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(この物語はフィクションです。実際のPL・PC・藩国・小笠原などとは一切関係ありませんのでご了承ください)





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“アスタシオンさん、意外と可愛かったですね”
“そですねー。不良少年みたいだった!”
“それわかる気がします!子供っぽいとこがいいですよね!”
“学園化とか、いいかも”
“わー、面白そう!”
“ふ、ふふ。ふふふふふ……”


小笠原帰り、花陵と星月の会話


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『アスタシオンが学校に行くようです』



ここはとある小笠原のとある分校、とある教室。「詩歌組」と書かれたクラスである。
まだ始業前なのか、学生達はめいめいにおしゃべりに興じている。
中には馬やらネズミやらもいる気がするが、宇宙人や未来人、超能力者がいる藩国もある。たいした問題ではないのであろう。

「よーしお前ら席につけー、出席をとるぞー」

そういって教室の扉を開けたのは、鋭い目つきに無精髭。トレードマークのイエロージャンバーの上から白衣を羽織った中年男、フランクヤガミであった。
犯罪者だったり銃ぶっ放したりで、教師と呼ぶにはいささか問題点がありすぎる人物ではあるが、まぁフィクションだし許されるだろう。

「さて。今日は出席をとる前に言っておくことがある。よろこべお前ら、転校生だ」

それを聞いたとたん、盛り上がり始める生徒達。
特に男子生徒の盛り上がり方はハンパではなかった。
立ち上がって叫び出す者、神に感謝する者、机から愛用のカメラを取り出す者等々、反応は様々である。
モヒカン頭の男子が代表してやたら嬉しそうに質問する。

「はい!はーい!先生、転校生って女の子ですよね!?」
「はっは。あいにく男だ。残念だったな」

そうして一気にテンションをダウンさせる男性陣。
しっぽもしおしおな勢いだったが、それらを華麗にスルーしてフランクは話を進める。

「おーい。入ってこい」

廊下に向かって声をかける。だが返事はおろか、人が入ってくる気配すらない。
「……聞こえてないのか?入ってこいって」
もう一度、今度はもう少し大きい声で呼びかける。しかし、相変わらず転校生が入ってくる様子はない。
ため息ひとつ、無造作に片腕を扉へ向けて突き出すフランク。
瞬きの間に腕がグロテスクな造形をした物体へと置き換わる。
生徒達がそれを「聖銃」だと認識するよりもはやく引き金を引く。
教室の扉が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
もちろん転校生もまた吹き飛ばされているのだろう、と思いきや。

「殺す気か貴様!!」

そこには膝をつき、今の攻撃をどうにかやりすごしたアスタシオンがいた。どうやら転校生とは彼のことらしい。
弱っているとはいえ、それでも根源力10万以下くらいは殺せそうな視線でフランクを睨みつける。

「知るか。さっさと教室に入ってこないからだ、バカが」

それでもなお相手を見下すフランク。随分と人の悪い笑みを浮かべている。どうでもいいが、ヤガミとは思えない邪悪さである。

ゆらりと立ち上がったアスタシオン。ギリ、と歯を噛み締める。
ピンと張り詰めた糸のような雰囲気。クラスの生徒達の頭に嵐の前の静けさという言葉がよぎった。
そうしてふっ、と体中の力を抜くように倒れ込み――――
教室へ、正確にはフランクに向かって突進していった。
その手に剣を実体化させて襲い掛かる。
笑って応戦するフランク。なんだかんだいって戦闘中が一番輝いて見えるのは、教師としてはまずい気がしないでもない。
斬撃を聖銃で受ける。受け流してアスタシオンがたたらを踏んだ一瞬の隙をつき、窓から外へ脱出。
飛び散るガラス。誰かの悲鳴が響き渡った。

吹き飛ぶ教室。半壊する校舎。もうしっちゃかめっちゃかである。

「の、典子さん、生きてるー?」
「あー、はい、なんとか」

戦闘のあおりを受けて教室にいる連中のほとんどがグロッキーだったが、どうにか無事だった花陵と星月。
寄り添うようにして窓際へ向かうと、遠ざかっていく二人の男が目に入った。
悲しげな瞳で見つめる花陵。

