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放課後。綾城藍は今日、美化委員の活動があるそうで……夕貴は希美香と2人で帰る事にした。
「迎えに来たよ、希美香ちゃん」
「あ、センパイ」
ぞわっ。
……センパイと来たか。……いい、かも。

昇降口で靴に履き替えるが、希美香がなかなか出て来ない。
気になった夕貴が1年の下駄箱の方に行ってみると、希美香はうろうろしていた。
「どうしたの?」
「あ、その……靴がないんです」
……まさか、またあの連中か?なんつー古臭いイジメっ子っぷりだ。
鞄に入れておいたスペアポケットから『タイムふしあな』を取り出し、十分前の下駄箱を見た。
ここの下駄箱は戸にポストのような大きな穴があるため、靴が無くなればすぐわかる。
9分前……8分……7分……6分前。
「あ」
女生徒C、あのボス猿だ。さっきの女生徒Aに何か命令してるっぽい。
もっと下駄箱に近付いて、改めて声を拾う。
えーと……「あの子の靴隠して。でないともう付き合ってあげないよ」?
……うわぁ。
今どき、ここまでわかりやすいイジメっ子がいるとは。
さっきAが服脱いだ事に対する仕打ちかな、これ。
思わず『国際保護スプレー』が頭の中に浮かんだ。こりゃ本当に天然記念物モノの小悪党だよ。
ま、だからこそ心おきなく悪戯ができるってもんだけどね。にひひ。


「ああ、あったあった。ほら」
体育教官室前、傷み易いバドミントン用具や卓球のセットなどを入れてあるロッカーの上。
ホコリを優しく払って、希美香に靴を返す夕貴。
「あ、ありがとうございますです……でもなんでわかったですか?」
む。
まあ不思議に思うのも無理はない。言い訳はちゃんと考えてある、5限と6限を使って。(ぉ)
「実はあたし、この道具使ってサイコメトリーができるんだよ」
タイムふしあなをポンポンと叩きながら、夕貴。
「へえ~!凄いですねセンパイ!」
それに何の疑いも抱かずキラキラと笑顔を送って来る希美香。
……純真だ。純真過ぎる。
あと一段階か二段階くらい突っ込まれると思って、それ用の言い訳もちゃんと考えてたのに。


「私、毎日バイトですから……こうやって誰かと一緒に帰るなんて初めてですよー」
帰り道、ニコニコと笑いながら隣を歩く希美香。
「いやー、あたしもこうやって一緒に歩けて嬉しいかな。いつも見てるだけだったから」
「あは……て、照れますですよ。私、そんなに見られてました?」
はにかむ希美香。本当に表情の変化が激しくて楽しい子だ。
「そういえばセンパイ……センパイって、優しいんですねー」
「え、え?」
「ほら、今日の教室で、クモさん取ってあげてたじゃないですか」
……ああ!女生徒Aの事か。いきなり言われたからわからなかった。


「いや、まあ……あれは……希美香ちゃん、何も思わなかった?」
歩きながらもキョトンとした顔で夕貴を見る希美香。
「私が何か……したですか?」
夕貴は人差し指で頬をかきながら言う。
「いや、希美香ちゃんいじめてた相手に優しくしてさ、希美香ちゃん怒ってない……?」
「え!?そんな事を気にされてたですか!?あ、す、すみませんです、『そんな事』だなんて……」
眉をぴこんと上げて、希美香。
「いや、あたしは別にいいんだけど……」
ふと足を止めると夕貴は顎に手をあてて考え込む。

「……ご、ごめん希美香ちゃん」
「ほえっ!?なんでセンパイが謝るですか」
だって。
「希美香ちゃんの事、簡単に人を恨んだりする心の狭い子だ……って思ってたって事だし……その、
 とにかくごめん」
「そそそそんな事ないですよセンパイ、そ、そこまで気を使わなくてもー」
頭を下げた夕貴を、わたわたと両手を振り回して下から見上げる希美香。
「そ、それに……私も、ちょこーっと……気持ちよかったですし……その、Aさんがあんな事に
 なって……私、悪い子ですから……だから」
「ほう」
夕貴の目がキラリと光った。
次の女生徒Bは、学校とはまったく関係ない所でやるつもりだったからいいが。
そうか、希美香ちゃんが嫌じゃないならCは徹底的にやっつけてやろう。


