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(三人称モード)
「はーい、こちら帝丹高校でーす♪」
沖野ヨーコの挨拶と共に、満員の体育館がわーっと盛り上がる。
この日、帝丹高校には、日売テレビ「○○甲子園」スタッフが
決勝戦に進出した帝丹高校チーム応援生中継のためスペシャルサポーター沖野ヨーコと共に
この体育館を訪れていた。
ステージの両サイドには、斜めに向けた大型モニターも設置されている。
「それでは、校長先生から」
「あー…」
ステージ上の演卓の前に立った校長の体が吹っ飛ぶ。
「伏せてっ!」
銃声と共に絶叫したのは、結婚式場、埠頭とその恐ろしさを身をもって熟知している毛利蘭だった。
「動くなーっ、動いたらころーすっ!」
マイク越しと思しき絶叫に生徒達がそちらを向くと、白い覆面の男が中二階からライフルを構えていた。
通用口に向かった生徒や教師の体が次々と床に転がり、後続の足が止まった。
「最初に断っておくがこれは企画でもドッキリでもない、本物の殺人事件であり占拠事件である。
逃げようなどと考えない事だ。既に二つの非常口には爆弾をセットした。
許可無くここを出る者は銃殺刑に処する」
それだけ言って、白覆面は階段を下りる。
その先にいた生徒の一人が、白覆面の持ち替えたモスバーグのOOバックをまともに食らって吹っ飛び、
改めて体育館が絶叫に包まれた。

「どけ」
更に続くモスバーグのポンプアクションを前に、ざっと人並みが割れる。
「お前とお前、ここに転がる死体をあの廊下の突き当たりまで運んで戻って来い」
銃口を向けられての指示に、通用口近くの男子生徒が震え上がりながら死体を片付けを戻って来る。
「それから…」
次に白覆面が呼んだのはこの学校の体育教師の名前だった。
「その校長の死体を抱えて階段を上って、開いている窓から外に放り投げろ。
確実に脳味噌まき散らしたのを確認した」
マイク片手の黒覆面の言葉に、体育館から悲鳴が巻き起こる。
「早くしろ、生徒が死ぬぞ」
命令に従った体育教師は、その後で中二階に胃袋の中身をぶちまけていた。

「あーあー、通用口は爆弾で封鎖した、開けたら十人や二十人簡単にミンチになる。
ここからは俺の命令に絶対服従だ。
まずは全員整列!クラスごとに男女一列に並べっ!」
白覆面の命令と共に生徒たちが改めて並び直し、白覆面は列の間をうろうろ動き出した。
「お前、ステージの前に行って立ってろ」
その中の一人の女子生徒に命令し、その女子生徒が命令に従う。
そうして、一年生から順番にぽつりぽつりと前に向かう女子生徒が現れる。
蘭は、自分の隣に現れた白覆面がにいっと笑った気がして、心底ぞっとした。
「お前、前に行け」
蘭が、無言でそちらに小走りする。
“…銃口、上に向いてる…何する気だか知らないけど…”
コツコツと足音を立てながら無造作に数美に近づき、
塚本数美の胴回し回転蹴りを食らった白覆面の体が体育館の床を滑った。
“…革紐、銃が体から離れない、トドメを…”
まるでスローモーションの中にいる様な、何でもない短距離が無限とも思えた間合いを詰め、
裂帛の気合いと共に数美が拳を振り上げる。
「はいカーットッ!」
天井からの声に、数美はぎょっとしてそちらを向く。
目を見開いた数美の周囲には、
程なくAKMを手にした黒覆面青覆面黄覆面紫覆面が天井からロープで宙づりになっていた。
「おう、見せ場作ってやったんだろーが司令官として」
むっくり立ち上がる白覆面に、今度こそ数美が戦慄する。
“…どうして?まともに入ったのに、なんで立てるのよ…”

