さくらつかさ@FVB様からのご依頼品


『託されたものは…』

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“その最後の種族さんはどちらに?”
“それはそなたが探すのだ”

~小笠原最後の夜の会話より抜粋~

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満天の星空の下、あらかた撤収の終わった小笠原の船着場にその三人は到着した。

既に島に明かりは無く、今現在島に居る人間は10名程度であった。

まぁ、どういう事かと言うと小笠原最後の夜を楽しむ為に来た物好き三人組である。

物好きの中の一人が手に持ったマグライトで星空を指す。

抜けるような青空という言葉があるが、それに対して降り注ぐような星空という言葉がある。今夜の夜空は正しくそれであった。

え?そんな言い回しは無いって?…まぁ、いいや。今出来たことにしよう。

星空をマグライトで指していた物好き、劔城 藍が残りの物好き二人に声をかけた。

「見ろよ空 星がすげーぜ。」

物好きの一人、さくらつかさが答える。

「綺麗だねぇ。触りたい...」

どこか懐かしむような、寂しいようなそんな表情で呟くように。

さくらつかさは宇宙への帰還を掲げるFVBの王だ。

誰よりもソラへ帰ることを望んでいるのだろう。

ふと何かが視界の端をよぎる。

「ん?」

そちらにマグライトを向ける最後の物好きである葉崎。

つられて照らされる先に目をやると。

暗闇の中でいくつもの緑の瞳が光る。

にゃんにゃんちゅー。

なんとも奇妙な鳴き声であるが、そう聞こえたのだから仕方あるまい。

それで、劔城は理解した。ネコリスだ。

姿はリスに似ているが、性質は猫のそれである情報生物。

物語のクライマックスに現れるという存在だ。

最も、多くの風を渡る者はこう言うだろう。

ちいさな友達と。

で、そのネコリスがあっという間に走り去っていった。

さくらつかさショック。ちなみに、この人は可愛いもの大好きである。

ネコリスを追いかける三人組はやがて森へと至る。

道が整備されている訳ではないので、足元に気をつけるようにと葉崎。

「おうよ。」と慎重に森に踏み入るさくらつかさ。お…おうよ?

いや、何も言うまい。気風のいいお姉さんなのだ。

ふさふさでかわいいんだぜー。と言う劔城の言葉でさくらつかさうっとりである。

そして、唐突にマグライトが点滅して……消えた。

あれ?とスイッチをオンオフと何度か動かすが、点かない。

劔城が慌てずに携帯を取り出すが、電源は落ちている。

軽く笑って携帯をしまう劔城。

こんな夜もありさ、そう空を見上げた。

そして、周囲を見回すと森が輝いている。青く。青く。

きれーいとさくらつかさが輝く葉に手を伸ばす。

「劔城。これなに?」

「世界を織り成す力じゃないかな?」

「へー。」

そんなやりとりの横でぺちょんと葉っぱに触るさくらつかさ。

その瞬間、さくらつかさの全身が青い光に包まれる。

びびるさくらつかさ。どうでもいいが、安全か確かめたのかしらこの人?

「なんか青い!」

妙に嬉しそうに見えるのは、きっと気のせいである。

「あらら、さくらさん青いね。」と暢気に声をかける葉崎。

「なんか青くなってみた。」ちょっと照れ笑いを浮かべるさくらつかさ。なんか可愛い。

いや、まて。けして普段は可愛くないという意味ではない!ないから落ち着いて!!

まぁ、話を続けよう。

青い光には害は無いようで、そのまま三人は森の奥へと進む。

森の奥には先ほどのネコリスであろう家族が居たが、三人組を見て・・・逃げた。

さくらつかさがっかりである。

取りあえずここは彼らの場所である。勝手に入って来た者としては謝るのが筋であろうと、口々に謝る三人。

尻尾を振って答えるネコリス。

猫は警戒したり怒っている時に尻尾を振るが、ネコリスはどうなのだろう?

