※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

  *  *  *

まず初めに、
今現在、明石市の時計はそろそろ12月12日の午前零時になろうとしている、
と言う事にしておこう。
これは分かりやすく状況を説明するためであって、時刻は正確であっても
日付は仮にそういう事にしておく、とだけ言っておく。

「水加工用ふりかけ」の水製品でコーティングされた体育館の中で、
見知った男も女もまとめて真っ裸で寝転がってるってどんだけフリーダムなんだかね。
これからの作業の関係上、
取り敢えず一人ずつ「ネムケスイトール」を撃ち込んで「グッスリまくら」で確実に熟睡させるのも
この人数になると一仕事だ。

取り敢えず、温水スプリンクラー全開状態のシャワーコーナーに「シナリオライター」で誘導。
本人にはシャワーコーナーに大の字に立ってもらって磨き上げるのは「世話やきロープ」に任せる。
こちらで用意したスノコの上に立たせ、バスタオルで拭き取るのも同じ様なものだ。
それが終わった面々は、一旦「ペタンコアイロン」で圧縮してから
「チッポケット二次元カメラ」で撮影する。

全員が写真になった所で、本格的な後片付けだ。
バーベキューセットやゴミ袋は「チッポケット二次元カメラ」でさっさと片付ける。
一旦「人よけジャイロ」無効化バッジを装着し「スモールライト」で小さくなって、
「スペースイーター」と「タイムホール」で接続されたとある入浴施設に移動する。

「スペースイーター」と「タイムホール」に色々細工を重ねた組み合わせによって、
体育館内のシャワーコーナーの排水は
とある大型入浴施設の閉店中の浴槽内に注ぎ込まれる事になっていた訳だが、
正直何が流れ込んだか不安もある。そのままにはしておけない。
無論、ここをポイントに稼動している「人よけジャイロ」も後で撤去する必要があるしな。

取り敢えず、給水用に別の浴槽に張っておいた水は全て排水する。
その上で、「みの虫式ねぶくろ」で一休みしている間に
「小人ばこ」の小人さん達に風呂掃除を済ませてもらった。

入浴施設と中継点、つまり、「スペースイーター」と「タイムホール」を使って
体育館と入浴施設を地理的時間的に部分接続していた廃店舗。
ついでに言えば、その廃店舗から体育館の機器に電波指令を送っていた
コンピューターつき制御装置も含めてそっちの方の後片付けも無事に済んだ訳だが、
問題はこの体育館ほぼ全体の床を覆っている水コーティングだな。

これは、「水加工用具ふりかけ」で鉄やスポンジに変えた水のブロックを組み合わせ、
隙間を塗り固めた水粘土を鉄やスポンジに変えて固定したものだ。

逆に言うと、「かるがるつりざお」と「つづきをヨロシク」によって
天井に浮遊させている防弾ガラスに取り付けた電動リール。
そのリールの糸の先に「かるがるつりざお」を取り付けて
「かるがるつりざお」の吸盤をコーティングに張り付けてやれば、
電動リールの巻き取りと共にコーティングが丸ごと浮き上がるって寸法だ。

後は、「ビッグライト」で俺の体ごと大きくなった「スッパリほうちょう」で
端っこの方から細切れにしていって「チッポケット二次元カメラ」で撮影していけば、
色々な種類の床の汚れ諸共片が付くって訳だ。

天井の方の後始末もな。
「かるがるつりざお」と「つづきをヨロシク」で浮遊させていた防弾ガラスや鉄板。
そいつを始末してから、それらの板と「スペースイーター」の超空間トンネルで連結していた、
吸排気用に外部に置いた鉄板や防弾ガラス、そういったものもまとめて片付けておく。

  *  *  *

物品の片付けが終わったら、いよいよ人間の方の辻褄合わせだ。
そのために、明石市から見たここ最近の俺の行動を大雑把に整理しておこう。

12月10日、学校から帰った俺は、
そのまま「地球セット」にこもって「地球セット」内で約一ヶ月間の無人島生活を送った。
何しろ「地球セット」は地球生命単位の観察道具なのだから、
年だろうが世紀だろうが外から見たら秒速の世界だ。