(俺様一人称に切り替え)
「そりゃ、別に俺が蹴り食らった訳じゃねーからな」
石ころぼうしの上にタケコプターを装着し、体育館にふわふわ浮遊しながら俺様は独りごちていた。
そして、あの牝豚塚本数美が我が魂の一撃を前に体をくの字に折る光景に多少の満足を覚える。
本来であれば自らその手応えを確かめたかったが、そうしていれば今悶絶しているのは自分なのだから
たましいふきこみ銃で俺様のたましいを共有した白覆面の仕業を見てるだけと言うのは
今の所は正しい判断であると、改めて俺様の計算には寸分の狂いもないと言う当然の事を自ら確認する。
他にもいくつか方法は考えたのだが、後々の事を考えるとこのやり方が上々。
この操作性能を得るために一ヶ月以上を要してタイムベルトで戻って来る羽目になったが、
まだまだお楽しみはこれからの事。

(三人称に切り替え)
背後からのうめき声に、蘭もその隣に並んでいる女子生徒達も目を閉じ身を震わせた。
ステージの上では、後ろ手錠を填められ床に転がされた数美が、入れ替わり立ち替わり覆面集団に
いい様に蹴り転がされていた。
「貴様がチーフだな」
白覆面が、チーフディレクターに番組の総プロデューサーの名前を告げる。
「一分で貴様の携帯に呼び出せ、それで駄目なら担当役員や代表取締役でも構わんぞ」
「つ、つながりました、プ、プロデューサーです」
「貸せ。
俺様は悪魔の紅蠍司令官である。三分以内にこちらが指定するカメラでの生放送を再開し、
いいと言うまで一切中断は罷り成らん、これは命令だ。
拒否するならば十人単位で死者が増える事になる、我々には外にも仲間がいる」
白覆面は、携帯をチーフディレクターに放り投げるや手近な男子生徒を22口径で銃撃した。

「我こそは、秘密結社悪魔の紅蠍、司令官である」
この屈辱的要求に対する日売テレビキャスターによるお断りの後、
マイクを握った「司令」の姿が全国に放映された。
帝丹高校体育館を武装占拠し既に大量殺戮事件の域に入っている首謀者である。
5、4、3、2、1…
外にも仲間はいる、事があれば次は水晶を降らせて見せよう」

一瞬の静寂の後、パニックに襲われる教室の中で江戸川コナンは、窓へと突っ走った。
そして、踵を返して教室を飛び出す。
「コナン君っ!」
「おいコナンっ!」
「来るなっ!二次爆発があるかも知れない」

跡形もなく煙に包まれていたのは、帝丹小学校グラウンドの用具室だった。
「江戸川君」
背後から、コナンの担任小林澄子が声を掛ける。
状況が状況、引きずり戻されるのも無念だが仕方がない、が、
「火の気やガス配管の無い用具室、それにあの爆発音は…」
「爆弾ね」
「え?」
素直な小林の声にコナンが振り返る。
「水晶が降る、って何?犯人のメッセージ」
「!?みんなを避難させないでっ!!」
「避難、させない?」
「そう、みんなを外に出さないでっ!」
「分かった。とにかく、来てちょうだい」

小林の一存で空き教室に引きずり込まれ公営放送テレビを見せられたコナンの顔から
見る見る血の気が引いていく。
「らあんっ!!」
「それで、水晶って言うのは?」
「ガラスだよ、砕け散って降り注ぐガラスが水晶の雨を思わせる、そう言っているんだ。
警察に安全を確認してもらうまで外には出ない方がいい」
既に、冷静さを失しつつあった。
それに、一応コナンの能力を評価している小林に見え透いた演技をしている場合ではなかった。

「分かっていただけたと思う」
白覆面はテレビカメラの前で告げた。
「我々の同志の内の一名は、心臓の鼓動と接続された起爆装置を身に着けている。
稼働すればこの体育館と共に、とある大量殺戮スポットも大爆発する。
外にいる同志が複数箇所に遠隔操作可能な爆弾を仕掛けて我々の行動を見守っている。
その事を忘れない事だ。
要求は現金三千万ドル、それから、
たった今報道各社にくれないべにたろうの名前で送信したメールにリストアップした受刑者の即時釈放。
制限時間は明日の午後11時55分。
それまではシンキングタイムと言う事にしておいてやる、
詰まらぬ引き延ばしがどう言う事態を招くかは、このチャンネルが教えてくれる事だろう」