まぁ、座って近寄ってくれるのを待ってみようと言う劔城の提案に乗って車座に座ってアイドレスの思い出話を語り合う三人。

話をしていると輪の中に入ってくるネコリス。

つづきはー?と三人を見回している。

なんか増えてる。

さくらつかさ触りたくてうずうずしてる。

それを余所にタバコすってもいいかなとパイプを取り出す劔城。

青く輝く葉を詰めてネコリスに差し出す。

「友愛のしるしに」

「さ、さわってもいいですか?」とネコリスの中の中くらいのに聞くさくらつかさ。取りあえず劔城と一緒に手を差し出してみる。

ネコリスは良くわからないらしく、首をかしげている。

なんか可愛い。

今度は青く輝く葉っぱを一枚摘んで差し出すさくらつかさ。

ネコリスは興味なさそうだ。残念。

居住まいを正した劔城も言葉を続ける。

「言葉は通じなくとも心は通じると思っています。」

「ネイティブアメリカンの風習だったっけ?」と葉崎。

「良く知ってたな。昔リザベーションで教えてもらったのさ。」

そんな他愛の無い話をしていると、歌が…聞こえた。

透き通るような、もはや人間の口から出る音とは思えないほど綺麗な声だ。

合わせて歌いだすネコリス達。

「エステルヴァラオーム・イスタルボート」

にゃんにゃんちゅー。にゃんにゃんちゅー。

合わせて歌いだす三人。


―エステルヴァラオーム・イスタルボート―

いつの間にか動物が集まりだす。

―神々の誓いの言葉―

その中に一際立派な立派な猫が居た。

―それは悲しみが深ければ深いほど、絶望が濃ければ濃いほど、燦然と輝く一条の光―

ブータニアス・ヌマ・ブフリコラ。

―それは夜が深ければ深いほど、闇が濃ければ濃いほど、天を見上げよと言うときの声―

竜狩る剣鈴を持っている。

―それは光の姫君なり ただ一人からなる世界の守り―

「こんばんは。ブータさん。」

―世の姫君が百万あれど、恥を知るものただ一人。世に捨てられし稀代の嘘つき―

声をかけるさくらつかさ。

―嘘はつかれた。世界はきっと良くなると。それこそ世界の守りなり―

「これから戦に向かうのですか?」

―善き神々は恋をした。嘘を真にせんとした―

「最後の種族の祝いにきたのだ。」

―我は世界の守りの守り、守りの守りの守り 守りの守りの守りの守り 守りはここに、この中に―

「これより老いた地の母より、最後の種族が生まれる」

―かの姫君、踊る者、黒き暴風の歌い手を従え、闇を相手に闘争を始めたり―

「お祝いですか。私たちも一緒にお祝いしてもよいですか?」とさくらつかさ。
「生誕はめでたい事です。私達もお祝いしてもいいですか?」葉崎が続ける。
「新しい生誕の祝いの品として捧げたくぞんじます」持っていたパイプを奉げる劔城。

―それはどれだけ離れていても、光り輝く黄金のすばる―

「人族からの祝い、確かに頂いた」

―それは我らが得たる最後の絶技よ―

「これにて全ての種族の祝いが集まった。イルカも、魚も、獅子も、人も」

―星の輝きを我が胸に。貴方を想う喜びを―

「祝いは歌に、歌は技に、技は魔術に、魔術は力に」

―絶望の海への航海も、今なら怖れずできるだろう―

周囲を見回すとイルカが森を泳いでいるのが見える。

―それは最弱にして最強の、ただ一つからなる世界の守り―

「私達も大いなる円環の一つである事を長く忘れていました。」と告げる劔城。その表情は嬉しそうな、どこか哀しそうな。

―それは万古の盟約にして、人が決めたるただ一つの自然法則―

微笑むさくらつかさ。

―それは勇気の妻にして、 嵐を総べる一人の娘―

にっこりと笑い周りの神々に頭を下げる葉崎。

―それは光の姫君なり ただ一人からなる正義の砦―

歌声は鍛えられ剣鈴となり、剣鈴は見る間に宝石に変わる。青い青い宝石だ。

―世の軍勢が百万あれど、難攻不落はただ一つ。世に捨てられし可憐な嘘つき―

宝石はさくらつかさの手にゆっくりと収まる。

―嘘はつかれた。世界はきっと良くなると。それこそ正義の砦なり
善き神々は定めを裏切り、嘘を真にせんとした―

「ブータさんこれは」

「それはそなたが、最後の種族に渡すのだ。」


~FIN~

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補足:文中の歌はリターン・トゥ・ガンパレードよりの引用となります。


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最終更新:2008年02月07日 20:08