竜乃麻衣@FEG様からのご依頼品



夏の日差しも眩しい、小笠原の教室。
「岩手さんこんにちは」
竜乃麻衣が明るく挨拶をしたところで、早速事件は起こった。
「良くお会いしますね」
そう言って亀助に微笑んだ岩手だったが…

――ドカッ
盛大な音をたてて床に倒れた。
岩手の背後から、無表情…いや、冷ややかな目をした小助の姿が…。
「うーん、相変わらずのいじめっこぶり。流石ですわ、滋賀さん」
「わーっ!滋賀君!岩手さんに何を!?」
ほう、と感心する竜乃の横で、慌てる亀助。
「って、見惚れてる場合じゃないですね。岩手さーん、大丈夫ですか?」
感心している場合じゃなかった、と岩手を心配する竜乃だったが、岩手は何だか妙に嬉しそうだ。
「誰と話をしている!」
強く怒鳴る小助だったが、その台詞はどうも拗ねているようにも聞こえてしまうのである。
「…そういうことですか」
そう呟いて微笑む岩手の表情は、しょうがないなあ、という感じで小助に対する愛情が伺えるような気がする。勘が良い竜乃はやりとりを見て、なるほどねー、とまた感心してしまった。
面白くないのは小助である。嫉妬などでは無い、断じて違うのである。誰が何と言おうと違うのであった。
「滋賀君!命を助けてもらったお礼ぐらい、言わせてくれよ!」
「滋賀さーん、今日は岩手さんお借りしますねー」
また怒り出した小助に亀助はそう言って間に入り、竜乃は気を利かせて岩手の手を引いてさっと2人を引き離す。
「誰だお前?」
「…海で滋賀君と殴り合いした、よけ藩国の亀助だよ!」
憮然とした表情で、亀助の前で腕組みをする小助。さして背が高いわけでも無いのだが、キチクオーラのせいか見下すような視線を感じる。威圧感。胃が重たい…と思いながら、負けてなるものかと亀助は歯を食いしばってキッと小助を見た。

ちょっと離れた所で、岩手は額に手を当てた。頭痛。
「とりあえず冷やしましょうか?」
「いえ。私はなんというか、別の意味で頭が痛いだけです」
気を使ってお絞りを差し出した竜乃だったが、岩手はやんわりと首を振って困ったように微笑む。
そう言われて、竜乃はチラリと2人の方を伺った。

「だいたい、滋賀君に殺される所だったんだよ」
「俺が誰を殺しても俺の自由だ」
何故か威張って言う小助。殺される方はたまりませんけどね!


2人の様子を見守りながら、こちらは観戦モードである。
「彼は覚えていますよ」
「ああ、いじめてるだけかー」
いわゆる実況席のような感想を述べる岩手に、うんうん、と頷く竜乃だった。

「運動会でも一緒に居たのに!俺を押し倒したの、忘れたか!!」
おおっと、聞きましたか奥様、押し倒したですって!不潔!もっと聞きたいです。

「FEGの竜乃だよ!でも、あんまり覚えてなくていいから」
ちょっと離れた所から、竜乃が控えめに言った。ほんとにあんまり覚えなくていいからね!そんな感じで。
「えーと彼はですね」
解説席の岩手が、机の上で両手を組んで、状況を分析します。
「覚えておくなら、岩手さんと亀助さんと、貴方を心配してる人だけ覚えてなさいな」
うんうん、もっともです。
正論を言う竜乃の横で、解説席の岩手が真面目な面持ちで言った。
「焼いているんだ」
的確な分析!さすがで…ああっ、蹴られています蹴られています!
椅子から落ちた所をさらに!容赦がありません!

実況席移動しまして、こちらからお伝えします!
「亀助さん…ここは、ツッコミどころかしら?」
「そうですか。恋人の岩手さんが他人と仲良くしているのに嫉妬しているんですね。」
「どうでしょう、亀助さん」そんな感じで尋ねる竜乃に、亀助は机の上で両手を組んで冷静に分析し…
ああっ、亀助も押し倒されたーっ!
蹴られています!これは痛そうだーっ!

「僕が死ぬ前にちょっとっ」

大 惨 事

大混乱の中、何とか岩手を引っ張り出す竜乃。割と命がけの救出劇であった。
「滋賀君、恋人に嫉妬するのは分かるけど、手加減しないと!」
亀助が正論で追撃ちをかけたーっ!
「亀助さーん!えーと、READY FIGHT!」
竜乃は男らしい亀助の背中に、ちょっと迷った後、あとは任せた☆とばかりに声をかける。
「って俺にも手加減してくれーーっ!」
亀助の悲鳴。どうやら盛大に火に油を注いでしまったようである。
小助の周りの気温が下がり始める。BGMはダース○ーダーのテーマ!
その姿はまさに鬼畜そのもの。キングオブキチク、いや、小助と書いてキチクかもしれないですね!
そんな雰囲気を醸し出しはじめ…

ガッシャーン!ドカッ!バキッ!
「む、やる気かー!私は今日は岩手さんに用事があったのよー!」
「志賀君!麻衣さんは関係ないだろ!」
竜乃も巻き込まれて大混乱のリング…もとい教室。
防空頭巾!防空頭巾はどこですか!?は!すみません、私としたことが取り乱しました。ナ○シカにでてくるペ○テのおじさんが、「走り出したら、もう誰にも止められないのだよ…」と、鎮痛な面持ちでそう言ったした時の気持ちが今、痛いほどよくわかります!




ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
ただ今画面が乱れております。
このまましばらくお待ちください。
(キラキラと光る海に浮かぶヨットの映像)





―20分後





ぜーはー

まさに満身創痍といった感じの3人。服は袖も取れ、岩手は目も腫らしているものの、理不尽な事に小助は何とも無い様子…。
「ぜいぜい…流石やるわね」
「ぜーはー、滋賀君の嫉妬は無名世界一番だよ…。」
ボロボロである。
「岩手さんも大変ですね…。」
心から同情した風に言う亀助に…
「穏便にいくわきゃないとは思ってたけど…ね…」
ガクッとうな垂れる竜乃。

第2ラウンドに突入しそうだったものの、岩手が顔を片手で抑えてため息をついた。
「やめましょう。というか、僕はなんでダメージをうけているんでしょう」
「弱いからだ」
小助即答。

「麻衣さん!しっかり!岩手さんに伝える事があるんでしょ!」
ガクッと頭を垂れてしまった竜乃を必死に揺する亀助。
「千葉奈穂ちゃんへの相談なんて、期待してた私がバカだったというか…」
竜乃がそう呟いた途端、2人の雰囲気が変わった。
「奈穂。ですか」
岩手の横で、目を細める小助。
「おききしましょう」
よれよれだった服を直して居住まいを正す。奈穂効果恐るべし!
「ええ、ウチのバカが、見事に奈穂さんを怯えさせてしまったようで」
岩手に友人と千葉奈穂との関係を相談する竜乃。
「今年聞いた冗談では、一番面白い」
感想を述べる小助。……亀助を蹴りながら。
「なんで俺を蹴る!この鬼畜!」
防御の体制をとる亀助。ファイト!
「奈穂さんが、おびえるというのはないですね」
冷静に頷く岩手。神妙な様子で相談している横では、 小助が亀助を蹴って楽しんでいた。
…しかも、嬉しそうに。鬼畜です、先生!
「俺も怒った方がいいのかな?滋賀小助に…。」
ボロボロになりながら何かを悟ったように呟く亀助。
小助は飽きたらしく、ようやく蹴るのを止めて椅子に腰かけた。
「…ボコボコ蹴っといて、やっと会話か…この鬼畜男…。」
「話さなくてもいいんだぞ」

シーン…

「単刀直入に言う。俺はお前の鬼畜さに憬れている。どうしたら弟子にするか、教えてくれ!」
男らしくジャンピング土下座せんばかりに言う亀助。
あ、蹴られた。
「死ね、変態」
「いってぇ!あんだけ蹴っといてまだ蹴るか!!鬼畜に変態を批判する権利は無い!弟子入り志願の何処が変態だ!」
おっと、また蹴られています!これは痛そうだ!しかし亀助の丈夫な事。まだ言い返しています。がんばれー!
…は、つい熱くなってしまいました。それにしても何だか“えすえむ”みたいでちょっとドキドキしますね。
もちろん冗談ですよ!
小助はそんな亀助にニヤリと酷薄そうに笑うと、更に蹴りを繰り出した。
「避けてみろ」
「命懸けで避ける!!」
懸命に小助の蹴りをよける亀助だったが、相手は本物の鬼畜。3分もして息があがってきてしまう。
「まだまだ!命懸けだ!まだ避ける!」
岩手はため息をつくと、小助を後ろからとめた。相談事が終わったらしい。
「あちこち紫色じゃないですか。大丈夫ですか。亀助さん」
岩手が気遣う声をかけた時、何かがプチンと切れる音が…。
「あとで涼華さんに治してもらいましょうね。…あ」
竜乃がそれに気づいて、恐る恐る滋賀の方を伺うと、滋賀がワナワナと怒りに体を震わせていた。
「だからなんでそいつの心配ばっかり!」


こうして第二ラウンドの幕が切って落とされたのだった。


完。




おまけ

トラブチタマ仲良し猫士3匹

ここは鍋の国の猫士寄宿舎。
トラ、ブチ、タマの猫士3匹は、めいめいがお気に入りの方法で寛いでおりました。
噂好きのトラはメル友と情報交換に余念がなく、ベッドに寝転がりながら、あすこのお店の何々が美味しいらしいニャーなどとメールをし、ブチは趣味で集めた瓶の蓋を一個一個丁寧に磨いてピカピカにしていました。タマはというと、お気に入りの毛布に海苔巻きみたいに丸まってぬくぬくとしています。
「ブチー、キチクってどういう意味ねう?」
不意にタマが毛布に丸まったまま、ころんと寝返りをうってブチに尋ねますと、ブチは瓶の蓋を磨く手をとめてけげんそうにタマを見ました。
「鬼畜っていうのは、人間的な優しさが無いとかそういう意味ネウ。そんな言葉どこで覚えたネウ?」
「さっきトラが言ってたねう。さすが滋賀小助、キングオブキチクにゃー…て呟いてたねう」
「ニャ!?」
その会話にトラはにわかに焦ってぴょん、と飛び起きました。
「トラ、何のことネウ?」
「ねうー?」
ブチとタマがじー、とトラを見つめますと、トラはだらだらと冷や汗をかきながらニャハハ、と笑って誤魔化しまします。
「な、何でもないニャー…というか今回は過激なのでコメントは差し控えるニャー。ニャハハ…」
何だかいつもの噂話を嬉しそうに話すトラとは違います。
「ネウ?」
ブチとタマは頭にハテナマークを浮かべてお互い顔を見合わせたのでした。

おしまい




作品への一言コメント

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  • あの一時間はこんなに濃いドラマだったんだ、と、他人事のようにお腹抱えて笑ってしまいました。ありがとうございました! -- 竜乃麻衣@FEG (2008-12-02 18:47:21)
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引渡し日:2008/12/01


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最終更新:2008年12月02日 18:47