すーぱーふぁんたじー大戦


 嫌味なくらいに綺麗な月明かりの下。
夜目にも映える色鮮やかな機体が、
遮るものも無い大地をゆっくりと移動している。
「無事でいてくれよ、イキマ・・・」
 仲間の無事を案じ、コクピットの青年が呟いた。

 ゼオラと名乗る少女に攻撃を受けてから数時間。
ジョシュアはイキマとの約束を果たすべく、湖へ向けて移動していた・・・
「けど・・・やっぱ、この機体は目立つな」
 わかっていたことだけど・・・と心の中で付け足す。
確かに、この状況で遮蔽物の無い場所にでるなど、危険な行為である。
しかし・・・ジョシュアは悩んだ挙句に、森を出ることを決意したのだった。

(・・・今のところ、レーダーに反応はなしか・・・いや、北から何か来る!?)
森を出て数時間。北方からの突然の反応に、ジョシュアは機体を止める。
2号機のモニターには、月明かりを背にして空を舞う、一匹の龍の姿があった。


「ほう・・・ガンダムか。こいつは楽しませてくれそうだ!」
 試作2号機をみつけ、ヤザンは嬉しそうな声を上げる。
そして、そのまま地上へ向けて炎を放った。炎を辛うじて回避するガンダム。
「ま、待ってくれ!俺は戦う気なんて・・・」
 通信機からの男の声を無視し、ヤザンは龍王機を敵に向けて突進させた。


「くそっ!こいつも問答無用か!」
 正面からの突進に回避行動をとりつつ、ジョシュアは叫ぶ。
龍の牙をすれすれでかわすが、そのまま胴の部分に弾かれる。
激しい衝撃とともに、2号機は後方に吹き飛ばされた。
「どうした?ガンダムに乗ってその程度か?失望させてくれるなよ!」
 男の声が通信機を通して、鼓膜を震わせる。
軽くうめきながら、ジョシュアは機体を立て直した。
(く・・・何か、何か勝つ方法は無いか・・・?)
バルカンを撃ちながら、ホバーを駆使して敵機を引き離しにかかる。
が、相手はそれを物ともせず接近してくる。
ジョシュアの努力もむなしく、二機の距離は広がることは無かった。
「つまらん。これで終わりにしてやる、落ちろ!」
 その言葉と共に、龍がそのあぎとを開く・・・
(くっ・・・ここまでか・・・)
ジョシュアが絶望の予感に目を閉じた、その時だった。

「そんな事させるかよっ!」
 突如、戦場に響く男の声。
それと同時に、妖精のような姿をした機体が表れた・・・地面の、下から。
「なっ・・・?」
 完全に虚を突かれるジョシュア。それは、今まで戦っていた相手も同じだった。
動きを止めた青い龍に、第三の機体が手にした剣を突き立てる。
しかし、その刃は龍の鱗にかすかな傷を残しただけだった。

「おい、あんた!今のうちに逃げろ!はやく!」
 通信機から聞こえる男の声に、ジョシュアは我に帰る。
すまない・・・と呟き、ジョシュアは後方へ身を翻した。
 戦闘音を背に来た方向へと向けて加速する。
このまま全速力で行けば、確実に逃げられるだろう・・・しかし・・・
(いいのか?このままで、本当にいいのか?)
 ほんの一瞬の逡巡。
ジョシュアは軽く頭を振ると、意を決したように戦場へと引き返した。

「発想は良かったんだが・・・いかんせん、機体がそれではな!」
 コクピットの中で笑みを浮かべつつ、ヤザンは眼下の妖精に向けて炎を放つ。
奇襲で一瞬、虚を突かれたヤザンだったが、
機体の圧倒的な性能差で、眼下の機体を追い詰めるまでにいたっていた。
 攻撃は当たらないものの、相手の消耗は激しく、動きが少しづつ鈍くなっている。
「今度こそ、終わりだ!」
 龍の牙が妖精を襲おうと煌く。それを受けて、身構える妖精。
一触即発のその状態は・・・男の声によって再び、遮られた。


