月代由利@天領様からのご依頼品


いつもお世話になっております。
作品が完成いたしましたので提出いたします。

『ねことはなみ』
http://idress.iza-yoi.net/irai16.lzh

今回は少しだけサウンドノベル風味にしたので、
こちらに直接UPするのは避けました。
上記URLをコピペすることでDLできると思います。
文族のためイラストはありませんが
ゲーム風味の作品として提出させていただきます。

元の文がゲーム用テキストというか通常読むには不向きだったので
選択肢等を削って一本道にしたものを提出いたします。
基本的に内容は、先に出した作品の「END3 Normal」とほとんど変わりません。

よろしくお願いいたします。

(※秘宝館スタッフより 
 上記のURLからはファイルがDLされます。携帯の方はお控え下さい。
 また、『作品自体のバイト数は2.28MBと重めですのでナローバンド環境の方などはご注意ください;;』と製作者様の方からご連絡いただいております。ご注意下さい。)



ねことはなみ ―月代由利さまに捧ぐ―

月代
「いやぁ…晴れた晴れた~」

空を見上げると雲ひとつない…とはいかないまでも、綺麗な青空が広がっている。
宰相府藩国・春の園。
つい先日まで閉鎖されていたここにこられたのは、幸運だったと言って間違いない。

月代
「しっかし……食べ物だけ用意ってトコが私らよのう」

ははは、と笑えば、隣の杏も「んだねぇ…」とか言いながら笑っている。
今日の目的は花見……ってだけなわけでもなくて、杏の誕生日会兼送別会というやつだ。
まあ、平和にほのぼのやれればいいかなと思ってるわけでして。
花より団子になろうが、楽しければよし。
ひとまず、辺りをきょろきょろと見回すが、もうひとつ肝心の姿はどこにも見当たらない。

月代
「で、猫たちはどこだー」

杏といえば猫。
いや、というかスピキオ?
お見合いで猫を連れ帰ってきた兵として皆に記憶されていると思う。
せっかくの誕生会だし、猫とのんびりさせてあげようというのも今日の目的だったりするわけだけど。
その肝心の猫の姿が見当たらないのだ。

月代
「むーん。どうしたもんか」

スピキオだけじゃあれかとおもってハンニバルまで呼んだのに。
猫に囲まれてもふもふのはずだったのに。
これでは予定がすっかり狂ってしまうではないか。
とはいえ、ここで動き回ってすれちがっては元も子もない。
大人しく待ってるか……
そう思ったその時。


「あれ? 人影!?」

月代
「ほえ?」

杏の声につられて視線をあげると、確かに人影がこちらへと向かってくる。
おかしい。
今日呼んだのは猫のはず。
断じて人ではない。
しかし、その腕に抱かれているのは間違いなく猫だった。

???
「よっす」

猫に抱きつかれながら、その少年はそんな挨拶を寄越してきた。
ってちょっと待て!
そのピンクの髪はどこからどうみてもヴィクトリーじゃないかぁぁっっ!
なんでどうしてヴィクトリーがここに。
まさかの展開に一瞬パニックになりかけるが、隣の杏が妙な叫び声をあげて私以上のパニックになっているので少しばかり落ち着いた。
自分よりパニックになってる人がいると落ち着くって本当なのねー…
まあ、あれだ。
初対面なんだし、まずは挨拶が基本。これ、社会人の常識!

月代
「時間的にこんにちはー、かな。初めまして、でもあるね。今天領所属の月代です。今日はよろしくー」

それで気がついたのか、杏もぺこりと頭を下げて挨拶している。
ヴィクトリーはにこっと笑って

ヴィクトリー
「猫、連れてきました」

と言った。
なるほど。来るとしたらてっきり飼い主(おそらく善行さん)が来るかと思ってたけれどヴィクトリーがつれてきてくれたのかー。
それは感謝ですな。

月代
「ありがとうございます」


「ありがとうございますっ」

見れば二匹ともヴィクトリーに抱きつくようにして大人しくしている。
なんていうほほえましいこうけい…
私がちょっとばかり暖かい視線でその光景を見守っていると、ヴィクトリーがはい、と猫を手渡してきた。

月代
「おっとと、はい」


「あわゎ。どもです」

私が黒猫のハンニバルを、杏が白猫のスピキオを受け取った。
スピキオとは会ったことがあるけれど、ハンニバルとは今回が初対面だ。

月代
「はじめまして、だね。こんにちわハンニバルv 普通にあえてうれしいや。スピキオもねー」

そういうと、ハンニバルの二本のしっぽが左右に揺れた。
彼なりの挨拶なのだろう。
ふふん、というふてぶてしさがいかにも猫で癒される…!

