うにょ@海法よけ藩国様からのご依頼品



1.『グルグル亜細亜と固まるみらの』


 ある日、幾人かのひとが、奇跡を起こそうとした。

 そのために必死になって情報を集めた。

 そのために必死になって戦った。


 どんなものでもそうだと思うが、「結果」という「現在」が存在する時には同時に「過程」という「過去」が存在する。

 今回のポイントとなる話しは先程述べた事件そのものではなく、その「過程」で集められた「必死になって集めた情報」の「一部」に関するものである。この情報に関する話は当時、その発覚と共に多くの情報提供者たちに驚愕を与えた。


 具体的にいうと『のろけ話』をその対象に見せられるという悲惨?なものであった(笑)



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 その日、後藤亜細亜はその情報であるところの『のろけ話』を手にしていた・・・。目を通した彼女の反応は、以下のようなものであった。



「ん、えっ、――――えっ!?―――――えっと、えっ!?」


 その混乱ぶりは、ぱちぱちとしきりに眼を見開きながら、降伏する様に両手をバンザイのポーズ、何を見るわけでもないのに慌てて左右に首を振る、というハタから見れば、とても可愛らしい混乱振りであったが、無論のこと、当の本人にとっては衝撃的な出来事であったらしい。
 以上のことからもわかるとおり、この時点で後藤亜細亜の思考回路はでショート寸前であった。そのため彼女は、時計の針が進んで行くのにも気づかず、完全にその活動を停止していた。 


 そんな状態であったものだから、たとえばこの瞬間に「ガチャっ」とドアの開く音が聞こえて、「亜細亜ー、いるー?」なーんて、みらのに声をかけられたとしても、気づくはずもなく・・・。

―――そして、ドアを開けたみらのは、まず友達の異様な姿勢と動きに目を向けて、固まった。



2.『みらの、ぐるぐるしている亜細亜を前に・・・。』


 その日、みらのが見かけた時の亜細亜は、「すこし」というより、かなり変だった。
 わかりやすくアイドレス的にいうと・・・、ぐるぐるしている状態である。
 会いに来た自分に気づかないどころか、眼に渦巻きを浮かべて何もない空間をぼんやりと見ている。その様子は労わる心が一割でもあれば、一言声を掛けずにはいられない、という程に見ていられなかった。
 そして、みらのはそんな亜細亜に声を掛けずにその場を去ることが出来るほど、彼女に対しての友情が無いわけではない。


「ちょっと・・・、亜細亜。どうしたの?」

 近寄り、そっと手を伸ばし、亜細亜の髪がかかる肩に手を伸ばし、そして触れた刹那・・・、

「ひぇっ!!?」
完全に思考の外になっていたのか、飛び上がる亜細亜。

「うわっ!!?」
予想外のリアクションに飛びのく、みらの。


 そして、訪れる―――――静寂。

 お互い、飛び退いたポーズで固まる。
 気まずい雰囲気の中、急に恥ずかしくなって、慌てて互いに姿勢を正す。

「あはは・・・ごめんね、みらのちゃん」
「いや、別にいいけど・・・。亜細亜。 一体、何があったの?」
「へ・・・、何がって?」
「いや、どう見ても変だったじゃない、さっき! 普段からああだなんて言わせないよ?」

 そこまでいわれて、亜細亜はようやくさっきまでの自分がどういう状態だったのかを知る。
 確かに気づくと、空の陽はその位置を傾けている。ふと目を遣れば時計の針は、眼を離した隙に駆け足で進んでいたようだ。



 そして、また――――


「――――あっ・・・そうだっ!・・・みらのちゃん、どうしよう~?」
「だーかーらー、なにがあったの?」
「あ、あのね。実は・・・、」

 ごくり、と喉が鳴る音。
 混乱の余韻の残る顔をした亜細亜からとつとつと語られたその理由に、





 ―――――――みらのは、正直ちょっと困った・・・。




3.亜細亜、混乱しつつも、みらのに相談する


 ようやく、混乱振りと同様にたどたどしい亜細亜の言動から、その成り行きを知ったみらのは頭の中で、情報を整理してみる。


 つまり、うにょという友人(亜細亜談)からの『のろけ話』が自分に公開され、あまりの事に気が動転していた。ということらしい。
『ん、これって自慢か・・・?』
 内容を理解したみらのは、ちょっとばかり「いらっ」ときた。
 まっ亜細亜にはそんな気はないだろうけどね、と軽く息を吐き気を落ち着けるが、ついイジワルを口にする。

「えっと、要するにつまり、亜細亜はもてる・・・っていう自慢?」


 一瞬の間。その間、ぽかんとしていた亜細亜は顔を真っ赤にしする。


「ちっ、ちがうよー! もう、みらのちゃんっ!!」
「ははは。な~んだ、いつもより元気なくらいじゃない?」

 みらのの冗談(からかい?)に慌てる亜細亜。だが、そのおかげで思考がずれ、落ちつきだしたようだ。
 落ち着きを取り戻した亜細亜が、一つ息ついていると、にやにやしたみらのから声がかかる。


「で、そのうにょさんってどんな人? 仲良いんだ~?」




――――落ち着きだした思考が、混乱の原因の一つが亜細亜の頭に閃く。


「そうだっ!!じゃない!・・・・違うのっ! うにょさんは女の人なのっ!!」


――――また、みらのが固まる。

みらのは、とりあえず、「うにょ」という名前を脳裏に納めて、一番、楽な可能性に思考をチェンジする。

「――――ど、どうしよう? 私なんかしたのかなぁ?」
 すがるようにみらのを見る亜細亜。


 みらのは少し考えて、
「えーと、ははは。これはジョークだよー。からかってるんだよ。」
と話した。


「―――――――――、」


 また、ぽかんとしている亜細亜が聞き返す。
「・・・じょーく?」





4.『信じることが出来るもの』



「そう、ジョーク。亜細亜と会ってる時のうにょさんは、嫌な人だった?」


――――うにょを思い出して、・・・亜細亜は首を横に振る。


「もし、そう思わなかったのなら、それはその時の亜細亜の印象を信じれば良いんじゃない?」


―――――――うにょを思い出して、・・・亜細亜は首を縦に振る。


「私は、その人知らないから何もいえないけど、そんなに深刻になることないよ。」


―――――――――うにょを思い出して、・・・亜細亜は、首をもう一度縦に振る。



正直なことを言うと、頭はまだグルグルと頼りない。


でも、みらのの言う通りで友達を信じるくらいの事は出来た。


―――――冷たい心じゃないんだ。冷たい心じゃないんだ。


「まっアドバイスとしては気にしないで、いつも道理にってことね。」

「うん、とりあえず、落ち着いた。ありがとう。みらのちゃんっ!」


 ようやく、いつもの調子になった亜細亜を見て、みらのは気づかれない様に安堵のため息をついた。



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 その日は、というかここしばらく、また世間は、ずいぶんと急がしく動いているようだ。そんな中でも人は余暇があれば、遊ぶ。根を詰め過ぎるのは良くないし、詰めてなどいられないからだ。

 友人から誘われたのなら、外せない用事でもなければ答えるのが友達だと思う。


 両手を上げてバンザイのポーズ。

 指先、腕、肩、背中、腰、太腿、そして爪先までぐ~っと伸びをした。


 そうして、亜細亜は気を取り直して、うにょとの待ち合わせ場所へ向かった―――。





ログへ続いて。





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引渡し日:2008/


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最終更新:2008年09月21日 17:16