瀬戸口まつり@ヲチ藩国様からのご依頼品
「タイトル:乙女心~アダルト風味~」
その日、まつりはそわそわしていた。
久しぶりに会う、いや前に会ったときは二人きりじゃなかったから。
二人きりで会うのが久しぶりだから、今日はあの人に甘えるの、そう決めていた。
部屋の壁には淡く綺麗なピンク色のワンピースがかかっている。
ドレッサーの前に座り、逸る心臓を落ち着かせようとしているのだが、時間が経つにつれて心臓が早鐘を打つ。
「は、もうこんな時間!!?」
心を静めるはずが、緊張により殊更にドクリと脈打つ。
@@な状態で、ドレッサー前で固まっていたのだが、ふと目の端に捕らえた時計が、待ち合わせまで2時間切ったことを告げているのに気付くまつり。
力なく立つと壁に掛けられていたおにゅーのワンピースをハンガーから取ると、静かに袖を通した。
そのワンピースは友人の見立てだった。
淡く綺麗な珊瑚色のワンピースは少し胸元が開いており、その胸元とスカートの裾にはレースがあしらわれていた。
身体の形が強調されるようにウエスト部分は大きく幅のある鈍色のリボン。首にもそれと同じ色のリボンチョーカーが合わせてあった。
夏の園へ行きたいと考えていたので、袖は1分丈の短いものにした。
このワンピースを手にした際、まつりは気恥ずかしくて試着はしたが、鏡をまともに見ていなかった。
そしてリボンを調え、改めてしっかり鏡を見たまつりは赤面のまま、硬直してしまった。
(ああああああぁぁぁぁーー)
うきゃーーっと赤面し、鏡の前を右往左往する。
(どどどどど、ど、どうしよう!これ、なんか…)
ひとしきりアワアワしたまつりは、再び鏡の前に立ってしげしげとその状態を見る。
思っていたより、胸が開いていて、びっくりしてしまった。
形の良い胸元にはレースと首から綺麗に流れているリボンがさらにまつりの色白な肌を際立たせ、胸のラインを強調させていた。
きゅっと綺麗にくびれた腰に巻きつけられたリボンは、そのくびれたラインを、そしてタイトスカートのため、腰から流れるラインもまた、綺麗に強調されてしまっていたのだ。
裾は少し短めだったが、絶妙な丈はまつりの細い足を綺麗の見せる。
(な、なんといいますか…)
あうあう、と一瞬思ったまつりだったが、このワンピース自体はとても気に入っていた。
色も形も、友人から勧められた時から気に入っていたまつりは、ぺちりと両の頬を一回叩くと化粧を開始した。
時計は、待ち合わせ時間へのカウントダウンを始めていた。
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待ち合わせ場所に現れたまつりに、高之は心なしか驚いていた。
自分が覚えているまつりの印象と、あまりにも違いすぎたのだ。
(いや、似合ってはいるが…)
どちらかと言えばお堅い印象が、まだ少し高之の中にはあった。
しかし、今日のまつりはというと、女性らしさが際立ち、とても綺麗だった。
ワンピースに合わせた色のリップグロスは、みずみずしく唇を潤わして見せる。
高之はその唇から目が外せず、思わずキスしたい衝動を、どうにか抑えた。
すらりと伸びる手足。肌の色白さが綺麗に映えているのが、また高之の目を奪う。
黙りこみ、少し目を逸らす高之の様子に、まつりは不安を覚える。
(ど、どうしよう…似合わなかった!?)
