む~む~@紅葉国さんからのご依頼品
『日向の回想』
作:1100230 玄霧弦耶
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その日、日向は人を待っていた。
指定の場所は天領府春の園。元居た場所とは縁の無いうららかな日差しが印象的な場所だ。
呼び出した者の名前はむ~む~。確か昔焼かれた森の中で指揮をしていたヤツだったか。
態々呼び出したあたり、仕事の依頼って所か・・・そうであってもなくても、昔の戦友に会えるのは嬉しいか。
そんなことを考えながら時計を見る。そろそろ時間だった。
桜を眺めながら、胸ポケットを触る。ない。ズボンのポケットを触る。ない。
一通りまさぐった後、禁煙中なので全部置いてきたのを思い出した。
「…まぁ、桜で我慢するか」
照れ隠しなのかどうかいまいち判断の付かないことをボソリといって、桜を見上げる。
何度見ても、自分とは合わない風景だと思った。
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暫くすると、人の気配がする。
匂いをかいで確認する。どうやら、呼び出した本人のようだ。少なくとも、指揮を取っていたやつとは同じだ。
あたりを見回しているが、呼びかけられるまで待つことにした。
…気付いたらしい。近づいてきて頭を下げ、礼の言葉を言っている。
探偵をやっていてよかったと思う瞬間だ。まぁ、アレは『探偵』の仕事ではなかったのだが。
ほうって置くとこのまま向こうが礼を言うだけで終わりそうなので、サングラスを取ってこちらも礼を言う。
「戦友にあえて嬉しい。ゲームでも」
そう、これはゲームだ。
アルカランドにあったやつに似たようなゲーム。犬と猫が仲良く喧嘩するという牧歌的なゲームなはずだ。
どうやら、それ以外にも何か動いてるらしい。が、今はソレは問題ではない。
そんなことを考えていたら、向こうが自分も嬉しいと言って微笑んできた。
どうにもこういうのは苦手だ。一先ず微笑んで、目線を外す。
……話題が無い。女と話すのは本当に苦手だ。
「元気か?」
結局、当たり障りの無い言葉しか出ない。
向こうは元気だったようで、俺は・・・・・・
と、続けようとしたが、ソレを遮ってむ~む~という戦友は弁当を差し出してきた。
そんなことをする必要はない、と行ったが、向こうはどうしても渡したいらしい。
しかし、実際に礼をされるようなことは何一つしていない自分にとっては、受け取りがたいものがあった。
ついでに、何度も言うがこういうのは苦手だ。ボロを出さないうちに帰るとしよう。
「俺にはお礼を言われるようなことはしていない。立場が逆でもお前は俺をたすけていたろう」
「ええ、きっと立場が逆だったら私もがんばって助けたと思います」
「だったら、礼も、プレゼントもいらんよ。じゃあな。あえてよかった」
背中を向けて歩き出す。そうだ、これで良い。これで、終わりのはずだった。
が、相手がついてくる。これもまぁ、いつもの通りといえばいつもの通り見たいなものだが……
どうやら、俺にまだ用があり、それ以前にどうしても弁当を食わせたいと見える。
口では作りすぎただとか言っているが、匂いで嘘だとわかる。匂いを感じなくても分かるとは思うがな。
「嘘が下手だな。分かった。食べるか」
そういったとたん、笑顔になる。半分苦笑しつつ、桜の下に座り、戦友の差し出したサンドイッチを摘まむ。
中々に美味い。素直に感想を言う。得意料理らしい。相槌を打つ。
……だから、こういうのは苦手だ。嫌なわけじゃないが、話題が無い。実際、微笑むくらいしか出来ない。
ふと、カマをかけてみる。
「用は、これだけなのか?」
途端にむ~む~が慌てて要件を話し出す。
ビンゴだ。やはり他にもあったか……正直助かった。
調べて欲しいことがある、と。まさしく探偵向けだな。OKOK、良いだろう。
頼れる人で思いついた、という言葉には嬉しいが、此処からはビジネスだ。
「OK。これから俺たちはクライアントと探偵の関係だ。どんな?」
サンドイッチを摘まむのをやめて、話を聞く。
どうやら、所属してる国の王が怪しい金属を手に入れた、と。
なにやら怪しい金属で・・・と、此処まで聞いて少々拍子抜けした。
そいつは魔法金属で、魅力を上げる効果がある。と答え、依頼達成を告げる。
あまりに直ぐに終わったので、料金はまけておくことにした。ついでに、忠告も。
普通、魔法金属を知っている探偵なんか俺か光太郎くらいなもんだ。
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久々の依頼がすぐさま終わってしまい、時間をもてあます。
クライアントが礼を言うのを受け流し、桜を見る。
タダで見れるものは良い。なにせ金がなくても楽しめる。
そんなことを考えていたら、クライアントがサンドイッチを進めてきた。
「いや、一度依頼受けたからには、そう言うわけにはいかないな。悪い」
そう、今や俺達は戦友である前にクライアントと探偵の関係だ。
無いとは思うが、差し出したものを受け入れたことで後で不利益があるかも、知れない。
クライアントが落ち込んでいるのが分かるが……あいにく、俺は器用じゃない。
「時間だ。あえてよかった」
そういって、再び立ち去ろうとした。
……が、どうにも許してくれないらしい。
何故か分からないが、妙に俺のことを好いているらしい。
俺だって悪い気はしないが、どうにも原因が思いつかない。
「さっき言いましたよね。助けてもらったって」
「確かに私だって、助けられる人がいたら助けたい、やれることはやると思うけど」
「いきなり指揮官になって。準備して。広島についたらどうしようって状態になってて」
「そんなときに助けてもらって、すごくうれしかったんです」(ふいても涙とまりません
そんなことを言い出し、クライアントがついに泣き出した。
「なくなよ……俺が悪かった」
が、俺ってやつはこんなことしかいえない。
謝って泣き止もうとすうるむ~む~が目を擦っても、ハンカチを持ってないんだとかしか言えない。
少しばかり自分の不器用さを恨んだが、ここでうらんでいても仕方ない。
とりあえず、謝る。向こうに気を使われる。黙る。
……此処で自分の不器用さを恨んでも良いような気がした。
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そして、それから1時間後。
日向は一人、歩いていた。
「……まさか、再開して1時間強で告白されるとはな」
実際、『自分のどこを好いているのだろうか?』と疑問に思うが、意味が無いので考えないことにした。
暫く歩いて、思い出して照れる。
少しだけ、自分もまだまだイケるんじゃないかと思った後、死語だということを思い出してその考えを押し込める。
しかし・・・
「俺はそんなに貧乏そうに見えるんだろうか?」
最近、食べ物の差し入れが多い気がする。
確かに、金は無いが食うものに困るほどでは・・・いや、困ってはいるが、なんというか、悲しいものがある。
このままではいわゆる『ヒモ』と言うやつになってしまうではないか。
「まぁ、そうだな。次に会うときまでにもう少し話題を探しておくか」
うん、そうだな。冗談の一つでも考えておこう。
さぁて。どういったやつにするか……出来るだけ面白いやつでインパクトのあるヤツで……
この後、このときの冗談が元でちょっとした騒動が起こるのだが、それはまた別の話である。
二人の未来に幸あらんことを。
作品への一言コメント
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- みゃああ(@@ 視点変えるとずいぶんと状況が…1時間目って我ながら失敗だらけだったものでorz 次への引き(あれかよっw)まで書いていただいて、ほんとうにありがとうございます。 -- む~む~@紅葉国 (2008-05-02 15:47:21)
引渡し日:2008/05/05
最終更新:2008年05月05日 13:11