船橋@キノウツン藩国様からのご依頼品
「俺も一緒に祭りに来れて楽しかったよ」
空歌の頭の中で船橋くんの声がリフレインしている。
「あ、あれって……」
空歌はもう、何日もお祭りの日のことを考えていた。
「で、デー」
空歌は口にすると恥ずかしくなって死にそうっと思い、声に出すのをやめました。はじめてのお祭りということでよく考えてなかったが二人っきりで会ったのは初めてである。
「で、でもそれってそう」
空歌はやっぱり恥ずかしくなって、口を閉じた。ずっとこの調子なのだが、本人は気づいていない。
「で、でもどうしよう。恥ずかしくて顔見れないかも……」
空歌は顔をマクラに埋めると顔を真っ赤にしつつどうしようどうしようと呟いている。そもそもの発端は船橋くんからの再びの小笠原へのお誘いである。
お誘いが来てから、お祭り楽しかったなぁ、と思って船橋くんの事を思い出して前回二人っきりであったことを思い出したのである。
「どうしよう、顔見れないかも……」
顔だけでなくやさしい声を聞くだけでももう、いっぱいいっぱいである。
「ど、どうしよう」
どんな顔して行けばいいんだろ? 顔が近づいたらもうそれだけで……っと思い空歌が火照った顔を冷まそうと窓を開けると外では子供達が遊んでいるのが見えた。
「あ」
子供達は糸電話で遊んでいたのである。炊き出しで使った紙コップを洗い、糸を通して作る糸電話。広島での戦いにおいて、子供の為に空いた時間に女性陣で作ったのを思い出した。
「あれなら、顔近くじゃなくても船橋くんとお話できるかも」
空歌は名案だとばかりに糸電話を作ることにした。作り方は以前みんなが作った時の事を覚えているので大丈夫である。
それから空歌は糸電話を作った。
空歌が糸電話を作り始めたのは小笠原に行く数日前であったが、完成したのは前夜であった。それは作る際に船橋くんの顔を思い浮かべ顔を真っ赤にして恥ずかしさのあまり紙コップに穴を開けすぎたり、お昼に誰もいない教室で作っていたら突然ドアが開いて慌てて隠そうとして壊してしまったりなど色々あった。しかし、空歌は完成させ、小笠原へ糸電話を持っていくことに成功したのであった。
しかし、新たな問題が発生したのである。
「どうしよう、当日どんな格好すればいいんだろう」
前回の二人っきりのお祭りを意識し、空歌は悩んだ。悩んで悩んで悩みまくった。前回はお祭りなので浴衣でよかったし、船橋くんにも似合うとほめられた。
「どうしよう、ドレスがいいのかな」
今回はお祭りではないはずなので、また浴衣というわけにはいかない。今回も二人なのなら、ドレスとかそういった格好の方がいいのかもしれないと空歌は自宅のドレスを思い出した。よく考えるとドレス、アクセサリーなどどんな格好で行けばいいのか? 空歌は授業中も悩みつつ、また船橋くんの顔を思い出して顔を真っ赤にしつつも悩んだ。
「そうだ招待状を確認してみたらいいんだ」
そして、空歌はお誘いの招待状(空歌視点)でどこへ行くのか確認することにした。ドレスにしてもどこへ行くのかによって相応しい格好というものがある。
「選択イベントは……下校?」
部屋で招待状を見ていた空歌はフラフラと座り込んだ。
「が、学校なら制服だよね」
空歌はもっと早く招待状を見ればよかったと思いつつもマクラに顔を埋めた。
「で、でも二人っきりなんだ」
招待状で二人っきりなのを確認した空歌は今度はどう話そうか、船橋くんの顔をどうやって直視したらいいんだろうか? と悩み始めた、ヤギ君に相談したり、糸電話の予備を用意したり、空歌はそうして当日の朝を迎えたのであった。
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最終更新:2007年12月06日 08:13