そっからぐるりと回って12月10日の放課後にタイムスリップして、
俺は下校途中のハルヒと朝比奈さんを捕まえて北高の教室で撮影会。
12月11日、俺と国木田とENOZの先輩達は朝から体育館で撮影会。
撮影会が終わってから俺は又タイムスリップをして、12月11日の午前一時に移動する。

そこから、ハルヒ、大小の朝比奈さんに古泉以下「機関」の皆さんにそのスポンサーご令嬢。
そして朝倉も眠ったまま連れ出して、
初夏にタイムスリップして湖畔に向かうバスに乗せる。
そのまま、湖畔のロッジで夕方まで過ごして再び一眠りさせての時間移動。

12月11日夕方に移動した面々は「メモリーディスク」で植え付けられた記憶に従い、
体育館で開催される打ち上げ焼肉パーティーに参加。
その片付けが終わってそろそろ12月12日になろうかと言うのが現状だ。

それじゃあどうするか、そろそろその一例を示すとしよう。
「石ころぼうし」を被り「どこでもドア」と「タイムベルト」を駆使して俺が移動した先は、
ハルヒの自宅の自室。12月11日午前1時15分。
そこで、俺は取り出した写真をベッドの上に乗せ、温水の霧吹きで二度吹きする。

今さらあら不思議、でもなんでもなく、
シャワーを浴びてバスタオルでくるまれる所まで「世話やきロープ」に任せ、「グッスリまくら」で熟睡して
「チッポケット二次元カメラ」で撮影されて「ペタンコアイロン」で圧縮されていたハルヒが
ベッドの上でうーんと不愉快そうに呻いて丸くなる。

豊かな黒髪に白い裸体をくるむ様にして丸くなっているのもなかなかの風情ではあるが、
やはりここは勿体ないので「シナリオライター」を使って思い切ってぐるりと仰向けの大の字になってもらう。
うん、平均以上にたっぷりとしていながら崩れようとしない白い膨らみにその頂きの可憐な蕾。
そして、黒々しっとりとした茂みの下に覗く楚々とした花園。
見ているだけでも電動式の繭玉などを用意してハルヒの声ハルヒの表情などを確かめたい所であるが、
その前にそんなハルヒの白い柔肌、そして全身にぷつぷつカタカタと異変が生ずる。

このまま朝まで過ごしたらいくら頑丈なハルヒでも無理のある季節である以上、
俺としても「シナリオライター」を使って元々12月10日深夜にハルヒ本人が着用した
ショーツとパジャマを着用してからベッドに入って就寝する様に誘導する。

それが終わってから「メモリーディスク」で記憶を吸い出し、
12月10日深夜にベッドに入って以降のハルヒの記憶一切を消去しておく。
他の面々も大方の所はこれでいい訳だが、問題になるのは国木田だ。

取り敢えず、12月11日夜、体育館に貼った「かべ紙スポーツジム」で食後の運動に勤しんでいた
肉体的には本体、精神的には分身である国木田を呼び戻し、
「入れかえロープ」で肉体と精神を一致させてここにこうして本体の方の国木田を連れて来た訳だが、
国木田の場合、約一ヶ月の無人島生活からここまでの記憶が大方残っている。

この量では、さすがに「メモリーディスク」の容量オーバーだ。
と言う訳で、12月11日午前一時十分の国木田の寝室に移動した俺は、
元通り12月10日に国木田が自ら着用した水色のパジャマ姿でベッドに入って就寝する様に誘導する、
と、ここまではハルヒ達と大方同じ手順になる。

そこから改めて一旦掛け布団を引っぺがし、暗証番号をコールして国木田の口から腕時計吐き出させる。
電池式で頑丈で過酷環境耐用を第一に選んだ腕時計だが、
「無生物さいみんメガフォン」によって
この腕時計は一億円の貨幣として流通可能である事を小一時間言い聞かせておいてから、
12月11日の午前一時頃、国木田をここから連れ出す直前に、
一日零時零分にセットして「人間貯金箱製造機」の電波を浴びせた国木田に呑み込ませたものだ。