「あ、センパイ、私のアパートはここなので」
古びたアパート。看板さえ出ておらず、何年もほっておかれたのか壁面の塗装はボロボロ。
希美香のうちが金銭的に困っているのは本当らしい。
「うん、それじゃまた今度」
「は、はい、ありがとうございますっ!です」
笑顔でお辞儀を返す希美香。
『また今度』の部分がよほど嬉しかったのだろうか?
その八重歯の出た笑顔にまたも見とれつつ、夕貴は笑顔で手を振り返す。

そして。
夕貴は歩き出す。
学校の方へと。女生徒Bに悪戯するために。
「んふ……んふふふふ……」
不気味な笑いを浮かべる夕貴。
この笹本夕貴のドラ○もんの道具を活かした悪戯、その真髄をたっぷりと味わえ。
『石ころぼうし』をかぶり、『さいみんグラス』をかけ、『タンマウォッチ』で時間を止める。
『ついせきアロー』を地面に置くと、『タケコプター』で空から追いながら『キンシひょうしき』に
何かを書き込む。
凍りついた時間の中を、夕貴は女生徒B目指して飛んで行った。

5分後。
駅前の繁華街でゲームセンターに入ろうとしているBを見つけた夕貴は早速準備にかかる。
キンシ標識に「撮影」と書き込み、そのへんに突き刺す……石ころぼうしのために。


催眠グラスは使いやすいが、欠点は「必ず自分の声を聞かれてしまう」という事だ。
声が相手の耳に届かなければ効果が無いので、音を消すわけにも行かない。
そこで石ころぼうし。
話しかけても気にされないというコンボで、自分は姿を見せず相手の行動を操れる。
キンシ標識は石ころぼうしの欠点「機械には映ってしまう事」への対策である。
ただ……なんと言うか……
人間が操っていない機械、監視カメラまでもこの標識に従うので……
「……機械がグンニャリ曲がってそっぽ向くのは、いくらなんでもマンガ的過ぎないかなぁ……」
ちょっと笑えるどころか不気味だよ。

さらに夕貴は近くにあった大手金融の自動貸し出しボックスの横に『ナイヘヤドア』を設置。
その架空の小部屋に『フエール銀行』を置いて、準備完了。
女生徒Bの服をさぐる……無い。
鞄の中をさぐる……うん……あった。
夕貴は、Bの財布を抜き取ると時間を動かした。周りの人間に注意しながらBのすぐ後ろを追う。

両替機の前で鞄をさぐるB。
そのうち不審な顔をし始め、半ば座り込んで鞄を開けた。……少しは周りの目も気にしろよ。
そこで財布が無い事に気付き、諦めて立ち上がる、そこで!
「どこかからお金借りるってのはどう?」
夕貴はさいみんグラスをかけて正面に立ち、語りかける。目の焦点が危なげになるB。
「あんたは遊びたくて遊びたくてしょうがない……そのためのお金が欲しい……1万円くらいなら
 明日にでも返せばいい……大手金融なら安心しょ?……さあ、出て一番手前のドアを開けるべし」


完全に催眠状態になったBがフラフラとナイヘヤドアを開けるのを見て、夕貴は後を追い中へ。
機械音声が「ゴ利用アリガトウゴザイマス」と告げ、Bは1万円を手に出て行った。
「フッ。任務完了」
ほくそ笑みながら夕貴はフエール銀行とナイヘヤドアをしまう。
「さてと……後は待つだけだね。あ、そうだ」
Bから抜き取った財布を警察か学校に届けておこう。
昇降口で拾った事にでもすればいい。
「うーん、あたしってワルだなあ」