月代
「ふふふ、いやしーv」

杏は杏で相も変わらずスピキオとうにゃうにゃしてるし。
スピキオもハンニバルもまんざらでもないみたいだ。
ねこはよい。
思わず夢中で猫と戯れていると、横合いからヴィクトリーの声がした。

ヴィクトリー
「いいなあ」

月代
「ん? なにがー?」

ヴィクトリーの問いかけにハンニバルを撫でる手をとめて振り返る。
するとヴィクトリーは何の衒いもなくこう言った。

ヴィクトリー
「女の子と猫っていい絵だなあって」

うん、少年よ。
きっと君は本当に純粋にそう思ってくれてるんだろうね。
ここはありがとうと言うべきか、はたまたつっこむべきか、いったいどっちが正しいのだろう。

結論:スルー。

月代
「というか立ち話もなんだし、桜の根元にでも座らない? 時間があればヴィクトリーも一緒に」

ヴィクトリー
「うん」

あっさり頷くヴィクトリー。
素直でとてもよい子だなぁ……。

月代
「よし、じゃあこっち!」

ハンニバルを抱えたまま、手近な桜の木の根元に腰を下ろす。
杏が続き、そのすぐあとにヴィクトリーもついてきた。
さて、せっかくだから何か食べよう。
ヴィクトリーにもあげなきゃね。
なんか勝手に欠食児童なイメージあるし。
何をあげようかな。
といっても、大したものはあまりないから……。
無難にチョコレートケーキかな。

月代
「えと、ヴィクトリー甘いの平気ー? チョコケーキあるのだけど」

甘いの大好きな男の子もいるけど、甘いの全然駄目な男の子もいるからなぁ。
そう思って聞いてみると、ヴィクトリーから満面の笑みで答えが返ってきた。

ヴィクトリー
「俺、甘いの大好き!」

そうか。
それはよかった。
その笑顔を見ていたら、心の底から思ったよ…。

月代
「よし、それはよかった! あ、猫たちはイカ焼いてきたからー! ミルクもあるけど」

言った瞬間、桜に気をとられていた猫たちの視線が一気に釘付けになった。
そんなにイカが好きなのかー。
微笑ましいのう……。

月代
「杏ー、手伝えー」


「あ、はい。今手伝うー」

猫たちの奴は杏に任せよう。
それにしてもあまりの猫たちの釣れっぷりに杏も心なしか笑いをこらえている。
ま、作戦勝ちだったということだな。

月代
「えと、ヴィクトリー、飲み物が牛乳しかないんだけど、大丈夫?」

牛乳もねー。
アレルギーとかある子はあるから…って。
私はヴィクトリーのお母さんかなんかだろうか。
いや、せめてお姉さんにしとこう。
自分で切なくなった。

ヴィクトリー
「うんっ」

しかし、あれだな。
ヴィクトリーの頭に耳と尻尾が見えてきた私は重症かなぁ。
ネコミミかイヌミミかはご想像にお任せします。
ま、それはともかく。
ケーキ切るか……。
三分割…三分割って意外に難しいよなぁ。
とかやってたら、杏がスピキオにイカの入った袋を奪われて逃げられてた。
そのあとをハンニバルも追いかけてる。
何やってんだか~。

