船橋鷹大@キノウツン藩国様からのご依頼品


子猫と×××

今日は、船橋くんとの約束の日。
隣にいる彼の横顔を見て、私の心臓は早くも飛び跳ねていた。
な、なんて話しかけたらいいんだろう?あ、こっちを見てる。見てる…!
頭がいっぱいになって、どうしたらいいかわからなくなる。頬が、熱い。
彼の顔を見ていられなくて、目があちこち彷徨ってしまう。
と、白黒の何かが目に入った。

猫だ…。かわいい……。
触ってみたいな、でも、船橋くんはいいって言うかな……?
見るだけ…でもやっぱり触りたいな…。

「どうした?」

そんな私の心がわかったのか、船橋くんが声をかけてきた。
見、見過ぎてたのかな…?

「あ、あのね」
「猫……」
「さわっていい?」

少しずつ、がんばって言葉を紡ぐ。
心臓はドキドキ言ってるけど、な、慣れなくちゃ。

「ああ、もちろん。いいよ」

そう言うと、彼は子猫を(か、かわいい)私に抱かせてくれた。
ああ、あったかい……。ふわふわ……。
彼を見る。不思議と、今は胸がドキドキしていなかった。
なんでだろう?ふわふわのおかげ?
この子たち、連れて帰れたらいいのにな・・・・・。

子猫と指が遊んでいる。
ねこじゃらしにパンチするみたいに、私の指を追いかける子猫。
素早い動きで目標を捉えると、かぷっとかみつかれた。元気一杯だ。
子猫の元気が移ったのか、私もなんだか楽しい。
船橋くんを見る。彼も楽しそう。

「ああ、いい笑顔だなあ…」

すごい。船橋くんは子猫の気持ちがわかるのかな?
笑顔の子猫って、普通の顔とはどう違うんだろう?
聞いてみ
「いんや、空歌のこと」

あたまがまっしろになる。
彼は涼しい顔をして、とんでもないことをさらりと言ってのけた。
私にはない、度胸…?と、とにかく……はずかしい。
でも、笑顔をほめられたのなんていつ以来だろう…。
私の心臓が、また踊り始めた。

ここにいる子猫たちは、たぶんみんなもらい手が決まるみたい。
良かったと思う反面、ちょっと残念。
今私の腕の中には、白と黒の二匹の子猫がいる。
やっぱり、かわいいなあ……。
どうしよう。連れて帰りたいって、言ってみようかな……。
そんなことを考えながら子猫をもふもふしていると、

「空歌」

彼に呼ばれた。思わず背筋がぴくんと動いて、子猫を抱きしめそうになる。
なんだろう?もう、帰っちゃうのかな。

「全部飼うのはいくらなんでも手が足りないけど、
いま抱いてるその二匹だけならもらってもいいんじゃないかな」

「ほ、ほんとう?」

う、うれしい。
子猫を飼ってもいいって言ってくれたこともだけど、
私の気持ち、わかったのかな。
なんだか心が通じているみたいで、そのことが一番うれしかった。
よ、し。だ、抱きついてありがとうって……と思ったけど、
私の腕の中には白黒の毛玉。そうだった、わすれてた……。
なんだか急に恥ずかしくなって、照れ笑いをしてしまう。
彼もそんな私を見て、にっこりと笑っていた。

「ははは。ああ、そうだ。名前決めないとな」

思い出したように船橋くんが顔をあげる。
なまえ。
私の頭の中には、1つだけ案があった。
思い切って、言ってみよう。

「あのね、あのね」
「黒猫が船橋」
「白猫が・・・くー」
「で・・・」

言っちゃった……!
わ、わかったかな船橋くん…?
船橋とくー、2人はいっしょにくらして、ご飯も一緒に食べて……。
…言ってしまった後で、顔が真っ赤になる。
結局名前はせんきょ(呼んだとき、間違えないように)とくー、になった。
せんきょとくー、仲良くなってくれるといいなあ…。
そんなことを考えながら、私は子猫たちを抱えてくるくると踊った。

「ああもう、かわいいなあ」
「子猫いいよねー」

船橋くんもうれしそうだ。
彼も猫が大好きみたい。にゃんにゃん共和国、だからなのかな?

「ああ、もちろん子猫もだが」

そういうと彼は、いきなり私を……だ、だきよせた。
も、もしかしてさっきのかわいいっていうのももも、こここねこじゃなくて…。
彼が顔を覗き込んでくる。
か、かおが近いよ船橋く……ああああー……。

カカン!

鋭い音が聞こえたかと思うと、船橋くんの体がぐらついて、そのまま地面に……。
思わず悲鳴を上げてしまう。な、なに!?どうしたの……?
倒れた彼の後頭部には、白いチョークが2,3本刺さっていた。
マ、マンガでこういうの見たことある……じゃなくて!て、手当!

「う~ん…」

き、気がついたみたい。よかった……。
一応応急処置はうまくいったみたいだけど、本当に大丈夫かな……?
そんなことを考えながら、彼の顔を覗き込む。

と、彼が突然起き上がった。
それだけならいいんだけど、当たっちゃった……。
顔を覗き込んでいた私と、起き上がろうとした彼の。

………………………口と口が。

頭から湯気がふきだしそう。顔がとけてしまいそう。……気絶しそう。

頭の上に乗っていた子猫たちが、走って逃げていく。
私は……なんて言ったらいいのかわからなくて、猫たちを追いかけた。
鏡を見たら、きっと顔、まっかだろうなぁ……。

今夜は、お風呂で顔、洗わないで寝ようかな。
そんなことを考えて、やっぱり顔が熱くなる私だった。


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最終更新:2008年02月25日 12:39