「二人を止めなきゃ!」

弾けるように走り出す。星月もあわてて追いかける。
校舎の外で繰り広げられている戦いは、更に激しさを増していた。


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そこは、酷い有様だった。

幾度もの攻防ですっかり穴だらけになったグラウンドは、そこが長年続いた紛争地帯のど真ん中だと言われても信じられそうだ。
土煙がまい、視界が悪い中を二つの影が目まぐるしく動いている。
片方は剣の間合いまで詰めようと隙をうかがい、もう片方は寄らせまいと牽制の射撃を繰り返す。

アスタシオンとフランクであった。

戦いの最中、ついにフランクの放つ光弾のひとつがアスタシオンを捉える。
避けきれない。その一撃は心の臓へと正確に――――

爆発。土砂が巻き上がる。

油断なく銃口を向けるフランク。まだ戦いが終わっていないことを、彼は直感で感じ取っていた。
秋風が頬を撫ぜる。ずいぶんと冷たく感じるそれは、アスタシオンを包む煙のベールを払っていった。

「巌の盾か」

そこに現れたのは、巨大な円盾だった。
青白く輝くそれは空中で静止し、ただ無言で佇んでいる。
表面には幾何学的な紋様、精霊回路が刻まれている。
使い古された絶技だったが、こと聖銃から身を守るという点でいえば良い選択だ。
今の一撃を防いだことからもわかる通り、巌の盾はかなりの防御力を誇る。力任せに打ち貫くことも可能だったが、今の威力を抑えた連射モードでは無理だ。
動きを止め、腰を据えて渾身の一撃を見舞おうとしたその時、異変が起きた。

精霊が、大気が震えている。
周辺に存在していたリューンが一箇所に収束していく。
巌の盾の背後。姿は見えないものの、おそらくアスタシオンがいるであろう場所へと。

 異界にありて隔てられ 時において今はない
 だが遠くにありても風だけは今も故郷にある
 我が故郷の精霊達よ 故郷の風よ
 帝国を守れ 帝国の誇りを守れ
 偉大なる故郷の大地 緑の王の弟にして檜の我は嘆願す
 ここなるは故郷の土 ここもまた紫の帝国 永遠の落日の国
 我は大地と契約せり 一人の農夫
 地を耕し 万物の均衡を図りし一つの天秤
 古き盟約によりて 我は命の麦穂を刈りとるものなり
 生もて次に伝えたり!

他を威圧するように、力強く紡がれる祝詞。
だが朗々と歌われるその言葉には、どこか人を惹きつけるチカラがあった。


 完成せよ!! 双面の護り!!


二枚の盾が弧を描き、目にも留まらぬ速度でせまってくる。
いや、二枚だけではない。四枚、六枚、八枚。まだまだ増える。
これがアスタシオンの武楽器なのか、はたまた幻影なのか。
考えをめぐらす間にも攻撃はせまる。余裕はない。

射撃、射撃。間髪入れずに撃ち落とす。
縦横無尽に空を翔ける盾の群れを少しづづ削ってゆく。
あらゆる方向、角度から襲い来る盾を正確に打ち抜く。
前へ、後ろへ。上へ、下へ。死角へ入ろうとも関係ない。結局、盾がフランクへと届くことはなかった。だが。

最後の一枚を破壊し、フランクが微かに気を緩める。
銃口を下げようとしたところで『それ』にようやく気づき、目を見張る。
最後に破壊した盾の後ろに隠れ、接近を果たしていた敵の姿に。
上段にかまえて進撃してくるアスタシオン。迎え撃つフランク。
ついに決着かと思われたその時。


「だめーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


二人の間に、文字通り飛び込んできた花陵。
アスタシオン、急停止。どうにかぶつからずにすんだ。
こうして花陵が二人の戦いを邪魔したのは二度目だ。前はフランクの策略だったが、今回は本人の意思で、である。
アスタシオンの目つきが険しくなる。かなり怒っている様子。
一瞬ひるんだ花陵だったが、怖くなんかないと自分に言い聞かせ、腕を広げてフランクを守ろうとする。

