刀岐乃@越前藩国様からのご依頼品


 どこにでもある集合団地の一棟、その中のある部屋。そこで一人の少女が頭を捻っている。

一見すると男の子とも見える中性的な魅力を持ったその少女。名を「七海」という。越前藩国の逗留ACEにして、E98「九州会戦」にてその知識をもって貢献した勝利の立役者である。

 よく人は見かけによらないというが、この七海もまた、その典型例である。10歳にしてゲーム「スピリチア・ダンス」にて、特師の階級章を持っている。スピリチア・ダンス全体の参加者数と、特師が一握りの者にしか与えられることが無い、といえばその非凡さがわかるであろう。 

 そんな少女をしても、解決が困難なことは沢山ある。様々な才能があろうと、彼女はまだ10歳であり、解決できないことはいくらでもあった。

全部がゲームだったらなぁ、というのが彼女の言ではあるが、世の中そうそう都合よく行かないものである。

 七海が見つめるPCのモニターに表示される文字。そこには「蟲についての発表」とある。近々、越前藩国の皆と小笠原に遊びに行く予定であり、そこで自分の操る「蟲」について講義をして欲しいと頼まれたのだ。

 「蟲」・・・アイドレスでは未だ登場していない技術であり、説明が難しい。それ以前に七海は自身の利発さによって、理論ではなく実践によって蟲というものを理解している。ゆえにそれを人に説明することは大変困難であった。

 そもそもこの「蟲」。あまりにも万能すぎて、一言で言い表すことが困難である。意思疎通手段、調理、艦船としてのユニット、録画と多岐に渡る。それだけならともかく、用途によってかなり外見も違ってくる。なので、こういう形をして、こういう目的に使われるという具体的な説明ができない。

 そして、七海の悩みは発表以外にも、もう一つあった。自分のお気に入りである「蟲」を、越前藩国の皆が受け入れてくれるかということだ。

 「蟲」はその便利さ、多様性から七海などは大のお気に入りであるが、スピリチア・ダンス参加者の中では「蟲」を使う者はごく少数である。せっかく越前藩国のお兄さんお姉さんは面白いので、気に入っているのに「蟲」が原因でその関係に傷が付くのは避けたかった。

 では、どうやって「蟲」を好きになってもらえるか。そもそも、「蟲」がスピリチア・ダンス内で人気が無い理由はその外見にあった。「蟲」の名の通り昆虫を模した物が多い。それゆえ、多くの女性プレイヤーから忌避され、男性プレイヤーの一部も似たような反応を示した。

 七海からすれば、便利この上ないものを使わない彼らが不思議でしょうがなかった。まだ、この少女が人が合理性だけで動くのではないと理解するのには、しばしの時を必要とするのであろう。

「うーん。好きになって貰うには・・・」

 七海は思考する。「蟲」の一番の利点はその利便性だ。それを強調する事が一番だと思う。だが、スピリチア・ダンス内でもその点については知られているのに、使用者は少ない。

 つまり、マイナス点である外見の不気味さを何とかしなければいけないわけだ。しかし、思考はループを続け、良い解決策へとは至らない。

 「んーんー」

 「もしもし、七海ちゃん?」

「あ、桜子ちゃん」

 顔を上げると画面に新しいウィンドウが開き、そこには親友である八重咲桜子が写っている。どうやら、頭を抱えている間に、メッセンジャーで声を掛けられたらしい。

 「どうしたの、七海ちゃん。 何か悩み事かしら?」

 「うん、それがね」

 たおやか、と言う言葉がまさにぴったりの少女、桜子が語りかける。長い黒髪は艶やかでその紡ぎだす言葉には知性を感じさせる。七海にとって、友達であることが誇らしい少女であった。

 ならば、彼女が桜子に頼るのも自明の理であり、自分を悩ます難題を打ち明ける。

 「そうねぇ」

 桜子は少し考える。しかし、すぐに七海に向かい、向けられた人全てを蕩けさせる様な笑みを浮かべ解を現す。

 「越前藩国の皆さんは、七海ちゃんを選んでくれたのですわよね。ならば、七海ちゃんも越前藩国の皆さんを信じて、ありのままを話せばいいのではないかしら」

 「信じる、か」

 「ええ。七海ちゃんを好きになってくれたのですもの。七海ちゃんが大好きな「蟲」のことも、きっと好きになってくれますわよ」

 七海の脳裏を、越前藩国の面々が駆け巡っていく。誰も彼もが、七海に優しくしてくれた。楽しくて優しくて面白くて。スピリチア・ダンスの仲間とはまた違った、魅力を持つ人たち。

 「うん」

 強く頷く。

「話してみるね。何を話そう。あれも話したいし、あ、そういえばKOU・KUROSAKIの蟲も有るって言ったらみんな驚くかなぁ」

 その様子を見て、微笑む桜子。七海ちゃんにこんな顔をさせるなんて、ちょっと妬けますわね、などと思うのだった。

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 自由にしてよいとのことでしたので、七海が発表で悩んでたであろう光景を書いてみました。なお、蟲については、かなり創作が入っていますので、この文章を鵜呑みに為さらないで下さい。すこしでも、刀岐乃さんが楽しんで頂ければ、幸いです。

 それでは。



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最終更新:2007年11月21日 23:55