その後で、「天才ヘルメット」と「技術手袋」で新たにダイヤルを接続した「ワスレンボー」を用意する。
ダイヤルを接続した、と、言っても、物理的に接続されているだけの飾りみたいなものだ、今の所はな。

仕上げに、「グレードアップえき」をふりかけ、
「無生物さいみんメガフォン」でこの外部ダイヤルが
正確に「ワスレンボー」を機能させるものであると小一時間言い聞かせる。
そして、外部ダイヤルをセットして国木田の頭を一撃する。
外部ダイヤルの目盛りには、吐き出された腕時計が刻んだここまでの大凡の経過時間を刻んでおいた。

それが終わると、「シナリオライター」で改めて就寝させてから、
「きょうじき」で国木田の寝ているベットでの上の時間進行を変化させて、
外部で一分が経過する間にベッドでは一時間が経過する様に設定する。
そして、五分待ってから「きょうじき」で時間進行を元に戻す。
いかに頭脳明晰な国木田でも、だからこそ時間と世界の行き来のごった煮を覚えたままでは大変だ。
だからと言って、ここまでの思い出を全て無かった事にする、と、言うのも余りにも虚しかろう。

12月11日午前1時に国木田を連れ出して以降の国木田の記憶は、
「メモリーディスク」に吸収して保管してある。
正確に言うと、一度吸い出してから記憶を吸収したディスクを「タイムコピー」でコピーして、
保管してあるのはコピー、オリジナルに吸引された記憶はそのまま元に戻してある。

「天才ヘルメット」と「技術手袋」と「無生物さいみんメガフォン」を使って
A、Bと名付けた二台の「メモリーディスク」のプレ-ヤーをケーブル接続して、
Aにセットした空の「メモリーディスク」にBにセットした国木田の記憶ディスクをダビングしていく。
AのディスクはそのままでBの方は一枚のディスクから一部分だけダビングする、と言う事を繰り返して、
Aのディスクが一枚の厳選オムニバス記憶ディスク状態になる様に編集ダビングする。

ここまでは前もってやっておいて、それで今はどうかと言うと、
国木田の頭の下に「ドリームプレーヤー」をセットする。

この「ドリームプレーヤー」は「メモリーディスク」のプレーヤーとケーブル接続されており、
「メモリーディスク」のプレーヤーが再生している記憶がそのまま夢として
「ドリームプレーヤー」の使用者に流れ込む。
と、言う風に外観上は「天才ヘルメット」と「技術手袋」、
機能面では「無生物さいみんメガフォン」による改造が施されている。

国木田を含めた家人は全員、「グッスリまくら」によって午前六時までは絶対目覚めない事になっている。
と、言う事で、俺は「タイムベルト」を使って午前五時五十分に移動して、
「ドリームプレーヤー」と「メモリーディスク」一式を回収しておく。

午前六時、ぱちっと目を開けてむくりと身を起こした国木田は、
ようやく鳴き始めた鳥の声を聞きながら目覚まし時計に手を伸ばす。
その後で、ガバッと身を起こしてまくり上げた掛け布団の中を覗き込む。

何とも姿勢の悪い腰の曲げ方でベッドを出てクロゼットを漁った国木田は、
そこから取り出したものを小脇に抱えて姿勢を正す事なく移動を開始する。
そして、洗面台とトイレを経て三十分近い経過の後に
クリーム色のパジャマ姿で自分の部屋に戻って来た国木田は、
目覚まし時計が常識的な時間でオンになっている事を確認してからうーんと呻いてベッドに潜り込んだ。

  *  *  *

「イッチニ、イッチニ、イッチニ」

無事に二度寝を済ませていつも通りの朝食を済ませた国木田は、
いつも通りに学校への歩みを開始する。今の所はな。

「あ、国木田くん」
「国木田くんおはよー」

通学路と言う事で国木田も、ついでに俺も見知った女子生徒がちらほらと国木田に声を掛け、
国木田も今の所はいつも通り愛想良く返しているが、そろそろ周囲の変化に気付き始めているらしい。