「では、待ち時間に一曲歌っていただきましょうか」
演説を終えた白覆面が沖野ヨーコの前で言った。
「体育館ですからね、音響はこちらで用意します。この衣装でお願いします。
ステージ上で着ていいのはこれだけです。
コンサートの結果次第、あなたのノリ次第で二桁の人命が左右される事になるでしょうね。
スタートはあなたがステージに登場し次第。但し、待機時間が五分を過ぎたら一分に就き一人…」
「分かりましたっ!」
淡々とした白覆面の命令に震える事しか出来なかったヨーコが叫ぶ。
「衣装」とやらも見るからに目的が分かる。それでも、やるしかない。
とにかく助けが来るまで出来る事をするしかない。
十代から画面には映らないそれ相応の経験も多少の屈辱も味わって来たつもり。
今目の前で、一人でも死ぬかも知れない助けられるかも知れないのならば、こんな事、なんでもない。

「く、お、お、おぉおーーーーーーーーーーーー」
ぽろりと丸ごとはみ出した形のいい乳房を前に、毛利小五郎の葛藤は意味不明な領域に近づいていた。
帝丹高校に駆け付けたものの、さすがの死神名探偵も現在進行中の指揮本部に入る事は出来なかった。
そして、人だかりの中から沖野ヨーコの歌声を聞いた小五郎は人垣を突破。
車に積まれたテレビ画面の中では、
紐としか表現出来ない白ビキニ姿の沖野ヨーコが懸命に歌い、曲が終わると共にさり気なくこぼれ出た胸を
細長い布の僅かな膨らみに納める、が、すぐに次の曲がかかりすぐに又こぼれ出る。
それでも、躍動感ある歌をヨーコはやめようとはしない。
「またハミ乳…」
「結構デカイ…」
「録画録画…」
「ひどい…」
「やらされてるんだろ、最悪…」
「…ヨーコちゃん…蘭…」

用意のカラオケテープが終わり、
ステージを降りて衣服を掛けられたヨーコが体育館の隅でたまらずすすり泣く中、
白覆面は紫覆面の抱える生放送カメラを従え、
ステージ前に並ぶ十数人の女子生徒の中の、向かって一番左端の女子の前に立った。
「おい、服を脱げ?」
「え?」
「ここで今すぐ服を脱いで裸になれ」
ぱくぱくとしていた少女の口の動きは、22口径で額を撃ち抜かれあっさりと終了した。
そして、白覆面は隣の少女の前に立つ。
「一分だけ時間をやる、裸になれ」
白覆面の目の前で、少女はガタガタ震えながら制服を脱ぎ始めた。
「全部脱いで頭の後ろで手を組んで立て」
無我夢中で従った少女は、眼鏡の向こうで固く目を閉じ、震えていた。
カメラなど目の当たりにしたら、その結果をちょっとでも考えたら頭が壊れそうだった。

「お前、名前とクラス。いいか、嘘をついたら即座に銃殺だ、すぐに分かるからな」
「蜷川、彩子、三年…」
白覆面がカメラを預かり、紫覆面が彩子の胸や腹、お尻にメジャーで計測する中、
白覆面の持つカメラがそんな彩子の全身を舐める様に撮影していく。
目を閉じようとしても閉め出せない現実に彩子の頬にぽろぽろと涙が伝い、
横に並ぶ少女達も震え上がる。
「お前らも脱げ、制限時間は三分、三分以内に全裸でこのポーズにならなかった者、
この中で一番最後までそうならなかった者は銃殺する。
スタート」
淡々とした白覆面の命令に、並んだ女子生徒が一斉に動き出した。
「はい残念」
乾いた銃声と共に、靴下を手にしたほぼ全裸の少女がどうとぶっ倒れる。
「取り片付けよ」
白覆面は手近な男子生徒に命令し、中二階の窓から死体を投棄させる。
生き残ったステージ前の少女にも地獄の様な時間、彩子と同じ運命が待っていた。

