玄霧弦耶@玄霧藩国さんからのご依頼品


女心と秋の空とはよく言ったものである。
秋の空はうつろいやすい。女心もまたしかり。

え?なんで女心が後かって?

そりゃあんた、自然が女より先なのは当たり前ですよ。
だから本当は秋の空と女心じゃないかと思うんわけよ。

え?何でそんなことを考えたかって?

そこを聞くー?まぁいいけど。
まぁ、男はそれでころっといくからでして、
目の前でへこへこしているこの男もその口なわけでして、
紅葉の如く美しいこの美少女火焔ちゃんは肉まんのうまさにしか興味が無いわけです。
ほら、目の前にデートの相手がいる上に美しい紅葉もあるのに、
肉まんにしか興味が無いのがうつろってる感じがするでしょ?
うーん、火焔ちゃん詩人。

「あのー、火焔さん?」

うつろってるときに何を言っても無駄ですー。
遅れたのに一言しか言わない人は無視ですー。
黙って手を繋ごうとする人も無視ですー。
あー、肉まんうまい。紅葉きれい。
ん?何かしょげてる
……あー、もう。しょうがないから肉まんからうつろってやる。
で、どうしたの?

「あ、いや。手を繋ぎたいなー、って。ダメかな?」

なーんだ。そんなことか。
ふふ、ダメに決まってるでしょう?
そもそも、私の好きなように、じゃなかったの?

「すみません、ごめんなさい。意地張りません。せめて手だけは繋がせてください」

ほら、すぐにころっといく。
ころころころころ。でも女ほどうつろってはいないわね。
んー、どうしようかなー

「変わりに今日は何でもします火焔様!」

いつもそういってるくせに
あ、痛がってる痛がってる。
んー、まぁ肉まんも食べ終わったし、いいか。
喜んで手を取るんじゃないわよこのいい大人がー。

「いや、ワンパターンで申し訳ない」

そうだね。
んー、そういうのもあれだから、今日はパターンをかえよう
あ、頭に?浮かべてる。
あはは、おもしろーい。

「具体的には、どうやって?」

考えなさい、と言うのも簡単だけど、
何も言わずにいるのもまた一興かしら?
うん、そっちにうつろうことにしよう。
さ、あっちの方にいいところがあるんじゃないかなーっと。

/*/

さくさく歩いていくと、公園に入った。
で、感想だけれども……いや、なんというか、すごい……!
今まで歩いていた道もそれなりに綺麗だったけど、
格が違うというのが一番しっくり来る気がする。
紅と金が鮮やかに目に飛び込んできて、その向こうにそびえる滝が全てを支えているように見える。
絶景って、こういうことを言うんだ。
うん、綺麗ね。

「うん、綺麗だ……ほんと、綺麗だ」

あー、なんか言ってるみたいだけど無視無視。
この景色を見ているだけで色んなことがどうでも良くなってくる。
なんでか分からないけど、元気をもらうって言うのかな?
うん、いい気分。
思わず顔がほころぶのが分かる。
自然はやっぱり偉大だし、雄大だ。
こういう時にピッタリの歌があったと思ったんだけど……なんだったかなぁ
ああ、そうだ。倖きゅんが歌っていた歌だ。
どういう出だしだったっけ、ええと……
思い出しながら、少しずつ歌い始めた。
ゆっくりと、低く始まって、ここは高く、そして低くなっていく。
うん、歌っていくうちに段々思い出してきた。
高く低く、そして伸ばして―――

「……その歌、どこで覚えたの?」

む?ああ、いたっけ。
いつの間にか鷹まで集まってきていたみたい。
んーむ、火焔ちゃんの美声は鷹まで魅了するのね。
あ、歌?倖きゅんが歌っていたの。
倖きゅんは分かる?あ、わかるんだ。
で、確か、大地を讃えるっていってたな。

「その歌、俺にも歌えるかな」

んー、難しいかな。山岳騎兵でもないと。
雷電と一緒に自然に溶け込めるというのは伊達じゃないのだ。
自然のことがわかる人間じゃないと鷹までは呼べない。
と、思う。

「そうか……」

なーに落ち込んでるんだか。
いいじゃない。これくらいの歌、いつでも歌ってあげるわよ

「いや、火焔と一緒に歌えたら嬉しいな。ってね」

ふーん……くっさー。
いいや景色を見よう。
……なんで一緒に見るのよー。
そんなところ見ても、何もないから。

……そーよ、私を見なさい。
景色も綺麗だけど、美少女火焔ちゃんには敵わないでしょう?
紅葉の赤も、私のこの髪の前ではただの背景だもの。

「うん、なんだ。綺麗だ」

うむ、よろしい。
当然、景色よりも、って意味よね。うん、そーに決まってる。
そういって満足していると玄霧が……なんでそんなに改まってるのよ。

「えー、火焔・・・さん。聞いてください」

何?また、私を好きにさせるって話の撤回?
ようやくムリだって気付いたのかしら?

「好きです。愛しています。この世の誰よりも。クリスマスのプレゼントでも言ったけどもう一度」

……うん。
あ、じゃない、何よそれ。い、今更改まって言うことじゃないじゃない。

「今まで言った言葉も本物にしていきます。俺は火焔しか見ないし、火焔を愛し続けます。
 浮気もしないし、火焔を悲しませないようにもします」

……そーよ、今更いうことじゃないわ。
うん。いいよ、分かってる。

「なんというか、小心者で意気地無しだけど……、
 貴女を思う気持ちだけは今後変わることは無いと誓います。
 そして、出来うる限り、火焔を幸せにする」

ぷっ……何よ、もー。
そんなに赤くなって、何が面白いんだか。こっちがおかしくなってきちゃう。
あー、まともに見てられないわ。

「えーと、その、つまり……愛しています。この世の誰よりも」

黙る。
私が言ったのはそれだけだった。
黙って従って、玄霧の目がじっと私を見る。
あー、分かってるけど、これだけ真っ赤になれながら言えたなら、

まぁ、ご褒美はあげてもいいかな。

そう思ったから、ちょっとだけキスをしてやった。

やーい、驚いてるー。
さて、今日はここまで。
驚いている間にさっさと行っちゃおう。

「待ってくれ!せめてもう少し一緒に!」

もう見えてもいないけど、聞こえてもいないだろうけど、
一言だけ言ってあげる。
とびっきりの笑顔で、でもアンタには見せてあげない。

「やーよ」



ご依頼のSSが完成しましたので提出します。
完成がギリギリになってしまいすみませんでした。
修正などありましたらご連絡ください。


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最終更新:2008年04月21日 03:09