しらいし裕@暁の円卓さんからの依頼


白石ほむら
白石裕

 二人は、まあ紆余曲折があった。
 迷宮を越え、試練を越え、そうしてプロポーズまでして承諾されて、そこまでこじつけたのだ。いったんは。
 ここまでなら普通の小笠原だった。
 だが、二人はここからが本当の紆余曲折だった。
 なにせ、プロポーズまで承諾したというのにいきなり地雷踏んでほむらに逃げられ、ほむらはほむらで勢いのまま崖から飛び落ち、エースゲームまで起こして救出ゲームしたり、またあらためてプロポーズしたり。
 一度クリアしたコースを意味もないのにアクセル全開で二週目してしまうようなドアホがしらいしという男であった。

 それでもまあ、なんとかなってこうしている。
 紆余曲折の結果、肩に傷を負ったほむらだったが、本日の通院で経過も良好と知ったばかりだ。
 さすがにもう、これ以上の試練はない、ように思える。
 あえてしらいしが三週目を選ばない限りは。

 とまれ三週目になる前に、是非結婚をしなければならない。 そのための指輪を求めて(小笠原ルールでは指輪がないと結婚できない)二人は商店街を彷徨っていた。

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 その商店街は人の気配がない。
「指輪屋ないなあ...」
「そうね」
 気のない返事をするほむら。しらいしの腕に抱きつく――というか絡まるようにして歩いている。
 二人とも頬が赤く火照っていた。
 しらいしはしらいしで腕に伝わるほむらの胸の感覚に、必死になって自分を押さえこもうとしているのである。
 押さえ込もうとしつつも、頭の中はピンクの妄想で煮詰まっていた。
 さっきおれはほむらにキスをして、おれはというと耳たぶをかまれて...
“祝言あとで”
 ほむらの口からでたその言葉を思い出して、耳まで赤くなる。
 いろいろ我慢できなくなった自分に、ほむらがそう言ったのだった。
 おれ、祝言の後まで待てるのだろうか。
 いやいやいや、男は我慢だ。我慢こそ男。いまは目の前のことに集中するんだ。
 必死でそう言い聞かせるしらいし。
「...どうしたの?」首を傾げて、ほむら。
「いや、早く指輪買わないとなあって」
 言った途端、ほむらの顔がぼっと赤くなった。
「早く指輪買わないと」しらいしと同じことを呟く。
「うん、」しらいし気づいていない。「早く買って、それで祝言を挙げて...」
「そう、祝言...うん...あげて、それで」
 ほむらはどんどん俯いている、けど蚊の鳴くような声で呟き続けた。
 様子の変化にようやく気づいたしらいしが、ほむらの顔をのぞき込む。
 ほむらはそんなしらいしをチラッと横目で見てから、小さな口を開いた。
「“あとで”」
「なっ――」
 そのフレーズでようやくなぜほむらが俯いたのか理解した。
「い、いややややややそういう意味じゃなくってっ」
じゃあどういう意味だったのだろう。
 弁明するしらいしの胸に、ほむらが飛び込んだ。 
「――――――!」
 そのまま抱きついてくる。
 舞い上がりかけたしらいしだったが、はっとなる。
 抱き付き方がいつもとは違う気がした。
「どうした?」
「動かないで。」いつもの声だった。「いやらしく手を動かしながら唇をすう真似をして」
「え!? わかった」
 何も考えずに指示通りにした。
 思えばそれが悪かった気がする。
 全力で腰に手を回して、抱きしめていた。
キスまでしなかったのはほとんど奇跡だろう。
「ちょ、え、まって」
 真剣な声から一転して、恋人の声で待ったをかけるほむら。
 だがしらいしは待たなかった。すでに頭が暴走していた。
 抱きしめたほむらは、シャンプーに混じって微かに汗の臭いがした。
 これがほむらの匂いなのだと感激した瞬間、興奮で我を忘れていた。いや、むしろ我を棄てていた。というか、匂い嗅いだだけで絶頂しかけていたのである。
 ぎゅうぎゅうと、潰れそうな勢いで、もうすぐ伴侶となる恋人を抱きしめるしらいし。
 彼の手は無我夢中で尻をまさぐ――もとい、腰のあたりを執拗に抱きしめ続けた。
「や、なんかほんとっぽい...」
「いやいやいや演技演技。」
 そう言いつつもしらいしの手はスカートの中へと侵入していく。
「っ――そ」
「それよりもどうして?」」
 ほむらがなにか言いかけたが、その前にしらいしが訊いた。
 息のかかる距離で言われて、ほむらは緊張していた力が抜け...そうになるのをなんとか耐えた。
「囲まれている。数は10...ひ、一人、強いのがいる」
「ぬ…最近の小笠原っぽいな」
 抱きしめる腕と、動かす手に力を込めながら、しらいし。
「強いのをやれば相手は撤退するか」
 声だけは真剣な調子だった。