「なんだ国木田じゃない」
「おはよう涼宮さん」

相変わらずご挨拶な団長様とそつのない国木田だ。
いや、しかしだ、Tシャツブルマ姿で隙のないフォームの走りを見せながら、
一つ束ねた黒髪が流れるって言うのはたまらん、たまらんぞハルヒ。

「おはよう国木田くん」
「…おはよう…」
「おはよう朝倉さん長門さん」

「あ、おはよう国木田くん」
「おはよう国木田くん」
「やぁー、おはようにょろ国木田くん」
「おはようございます…」

いつも通りのお友達同伴で砂糖菓子の様な朝比奈さん(小)に大人のお菓子を思わせる朝比奈さん(大)、
当然、全員が目上に当たる以上、
国木田たるものほんのり頬を染めながらも礼儀正しく応じるのは当然だ。
だが、その後の顔の振りはちょっと落ち着かない感じだな。

そんな国木田のすぐ側では、我が校指定の体操服であるTシャツブルマ姿の朝比奈さん(小)が、
頭に白い鉢巻きを巻いてタッタッタッタッと足踏みの真っ最中。
この辺にいる同級生や後輩の女子一同も同じ格好なのだが、
朝比奈さん(大)に関しては、既定事項の支配者つまり俺からの指示により、
夏場の女子マラソンそのまんまのスタイルだ。

「あ、国木田くんじゃない」
「おっはよー」
「あ、お早うございます」
「お早う涼宮さん」

今度は、珍しくハルヒの方が先に丁重な出迎えをする。
榎本先輩もそれに応じて優しく声を掛け、後続の面々もそれに倣う。

「お早うございます」
「うふっ、お早う国木田くん」
「又遊びにいこーね国木田くん」
「何よモテモテじゃない国木田」

するりと国木田の背後についたENOZのお姉様達からの有り難いお誘いだ。
「メモリーディスク」で健全なものに書き換えてあるとは言え、
過去数度のカラオケ大会なんぞはなかなか楽しいものだったからな。
ハルヒに鼻を鳴らされながら、耳まで赤くなるのも男として当然のことだろう。

まあ、朝っぱらからSOS団とENOZの雑用係争奪戦なんてややこしいのもあれだから、
俺としては「石ころぼうし」と「四次元若葉マーク」と「かくれマント」と「フワフワオビ」を装着して
傍観者として同伴させてもらうまでだ。

そうこうしている間にも、この辺一帯では1年5組を中心に、
「流行性ネコシャクシビールス」に感染した北高の女子生徒が着々と増加を見せる。

彼女達の脳内には、我が校指定の体操服であるTシャツブルマ姿でジョギング通学すると言う
一大ムーブメントがビールス感染している訳だが、
目に見える特別な誘導もないたまたまの偶然の気紛れの集合体としてこの辺一帯に合流している。

その中には相当無理な時間と距離の通学路を選択した者もいる筈なのだが、
「あらかじめ日記」のチートっぷりはさすがなものだ。
さすがに時期が時期なので、その日記に勝手につけたお天気欄によると、
例年より高めの気温でシベリア寒気団が小休止しているらしい。
そんな、人混みになり始めたその先で、パッパーッとクラクションが鳴った。

「この先で凶暴な猪が徘徊しています。北高の生徒は直ちにこのバスに乗ってくださーい」

ジャージ姿の森さんにメガホン誘導されて、白い大群がわらわらとバスに吸い込まれる。
なんか青い一点が混入していたけどな。レモンイエローな朝比奈さん(大)もお綺麗です。

  *  *  *

只でさえ人口密度の決して低くはない車内だったが、
いくつもバス停を行かない内に運転手から満車コール以下北高までバス停ブッ千切り宣言が下された。

「あ、あの、涼宮さん?」
「何よぉ?」

声を掛けた国木田が思わずのけ反りそうになる。そうだよな、
ジロッと真ん前から上目遣いに睨み付けるハルヒの眼光直撃なんざ慣れてる奴はそういないからな。

「邪魔だってぇの?仕方ないでしょ混んでるんだから」
「う、うん、ごめん」

国木田が謝るが、国木田としてはむしろハルヒにそう言ってもらえる方が気が楽らしい。
簡単に言えば、ハルヒが真正面から国木田に抱き付く形で、
腕を抜く事も出来ず身動き出来ないと言うのが現状だ。
で、その国木田の背中を、いつの間にか真後ろに回った朝比奈さん(小)が支える様な形になっている。
と言うか、要は、国木田の背中に接する分厚い人間の壁の表面が朝比奈さん(小)って事で。