ヴィクトリー
「えい」

と思いきや、ヴィクトリーが華麗な(?)ジャンプで滑り込んで二匹を捕まえた。
さすが。
絶対評価値+4の男。

月代
「ヴィクトリーナイス! 一番おおきいとこあげよう」

ご褒美はあげなくちゃだよねー。
ヴィクトリーは「猫め…」とか言ってるけど、まあ、それこそ猫だし言っても仕方ないと思うよ。

ヴィクトリー
「もー。なんでこいつが俺の先輩なのかわかんない」

気持ちはわかるけどねぇ。
ハンニバルも頷いてる…ってそこで肯定していいのか。

月代
「生まれが先だから、かなぁ?」

聞いた話だとハンニバル2000歳。
猫だけど。うん。猫だけど。


「あはは、深いこと気にしちゃだめですよぅ~。」

杏はスピキオをかまいながらやっぱり明るく笑い飛ばしている。
ま、深いこと気にしてもたしかにしゃーないし。
ケーキ食べよう。
……って。

月代
「ハンニバル抱いたままじゃ食べれないじゃん」

だってハンニバルけっこう猫にしては大きいのよぅ…。
さて、どうしたものか。

月代
「なんだろう、ハンニバルは私じゃなくてヴィクトリーに抱いててもらって それを愛でた方が早いのかしら?」

おお。
これは我ながら名案ではないだろうか。
そう思っていたら、ヴィクトリーから不満そうな声があがる。

ヴィクトリー
「えー。横暴だー。俺もケーキ食べたいー」

あ。そっか。
ヴィクトリーに抱えてもらったら今度はヴィクトリーがケーキ食べられないよね。
うっかりしてました。

ヴィクトリー
「(じー)」

う。
いや、そんな甘えるような視線向けられても困ると言いますか(汗)

月代
「わかってるから、大丈夫。ケーキはもう取り分けてあるから」

ここでケーキ食べさせないとかどれだけ鬼なのかという話だし。
ハンニバルを抱えたまま笑うと、ヴィクトリーはぱぁっと顔を輝かせた。
うん、それ以外どんな表現の方法があるっていうんだ。
そしてはぐはぐとケーキを食べている。
ハンニバルはもう我関せずと言うかマイペースでイカ食ってるし。

月代
「というかハンニバルは楽しければいいタイプ?」

そうに違いない。
スピキオも杏の横でイカを食べてるし。
猫三匹、まっしぐら? みたいな?

月代
「なんかこう、いいなぁ、この空間」

ねこはよい。

月代
「んー、まあこんな誕生日で送別でヴァレンタインデーもありか?」

おもむろに、杏に尋ねる。
そもそもの目的はそれだったわけで、主賓も杏だし。


「ありじゃない!?楽しければよしでしょぅ」

そう言った杏は心底楽しそうだ。
ヴィクトリーが口の周りをチョコだらけにしているのを見て拭いてやったりしている。

ヴィクトリー
「いいよ、もったいない」

とか言いながら自分の指で拭こうとするヴィクトリー。
どんだけ甘いものがすきなんだ、君は(笑)

月代
「じゃあ私の分もあげよう。しょぼいヴァレンタインで悪いけど」

ちょうどヴァレンタインも含むつもりだったし。
ヴィクトリーに口をつけていないケーキを差し出す。
杏に口を拭われて、綺麗になった顔が赤らんだ。

ヴィクトリー
「きゅん…」

と、ときめかれた!?

ヴィクトリー
「俺、ケーキくれる人大好き。口ふいてくれる人も」

月代・杏
「あははは」

図らずも、杏と同時に笑みがこぼれた。
まあ、三匹目の猫、もとい弟のようなヴィクトリーにそう言われちゃ笑うしかないと言うのも本音だけど。


「スピキオもおいでー」

食べ終わって1人丸まって寝ていたスピキオを杏が自分の膝に乗せる。
せっかく笑いの輪ができてるのに、1人だけ入ってないっていうのも寂しいし。
ということらしい。
スピキオは杏に抱っこしてもらえたのが嬉しいらしく、喉をならしている。

ヴィクトリー
「いいなあ」

また、ヴィクトリーがこちらを見てぽつりと言う。

月代
「ねことおんなのこ(?)のくみあわせが?」

えー。外見年齢? 何それ美味しいの? ということで。
じ、自分でも思わなくもなかったとかはないんだからね!
って思わずツンデレっぽくしてしまった…。

ヴィクトリー
「うん。かわいくていいねっ」

ヴィクトリー……
そんな直球できて私にいったいどうしろと(笑)

月代
「私的にはヴィクトリーと猫たちと桜というのもいいけどねー」

まあ、話をそらすわけでもないんだけど。
そう思ったのは本当。
別に戦いの中だけじゃなくたっていいじゃない。


「ぇ、じゃあオイラは猫とケーキと桜?」

月代
「ああ、ケーキは忘れたらだめだねー。あとイカ?」

杏までとぼけたこと言い出して。
それに乗っかって話してたら、ふと視線を感じた。
ヴィクトリーはこっちを見て微笑んでる。
……14歳には思えない笑い方で微笑まれてる…!?