「何なのよ、これ…」
日売テレビにねっとりと映し出される少女達の裸体、
それも、全身を撮りながら執拗にセクシーポイントをアップする、
あからさまなセックスの品評以外の何物でもない映像に
現地の指揮本部に詰めた美和子も不快感を隠せない。
「元々、これが目的なんじゃ…」
「ああ」
美和子の言葉に目暮が同調する。
「要求されている釈放もことごとくが単なる強姦殺人犯、政治性が無い上に非現実的過ぎる。
そう考えると、このための時間稼ぎと見るのも…」
「蘭ちゃん」
美和子の硬い声に目暮班の空気が重苦しいものになる。
目暮が美和子に携帯を渡す。
「ええ、ええ、分かったわ」

「くああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー」
何故高木と白鳥が奇声を発する小五郎に取り縋っているか、読者には最早説明不要かと。
「さっ、佐藤刑事、蘭、蘭を、あっ、あのっ、あっ、あいっ、ぶっ…」
「失礼します」
美和子に当て落とされた小五郎がガックリ首を折る。

「うむ。では、こちら側に残っている女子生徒も全員、脱げ。沖野ヨーコお前もだ。
その代わり、お前らには生命の安全を保障してやる、我が輩の命令に従えば、の話だがな」
白覆面が傲然と言う言葉に、少女たちは顔を見合わせる。
裸で放り出されると言う事か。しかし、それだけなら可哀相だがあのステージの娘よりは
ずっとマシなのかも知れない。
「…蘭…」

「どうにか、ならんのか…」
画面に映し出される凄惨な光景を前に、目暮が帽子を押さえ呻いた。
画面は縦に二分割され、向かって左側には前から移された沖野ヨーコの全身が正面から、
右側には鈴木園子が背後から映っている。
何れも一糸まとわぬ姿で、鉄の箱の付いた棒を両手に握って掲げている。
「犯人の通告は、解放する人質全員が列を乱さず歩いて渋谷駅、秋葉原の駅を経由して横浜駅まで行く事。
先頭と最後尾以外は頭の後ろで手を組んで歩き続ける事。
テレビ朝読は、指定されたサイズで先頭の沖野ヨーコと最後尾の鈴木園子を到着まで生放送し続ける事。
二人が持っているのはプラスチック爆弾、棒を握る手を離したり指定の高さより下になると爆発。
間違った解除コードを入力しても爆発、解除コードは命令遂行確認の後に通告する。
テレビ朝読が中継を中断した場合、行進が勝手に止まった場合命令に従わなかった場合は、
携帯電話を通して起爆装置を作動させる。
携帯電話以外にも遠隔起爆装置は組み込まれている。
休憩はしてもいいが、足を止めている時間が長すぎると爆発直前を示すアラームを鳴らす」
高木の整理を聞き、美和子は改めてその偏執的なやり方に悪寒を覚える。
「只の脅し、ではないんだな」
「既に犯人からの指定の場所でレプリカを押収しています。
現在科捜研で分析中、その第二の遠隔装置も不明ですが、判明している範囲では可能であると…」
美和子が言う。
「しかし、女性の、それも裸足で裸で横浜まで歩くとなると…」
「とにかく、お握り菓子パン飲物の大量発注をしています。
誰かが付いて食べさせて飲ませるより他に方法がありません」
白鳥の言葉に美和子が言い、様々な映像情報が流れているパソコンにチラと美和子の視線が走る。
携帯を掲げ警察官に押し退けられている輩、ぞろぞろと歩かされる無惨な行進の中で
太股から脛まで赤く伝っているのを見た時にはぐっと呑み込んだ。