「動くな!動くと撃つ!」
 叫び声と同時に、先ほどの機体が間に割って入る。
その腕には、先ほどの戦闘では確認できなかった、大口径のバズーカを持っていた。
「お、おい、なんで戻ってきたんだよ!?」
 その声を意に介さず、ガンダムのパイロットは続ける。
「攻撃を止めろ。でないと、お前は死ぬことになる」
「ほう・・・確かにそのバズーカは威力がありそうだが・・・」
「これは核だ。撃てば、その機体は確実に消滅する!」
 男の言葉に、ヤザンは動きを止める。
「そんな、はったりに・・・」
「・・・・・・・・・」
 沈黙・・・それを受けて、ヤザンは考える。
(核を搭載したガンダムだと!?
 そんなもの、存在するわけが・・・いや、待て・・・確か・・・)
「・・・・・・わかった、お前達の言葉に従おう」
 悩みぬいた挙句に、ヤザンは降伏を受け入れる。
「よし・・・そのまま、ここから離れろ・・・
 少しでも、妙な動きをしたら撃つからな!」
(見逃してやるから、尻尾を巻いて逃げろって事か!)
 男の言葉に屈辱を覚えつつ、ヤザンはその場から離れていった・・・


「けど、あんたも無茶するよな」
 互いの事を色々と話し、落ち着いた頃・・・
ジョシュアは、リュウセイと名乗った青年にそう言った。
「なんだよ・・・お互い様だろ?」
 ジョシュアの言葉に、憤慨したような答えが返ってくる。
それに軽く笑いつつ、ジョシュアは先ほどからの疑問をぶつけた。
「しかし、よく敵味方の判断ついたよな、あの状況で・・・」
「ま、まあな・・・」
 微妙に口ごもるリュウセイ。その様子に、なんとなく思い当たる。
「もしかして・・・最初から見てたのか?」
「・・・わりぃ・・・奇襲のタイミングをうかがっていたんだよ」
「いや、助かったよ・・・ありがとうな」
「いいって・・・困ったときはお互い様だろ?」
 その言葉に互いに笑いあう・・・そして・・・

「これから俺は、仲間のところに向うんだけど・・・あんたも一緒に来ないか?」
「・・・悪いけど、俺は探さなきゃいけない人がいるからよ・・・」
「そうか・・・」
 リュウセイの言葉を残念に思いつつ、言葉をつなげる。
「じゃあな・・・何かあったら、北の湖の廃墟まで来てくれ・・・
 明日の明け方までなら、そこに居ると思うから・・・」
「ああ・・・・・・またな」
「またな」
 再会の約束を交わし・・・二つの機体は歩み始める。互いの目的にむかって・・・



【ジョシュア・ラドクリフ 搭乗機体:試作2号機(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY)
 パイロット状況:肉体的、精神的に疲労
 機体状況:全身に損傷(行動には問題なし)
 現在位置:G-2とG-3の境目
 第一行動方針:イキマと合流するため、北の廃墟へ向う
 第二行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
 第三行動方針:イキマの探し人(バラン、ジーグ)を探す
 最終行動方針:イキマと共に主催者打倒】

【リュウセイ・ダテ 搭乗機体:フェアリオン・S(バンプレオリジナル)
 パイロット状態:精神的、肉体的に疲労。ヤザンに怒り
 機体状態:装甲を大幅に破損。動く分には問題ないが、戦闘は厳しい
 現在位置:G-2とG-3の境目
 第一行動方針:イングラムを探す
 第二行動方針:戦闘している人間を探し、止める
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:無益な争いを止める(可能な限り犠牲は少なく)】

【ヤザン・ゲーブル 搭乗機体:龍王機(スーパーロボット大戦α)
 パイロット状況:健康、怒りと苛立ち
 機体状況:尻尾がない、全身にハンマーの大量のかけらが当たったときのダメージ(中)
 現在位置:G-2とG-3境目
 第一行動方針:バラン=ドバンを探す。また、どんな機体でも見つければ即攻撃
 第二行動方針:次に試作2号機と会ったら、確実に仕留める
 最終行動方針:ゲームに乗る】

【時刻:2:50】





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第125話「その男 東方不敗 時系列順 第126話「噛み締める無力

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第114話「漢の約束 ジョシュア・ラドクリフ 第152話「決意
第99話「交錯する覚悟 リュウセイ・ダテ 第174話「The Game Must Go on
第119話「戦闘マシーン ヤザン・ケーブル 第145話「狂龍は翼を休めず


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最終更新:2008年05月30日 16:16