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冬の終わり。
壮絶な勢いで周囲を見回しつつ、早足で道を歩いて行く人物がいた。
服装は、寒そうな白のTシャツにジーンズといった活動的な少女。
周囲を全力で見回しているのだが、そのたびに尻尾髪がぶんぶんと揺れている。
必死の形相で歩いて来たと思うと急に足を止め、血走った目で向こうを睨んだ……その先は海。

ガックリと肩を落とし、へなへなと道端に座り込む。
「財布……あたしの財布」
連絡船の営業所にも警察にも連絡してみたが、結果は全敗。
さすがにもう拾われているだろう。
「うう、もらったばかりのお小遣い2万円……この理不尽な怒りをどこにぶつけてくれようか」
コワい事を呟きながら、ぬらりと立ち上がる少女。
と、立ったその時に奇妙な違和感を感じた。

自分の座っていた場所を振り返ってみる。そこにあったものは……
「……バッグ?」
とてもおばさんくさい時代遅れのハンドバッグ。
交番に届けようか、ねこばばしてしまおうか。とりあえず中を見てみる事にした。
周囲に人影が見えないので、堂々とバッグの中を覗き込む。……が、口がせますぎて中が見えない。
「……何考えてこんな構造にしたんだろ」
仕方がないので手探りで中のものを取り出す。その物体を見て、少女は目を丸くした。
「ええ!?これ、あたしの財布!」
まさか「自分が落とした財布をバッグに入れた」人物が、さらにそのバッグを落とした?
中には……ちゃんとお金も入ってる。
色々考えながらも少女の手はさらにバッグの中をあさっていた。


中からは、最近自分が失くしたものがどんどん出て来る。まるでバッグに底が無いように。
少女の頭の中に、1つの可能性が導き出された。
「もし、それが本当なら……」
ドキドキしながらバッグに手をつっこむ。
向こうの「それ」がなにやら暴れているようだが構わない、そのまま一気に引っ張る。
「きゃっ……」
……人間。小柄な少女。とてもバッグには入らない。
「やっぱり『取り寄せバッグ』!なんで!?いや、それはどうでもいいや!」
「え?」
今バッグから出てきた小柄な少女が呆気に取られている。
その横では尻尾髪の少女が狂喜乱舞だんしんぐ真っ最中。

「うわ、凄い、本物だ!失くした本、どこに隠したか忘れたへそくりまで!うわ~便利!」
「……あの、夕貴さん?」
小柄な少女が座り込んだまま問いかける。
夕貴と呼ばれた少女はバッグからさらに色々なものを出し、効果を確認していた。
「ん、何?今のあたしはすっごい機嫌いいから大体の事は聞いちゃうよ?」
「私……なんで、こんな所にいるんですか?」
頬をかきながら返答を探す。
なんでどうしてと言われても。
ぽん、と手を打って、人差し指を立てながらすっぱり言い切る。
「藍ちゃんが一番先に思い浮かんだからかな?」
「答えになってません」


この少女、笹本夕貴と……小さな少女、綾城藍(アイ)は恋人同士である。
両方とも女だなどという不粋なツッコミを入れてはいけない。とにかく恋人同士である。
「まあまあ怒らないでよ~。せっかくスゴイ物が手に入ったんだからさ~」
背後から藍に抱きつく夕貴。
「きゃ!?お、怒ってませんから胸を掴まないでください!」
ふにふに。
服の上から柔らかな感触を楽しんだのち、藍の脳天に自分の顎を乗っけてくつろぎモード。
「ふー……満足満足」
「……人の頭の上で落ち着いてないで、説明してください……」
顔を赤らめ涙ぐみながら頭上を見上げる藍。ま、本気で嫌がってはいないのだが。

夕貴から聞かされたのは、昔読んだ青い寸胴ネコ型ロボットの話だった。
「つまり!これさえあれば、一目見ただけのものとかも手に入るし、失くし物もしないってわけ」
「信じられない話ですけど……信じるしか……それはともかく、前者は泥棒って言いませんか」
「でも、今まで恥ずかしくて買えなかったバイブレータとか擬似男根とか(ピーーーッ)とかも」
ゴキリ。
藍の持つ棍が夕貴の首を捉え、捻った。
この綾城藍という少女、なぜか短棍を常に持ち歩いている変な娘なのだ。
「夕貴さんっ……いくら人がいなくても、そういう事は……」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしつつ、腕と棍を巧みに使い夕貴の喉首を締め上げてゆく。
藍の顔の赤さと比例して夕貴の顔がだんだんと青くなって来た。
「あ、藍ちゃん、そろそろ、死んじゃう、から、タスケテ」
通常ありえない首の角度で口から言葉を搾り出す夕貴。なかなか年季の入ったコメディ体質である。