ヴィクトリー
「年下にバカにされたみたいで嫌い?」

まるで内心の声を読んだみたいに、そう言われた。
けど、違う。
驚いただけ。……なんだけど。
なんて答えよう。
なーんて、答えはもう決まってるけどね。

月代
「キライならはっきりいう」

ほぼ0コンマの速度できっぱり答える。
杏が「確かにー」とか笑ってるけど、まあ事実だから。

月代
「だからわらってるということは、二択であれば好きということだよ。ヴィクトリー」

噛んで含めるように、一言一言はっきり伝える。
間違って伝わったりしないように。
誤解が生まれたりしないように。

ヴィクトリー
「ありがと」

ヴィクトリーははにゃっと安心したように笑った。
そりゃ、まあ嫌いとか言われたら凹むだろうし、あれなんだけど!

月代
「というか、なんかこう はっきりいうとてれるのですがねぇ、この年だと」

聞こえないようにぽつりと。
14歳という若さにはさすがに負ける……。
ま、でも喜んでるし多少のことは仕方ないかと思い直そう。

月代
「いえいえどういたしまして」

にっこり笑顔の大サービス!
照れるけど!

月代
「で、そこ! 杏はによによ見守らない!」

なんかさっきから生温かい視線を向けてくる杏にも釘をさしておかねば。


「ぇ~!いいかんじなんだもーん」

ねー、とか猫に話しかけるなー!
スピキオとハンニバルも同意してますけど…(がっくり)


「猫ちゃんたち公認だっ」

そこでなぜ杏が胸を張る。
もうつっこむ気も起きんけど。

ヴィクトリー
「んー…」

杏と猫を眺めていたヴィクトリーが不思議そうな声をあげた。

月代
「どうしたん? ヴィクトリー」

ヴィクトリー
「すごくどうでもいいんだけどさ」

と前置きしてヴィクトリーが言った。

ヴィクトリー
「俺が抱いてる時は大人しくなかったよ」

ああ、ハンニバルとスピキオかぁ。
杏は疑問の声をあげてるけど、動物ってけっこう同性には反発するからねぇ。

月代
「あははは(笑) このこら男の子だしねぇ(笑) …猫だし」

ヴィクトリーはそれで何かを納得したらしい。
「そうかあ」と呟くと、おもむろに猫たちに言い放った。

ヴィクトリー
「やいこのすけべ。うらやましいぞ」

牛乳を吹き出さなかった私を褒めてもらいたい。
正直だな。本当に(笑)
改めて牛乳を飲んで一息ついていると、杏がヴィクトリーを手招きしているのが見えた。
杏の顔、なんか企んでる気がするなぁ。


「こしょこしょこしょ……」

小声のせいで内容は全く聞き取れないが、ヴィクトリーはふんふん頷いている。
そして隣に座った。
なんなんだ、突然(笑)

ヴィクトリー
「抱きつくのが大変なんだよ」


「ああ、それは雰囲気だ」

なんだ、抱きつくって(笑)
そして、杏もなんか適当なアドバイスしてるし!
助言で+1とかにはならないぞー。
さて、どうしよう。

月代
「ん?何? 抱きつくはあれだけど、頭なでるくらいならいつでも?」

笑顔でそう答える。
弟みたいなもんだし、それくらいはお安い御用さ。

月代
「私なでるのもなでられるのも好きだけど。…というかなんだろうこの流れは」

ふと我に返りかけるけど、もう気にしないことにする。うん。そうしよう。
ヴィクトリーは、私の言葉に目を輝かせている。
わーい、と言わんばかりに頭を向けてきた。

ヴィクトリー
「なでて!」

月代
「ははは(笑)了解」

乞われるがままにヴィクトリーの頭をなでる。
あー、もう。そんなに嬉しそうに目を細めちゃって……。
なでられるのがそんなに嬉しいのかねぇ。

ヴィクトリー
「俺、なでられるのも大好き!」

月代
「なでるくらいならいつでも(笑)」

ヴィクトリーはとても満足したように頷いた。

杏「よかったよかった。これで一件落着?」

杏がなんか言ってる。
っていうか、何が一件落着なのかさっぱりわからないよ!

月代
「ま、いいか」

こういう日があったっていいだろう。
3人と2匹の上を、春の柔らかな風が通り抜けていった。



END





作品への一言コメント

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  • 「さすが… 君は期待を裏切らないね。これは万来の拍手をもって評するべきかな? ブラボー… 良いものを見せてもらったよ。」(代理:どこぞのフルーティスト)>BP150 -- 月代由利@天領 (2008-03-22 01:21:02)
  • わー! 喜んでいただけたようでよかったです。いずれ追加パッチでも増やせればいいなぁと思います(笑)この度は、ご指名ありがとうございました! -- 奥羽りんく@悪童同盟 (2008-03-23 10:40:05)
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最終更新:2008年03月23日 10:40