鷺坂祐介@星鋼京さんからのご依頼品


 青空の下の微笑み


~呪われろ
  決してお前達が結ばれぬように竜の呪いをかける~


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 彼の様子がおかしいとかすみが感じるようになったのはつい1ヶ月前だった。
 いきなり無断で学校を休み始めたのだ。
 あれから1月。ろくに会話をしていない。
 あれから自分も変になったのだろうか? 自分も彼とあまり接点を持たなくなったように思える。
 そんな時だった。告白をされたのは。


「ずっと前から好きでした。付き合って下さい」
 面食らった。自分に「好き」と言ってきたのは、彼を含めて2人目だった。
 相手はバスケットボール部の先輩。爽やか好青年って感じだ。
 付き合うには、人の手前でもいい相手だろう。
 でも、何かが違う。
 かすみは首を傾げた。
 何でこんなに心の中がもやもやするのだろう。
 告白を受けてはいけない気がする。でも何でだろう?
 私が誰と付き合おうと自由なはず。でも違う。何かが違う。

 かすみは呪いを受けていた。好きな相手とは決して結ばれない貝神様の呪い。
 でもかすみ自身はその事に全く気付いていなかった。
 しかし、呪いはかけられていても、彼女の心を心底から縛る事はできなかった。

 バスケ部の先輩としゃべっている所に、彼が現れた。
「失礼しますー。竹刀、取らせてください。」
「どうぞ。いこう、かすみ」
「あ、うん」
 彼を見た瞬間。
 かすみはぐるぐるしていた。
 何かが違う。何かが違う。
「あ。かすみ、話があるんだけど、後でいい?」
 彼が話しかけてきた。
 ちらりと彼の顔を見た。
 心配そうな、真剣そうな顔。
 かすみはどうすればいいか分からず、とりあえず笑った。
 人は訳が分からない時、とりあえず笑う。
「部活あるから、またこんど」
「ちょっと大事な話なんだけどさ。」
 彼は真剣な顔でかすみと向き合う。
「今日、お願いしたいんだけど。やっぱ無理?」
 先輩が「かすみ、早く」とせかしている。
 かすみは曖昧に笑った後、先輩の後をついていった。
 取り残された彼の、悲しそうな顔は見たくなかった。
 何でこうなったんだろう?
 かすみはちくりと胸に何かが刺さったような、そんな感覚を受けていた。


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「昨日言ってた大事な話なんだけど、しばらく学校出れなくなるかもなんだ。だから、ここで書いておくね。
 かすみが好きです。付き合ってください。」

 彼からの手紙が届いた。
 彼はまた、学校に来なくなるらしい。
 何でだろう。何で胸が苦しいんだろう。
 かすみは首を傾げた。
 自分の気持ちが分からなかった。
 呪いは、彼女の心を鈍く重くしていた。

 その日も、かすみは遅刻しそうになって走っていた。
 走って走って走って。
「おーい! おはよう!!」
 気付けば彼も一緒に走っていた。
 かすみは振り返る。
「……おはよう」
「おはよう! 手紙はゴメン、かすみが好きな事は本当だった。」
 彼は続けた。
「でも、これからは目の前の風住(かすみ)を好きになろうと思う! だから。風住、付き合ってください。」
 かすみは目を見開いた。
 胸の中の霧が、一気に晴れ上がったような、そんな感覚を覚えた。
「……」
 彼の瞳をじっと見る。
 彼の瞳の中には、自分が映っていた。
「いいけど」
「ありがとう! ……遅刻、するよ? 競争、する?」
 彼は笑っていた。
 かすみ、改め風住はむー、となったが、まあいっかと考え直した。
 自然と笑みが浮かぶ。
 彼に手を伸ばした。
 彼は風住の手を取った。
 そのまま二人は手を取り合って走る。
「自分は伯牙じゃなくて、鷺坂祐介。よろしくね!」
 彼の……鷺坂祐介の顔には大きく笑みが浮かんでいた。
 風住も一緒に笑った。
 青空の下、二人の笑顔が輝いていた。


作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • 風住視点からの感情がすごく伝わってきて、呪いとはいえ相手の感情がどんな風になってたのか、色々考えさせられましたです。素敵なSSをありがとうございましたッ! -- 鷺坂祐介 (2008-07-20 23:10:16)
  • ご依頼ありがとうございました。風住さんは鷺坂さん好きなんだなあと思いながら書かせていただきました。これからもお幸せに。 -- 多岐川佑華@FEG (2008-07-20 23:28:55)
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引渡し日:2008/07/20


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最終更新:2008年07月20日 23:28