あああ、と@@しだすまつりを見た高之は、彼女の心を察知すると、あまりいじめるのはやめておこう、と思いながらまつりをエスコートした。
目的地まで彼女の案内を受けながら。
そこは夏の園の一角。
海辺に面したコテージだった。
日々の喧騒から離れ、穏やかに、そして甘えてすごしたかった。
そんなまつりの思いを感じ取ったのか、コテージに着き一段落着くと木陰にチェアを出し、そこで寛ぐとまつりを呼び、その腕に抱きしめた。
こうしたかった、そう思いながら高之に強く抱きつくまつり。
チェアーからは小さく軋む音が漏れる。
抱きしめ合い、甘えてみたり、この先のことを話し合ったり。
そうして、まつりが望んだ甘やかな時間が流れていく。
高之は、先ほど我慢していたキスを、優しくまつりの唇の落とした。
まつりはくすぐったそうに、そしてとても幸せそうに、そのキスを甘受した。
ずっと、こんな穏やかな時間が流れたらいいのに…
まつりはいつも思う。
こうやって大切な人が側にいて。
抱きしめて体温を感じて。
この綺麗な髪を触って。
キスをして。
大好きな時間をもっとずっと過ごしたい。
この人と…
そうして二人、抱き合ったまま話しているうちに、高之は「泳いでくる」と言いながら、木陰の下にまつりを残したまま、コテージから20mほど先にあるプライベートビーチへと泳ぎにいってしまった。
上着を脱ぎ、ジーパン姿で。
まつりは高之の体温が残るチェアーに座り直すと、海で泳ぐ高之を見詰めていた。
ちょっと寂しそうな表情を浮かべる。
(ちぇ、水着持ってくればよかったな)
そしたら、一緒に泳げるのに。
そしたら海の中でも抱きしめあえるのに。
そしたら…
濡れた肌。気持ちのいい海水の感触。
ぴとりと、体を寄せ合い抱きしめあうことで水温で少し下がった体温が、ほんのり温まる。
濡れた唇にキスをすると、きっとしょっぱくて二人に笑みがこぼれる。
背中に回る彼の手の平がゆっくり私の背中をさすり………
「…おい?」
「ぇ…?」
「顔、真っ赤だ。日差しに当たり過ぎたか?」
まつりが顔を上げると、そこに濡れた髪を掻き揚げ、海水を滴らせた孝之がいた。
そんな高之がいきなり目の前にやってきたものだから、まつりの心臓は飛び跳ねた。
「ぃ…ゃ、あの…だ、大丈夫…」
「そうか?」
「そ、それより。濡れた身体をふかなきゃ…」
先ほどの自分の想像が高之にバレてやいないか、と思えば思うほど高之と目を合わせれないまつりは、慌ててチェアーから立ち上がり、コテージへと向かおうと高之に背を向けた。
その瞬間。
まつりは後ろから、抱きしめられた。
「た…高之、さん…?」
「やっぱり、水着、用意しておけばよかったな…」
「お、泳ぎにくかった?」
「いや、お前の」
そうして耳元でそっと囁いた。
「やっぱり、見てみたかった。水着姿」
「こここ…今度…」
あの綺麗な声で、耳元で囁かれて、まつりの心拍数は一気に跳ね上がった。
声音優しく、まつりの心を満たす。
海で濡れた身体そのままに、まつりに抱きついてしまったため、まつりのワンピースが徐々に高之を濡らした海水を吸収し、濡れていく。
服が濡れる感触より、背中から伝わる高之の鼓動の方が気になって仕方なかった。
触れてきたその体温は、やはり冷たい。
「高之さん…体、冷えて…」
「こうしていれば温かい」
「高之さん…」
それ以上、何も言わず、優しく強く、宝物を守るようにまつりを抱きしめる高之。
まつりは彼の名前を呟き、身体はそのままに首だけ高之の方へ向けると、二人は一瞬見詰めあった後、静かにキスを交わした。
少し長いキスの後。唇を離したまつりは、くすりと笑った。
「?」
「ごめんなさい、思ったとおりしょっぱかったから」
その、まつりの告白に二人はクスクス笑っていた。
そして二人はどれだけそうしていただろうか。
飽くことなく、キスを数度した後、ようやく二人は身体を離した。
「悪い、濡らしちまったな」
「ううん、気にしないで」
気付くと、目の前の海に夕焼けが映り始めたいて。
地平線に輝くオレンジの宝石を二人で眺める。
なんて幸せだろう、とそうっと高之の腕に、手が触れそこで高之の身体がかなり冷えていることに、まつりは気付いた。
「コテージへ、戻りましょう」
「ああ。腹減った」
「今日はね…」
高之はまつりの肩を抱き、そうして二人は寄り添うと、コテージへと戻っていった。
夕食のメニューを話しながら。
【終わり】
作品への一言コメント
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- なんだかすごく、すごく…なSSをありがとうございました(*ノノ) 元のログよりもさらに糖度が上がってまし…た…… =▷○_ -- 瀬戸口まつり@ヲチ藩国 (2008-09-28 20:08:22)
引渡し日:
最終更新:2008年09月28日 20:08