「ごめんなさい」
「ごめんねー」

そんな国木田の両サイドから、たまたま国木田の方を向いたまま固定された
榎本リーダーが軽やかに言い中西先輩がぺろっと舌を出してお詫びする。
さあ、出発進行だ。
バス停の停車はなくなっても、交差点に引っ掛かる事は当然起こり得る。

「抜けた、たっ」
「きゃっ、ごめんなさい国木田くん」
「い、いや」

ハルヒと入れ替わる形で、まさに入れ替わった場所にはまり込んで
ついでに国木田の脚と脚の間にもずぽっと左脚がはまり込んだ朝倉が上目遣いに優しげな声を掛け、
国木田は辛うじて返答するが国木田の意識は分散されているらしい。

同時にENOZの先輩達も榎本先輩中西先輩のいた場所に岡島先輩財前先輩が交代ではまり込み、
国木田の背後で国木田の後頭部を観賞する会のメンバーも朝比奈さんが大小交代。
要は無駄な抵抗の結果って奴で、このポジションチェンジは学校に着くまで何度となく繰り返される。
「あらかじめ日記」に記載された既定事項って奴だ。
そんな壮絶ラッシュバスもほとんどのバス停をすっ飛ばして北高近くで一旦停車した。

「急な事で予定が押しています。
ここで男子は一度バスを降りて、女子は着替えてからバスを下りてくださーい」

森さんの指示に従い、乗客唯一の男子生徒である国木田はもみくちゃにされながらバスを下りようとする。
俺が天井に張り付きながら一旦「四次元若葉マーク」を外し、
国木田の頭に「石ころぼうし」を被せてから森さんに携帯電話のコールで合図をすると、
俺は耳栓を填め、国木田は一旦「瞬間固定カメラ」で撮影する。

「はーい、男子の降車は完了しました。
運転席からの視覚もカットしましたので着替えを始めてくださーい」

「ウルトラミキサー」で「うそつ機」と合成されたメガフォンで森さんが指示すると、
車内に満載で詰め込まれた女子生徒達と朝比奈さん(大)が着替えを開始し、
俺は国木田を「瞬間固定カメラ」で撮影してからメガフォンを通常のものとすり替える。

俺と国木田が装着している「石ころぼうし」は「創世日記バージョン」とやらで、
「石ころぼうし」の使用者同士はお互いを認識出来る訳だが、
「かくれマント」を被って「フワフワオビ」で天井に張り付いた俺から見える国木田は、
さながら巨大なピンボールに投げ込まれたボールよろしく、
女子生徒の動きに合わせてあっちにごろごろこっちにごろごろ押し出されながらなかなか脱出出来ない。

何しろ人口密度が高すぎる上に意思の疎通が出来ないために全く自由が効かない状態で、
ただただ周りの動きに流されるままに時には両手で鷲掴み、
訳も分からず抱き締められたり、国木田は男にしては背が低い方なので、
女にしては背が高い相手と正面埋没衝突したままぎゅっと抱き合ってる、事も時々発生する。

そもそも、北高と言う所は更衣室に使えるスペース自体が限られている。
その辺の事は経験上俺もよく知っている。
ジョギング軍団が普通に一斉登校する時点で空恐ろしい事になる。

ちょっと考えれば分かるそんな事もあっさり頭を通り過ぎるのが
「流行性ネコシャクシビールス」の威力と言う事だが、
ましてその全員がシャワー、
なんていくらなんでも考えられるものではない。まあ、やろうと思えば出来ない事でもない訳だが。

