玄霧弦耶@玄霧藩国様からのご依頼品



「ま、たまには気晴らしをしないとな。何かかいたいものある?」
制服の襟を直しながら玄霧は言った。


ここは修復なった小笠原リゾート。
病院を離れた二人と一匹、結城火焔と雷電コガ、玄霧は
海岸沿いに街へ出た。
追っ手はいないようだ。

遠く待合所の先には、停泊中のおがさわら丸が
白い巨体を日にさらしている。

街に目を向ければ、おみやげもの屋やレストランが軒を連ねていた。


「無ければ俺の買い物に付き合って欲しいんだけど、と」

ささやかな期待を胸に誘う玄霧。

「好きに買ってくれば?」
火焔はあっさり玄霧に告げると、
体長2mはあろう雷電にまたがると雑踏の中に躍りこんでゆく。

「食べ物買うぞ。いくぞコガ!」

頼るものはコガただひとりであるかのようであった。

玄霧を遠く後ろに、コガに乗って街をかける火焔。
角を曲がるやどこかの店に入ったか、巨大な戦闘獣とともに姿を消す。

あっという間のことだった。


消えた火焔を追う
玄霧は、当たるを幸い手近な店に飛び込んだ。
周囲の店を一軒一軒、しらみつぶしに訪ねて回る作戦だ。

「ここに雷電に乗った女の子がきませんでしたかッ?」



2時間後。

店々に飛び込み続けるも、玄霧の行動は空転を続けていた。

火焔の手がかりは無く、なぜか玄霧名義でつけられている
レストランの請求書ばかりが貯まってゆく。

薄給で知られる共和国参謀部の給金もあてにはならず、
薄くなる財布だけが、徒労の跡を教えてくれる。

玄霧の思考はさらに空転を続けていた。

ところで玄霧という男は失われた超辛帝国の遺産、
バンバンジー・ヘリの使い手である。
その峰には燃える心が、
腰のポーチには工具やゴーグルと共に、
辛い辛いハバネロスナックが入っていた。

ポーチの淵をなぞる玄霧。
(ヘリを呼ぶか……いや)
考えを即座に否定する玄霧。
光の速さで思考回路をひらめかせる。

(否、俺は今試されているのだ!)
猛然と回転を続ける思考、別名妄想は続く。

(すぐバンヘリに頼るような男ではいかん!
 そう、それでは火焔にあわせる顔がないのだから!)

玄霧はヘリで上空から捜索することを放棄した。

火焔への思いだけが募る中、
玄霧の空転はいまや暴風のように脳内を駆け巡るのだった。



4時間後。
島を照らす日も半ば傾きかけたころ、
山道にはぼろぼろになる玄霧の姿があった。

飲食店につけられた請求はもはや支払える額ではなく、
皿洗い、店の掃除、ウエイターなどの労働であがなう玄霧だった。
このあと数十時間の労働を強いられるのかと考えると、気が重い。

レシートに書かれた時間と店の位置をもとに
足取りを追う玄霧。

(もうすぐ、もうすぐ火焔に会える……!)

根拠は無い。
ただ、そうありたいと願う心が溢れるあまりに
目の前にある現実を自らの願望にて塗り替える玄霧だった。

島をほぼ半周した歩みを進める玄霧。
足取りは重く、目の前には白亜に塗られた建物が見える。病院だ。

逃げた患者を探しているのか、サーチライトがあたりを照らしている。


「うう、警備の人たちゴメンナサイ」そうつぶやく玄霧は
まるでそうすることが当然かのように、火焔の病室へと歩を進める。

火焔が恋しい、
火焔がいとおしい、
火焔が心配でたまらない。

火焔のためならなにものの障害をも超えていけるかもしれない、
いいや、きっと超えるだろう。超えてみせる。

病室に入る。

楽しそうに秘書官の南天と話す火焔がいる。
ベッドの上にあぐらだ。南天があわててシーツを動かす。

火焔、火焔。
火焔、火焔!

「いや、見失ったんで心配で」
「またまたー。お大臣様も、嘘が上手ですなあ」

火焔火焔火焔火焔かえんかえんかえんかえんかえんかえん
かえんかえんかえんかえんかえんかえんかえんかえんかえんかえん

玄霧はいとしい人を抱きしめた。



(このつづきはゲームログ
http://blogiri.at.webry.info/200712/article_13.html
とイラストにてご確認ください)




作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

名前:
コメント:





引渡し日:


counter: -
yesterday: -

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年03月15日 14:24