1時間後。
『ふわふわぐすり』を飲んで浮かび上がった夕貴は、石ころぼうしを被ったままゲームセンターの
天井近くを漂っていた。
ここのゲームセンターは禁煙だから苦しくもならない。
「女の子も小さな子供もいっぱいいるしねえ……時代も変わったよ、本当」
ま、そんな話はさておいて。もうじき1時間が経過する。
しかし、まだ多分所持金が減る程度だろう。利子は2千円。
「……あれ使っちゃおうかな」
じれったくなってしまった。時間を潰すにも限度というものがあるんだから。
夕貴はポケットからフエール銀行と『タイムふろしき』を取り出した。

6時間経つと、利子だけで約2万円にもなる。
今身に付けているのがどれほど価値のあるものかは知らないが、
……まさかとは思うけどこのフエール銀行、女子高生の下着に妙に高い値段つけたりしないよな?


フロシキをかぶせて少し待つ。
「きゃあああ!?」
真下からの悲鳴を合図に、夕貴は素早くフロシキを取った。
タイムふろしきの中では9時間が経過したらしい。利子は、それだけでも4万円を越えたはず。
Bは靴も靴下もスカートも消えて、下着とブラウスのみという格好だ。
上着が消えたくらいでは気付かなかったんだろうが……ここまで来ると。
「……いい体してるな~」
わりかしスタイルが良かった。特にお尻から足に至るまで下半身全部が綺麗。
胸も結構大きいのだが、夕貴は「つるぺた」な子の方が好きだし、何よりこいつは性格が悪い。
恋愛対象にはならない。

女生徒Bは混乱しつつも、女子トイレに向けて走って……
「時よ止まれ」
無情にタンマウォッチのカチリという音が響く。
夕貴はポケットから『びっくり箱ステッキ』を出し、それでトイレのドアを叩き、時を動かした。
「ギャアーアーアァァー!!!」
飛び出した醜悪なカッパのようなものに、面白いほどのリアクションを返すB。
完全に混乱しきって外に飛び出して行く。
「ちょっとやりすぎたかな~……」
夕貴は空を飛ぶ道具をタケコプターに切り替えて、すっ飛んで行ったBを追う。
「あ」
「きゃあああああああっ!!!?」
……どうも、ちょうど10時間を経過したらしい。


小脇に抱えていたフエール銀行から「ハサンセンコク」という声が聞こえた。
「……良かったね、もう支払わなくていいんだよ……」
衆人の目がBの裸体に突き刺さる。
隠そうとしても隠し切れないたわわな乳房が、黒い茂みが、白日の下に晒される。

直後、Bは泣き出しながらゲームセンターの裏に逃げ込んだ。
裏通りを抜け、側にあった(多分ふとんとして使われている可能性の高い)段ボールを拾う。
そしてその段ボールで体を隠し、人目を気にしながら駅前交番へと向かって行くのが見えた。
「……あー。まあぶっちゃけ、すまんかった」


だが、しかし。その日の夜タイムテレビでA・B・Cの希美香への仕打ちを見た夕貴は、これじゃあ
足りないとまで思う激しい憤りを感じていた。

希美香が言う事を聞かなかった時、髪を引っ張って明らかな暴力の脅迫をしていたり。
その事を言いつけられたCが、仲直りのふりしてカラオケBOXに誘い込み、刃物で脅したり。
洗面所で希美香の服を切って脱がさせて水浸しにし、その時の会計は希美香に押し付け……
さらにその翌日、わざわざ先生の目の前で「昨日は楽しかったねー」なんてわざとらしい演技……

「……上等だ」
ここまで希美香ちゃんを苦しめたんだ……
自分が同じ事をされる覚悟はできてるんだろうな?
「あたしの考え付く限りの道具使って、あんたに復讐してやるよ……」



番外

「……という事をしたんだよ」
「へえー……あれ?で、夕貴さん、キンシひょうしきはちゃんと抜いて来ました?」
「あ」


「あの監視カメラ、なんで捻じ曲がってんだ?」
「誰かいたずらしたんじゃない?」