「そもそもドラ○もんのひみつ道具をですね、その……え、えっちな事に利用するのは……」
夕貴を開放し、きちんと向き合って話すも一言発するたびに顔を赤くする藍。
こういう初々しい所も夕貴は好きだった。思わず抱きつきたい所だが話が進まないので我慢する。
「でも、みんな一度は考えると思うけどなあ」
「……みんな、ではないと思いますけど」
まあ、目の前の少女はそんな事考えもしないだろうが……
「でもあれだけ色々な道具があって…………」
そこまで言って、夕貴は動きを止めた。
不審に思った藍が目の前でぱたぱたと手を振ってみる。
「……そうだ!うん、もしあれを取り寄せる事ができれば」
「?」

そして数秒後。
夕貴は目当ての物体をその手に握っていた。
「これが夢にまで見た『四次元ポケット』……」
「な、なるほど……取り寄せバッグが実在しているなら四次元ポケットも……」
2人ともその道具を手にするという事がどれほどの事なのか理解しているのだろう。
緊張した面持ちで藍の目を見る夕貴。頷く藍。
そして夕貴はポケットに手を突っ込んだ。
硬い手ごたえのものを引っ張ると、それはこちらの世界に現れる。
ニュッと突き出た赤い片鱗。みるみる巨大化する、それ。
べしゃ。
「ぎゅむ」
「きゃ、夕貴さん!?」
駆け寄る藍。夕貴は見事に『どこでもドア』に潰されていた。


あの後、夕貴と藍はどこでもドアをくぐり夕貴の自宅へ来ていた。
ひとまず突然消えてしまった事だし、藍の家に連絡を入れておく。
『はい綾城です』
透き通った青年の声。
「あ、兄さん?藍です、今日は夕貴さんの所に泊まりたいんですけど」
『……あ、そうですか』
「あっ、ち、違うんです、いや、違わないですけど、ソノ目的があったわけでなく」
藍の兄、綾城彼方(カナタ)。
夕貴と同学年で、理解者として知られる好人物。
……だが妹がレズに走るのを黙って見ているのは、理解者の域を越えていると思うが。
ちなみに綾城家は神社であり、この兄は一応次の神主だったりする。
「あー、綾城兄?」
そばで通話の内容を聞いていた夕貴が藍から受話器を奪う。
『夕貴さん?』
「腰が砕けない程度には手加減するから心配しないで♪」
ガチャ。
…………。
沈黙。
「何を言ってるんですか夕貴さんーっ!」
ゴキリ。
藍の棍が再度夕貴の喉首に食い込んだ。
「あ、ご、ごめ、タスケテ」
愉快な人達である。


「だ、だいたいまだ2時じゃないですか……こんな昼間から……その……」
頬を染めながら言葉を絞り出す藍。
その可愛い仕草にまたも押し倒したくなったが、ぐっとこらえる。
「うん、ちょっとあたしはあたしでやる事あるからさ、藍ちゃんは……」
グゥ。
音を立てて夕貴のお腹が鳴った。
「……むう。お財布捜すのに夢中で、お昼食べてない事忘れてた」
「ふふ、じゃ、私は夕貴さんのお昼ご飯作りますね」

勝手知ったる他人の家。
何回も遊びに来ている夕貴の家、それに冷蔵庫の中も比較的把握していたりする。
「私が夕貴さんを見ててあげないと……」
夕貴の母は宝石ディーラーで、普段外を飛び回っている女社長。
なんでも、ひとところに落ち着くのは性に合わないらしい。
かたや父は化学者。大学の研究室にこもっていて、こちらも帰って来るのは週2回くらいだとか。
両者の稼ぎのおかげか家は広いが、
……その広さのせいで余計寂しい感じがする。
「えーっと……お魚、ムニエルにでもしましょうかねー」

「あたしはなんでもいいよー。贅沢は言わなーい」
夕貴はリビングに『ハツメイカー』を広げていた。
使ってみたい道具は色々とあるものの、どうにもアノ時に装着するような外見じゃない。
だからこれに頼むのだ。


「まずは、自分の意思で、肉体の一部だけ液体や気体にできる『サンタイン』」
バチバチバチ。
バサッ。
その薄めの冊子を手に取って内容を見ると、予想と寸分違わぬ物があった。
元となる道具があるぶん、楽に発明してくれたらしい。天才ヘルメットを被らずとも作れそうだ。
父の影響か、化学には自信がある。
笑顔で小さくガッツポーズを決めた後、次々と物を注文していく。
「手錠の形した『感覚送信アンテナ』と、『感覚モニター』と同じ機能の荒縄」
バチバチバチ。
「ハイニーソの形した『感覚送信アンテナ』と、『感覚モニター』と同じ機能の首輪」
バチバチバチ。
「『オーバーオーバー』と同じ機能の巫女服」
バチバチバチ。