「またお前か。なぜ奴をかばう。一度はお前を殺そうとした相手だぞ!」
「友達だもの!」

アスタシオンの問いに、間髪入れずにそう答えた。
挑むような目でアスタシオンを見上げている。

「友達がいじめられてたら、助けるの、当たり前だよ。私は、痛いのヤだもの。自分がいやなこと、人にしちゃダメでしょ?それに……」


感情が高ぶってきたのか目端に涙が浮かんでいたが、どうにかこらえた。
今にも泣きそうだったけれど、すべてを伝え終わるまで、涙を流すわけにはいかなかった。

「アスタシオンさんが傷つくのも、私は嫌だよ……!」

しぼり出すように、どうにか声を出す。
震えて、掠れて、小さい声だったが。
それでも確かに心は届いた。


息をのみ、目を見開くアスタシオン。
まっすぐな視線を受けるのが辛くなったのか、目をそらす。
こんな答えが返ってくるとは思っていなかったのだろう。その顔には強い苦悩が浮かんでいた。

「ケンカ、だめ、だって……ふぇぇぇぇん……!!」
「お、おい。なぜ泣く!?おい!」


とうとうこらえきれなくなって、泣き出した花陵。
アスタシオンがそれに気づいてなだめにかかる。
もはや勝負どころではなかった。
少し離れたところで二人を見ていたフランクが、何やら思いついたように言った。

「よし。もうすこし面白くしてやるか」

その時彼の浮かべていた笑顔を見た者がいれば、こう答えていただろう。
まさしくあれは、芝村の微笑だったと――――


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昼休み。花陵と星月は屋上でランチをとっていた。フランクとアスタシオンも一緒である。

花陵と星月は笑顔である。特に花陵の方は満面の笑みと言える。
「みんなでお昼ご飯」ということが、嬉しいのだろう。
フランクもまぁ、笑顔ではある。ただ、その笑みが人を落し入れた快感に酔うものであるという違いはあったのが。
反面、不機嫌そうにあぐらをかいているのがアスタシオンである。
三人とは少し距離をとっており、背中を向けていることがその拒絶っぷりに拍車をかけている。

「なぜ俺が一緒に来なければならんのだ」
「黙れ負け犬。貴様は花陵に負けただろう。敗者が勝者に従うのは当然だ」

悠然とそう言い放つフランクをにらみつけながら、アスタシオンは先ほどのやりとりを思い出していた。

(花陵。アスタシオンがお前と昼飯を一緒にとりたいそうだ)
(誰がそんなことを言った。適当なことを)
(……うそ……?)
(な、泣くな!嘘じゃない!嘘じゃないから!)
(ほんと……?)

思い出しても腹が立つ。
あの眼鏡の聖銃使いとはいつか決着を、などとアスタシオンが物騒なことを考えていると花陵が近寄ってきた。

「はい!おいしいよー」

そう言って差し出されたのは、サンドイッチ。
病院で見たものと同じで、ベーコン、レタス、トマトを組み合わせたBLTサンドだ。
マヨネーズの香りが食欲をそそる。
アスタシオン、腹が減っていないわけではなかったが

「いらん。地べたすりと馴れ合うつもりはない」

ぷい、とそっぽを向く。
誇り高き緑の戦士が、そう簡単にほどこしをう受けるわけにはいかなかった。

「やっぱり……う、ふえぇっ」

再び涙ぐむ花陵。

「だから、泣くな!食べればいいんだろう、食べれば!」

引ったくるようにしてサンドイッチを一気に頬張る。
世の男達がみな女の涙に屈するように、アスタシオンもまた例外ではなかった。
ちょっと心配そうに、花陵がたずねる。

「おいしい?」
「む……まぁまぁだ」

ぶっきらぼうにそう言ったものの、これがどうしてなかなか美味かった。
料理のことはよくわからなかったが、どこか懐かしく、そして優しい気持ちにさせる味だった。もうひとつくらい、食べやってもいいような気がする。

「他にはもうないのか」
「! ううん、まだ、いーっぱいあるよ!」

そう言ってバスケットの中身を探る。


たとえるのなら、ヒマワリのような。
そんな暖かな笑顔が、花陵の顔には浮かんでいた。





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