっそい腰してんのに」
「ひっ」
 ハルヒに脇腹をなぞられ身体が震える。ぞくぞくとした感覚が背中を走った。
 しゃくりをあげて泣きながら放してほしいと言ったのは古泉にだったのかハルヒにだったのか自分でもわからない。
「い、ひうっ、あ、あぁぁぁっ」
 古泉に歯を立てられた瞬間視界が真っ白になった。
 びくびくと身体が勝手に震え、中にいるハルヒの存在がより鮮明になる。
 一際強く抱きしめられ、ハルヒがイったことをゴム越しに感じた。
 全力疾走をした後のように荒い息を吐く俺の顔を両手で包んで、いつの間にか立ち上がっていた古泉がじっと満足げに俺を見る。
「こ……古泉、何で………」
「涼宮さんに呼ばれたので」
「ハルヒ……?」
 それに何も言わず、ハルヒが抱きしめていた腕をゆるめたのを良い事に俺は古泉の手を払いハルヒのものをゆっくりと抜いた。
 がくがくと震える身体を叱咤しながら転がるように二人と距離を取る。
「お前……何でっ」
 ハルヒはさっさと自分のものをしまい別に、と笑った。
 いつものおもしろいものを見つけた、と言わんばかりに輝いている笑顔に嫌な予感がする。
「正直キョンがそこまで嫌がるとは思わなかったんだけどな。古泉君以外に見られてもあぁなわけ?」
「……っ!誰かに見られたいなんて、思うわけないだろうっ!」
「へえ?古泉君じゃなくてもあぁなるんだ?」
 一体何が言いたいのか全然わからない。
 やけに古泉に拘るハルヒに苛々するが俺はあんなみっともないところを見られて喜ぶ変態なんかじゃない。
「だって古泉君」
 俺から視線を外しハルヒは古泉を見上げた。何でお前は一人そんなに楽しそうなんだ。ハルヒの神経は人並み外れて図太いとは思っていたがここまでとは知らなかった。
 本当に、今後の付き合いを真剣に検討しなきゃならない。
「涼宮さんとの今後を考えてらっしゃるんですか?」
「お前には関係ないだろうが」
 舌打ちをしたくなるような気分のまま胸元を直し、早々にハルヒにとっ払われていた下着を探す。
 全くもってなんでこんな心許ない状態で会話しないといけないのか。
 そもそもハルヒとの今後を、別れようと言ったときに簡単に了承したお前が俺に不機嫌そうに聞く権利なぞないだろうが。
「ところでさ、古泉君。キョンとはどこまでしてんの?」
 そんな話は俺が出て行ってからにしてくれ。お前らの猥談なんぞを俺に聞かせるな。セクハラだぞ。
 わたわたと見つけた下着を着込み鞄を掴む。
「処女はもちろん食べちゃってるんでしょ?」
「ええ。初フェラも頂きました」
「後ろはまだよね?」
 後ろ?後ろって何だ?
 頭の中にクエスチョンマークを並べ立てている俺をよそにハルヒと古泉のセクハラじみた会話が進む。
「さすがにそこは嫌がれましたので我慢していましたよ。いずれは頂く気でしたけど」
「そうなんだ。ねえキョン」
 飄々と言う必要もないことをペラペラ答える古泉につっこみたいのをこらえ、ドアの鍵を外そうとしたところでハルヒに呼ばれた。
 眉間に皺を寄せたまま振り向くと、ふんぞり返ってにっと笑いながらハルヒはおいでおいで、と言うように手をこまねいた。
 誰が行くか。お前らの話なんぞに付き合っておれん。
「来ないとどうなるか聞きたい?」
 ハルヒの声を背中に受けながら俺の脳内に4つのカードが並べられた。

→逃げる
 帰る
 部室を出る
 樹木

 ……樹木?なんだそれ。
 なんだか意味がわからんが、イレギュラーなものを選ぶほど日常に退屈していない俺は脱兎の勢いで部室から飛び出した。
 翌日の放課後、部室でどえらい目に遭わされた事は言うまでもない。

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最終更新:2007年10月06日 04:26