………(以下省略)………

『ノーリツチャッチャカ錠』を飲んで『技術手ぶくろ』を着け、製造と組み立てに入る。
自慢じゃないが、あたしは見かけによらず頭はいい。運動は駄目だが。
この程度なら藍ちゃんが食事を作ってくれる間に……
……30分じゃ流石に終わらない、かな。
『3倍時間ペタンコ』を腕に貼って、今度こそ作業開始!
ハイニーソは黒。首輪は尖った鋲をつけておいた。なにしろ、あたしが身に付けるんだから。
手錠と荒縄と巫女服は藍ちゃん用。ふっふっふ、本物の巫女さんなんだしねえ。


お昼を食べてる間、作り上げた道具を見た藍ちゃんに呆れられたり。

それがちょっと悔しかったから、藍ちゃんに「あーん」してあげたり。

顔を真っ赤にしながら口を開けた藍ちゃんが、お魚を口にくわえる寸前に避けてみたり。

目を潤ませながら抗議する藍ちゃんに、も一度「あーん」するふりしてキスしてみたり。

色々と楽しいお昼ご飯でした。ごちそうさま。

「で、藍ちゃん、それ着てみてくれる?」
「……やっぱり着るんですか?」
食器を洗いながらの会話。
自分の食べたぶんは自分で洗う。それが夕貴と藍の流儀。
後ろでする衣擦れの音に耳を傾けながら食器を洗い終え、振り向いた夕貴の目に映ったものは。
「……グッジョブ、あたし」
ほとんど既製品と変わらない状態で材料箱に入ってた、緋袴含む衣装。
似合う。さすが本職。
この清純な巫女さんにこれから色々とするんだ、と考えただけで萌えるし燃える。
「私にはよくわかりませんけど……」
「いや、やっぱり巫女服は浪漫だから!」
頬を染めて立ってるだけの藍。
(これだけでも御飯2杯はイける!)


「でも……清らかなものを自分だけのものにするって、燃えない?」
「きゃあっ!?」
藍に素早く接近すると、その体を抱きとめてクルリと半回転させ、背中から抱きしめる。
触れただけなのに大きな声を上げる藍。
「……いつもより感度良くない?」
ぺろり、と首筋に舌を這わせる。
「う、あ、あの夕貴さん……いつからそんなに舌が長く……」
「へっ?」
数秒考えて。
(ああ、『オーバーオーバー』の効果かぁ)
でも、自分では効果がわからない。藍が感じているであろうものもわからない。
このままなら、だが。
夕貴は藍の両手を後ろに回させて手錠をはめる。
カシャンという冷たい音が、藍の被虐心を一層煽った。
「ああっ……」
慣れた手つきで藍の体に縄を巻きつけていく夕貴。
小さな胸を押し出すように、股間に絶え間ない刺激を与えるように、服の上から巻きつける。
夕貴自身は下着姿になって首輪とハイニーソを身に付けた。
そしてさっき作ったものではないが黒いロンググローブも。
今日の夕貴の下着は黒。全体の調和が美しい。
「んふふ……簡易版女王様、完成」
カチ、ポチ、と各々のスイッチをON。夕貴自身の視覚と藍の視覚が一瞬ダブる。
集中した方を見る事ができるようなので、自分で動きつつ藍の感覚をメインに味わう事にした。


夕貴が、グイ、と藍の体を縛り付ける縄を引っ張った次の瞬間。
『はわひゃあ!?ぁあぁ、あ?ぁう?♪』
たっぷり5秒は使って謎の喘ぎ声を出した夕貴と藍。
夕貴と藍はお互いに距離を空け、荒い息をついた。
「な、な、な、何、これ!?」
「ゆ、夕貴さん、一体何の道具を使ったんですか!?」
「感覚送受信モニター、だけど……」
送信と受信の機能をまとめる事も考えたものの、アイテムの多さから機能をそれぞれに分けた夕貴。
予想もしなかったが、それがこの感覚の原因だった。
「えっと……さ、触るよ。藍ちゃん」
「は、はい」
巫女服の上から、小ぶりな胸にそっと手を触れる。
『ぅあ……』
今ので2人とも理解した。
夕貴は「藍の感じた」感覚を受ける。
すると、藍がその「藍の感じた感覚を受けた夕貴の」感覚を感じる。
その繰り返しで、約5秒も感覚が持続する……
送信と受信の間にわずかなタイムラグがあるせいで、こうなるらしい。
「……藍ちゃん。もっと、触るよ」
「なんだか、怖い……です」
まだ荒い息をついている2人。しかし、夕貴の好奇心と性的欲求は止まらない。
「でも、どうなるか興味あるでしょ……?」
藍は顔を一瞬背けたものの、真っ赤になって頷いた。