だから、せめて着替えの時は常に下着ごと丸ごと、
これも又、責任をもって「流行性ネコシャクシビールス」に乗せて流行させて持参する様に仕向けておいた。

さて、「あらかじめ日記」に書かれた通りあっちにごろごろこっちにごろごろ、
えらく柔らかいピンからピンへと弾かれると言うより押し出される様に、
ピンボールよろしくバス内を端から端まで旅し続けていた国木田の事だったな。

そろそろバスの中でもセーラー服姿の女子生徒が登場しようかと言う辺りで、
ようやくタラップに立ってきょろきょろちょっとだけ見回して、
ああ、視線がやけに後ろに向いていた事は男の仁義としてここだけの話にしておこう。

そして、そのまま体勢を低くしてダッシュで外に走り去る。
「四次元若葉マーク」を張り直してバスから脱出した俺はと言えば、
吹けば飛ぶ様な紙吹雪の一枚と引き替えに「物体変換クロス」で国木田の頭から「石ころぼうし」を回収する。
まあ、あの混雑の中だ、全ては混雑の混乱と言う事で納得してもらおう。

  *  *  *

「なんだ、キョンじゃない」
「悪かったなキョンで」

校門近くで、俺とハルヒは何が哀しくてか悪態合戦を展開する。
国木田の脱出を見届けた俺は、「タイムベルト」と「どこでもドア」を駆使して一旦自宅に戻り、
念のため影武者を任せていた分身を「分身ハンマー」で消去してから、
明け方五時三十分のベッドに入った。

「きょうじき」でベッドの上の一時間が外部の一分になる様にセットして、
目覚まし時計を八時間後にセットして就寝。
目覚めの後で「きょうじき」の時間進行変化を解除して目覚まし時計を合わせ直し、妹の来襲を待つ。
間を飛ばして現在に至る。ま、徒歩がバス通学に変わった分若干楽だったけどな。

ハルヒ達の所以外では、大方の所で無事男女別通学バスの発進が実現していた。
これも、猪襲来による緊急バス通学ってシチュエーションを犠牲者ゼロで実現可能にした
「あらかじめ日記」ってチート道具と、
学校と教育委員会と「機関」に「うそつ機」で根回し済みの俺の権力が物を言った訳だ。

「全く、猪ぐらい珍しくないじゃない大袈裟な」
「まあ、特別物騒な奴らしいからな」
「ふんっ、そんなのSOS団でとっ捕まえて牡丹鍋よ」
「あーハルヒ、誰が免許持ってるんだ、あらゆる意味で?」
「何よぉ…あーあ、ヨタヨタしちゃってなっさけないわねぇ。
確かにやたらきっついラッシュだったけどシャンとしなさいっての」

丁度バスを出た直後で、腰を曲げたままよたよたと玄関に向かう国木田を横目にハルヒが言った。

「なんだぁー、今朝は涼宮ハルヒと愉快な仲間がまとめて入場かぁー」
「うっさい谷口」

何しろ到着がほぼ同時で目指す地点が一緒。必然的な結論に口を挟む谷口をハルヒが一蹴する。
同感だぞハルヒ。

「なんかゴタゴタしてっからなぁー、国木田の奴まだ来てないし、バス乗り遅れたかぁ?」
「とっくに来てるわよ一緒のバスだったし。
なんかトイレにダッシュしてたから車にでも酔ったんじゃないの?」
「あっそう」

目撃情報をまんま口に出すハルヒもハルヒだが、谷口もそんな事でからかうほどガキじゃないって事か。
ただ、俺も国木田も成長期ではあるからな。
妙なボロが出る前に、「タイムふろしき」でちょっとした若返り体験はやっておくか。
無論、国木田の記憶には留めないけどな。

それから、「メモリーディスク」で記憶を吸い出して、
バスの中での記憶もギリギリ常識的な範疇に捏造しておく。
だが、あのむせ返る熱い思い出を一律削減と言うのも惜しいものがある、その辺の機微は心得ているつもりだ。
従って、この記憶は再編集して今夜辺り「ドリームプレーヤー」経由で変換にして返還、
ついでに一日のスタートから些か浪費気味の精力も「ソノウソホント」で13日分ほど補充
って事にしておいてやる。礼には及ばん。