 いやまあ、実際真剣なのである。

 ただ、真剣に没頭する直前に自分がどういう状態であるかをすっかり忘れていた。
 鼻にかかるいい匂いと手の平に触り心地のよい感触にはもちろん気づいているのだが、それがなにを意味しているのかまで考えが回っていない。
 むしろその感触を楽しむことで、より深く考えを巡らせているのだった。
「狙いは...」
「わからない...ん」
 たまった物ではないのは当事者以外である。
 路上で行為をはじめる二人に道行く人たちは騒然としていた。
 一同唖然。そりゃそうだ。
 見た目8歳ぐらいの少女と大の大人がいきなり抱き合ってちゅー以上のことをはじめたのである。
 ある意味、幻獣が襲撃してきたよりもインパクトが激しい。
 指をさして遠慮なしに騒いだのは子供たちだった。
「ねぇあのひとたち  して――」「おバカ、離れなさいっ」
 あわてて、その子供の親が、子供の目を塞いで遠ざかる。
 なにを勘違いしたのかカメラを探す若い男もいた。
 正常な思考回路を取り戻した善良な商店の主たちが、警察へ通報するべきか相談していた。
 周囲の騒ぎに先に気づいたのは、ほむらだった。
 今の今まで気づかなかったのだから、彼女の頭もすでに結構煮えている。
「こ、このーー」
 ぽかぽかとしらいしの胸を叩いた。
 びっくりするしらいし。
「な、なんだよ」
 あわてて体を離すが、それでもまだ腰から手を離していない。
 ほむらが潤んだ目でしらいしを睨んだ。
「犯罪者ぁ...」
「ぐっ...」
 かわいいなあ、おれの嫁になるんだなあと、感動をするしらいし。

 というか、まだ気づいていない。アホだ。

 その後、ようやく気づいたしらいしがほむらに謝り倒すのは、もう少し先である。
 しらいしはこの後、自分たちが招いた騒ぎに乗じて、敵の追跡を巻くことに成功する。
 あえて目立って歩くことにしたのである。
警察も来ているし下手なことは出来まい...その警察を説得するのは物凄く大変だったが。
 それにしても、まあ、作戦としては素晴らしいのかもしれないが、
――それなんて羞恥プレイ?

 ともあれ、しらいし夫妻は新婚最大の危機を、空前絶後前代未聞の路上公開エロで乗り切った。
 彼の伝説は、見た目10歳の少女の可愛い怒り声と共に、小笠原に深く刻まれることとなるだろう。

「あーほむら。すごい恥かしいかもしれないが。がんばれ。俺もがんばる」
「もう、この島にはこれない……」

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歴史的補講

戦史である暁史白石裕伝には、白石裕という名前の人物は、存在していない。

今ではその名前を唱えるものも、いない。

かわりにロリコンのと呼ばれれば、大抵の人が一人の人物を思いつく。

見た目10歳の幼女と婚約をした黒髪の藩王だ。

彼は愛妻を抱えていたがキノウツン国の高原のようにおもてだって妻を誇れることはなく、プライベートプライベートと、念仏のように唱えては割り切った。

ことあるごとに白石裕はラッキーだといい、ラッキーをロリコンのせいにする。

いつしかそうでなくてもロリコンが魔法のアイテムのように語られるだろう。

今はただのロリコンだが、白石裕が戦うその限りにおいてはそうではない。
白石裕の奮戦に期待する。

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てか、なんで発禁にならないんだろう。このログ。
こんなSS受注するんじゃなかった。



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引渡し日 2007/



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最終更新:2008年02月24日 00:24